「雨降りの午後」

雨の音がしていた。

だるい体で寝返りをうつ。



午後4時。
いつの間に眠りに落ちていたのだろう。
ひどく、喉が乾いていた。

見てはいけない夢を見ていたような気がする。
曖昧で、ふわふわしていて、
残酷なほど優しい夢を。


タオルケットを蹴り払って無理やり体を起こす。
冷蔵庫から麦茶を取り出して
なみなみとコップに注ぐ。
換気扇を回して煙草に火をつける。

窓も開けていないのに
部屋の中までしっかりと雨の気配が居る。
こんな日に限って
見たくもない夢を見てしまう。

忘れたはずの声を聞いた気がした。
どうしても思い出せないあの人の声を。



半分も吸っていない煙草を揉み消して
またソファに倒れ込む。

夢の続きがあるのなら
二度と目覚めなくてもいいのに、と。


雨の音がしている。

「雨降りの午後」

キャスにてroiさん@roi_144m
より頂いたお題「雨」

「雨降りの午後」

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-09-20

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