灰かぶり姫のハッピーエンド
シンデレラは仕返しを思い付きました。それは午前零時の鐘がなる少し前のことです。
艶然と微笑みながらひとり、またひとりと着飾った男たちの手を引いて、
優雅にドレスをひるがえしこの世のものではないような美しさで舞いました。
王子様が心細げにシンデレラを見つめています。
「君は僕の物になったのではなかったのか。」耐えきれずに言葉がこぼれた時。
「ごめんあそばせ。心配しないで。わたくしはあなた様のものです。」
いつのまに。シンデレラは王子の手を取ってそれはそれは美しく笑っておりました。
ずっと離さないでいてくれますか?王子の目を見据えてシンデレラは問いました。
「もちろん。君以上の女性なんてこの世にいない。僕は今夜確信したんだ。」
そう。それは恐れ多いお言葉。わたくしは死ぬまであなた様と共に居ます。
それをここに、誓います。ドレスの裾をついと摘まんで優雅なお辞儀を。
シャンパングラスで乾杯して、そろそろ宴の終わりの時間。
「王子様、わたくし少し酔いすぎたようなのです。
夜風に当たりたいのですがご一緒していただいても?」
「もちろんです。姫。僕の寝室のバルコニーでよろしければ。」
「ありがとう。嬉しいわ。決してひとりにしないで下さいませ。」
シンデレラは。
もう覚悟を決めていたのです。
零時の鐘はもうすぐそこまで。
バルコニーで夜風に当たるシンデレラ。黄金の髪がなびいて妖艶さを増す。
「王子様、もっとこちらへ来てくださらないかしら?」
「一人は寂しくってよ。」
あと少しだとシンデレラは思っていました。王子をバルコニーへと誘い出したら。
王子に背中を抱かれながら、「そろそろだわ。」と小さく溢したシンデレラは、
とびっきりの笑顔で王子に向き合った。
そして
「夢が終わる前に、夢の世界へと行きましょう?」と囁いて。
王子を抱きしめたまま、シンデレラはバルコニーから身を投げたのです。
その後のお話?
鐘が鳴ると同時に飛び降りたシンデレラは翌朝、
王子とともに灰をかぶった小間使いの姿で発見されたのでした。
シンデレラの仕返し。
魔法で変身した絶世の姫を完全にこの世から消し去り
小汚い小間使いの姿で王子と共にこの世から消えること。
誰も、あの一夜限りの「シンデレラ」の正体を知る者はいません。
誰もが羨んだお姫様と、誰もが憧れた王子様を永遠に自分のものにして
シンデレラは旅立ったのです。
めでたしめでたし。 ね? シンデレラ?
灰かぶり姫のハッピーエンド
ツイッターでのお題募集にて
鏡牙ちゃん@but_endgirl より頂いたお題。