騎士物語 第七話 ~荒れる争奪戦とうねる世界~ 第六章 数の魔法と水の檻

第七話の六章です。
学生サイドと騎士サイド、共にオズマンドとの戦闘開始です。

第六章 数の魔法と水の檻

 国王軍に所属する騎士は希望すれば軍の寮に入る事ができる。軍関係の施設となると質素かつ最低限なイメージを持つ者が多いのだが、騎士の士気に関わる事としてフェルブランドではいわゆる福利厚生に力が入っており、その設備は一人暮らしであれば少し贅沢ともいえるモノとなっている。
 その為、独り身の騎士の大多数は寮で生活しているのだが、都合上、一部の騎士は更に豪華な場所で一人暮らしをしている。
それは、王城に住んでいる王族や貴族の護衛として配備されている騎士である。

「嫌な予想通り、あの街から対水害用の防御魔法の発生装置が奪われてた事がわかった今、すぐにでも襲撃の可能性はあるだろうが、俺様がこの部屋にいる必要は――」
「王城内やその周辺で起きた事が全て伝わるようになっているこの部屋以上に待機に適した部屋はない。」

 騎士の部屋とはいえ王城内にある以上は相応の内装が求められるということで、護衛の為に王城に常駐している騎士が生活する部屋は貴族のそれと同等のモノとなっている。
 誰かや何かの護衛という形で配備される騎士には大抵任期があるものだが、王城内のそれとなるとかなりの実力が求められる事もあって人員の交代があまりない。
 よって十二騎士ともなれば、十二騎士である限りはそこが住居となる。

「それはそうだろうが女の一人暮らしの部屋に一晩っつーのはだな――」
「心配するな。するしないのどちらにせよ、私はフィリウスを信頼している。」
「どちらにせよ?」

 現在十二騎士の《ディセンバ》の席に座るセルヴィア・キャストライトがまさしくそうであり、彼女は十二騎士になってからずっと王城に住んでいる。
 そしてアネウロの宣戦布告がなされた今、夜の闇に紛れて王城への襲撃という可能性が大いにある以上、普段は適当な安宿や酒場の隅っこで眠る《オウガスト》ことフィリウスも王城にて備える必要がある。
 こうして、フィリウスがセルヴィアの部屋に招かれる――もとい、連れてこられた現状に至っている。
「タイショーくんも女性との一夜を経験したのだろう? 師匠が臆していてはいけないぞ。」
「いや、経験なら過去何十回としてはいるがセルヴィアの部屋っつーのが――」
「ほう、何十回。詳しく聞こうか。」
 セルヴィアが扉をパタンと閉めてコンコンとノックをすると、扉に時計のような模様が浮かび上がった。
「な!? 今ドアに時間魔法を――」
「もう夜も遅いが、護衛はここからが長いからな。今のうちにシャワーを浴びてシャキッとしておくといい。その間に夜食を作っておく。」
 有無を言わせずタオルを渡してくるセルヴィアにやれやれと肩を落とし、フィリウスはのそのそと風呂場に移動した。
「これでも女好きのフィリウスと呼ばれるくらいに色々やったんだがな。今になってここまで狂わされるたぁ思わなかった。」
 常人よりも一回り大きい体躯でも広々と使える風呂場に入り、女性向けのシャンプーなどにため息をつくフィリウス。
「どうにも、師弟そろって女に振り回されてるなぁ? えぇ? 大将。」



「だから、自分が二人の間に入ると言っているんです!」
「これはあたしのベッドなんだからあたしが真ん中なのが普通じゃない。それで左右にあんたとロイド。」
「そんな風にしたら兄さんを守れませんから! あなたの魔の手から!」
「あ、あの二人とも……そもそも一人用のベッドに三人は無理じゃないかなぁと思うのですが……」
「ほらパム。あんたが床で寝なさいよ。」
「い、いやいやエリルさん? そもそもオレとパムが床で寝るという話で――」
「……あんたそんなに実の妹と一緒に寝たいわけ……?」
「誤解だ!」
「兄さん!? そ、そんな……困りますよ……」
「パム!?!?」
 ひっちゃかめっちゃかの問答を繰り返した結果、オズマンドという反政府組織が今にも襲撃をしかけようかという状況で、オレは左右を恋人と妹に囲まれてベッドの中にいた。
 どういうわけか黒焦げになったオレのベッドを理由に……そ、その……なんか今までにないせ、積極性というか、エ、エリルが一緒に寝ようと言って……それを止めようとパムが文句を言って……結局今のように……ああぁああ! ロ、ローゼルさんとアレコレあったばかりだというのにこここ、こんな状況! エ、エリルが相手でも近くにパムがいればさすがにオレが……オ、オオカミになる――ことはないと思うんだが……ぬあああああっというか! 昨日の夜と今日の昼がロロ、ローゼルさんで、い、今はエリルって――とっかえひっかえ! フィリウス以上の女ったらし! ばああああぁぁ……
「兄さん、顔が変ですよ。な、なにかいやらしいことを考えて――るんですか……?」
「ぎゃぼっ!?」
 い、いかん! そうだ、真面目な話題を! オズマンドのことを!
「パ、パム! お兄ちゃんあんまり詳しくないんだけど――その、オズマンドがエリルを狙うかもっていうのは……ぐ、具体的にどういう意味なんだ……? まさか……い、命を……?」
「どうでしょうか……正直、国王軍の中でもオズマンドの――いえ、アネウロの行動がよくわからなくなってきているんです。」
「えぇ?」
「オズマンドは昔から貴族や王族といった国政に関わる人や国王軍の施設などを狙って騒ぎを起こしてきました。ええ、確かに、時には命を狙ったりもしてきたようですね。加えてA級犯罪者を先頭に大きな事件を起こしてみたりもして……けれどメンバーの戦闘力はそれほど高くなくて……なので国王軍内における認識は「強くはないけど迷惑な連中」という感じでした。ですがそのリーダーがアネウロとなると話が違ってくるんです。」
「というと……?」
「アネウロが設置系の時間魔法に非常に秀でているからです。」



 狭いベッドの中、ロイドとパムが真面目な話をしてるところアレだけど、あたしにその話は全然入ってこなかった。
 なぜならこうやってベッドに入る前、「昼間の火照りが残っているのだが?」とか言ってロイドにくっつくローゼルと、それに対抗して色々する他の連中を部屋から追い出した時――


「うむ、まぁそろそろ部屋を出ないと燃やされそうだから今日のところは自室に戻り、このお泊りデートはこれにて締めとなるわけだが――ロイドくん……その、一つ確認させてくれ。」
「は、はひ。」
「……そ、そのだな……」
「?」
「ロ、ロイドくんは昨日今日とわたしと……色々しただろう?」
「はびゃっ、そ、そうですね……」

 さっきまで幸せいっぱいの絶好調って感じだったローゼルが言いにくそうに途切れ途切れに……こう言った。

「ロイドくんはそれを……わたしとしたことを……わたしにしたことを……後悔――していないか……?」

 とろけてにやけてたローゼルが……ちょっと緊張してるみたいな、少し不安みたいな、そんな感情の混じった真面目な顔でロイドに聞いた。
あたしは直感した。これはローゼルからロイドへの……言うなれば最終確認だ。誰が相手でもいいわけじゃないああいうことを、女が男を選びたいなら男だってそうだもの。きっと……ここまできてあのローゼルもふと思ったんだわ……ロイド目線――みたいなものを。
 この質問にどう答えるかできっと今後が大きく変わる。そんな気がしたそんな場面でロイドは――あのバカは、嘘がヘタクソだからその本音具合がすぐにわかるすっとぼけた顔で……たぶん意味を深く考えないでいつものように赤い顔で真面目に答えた。

「うえぇぇっ!? い、いやいや、後悔なんてするわけがないと言いますか――あっ! いや! やらしい意味では――あったりも、し、しますが……その、ナナナ、ナイスバディーは色々と――男として良き体験を――でで、でも勿論それだけではなくて! こう、あ、愛と言いますか! ステキな時間を――あ、そ、そう! ローゼルさんの可愛いところをたくさん見られて良かったです!」

 何言ってんだかわかんないけど、ロイドの気持ちはわかる。こいつは確かにローゼルのことが――こともっ! 好き、で! だ、だからローゼルがニヤニヤして溶けるのと同じように、ロイドだってその……夜とか昼を……それなりに…………つ、つまりはそういうことなんだわ……

「――!」

 散々やらしいことをしでかしたクセに今更真っ赤になったローゼルは、「そうかそうか」と言ってスタスタと自分の部屋に戻っていった。今頃ベッドの上でジタバタしてるんでしょうね。
 ……で、そんなん聞いたら……こ、恋人のあたしが黙ってられないっていうか……勢いで一緒に寝るわよとか言っちゃったこともあってかなりアレな気分で寝る時間になって……
 …………まぁ……今夜だけはパムがいて良かったのかもしれないわね……


「なるほど……つまりオズマンドが今までしてきた、時にしょうもないような事件の裏でアネウロが後々の為に時間魔法を仕掛けていたのかも――ってことか。」
「確実に望みを通す為にコツコツと準備をして、こちらが何をしようともひっくり返らなくなるまで待ち続けて……そして今、ついに行動を開始した――のではなかろうかと、そんな風に考えてしまうほどの人物なのです。」
「時間魔法の特性か……ツァラ……ツル……タララ? も行動の後押しになったのかな。」
「かもしれません。もしかすると、いくら時間魔法で長生きしているとはいえそろそろ限界が近く、ツァラトゥストラの存在をチャンスと思ったのかも。」
「そんな相手が……エリルを……」
 くるりとこっちを向いたロイドとあたしの距離はほんの数センチ。数秒前まで考えてたことのアレもあって顔が熱く――
「いきなりこっち向くんじゃないわよ!」
「あだっ!」
 思わず頭突きをするあたし……
「ご、ごめん……で、でも三人だと狭いからこういう距離感になっちゃうというか……やっぱりオレ――」
「い、今のはついよ! 今の気分でいきなりこっち見られたら……」
「気分?」
「――! う、うっさいわね! と、というかその――オズマンドの話! あたしを狙うとか、あ、あんたは心配し過ぎよ。狙うならあたしよりも重要な役職についてる誰かを狙うわよ。」
「わかんないだろう……ああ、でもカメリアさんとかは大丈夫なのかな。」
「彼女……というか王族であるクォーツ家には《エイプリル》がついてますから大丈夫かと。」
「そうか……」
 ロイドはなんかすごく心配してるけど……あたしは王族としてオズマンドの名前を聞き飽きてるくらいで……今更強くなったとか言われてもさっきパムが言った「強くはないけど迷惑な連中」っていう印象があるのよね。
 それに今はそれどころじゃない……
「そ、それはそうと……ロイド……」
「はわっ!?」
 ロイドの腕にくっつきながら、あたしは暗い中に浮かぶまぬけ顔を睨みつける。
「ローゼルの可愛いところって……ど、どういう意味よ……」
「エ、エリル!? あの、む、胸が――!!」
「な、なによ、こんなんよりもずっとやらしいことしてきたクセに……」
「それとこれとは! ほ、ほら! 特に今はパムもいますから!」
「兄さん? 自分がいなければオッケーと?」
「そういう意味では!」
「それと、それは自分も気になりました。可愛いところとは……なんだかすごくいやらしい事のような気がしてならないのですが。」
「えぇっ!? そ、そんな大した意味じゃ――」
「じゃあ言いなさいよ。」
「そうです。さぁ兄さん。」
「――!!」
 その後恥ずかしそうな顔でロイドが説明したことはすごくいやらしくて変態的なモノで、危うくあたしはあたしのベッドも黒焦げにするところだった。
 まぁ、とりあえずロイドはあたしとパムとでボコったけど。



 お泊りデートが終わった次の日。つまりは週明け最初の日の朝、オレは妹と恋人から至近距離でオシオキを受けて割とあちこち痛い身体を起こして今日の授業は大丈夫だろうかと思いながらふと横を見た。
 成長して美人になったパムは……ま、まぁ、夏休みの間もずっとこんな感じだったから段々と昔の感じが戻ってきてこういうのには……な、慣れつつある。
 問題はもう片方。昨夜は烈火の如く怒っていたけど、今は無防備な寝顔をさらしている……こ、こんな女ったらしのひどい男のここ、恋人であるエリルの方で……ふんわりとした寝間着がなんとも可愛いのだが……ま、まぁこういうワンピース的な服で眠ったら寝返りやらなんやらで……スカート部分が結構……生脚が――はっ!
 だだ、だめだぞオレ! 朝からこんなやらしい目で女の子を見るとはケダモノだぞ! お、落ち着くんだ、いつものオレに戻るのだ! エロいオレよさらば! さぁさぁ朝の鍛錬を始めるぞ!


「おはようロイドくん。一度経験してしまうと、一人の夜は寂しいな。」
「ひと――なな、何言ってだばあああ!」
「ロゼちゃん、昨日の夜ずっと……ベッドの上で、ジタバタ、してたよ……」
 最早達人の動き、一呼吸の間に距離をつめてオレに抱きついてきたローゼルさん!
「あー、あたしもー。」
「びゃあっ!? アンジュまで!」
「だーって責任とってもらわないとー。」
「セキニン!?」
「昨日ロイドと優等生ちゃんのあれこれを聞いたでしょー? そのせいで昨日の夜見ちゃったんだよねー。」
「なな、何を――」
「ロイドにやらしいことされる夢ー。」
「だわばっ!」
「二人とも離れるんだよ!」
 左右の二人が瞬間移動によるリリーちゃんの攻撃をかわしたことでオレの腕から離れた――けどリリーちゃんがぁああぁぁっ!
「ふんだ。ボクなんて夢の中ならロイくんと何十回もしてるんだからね!」
「うぇええぇっ!?」
「朝から破廉恥な会話しないでくださいっ!」
 地面から伸びる腕をひらりとかわすリリーちゃん。
「ふぅむ、こういうモノなのか?」
 そんなドタバタを眺める首輪つきのカラードは、オレとローゼルさんを交互に見ながらそう呟いた。
「お、おはようカラード。な、何の話だ?」
「いや……昨日の話だとつまり、ロイドとリシアンサスさんは情事に及んだのだろう?」
「ジョ!?!?」
「あまり変わらないだろうとは思ったが、これほどまでにいつも通りの雰囲気とはな。これも一つ、ロイドの性格の成せるわざなのか?」
「ふむ、あまり変わらないか……わたしとしてはロイドくんがわたしを妻として扱うような変化があってもいいとは思うが。」
「ツマッ!!??」
 あ、いや、しかしあんなことをしでかしたらそういうことも――
「終わり! この話は終わりです! 兄さんも変なこと考えないように! 場所を移動しますよ!」
「移動? ってどこに行くのよ。」
「自分が正式に顧問となった今、この朝の鍛錬も部活動になります。なのでこの部活の活動場所に移動します。」
「む、それはよかった。これでアレクも参加できる。途中で拾って行くとしよう。」


 というわけでさすがというか何と言うか、校内をランニングしていたアレクを拾い、我ら『ビックリ箱騎士団』は訓練場へとやってきた。
 なんだか随分昔のような気がするが、ここに来るのはセイリオスに入った時にエリルに案内してもらって以来かもしれない。確かあの時は寮から距離が結構あるから朝の鍛錬は寮の庭でやる――ってことにしたけど、さすがに人数が増え過ぎた。
「学院生が好きな時に使える施設なので場合によっては順番待ちなどがあるわけですが、いわゆる部室のような扱いで、この一室は兄さんの部活専用で使えます。」
 そう言ってパムが開いた質素な扉の向こうには、おそらく校長先生お得意の空間をどうにかこうにかする魔法によって作られたのだろう、すごく広い空間があった。扉同様に質素で無機質な寂しい部屋なんだけど……んまぁ、訓練するだけならこんなもんなのだろうか。
「何にもない部屋ね……」
「いえ、今はご覧の通りの石造りですが、壁にあるスイッチで環境を操作できるそうです。」
「ほっほー、どれどれ押してみっか。」
 面白そうにアレクがスイッチを押すと、部屋の中が一瞬にして草原になった。
「うおっ! こりゃすげぇ!」
「ああ。これならおれもアレクも全力で動けるな。」
「いや、お前は全力出したら動けなくなるだろうが。」
 さっきまで長くいたら息苦しくなりそうな部屋だったのが、今や心地よい風まで吹いている草原……学院長の魔法は相変わらずとんでもない。
 しかしこの広さは確かに嬉しい。これだけ広ければ竜巻みたいのを起こしても安心……あれ、そういえば天井はどこにいったんだ……?
「ふむ。ここと似た扉が途中にもいくつかあったが、あれは他の部活――他の騎士団の部室ということになるのか?」
「そうみたいです。まぁ、いくら魔法で作れる空間だからと言って申請された部活全てにこういう場所を与える事はできないようなので、その点、『ビックリ箱騎士団』は評価されているのでしょう。」
「えぇ? オレたち特に何もしてないんだけど……」
「ロ、ロイドくん……い、一応ここにいる人のほとんどが……Aランク……だよ……」
「Aじゃねぇのは俺だけだろうが。お前に負けてな。」
「アレキサンダーくん、わたしのルームメイトにガンを飛ばすな。それとロイドくん、わたしたちはワイバーンと戦ったじゃないか。」
「やっつけたのは自分ですが……まぁ、その辺のことが評価の理由でしょう。」
「そっか……色々と頑張っておいて良かったなぁ。」
 ランク戦や交流祭をしみじみと思い出し、この部活で更なるパワーアップができるだろうという期待を膨らませる……のだが、オズマンドとかいうののせいでスッキリ喜べないのが残念だ。

「ああ、いたいた。」

 微妙な気分で目の前に広がる草原を眺めていると、黒いローブに身を包んだ誰かが……今の状態だと違和感がすごいのだが、草原にポツンとたっている扉から入ってきた。
「部屋にいないから探してしまった。こういう時、ミラの右眼を持っているロイドは気配が独特だから探しやすいな。」
 前に来た時は怖がらせないようにと割と普通の顔色でやってきたが、今回は普段の顔色。知らない人が見れば今すぐ病院に連れて行きたくなる肌の色に加えて首の辺りに見えるのはツギハギの縫い目のような痕。今は黒いローブに隠れてしまっているが、きっと今日も不思議なセンスの服を着ているのだろうメガネイケメンのオレの友達。
 魔人族、フランケンシュタインの七代目、ユーリ・フランケンシュタインがそこにいた。
「やっぱり昨日ミラちゃんが言っていたのはユーリのことだったか。」
 スピエルドルフが国として動きはしないけど、友達が遊びに来る程度で誰かをよこす……ツァラトゥストラが内臓やらの器官というのなら、生き物の身体に詳しいユーリが来ることとは予想できるわけだ。
「ん? ユーリ、それはなんだ?」
 この前セイリオスに来たときは手ぶら……どころか右腕がない状態だったわけだが、今は両腕あるのに加えて大きな袋を肩にかけていた。
「あると便利かと思って――んん? なんだ、この部屋の太陽光は魔法で作られたモノか。」
 そう言いながらフードを取るユーリ。明るいところで見るといよいよ死人のような顔色だ。
「本物じゃなければ大丈夫なのか?」
「術者の腕による。ここの場合は部屋にかけられた魔法の規模が大きい故に、細かいところはできるだけシンプルな魔法にしている――という感じだな。」
「お、おいおいロイド、そいつ知り合いか? だ、大丈夫なのか? カラード、車いす貸してやれ。今にも倒れそうな顔色だぞあいつ。」
「彼には一度会って――いや、アレクは初めてだったか? 彼はロイドの友達の魔人族で、あれが普段の顔色……なのだろう?」
「その通りだ。私はユーリ・フランケンシュタイン。そちらの大きな人は初対面だな。」
「フランケンシュタインってあのフランケンシュタインか? 本物に会えるとは思わなかったぜ。アレキサンダー・ビッグスバイトだ。よろしくな。」
「よろしく。そしてこちらの――んん? 妙にロイドに似ているあなたはもしや妹さんか?」
パムの顔をまじまじと見るユーリ。顔立ち的には確かにイケメンなのだが、その他の要素のせいで初対面だと割とホラーなその顔に少しビクビクしながら、パムも挨拶をする。
「は、初めまして、パム・サードニクスです……」
「ああ、初めまして。」
 ドギマギするパムは頑張って笑顔を作るのだが、ユーリと握手をするとギョッとした顔になった。
「冷たい……人間の体温じゃありませんね……」
「ははは、まぁ人間ではないからな。ほら。」
 そう言いながらユーリが腕を引くと、握手した手だけがパムの手に残った。
「びゃああああああっ!?!?」
 何やら聞き覚え――言い覚えのある叫びをあげ、ユーリの手を放り投げながらパムはオレの後ろにまわってしがみついた。
「フランケンシュタイン伝統のドッキリだ。以後よろしく。」
「慣れない人は心臓止まるからやめとけよ。」
 宙を舞う自分の手をキャッチして装着しなおすユーリは、ふと真面目な顔になる。
「それでロイド。ミラから突然こっちに来るように言われたわけだが……ツァラトゥストラが関わっているそうだな?」
「知ってるのか?」
「こちとらツギハギの身体だからな。自身に移植して使用するというユニークなマジックアイテムを調べないわけがない。そもそもあれはどこぞの魔人族が作ったモノだしな。」
「ん? そうなると……むしろユーリこそが一番の専門家か? やったな、パム。」
「そ、そうですね……早速軍に連絡をとって――」

 ゾワッ

「!?」
 パムが通信機を手にした時、急に――なんというか、すごく大きな気配を感じた。
「な、何よ今の……魔法の気配……?」
 魔法に対して人並以上の感覚を持つエリルが信じられないという表情になる。どうやら今のは魔法の気配だったらしいのだが、魔人族故に更に鋭い魔法的な感覚を持つユーリは驚いた顔で呟いた。
「相当な規模の魔法だ。おそらくこの街を軽く覆えるくらいの範囲で――これは防御系の魔法だな。同時に第十、第十二の気配もある。」
「第十二――時間魔法! オズマンドが仕掛けてきましたか!」
 そう言いながら部屋を出たパムを追い、オレたちは訓練場の外に出た。おそらく同じように魔法の気配を感じた他の生徒もちらほらといるけど……しかしパッと見外に変化はなさそうだぞ……?
「兄さん、上です!」
「う、上?」
 言われるがままに空を見上げる。
 ……
 …………??
 え、なんだろうこれ……太陽が歪んでいる……?



「――!」
 同時刻、一部の騎士が生活している、王城内にある貴族並みの豪華な部屋にて、筋骨隆々とした男を組み伏せてフォークの先に刺さっているトマトを男の口に入れようとしている女が何かに気づいてその手を止めた。
「おいセルヴィア! 俺様は自分で食うから「あーん」とかするんじゃ――」
「来たぞ、フィリウス。」
「確かにトマトが口まで来てるな! くっそ、その細い身体のどこに俺様と同等のパワーが――」
「そうじゃなくて、敵が来たぞ。」
「ああ?」
「相変わらず風魔法以外はからっきしだな。たった今、大規模な魔法が発動した。」
 自分が押し倒していた男――フィリウスを逆に引っぱり起こし、女――セルヴィアは窓の外を見る。
「これは……どういうことだ……?」
「んおお、こりゃすげぇな。いつの間にこの街は水の中に沈んだんだ?」
 二人の目に見えているのはまるで水の中から見上げたような空で、その歪みは王城から見渡す事のできるこの街――フェルブランド王国の首都ラパンをすっぽりとドーム状に覆っていた。
「水の壁に覆われたのか? こんなバカみたいな量の水を魔法で作れるわきゃねーから、この水はどっかから移動させたモノか? いや、だとしても結局これだけの量を例えば位置魔法なんかで移動させたら術者は死ぬな。」
「どこかの水を位置魔法で移動させたというところはおそらく正解だ。ただし、その後時間魔法が加わっているのだろう。」
「ほう?」
「例えば位置魔法の入り口を海の底に、出口を街の近くに設置しておく。仮にそれが蛇口程度の小さな道だったとしても、時間魔法で一気に時間を経過させれば問題ない。もちろん、普通はこんな量を一瞬でというのは負荷が大きすぎて無理な話だが――」
「時間魔法の特性で強力になった設置魔法なら可能ってか。でもって見たとこ、この大量の水をせき止めてんのが奪われた防御魔法の壁だな。」
「そうらしいな。おそらく内側と外側で二層の壁を作り、その間に水を入れたのだろう。」
「だな。だがそれでどうするつもりだ、連中?」
 フィリウスの疑問に答えるように、空を覆う水に映像が――おそらく街のどこにいても見えるような大きさと複数の向きで浮かび上がった。

『朝早くからごめんなさい。』

 映っているのは一人の老婆。見るからに怪しい強面の男ならともかく、気品のある微笑みでそう言った老婆に街の住人のほとんどが困惑する中、国王軍や騎士団の騎士たちはその老婆が誰かを知らされている故に緊張した面持ちとなっていた。

『私が誰かを知っている人は少ないでしょうから、こっちを名乗りましょう。私はオズマンドの者です。』

 この国で生活していれば一度は聞くテロリスト集団の名前が老婆の口から出たことで、困惑していた住人たちの間に緊張が走った。

『私たちの活動はきっとみなさんの知るところでしょう。つまり今日、オズマンドは最終手段の強行に出たわけです。今よりラパンの街のみなさんは私たちの人質となりました。』

 微笑みをそのままにそう言った老婆に、街の住民だけでなく騎士たちもゾッとした。

『現在この街は大量の水に覆われています。最も高い所は何百メートルという高さになりますから、仮にこの水が落下した場合、雨が降ってきた程度ではすみません。多くの死者が出ますし、街にも深刻な被害が出るでしょうね。』

「……致命的な高さからの落下でなくとも、この規模で街が水浸しとなれば街の機能は完全に死んでしまうな……」
「街の騎士全員で頑張れば止められるかもしんねぇが現実的じゃねぇな。《ジュライ》がいてもどうにもなんねぇレベルだぞ、こりゃ。」

『そういうひどい目にあいたくなければ、こちらの要求に従っていただきたい――とまぁ、よくある話ですね。詳しく言うとして欲しいことは色々あるのですが、差し当たっての要求は一つ――フェルブランド国王、ザルフ・クォーツに王座からおりていただきます。』

「確かによくある話だな。進言が通らないから王をチェンジしようってか。次の王には自分がなるつもりなのか?」
「いや……思うにアネウロはそういう人物ではない……」

『今より一時間後に国王は騎士などの護衛をつけずに王城の外に出て、先の事を宣言してください。勿論、相応の書類と共に。でなければ水を落とします。』

「あ? 一時間後?」
「妙な指定だな……」

『ちなみにこのような人質も確保済みですので、ご参考までに。』

 老婆の言葉で映像が切り替わり、牢屋のような場所に閉じ込められている一人の女性が――この国においてはかなり有名である紅い髪の女性が映し出された。

『カメリア・クォーツ。彼女はこちらの手の中です。』



「エリル!!」
 空に浮かぶ映像にカメリアさんが映るや否や、爆炎を舞わせてエリルが駆け出した。
 カメリアさんを守る為に騎士を目指しているエリルがあんなモノを見せられて黙っていられるわけがない――のだが、そうして飛び出したエリルはどう考えても冷静じゃない!
 あのままでアフューカスがばらまいたという力を手にしたオズマンドのメンバーと遭遇したら最悪――
「リリーちゃん!!」
 そう叫びながらオレが伸ばした手の意味を察したリリーちゃんが手を握ろうしたのだが、その前にカラードがオレの手を掴んだ。
「待て、おれたちも。」
 一呼吸ほど遅れてリリーちゃんの周りにみんなが集まり、やれやれという顔になったリリーちゃんはふっと息を吸い込む。
「――行くよ!」
 その一言を合図に周囲の光景が変わる。訓練場の前から正門を出た辺りに移動したオレたちの目の前には全速力で走るエリルがいて、オレは後ろからエリルを捕まえたのだが――

「げっ。」

 そこにはもう一人、一瞬フィリウスかと思うくらいの大柄な男が立っていて、手にした何かを発動させている瞬間だった。
 直後襲い掛かる急激な酔い。ぐわんぐわん揺れた後、オレたちはどこかの原っぱに放り出されるようにドサドサと転がった。
「な、なんだ今の気持ち悪い揺れは……リリーくん、わたしたちをどこに飛ばしたのだ?」
 頭をおさえてふらふらしながら起き上がるローゼルさんの横、さすがのリリーちゃんはきれいに着地していた。
「……今のは『テレポート』が半分失敗して予定と違う場所に移動しちゃった時なんかに起きる現象だよ……」
「ほほう、リリーくんでも失敗するのだな――と言いたいところだが、まぁ失敗したのはあちらさんなのだろうな。」
 ゆらゆらしつつも立ち上がったオレたちは、少し離れた所に立っている大柄な男を見た。

「ふん、アネウロめ。不確定要素とはよく言ったものだ。いきなり割り込まれたせいでカゲノカお手製の装置がバグったぞ。」

 パンパンに膨らんだジーンズをはき、おそらくはすぐに脱ぐのだろう適当な上着を生々しい傷跡があちこちに目立つムキムキの素肌に羽織っただけの大柄な男が、ビー玉みたいな球体が先端についている短い棒を地面に捨ててバキッと踏みつぶした。
「ふん、一応王城が見えるってことは街から数キロってところか。お姫様一人さらうだけが余計なオマケと一緒にこの様たぁなぁ……」
「さらう――ああ、お姉ちゃん! お姉ちゃんがっ!!」
 突然の事に呆然としていたエリルが状況を思い出して王城の――街の方を向くと大柄な男が笑い出した。
「ぶっはっ! アネウロの予想通りの慌てようだな、おい! このまま街の方に走られたら面倒だからバラしちまうが、ありゃ嘘だ。」
 大柄な男のその言葉にエリルがピタリと動きを止める。
「うそ……? なによそれ、どういうことよ……」
「ふん、どうもこうも、オレたちはあの女をさらってねぇって話だ。」



「あらあら、私が捕まっているわよ、アイリスさん。」
「よくできていますね。」

 フィリウスとセルヴィアが空の映像に驚愕した直後、二人がいる部屋に捕まっているはずの女性が入ってきた。
「な――はぁ!? おいおい、こりゃ一体どういうことだ!?」
「そう困惑する話ではありませんよ、《オウガスト》殿。単純に、あの映像が嘘というだけです。カメリア様はここにいますから。」
「はーい、カメリアさんですよー。」
「それはそれで……そもそもカメリア姫はクォーツの屋敷にいるはずではなかったのか?」
 セルヴィアの疑問にメイド服姿の女性――アイリスが答える。
「お屋敷よりも王城の方が防御は厚いですから。クォーツ家の方々には昨日の内に移動していただきました。」
「いつの間に……」
「こういう状況ですので、申し訳ありませんが秘密裏に行わせていただきました。」
「まぁ、護衛の仕方はその道のプロに任せるが、じゃああの映像はなんなんだ? ただのドッキリか?」
「あらあら。一応資料には目を通したけれど、アネウロという方は意味のない事はしないタイプだと思うわよ?」
「意味か。あれを見て一番慌てる奴は誰だ?」
「国王か、カメリア姫のお爺様であるキルシュ様か……」
「いえ……おそらくは――」
 窓の外を見ながら、アイリスが厳しい表情でつぶやいた。
「最も心を乱すのは、エリル様です。」



「鉄壁と言っても過言じゃねぇ学院の防御を突破するにはどうするか。ふん、突破する必要なんかねぇ、目当ての奴に出てきてもらやいい。さっきのはその為の、いわゆる罠だ。」
 罠……あたしを……あたしを学院の外におびき出すための罠……
「ふん、ちなみにあの映像はゾステロがしーじーだかなんだかを使って作ったもんなんだとよ。科学もバカにできねぇなぁ?」
あたしは……あの映像を見た瞬間に頭の中が真っ白になって……まんまと敵の罠に……ロイドたちが来てくれなかったらあたしはこいつに……
「エリルくん、とりあえずカメリアさんに連絡をとってみるのだ。」
 そ、そうだわ、無事なら連絡がとれるはず……
「ああ、そりゃ無理だ。」
 お姉ちゃんと話すことができるマジックアイテムを取り出したところで大柄な男がニヤリとわらった。
「魔法でも科学でも、そういう通信の全てを遮断する魔法があの壁には加わってんのさ。ついでに位置魔法も妨害してっから、さっき踏みつぶしたカゲノカのマジックアイテムを使わねぇと壁をこすことは不可能だ。」
 ラパンの街を丸々覆ってる水のドームを指差す大柄な男。試しにマジックアイテムを起動させたけど、呼び出し中のままでお姉ちゃんは出なかった。
「……! どうやら通信が妨害されているのは本当のようです。軍と連絡がとれません。」
「ふん、だからそう言ってるだろ? こうして街の外に飛ばされちまった以上、オレもあいつらと連絡がとれねーんだからな。」
 ……つ、つまりこいつの言った……あ、あの映像が嘘っていうのを確認する方法がない……こいつが嘘を言ってるのか、本当に映像が嘘なのか……どっちにしたって敵の言うこと……あぁ、お姉ちゃん……本当に無事なの……!!
「エリル。」
 胸の中で不安が渦巻き出した時、ロイドがあたしの肩に手を置いた。
「らしくないぞ。やることはハッキリしているんだから、いつもみたいに突き進めばいい。」
「な、なによ……やることって……」
「簡単だろ。すぐ街に戻ってカメリアさんを探し、安否を確かめればいい。無事ならクォーツの家か王城にいるだろうからな。そしてそうする為にはまず、それを邪魔してくるだろうそこの男を倒すんだ。」
「……!」
「ふん、オレを倒すか。ま、バトル自体は望むところだがな。学生ごときがどこまで――」

「おい。」

 ほんの一瞬前まであたしを励ましてくれたロイドの表情が、ゾッとするくらいに怖い顔になった。
「お前はエリルを狙ったみたいだが……一体どうするつもりだったんだ?」
「――!」
 淡々としたロイドの質問――いえ、迫力に大柄な男が一歩後ろに下がる。
「――!! ふん、このオレを……ったく、化け物みてぇな殺気を出しやがる。なるほど、アネウロの言う通りのヤバさだな? ロイド・サードニクス。」
「! オレのことを……」
「当然。そこのお姫様をさらってくるっつー仕事がオレにまわってきたのはお前が理由だからな。」
「なに……?」
「お前は今回の作戦をひっくり返しかねないんだとよ。つーことで――」
「! ロイド避けろ!」
 あたしも感じたかすかなマナの流れ。何かの魔法を使われると、たぶんあたしよりも早く正確に気付いただろうユーリが動いたけど――

「お前の体力は『千分の一』だ。」

「!! 兄さん!!」
「ロイくん!?」
 直後、ぐらりと倒れ始めるロイドの身体。受け身も無しにそのまま地面に向かうロイドをユーリが受け止めた。
「ロイド! しっかりしろ、大丈夫か!」
「か……あ……」
 まるで息をする元気すらないみたいに疲れ切った表情でぐったりするロイド……!!
「おお、こりゃすげぇ、触れずに発動できたぞ。ツァラトゥストラってのはすげぇモンだな。」
 ツァラトゥストラ――さすがに言われなくたってわかってたけど、つまりこいつは――
「オズマンド……あんたロイドに何したのよっ!」
「ふん、それだとオレがオズマンドって名前みてぇじゃねぇか。オレにはラコフっつー名前があ――」
 一閃。この場の誰もが気づかない内に放たれたその一撃は、大柄な男――ラコフの首から鮮血を噴き出させた。
「知らないよそんなの。」
 口からも血を吐きながら膝をついたラコフの後ろから、短剣を手にしたリリーが……暗殺者の顔で出てきた。
「ロイくんに何してんの? さっさと今かけた魔法を解除して。」
「――っは、ぐ、ぶはははっ!」
 吐血しながら大笑いしたラコフがゆっくりと立ち上が――!? く、首の傷が塞がって――
「ふん、バカ言いやがる。火の魔法で燃やしたもんは火を消せば元通りになんのか?」
 リリーの……たぶん、リリーのことだから手加減無しでころ――本気の一撃だったと思うんだけど、それが一瞬で治ったラコフを見て、リリーはパッとあたしたちのところに移動した。
「ふん、これもまた不確定要素ってか? お姫様とそれを守る騎士と、それを囲む他の騎士。確かにこりゃあ学生って枠には収まらねぇな……面白れぇ。」
 そう言いながらラコフがグッと拳に力を入れると、まるで強大な魔法が発動する直前みたいな異様な迫力がふき出した。
「……さっきのマナの流れもそうだったが……この男、百パーセント人間というわけではないな……なるほど、これがツァラトゥストラというわけか。」
 ロイドを抱えたままラコフを睨むユーリだけど、その右目が……なんていうか、蛇の目みたいになってた。
「……どうやら両腕がそのツァラトゥストラという代物らしい。そこだけ魔法との親和性が魔法生物や私たち並みだ。今の数魔法もそのせいで触れることなく……」
「ふん、お前みたいなインテリメガネの情報はなかったな。セイリオスの制服に黒いローブなんてねぇはずだし、国王軍の制服でもねぇ。誰だか知らねぇが……まぁ、その通りだぜ?」
 見た目に筋肉が隆起するほどに更に腕に力を入れるラコフ。すると両腕の肩から先が黒く染まっていった。
「オレの得意な系統は第十一系統の数の魔法。でもって身につけたツァラトゥストラは『腕』。強力になったオレの魔法で――ま、さっき言った通りなんだがロイド・サードニクスの体力を『千分の一』にした。例えるなら飲まず食わずで数週間、もはや虫の息ってレベルだろうな。一発蹴飛ばしゃ死ぬんじゃねぇか?」
「――! お前ロイくんにっ!!」
「おお、おお、いい顔しやがる。」
 殺気全開のリリーを前に、半分狂気の混じった笑みを浮かべるラコフ。
「オレの仕事はエリル・クォーツをかっさらい、魔法を弾くなんつー変な力であの壁をどうこうされないようにロイド・サードニクスを無力化ないし殺すこと。お姫様の方はおびき出せるがこっちはどうするかと思ってたんだが、こうして出てきたことでオレの仕事は半分終わった。残すはアネウロらの作戦が終わるまで街の外で予定外の待ちぼうけ。そう、お前らをボコしながらな!」
 舌なめずりしそうな勢いの笑みを浮かべるラコフ。こいつ、いわゆる戦闘狂って奴だわ……
「随分と情報通だな。ロイドのあれは交流祭で初のお披露目だったろうに。」
 タイミング的に甲冑無しでランスだけを手にした状態でここにいるカラードが一歩前に出る。
「ロイドがクォーツさんを追おうとした時、直感的に「おれたちも」と言ったが――あれは正しい判断だったようだ。」
「ふん、こちとら大迷惑だがな。」
「楽しそうな顔でよく言う。さて悪党、お前がどういう理由でやってきて、予定と違ってこんな所に来ようとも、やることは先ほどロイドが言った通り。クォーツさんのお姉さんや街の人々を守る為、騎士であるおれたちは一刻も早く戻らなければならない。加えて今は同志の危機――言葉を返そう、最速で、おれたちがお前をボコす。」
 いつも甲冑の中ではこんな顔をしてるのか、鋭い眼でランスを構えるカラード。
「カラード、言葉が似合わねぇぞ。ま、同意見だがよ。」
 ニヤリと笑って大きな斧を地面に叩きつけるアレキサンダー。
「ふん、さっき言った通り、オレを倒したところでどうせ街には入れねぇ。そこの死にかけを医者に見せんなら別の街に行った方がいいと思うぞ? まぁ、行かせねぇが。」
「お前の許可なんかいらない。みんな、ボクはロイくんを他の街に連れていくからそいつ殺しといて。」
 怖い顔のまま、ユーリに抱えられてるロイドに近づくリリーの肩をパムがつかむ。
「待って下さい。」
「……邪魔するの……?」
 ラコフに向けたのと同じくらいの殺気をパムにぶつけるリリー。だけど――
「今の兄さんには治癒系の魔法が必要ですが、ケガではなく体力の回復となるとかなりの高等魔法になります。あてがあるのなら構いませんが、片っ端から探し回るというのであれば――ええ、邪魔をします。連れまわされる兄さんの体力が持つとは思えないので。」
 それを止めるパムの目も本気。リリーのロイドへの……お、想いは相当なモノだけど、それで言ったら生き返らせようとしてたパムのそれだって尋常じゃない……はずよね……
「軍の医療棟にはその使い手かいますから、戻ってあの壁をどうにかする方が確実です。」
「ふん、だから無理だっつってんだろうが。つーかんな死にかけよりも自分たちの心配をしねぇのか? 今からオレがお前らを――」
「いや、可能だ。」
 戦いたくてうずうずしてるって感じのラコフを遮ったのはユーリで、街を覆ってる水のドームをさっきの蛇みたいな右目で見つめながら言葉を続けた。
「相当な術者が相応の下準備で作り上げた、水を防ぐことに特化した壁。あの壁を壊すには物も時間も足りないが、お前がさっき「加えた」と言った通信や位置魔法を妨害している魔法については対処可能だ。」
「ふん、知ったかはよせガキが。その魔法を加えたのはアネウロ――時間魔法だぞ? 解除できるわけねぇだろうが。」
「知ったかはどっちだ人間。」
 太陽光から身を守るために目深にかぶったフードの下から凄みのある目でラコフを睨んだ後、ユーリは……じ、自分の右腕を取り外して、それを枕がわりにロイドを草の上に寝かせた。
「魔法で作り出したモノが魔法で否定できないわけがない。どうにも人間は時間魔法を特別扱いし過ぎている。」
「あぁ……? まるで自分が人間じゃねぇみたいに……つぅかその腕、どうやった……?」
「私の得意な系統は第二系統だが、私には初代が創造主から受け継いだ膨大な研究記録がある。命を創り出そうした彼が、全ての系統を対象にして行った数多の実験の結果が。」
「てめぇ、質問に答えろクソガキ!」
「系統がなんであれ、構造は同じだ。正しい手順と相応の道具があれば破壊は可能。確かになかなかの術者の時間魔法のようだが……都合よく、あれを否定するのに充分な道具はそこにある。」
 ラコフを無視し、たぶんあたしたちに説明するために話を続けるユーリは……ラコフを指差してそう言った。
「魔法生物や魔人族のような性質を持ちつつ、本来の持ち主が存在しないという独立性。魔法的儀式を行うのにそれ以上の贄はないだろう。」
「贄だぁ!? 何の話をしてやがるっ!」
 怒鳴り声をよそに、肩にかけてた袋の中をガソゴソしながらあたしたちの方を向くユーリ。
「ということで皆、相も変わらずやる事は変わらない。あの男を手早く倒すなり殺すなりして――」
 袋の中から……なんか機械で出来た腕みたいのと取り出しながらユーリは言った。

「あの男のツァラトゥストラ――両腕を奪う。」

 死人みたいな顔色と淡々とした表情でそう言ったユーリにゾッとしたけど、ロイド絡みで怖い顔になってたリリーとパムがこくんと頷いた。
「あれを瞬殺して腕を切り落とし、それを使ってあの壁を通れるようにしてロイくんを治せる奴のところに行く。」
「序列は上の方のようですが見知らぬ顔。おそらくは不明だった二番か三番。強さはセラームクラスで、ツァラトゥストラが加わったことで下手をすれば十二騎士に手が届くレベルの強さ。本来であればポステリオールの時同様に学生である皆さんには戦わせたくありませんが……」
「この状況、戦うなと言われてもおれの正義はランスを構える。なに、先日の対魔法生物の訓練の続きと思えばいい。」
「ああ。さっきからちょいちょい出てくるツラなんとかっつーのはよくわかんねーままだが、この男、人っつーよりは獣を前にしたみてぇな感覚だしな。」
「そんなテキトーな認識で挑んじゃいけない気がするけどねー。ま、あたしたちの団長がやられたんだし、団員は仕返ししなきゃだよねー。ロイドをあんなにされると普通にムカツクしー。」
「アンジュくんはムカツク程度かもしれないが、妻であるわたしは夫への攻撃に冷たく煮えくり返っている。あの男、氷漬けにして海に流してやる。」
「そ、そんなところで競っても……で、でも……そうだよね……とりあえず、腕は、き、きらなきゃ……だもんね……」
 死人顔でロボットアームを装備するユーリ。殺し屋の顔のリリーとそれと似た感じのパム。同志の為に武器を構えるカラードとアレキサンダーの強化コンビ。それに口調以上にムカついてる顔してるアンジュ、妻面してるローゼル、さらりと怖いこと言ってるティアナ。それぞれが……きっと主にロイドの為に怒って戦闘態勢に入った。

 ラコフ……理由はわかんないままだけど、あたしをさらう為に学院までやってきたオズマンドの一員。あたしを外に出すことには成功したけど、たぶんあたしを連れ去る為に発動させたマジックアイテムの位置魔法にロイドたちが割り込んだことで街の外に飛ばされた。
 あたしをどこかに移動させたあとは続けてロイドを襲い、そのまま街の中で騎士を相手に暴れる予定……とかだったんでしょうけど、通信も位置魔法も遮断する壁の外に出ちゃったこいつは街にいる他のオズマンドと連絡もとれずに蚊帳の外っていうマヌケ状態。作戦とやらが終わるまであたしたちを相手に暇を潰そうとしてる。
 ツァラトゥストラの力で十二騎士レベルの強さかもしれないこいつにあたしたちは勝たなきゃいけない。お姉ちゃんを守るために……強力な数魔法を受けたロイドを助ける……ために……
 ……そうよ、怒るっていうならあたしの場合は二人分……
 さっきから気持ち悪い顔でニヤついたり怒鳴ったりしてるうるさい男……筋肉自慢なのか強さ自慢なのか知らないけど、言ってることがやられ役の雑魚なのよっ……!!
「……あんた、ただで済むと思わないでよ。」



「妹ちゃんと連絡がとれねぇ。どっかに通信機を置き忘れたか襲撃を受けたか。」
「前者はないだろうから、となると連中はエリル姫を……」
「すぐにエリル様の安否を確認します。」
「ええ、そうね。」
 状況としてはかなり深刻なはずなのだが、狙われている可能性のある人物の姉であるカメリアは特に慌てた様子もなく、確認の為に学院側と通信するアイリスを眺めていた。
「……有難い事ではありますが、随分と落ち着いていますね、カメリア姫。」
「これでも心配はしているのよ。でもほら、エリーにはロイドくんがついてくれているから。」
「……確かにタイショーくんの強さはなかなかのモノですが、相手は――」
「あらあら。別に私は彼の強さを信頼しているわけではないのよ?」
「え?」
「カメリア様、どうも良くないようです。あの映像を観たエリル様は単身走り出し、学院の外に出た辺りで姿を消したと。」
「エリー一人?」
「いえ、どうやらロイド様を含むエリル様のご友人方もそろっていなくなったと。」
「はぁん、あの映像がお姫様を狙ったモンってのは当たりらしいな。でもってそれを大将と妹ちゃんたちが追いかけたってとこか。」
「ふむ……そうすると、エリル姫やタイショーくんらは街の外かもしれないな。」
「あん?」
「あの壁、対水害用の効果に加えて時間魔法が加わっている。ああいう風にかかると壁の内側が外側と切り離される形になるから、おそらく通信や位置魔法による移動が妨害される。」
「まじか。外の助けを呼べねぇとなると、あの水が降ってきた時はいよいよどうしようもねぇな。まぁ降らせるつもりはねぇが。」
「そうだな――うん?」
 セルヴィアが――というよりはその場の全員が気づいたのだが、部屋の壁の一点が赤く点滅し始め、それに合わせてピコンピコンという音が鳴り出した。
「通信だ。おそらく国王軍からだろう。」
 そう言いながらセルヴィアがその壁を叩くと、先ほどのアネウロのように魔法によって様々な情報が映像として壁一面に表示された。そしてその中の一つに休日のお父さん風の男――トクサ・リシアンサスが映っていた。
『《ディセンバ》さん! 今の映像を――あ、あれ!? カメリア様!?』
「はーい、カメリアさんですよー。」
 映像越しにカメリアを見つけたリシアンサスは目を丸くした。
「あー、リシアンサス。細かい事は省くが、ありゃ連中のドッキリだ。気にすんな。」
『は、はぁ……』
「だがちょうどいい。状況は知っての通りだ。まずは水の高さが一番ある街の中心から順に住民を避難させてくれ。でもって防御系、特に耐水の魔法が得意な連中を集めていざって時の為に避難所に配置。国王軍に限らず、そこらの騎士団にも協力させろ。こっちはもうちっと情報整理して作戦考える。街の中に変化があったら知らせてくれ。」
『了解です!』
 すらすらとそう言ったフィリウスを、カメリアが「あらあら」という顔で意外そうに見る。
「イメージにないけれど、軍の指揮もできるのね。さすが十二騎士。」
「簡単な真似事程度だがな。アクロライトが起きてればあいつに任せたし、正直ここまでの事態になるとキルシュのじいさんに出張ってもらいたいくらいだぜ。」
 フィリウスの言う「キルシュのじいさん」とはこの国の大公にして軍事の責任者であるキルシュ・クォーツ。フェルブランドを支える柱の一つとして数えられ、その温和な顔からは想像できない統率力で騎士をまとめあげる人物である。
「幸いにもって言うべきかしら、お爺様は今ガルドに出かけているわ。」
「ったく、タイミングがいいんだかわるいんだか。」
「大丈夫だ、かっこいいぞフィリウス。」
 斜め上の視点からの感想を言うセルヴィアにやれやれと似合わないため息をついたフィリウスは、壁に表示された情報を見ながら現状の整理を始める。
「とりあえずだが、アネウロの言った一時間っつー猶予の意味がわからねぇ。今すぐ書類揃えて出てこいっつってもいいはずだからな。何かしら、同時進行してる連中の作戦があるとみて間違いねぇだろう。」
「指定通りに王が出てくれば良し。出てこなくて、仮に本当に水を落としたとしてもそれも良し……おそらくどう転んでも目的が達成されるような準備があるのだろう。下っ端連中も含めればオズマンドは結構な人数の組織だからな……悪巧みの幅は広い。」
「ああ。ちなみに時間魔法で隔離されてるっつったが、例えば連中の仲間だけは例外にできたりするか?」
「普通はできない……が、アネウロほどの技術があり、ツァラトゥストラや過去に設置して強力になっている時間魔法を応用すれば……あるいは。」
「全員が街の中ってんなら手っ取り早かったんだが――ったく、はっきりしねぇことばっかだぜ。」
「相変わらずの後手後手だな。しかしはっきりしていることもある。」
 そういってセルヴィアは、国内最大の広さを持つこのラパンという街の全体図を示している映像を指差した。
「対水害用の防御魔法。あれはその性質上、必ず壁の内側に設置されるから、装置は街のどこかにある。」
「ああ。でもって本来、あの装置に壁を二重にするなんつー機能はねぇ。あの複雑な魔術装置を昨日の今日で改造ってのは考えにくいし、複製する事も同様にないだろう。となると、装置から出る壁の位置を半分ずらしてるってのが可能性としちゃデカい。」
「本来であればそれも難しいところだが、単純に魔法の出力を上げさえすればできる事……ツァラトゥストラの力があれば可能となるだろう。」
「つまり、この街のどこかに壁を発生させてる装置とそれに魔法をかけてる、おそらくは位置魔法の使い手がいる。そいつをボコすなりして外側の壁だけを消させれば水は街の外に流れ、街の住人っつー人質は解放できるわけだ。」
「ああ。」
「失礼、一つよろしいですか?」
 十二騎士ではあるが本職はメイドであるからか、この作戦会議を眺めていただけのアイリスが手をあげる。
「そういった抵抗を相手が許すでしょうか。即、水の落下につながりませんか?」
「あ、それはたぶん大丈夫よ。」
 アイリスの質問に答えたのは様々な情報が表示されている壁を面白そうに眺めていたカメリア。
「あのアネウロって方、お決まりの文句を言わなかったでしょう? 抵抗すれば人質を殺す的なあれ。」
「そ、そうですが……」
「それにフィリウスさんが言ったようにあの一時間という時間は理由のある一時間。「以内」ではなく「後」と言ったのは王を待つ間に――いえ、この混乱を利用してやっておきたい何かが……」
「? カメリア様?」
 会話の途中、にこやかだった表情がすぅっと鋭くなり、カメリアは独り言を呟きながら思考を始めた。
「おや……ふふふ、《オウガスト》殿。先ほどキルシュ様がいればと言いましたが、同じくらい心強い方がここに。」
「んあ?」
「戦闘や戦略といった軍事関連は専門の外ですが、相手側のリーダーの人となりの情報があり、ああして顔を見せたのならば、カメリア様にはあの老婆の考えがわかるでしょうから。」
 長女である姉、ユスラ・クォーツの死によって頭角を現すこととなった、今やキルシュ・クォーツ同様に国を支える柱とされるカメリアが思考すること一分ほど、ふと納得のいった顔になったカメリアは――

「ああ、彼女、エリーを女王にするつもりなんだわ。」

 ――と、唐突な事を口にした。
「なに? お姫様を女王に? つーかいきなりそっちに話が飛ぶのか?」
「無関係というわけではないのよ。」
 困惑顔のフィリウスに、いつものにこにこ顔に戻ったカメリアが説明する。
「彼女――アネウロの目的は世界中の弱い者を救う事。言うなれば世界平和ね。そのために一度世界を征服しようとしていて、現状スピエルドルフという規格外を除けば最大の国力――いえ、戦力を持つと言ってもそれほど過言ではないフェルブランド王国を手中におさめようとしているわ。元々は国王に進言して動いてもらうつもりだったのだけど、何度も断られた彼女は決意し、オズマンドを立ち上げ、国王を王座からおろそうとしているわけだけど、そのあとは彼女が王になるかというとそうではないの。革命後であろうと何であろうと、それまでの歴史や国政の関係上、例え飾りであっても王になる人間には相応の地位や血筋が必要なの。そこで次代の王として彼女はエリーを選んだのよ。」
「エリル様を女王に……しかしそれはまたどうしてなのでしょう……」
「彼女はこれから世界に喧嘩を売ろうとしているわけだから、王族でありながら騎士として戦う力を手にしたエリルはぴったりの旗頭なのよ。前線に立つ王とか、士気が上がるでしょう?」
「ははぁ、なるほど。確かにこれから戦争続きになるとすっと、そういう王が欲しいとこだな。しかしそうなるとお姫様をさらうってのは連中にとってかなり重要な事になる。下っ端じゃねぇ、序列上位の奴が大将たちのとこに送られてるかもしれねぇな。」
「ふふふ、エリーにはロイドくんがついているから大丈夫よ。」
「さっきもそんなこと言ってたな。その信頼は一体なんなんだ?」
「ふふふ。」
 フィリウスの疑問に笑顔を返したカメリアは説明を続ける。
「ここで一時間っていう時間の理由なのだけど、彼女は言っていたわ。差し当たっては国王をおろすことが要求だけど、して欲しいことは色々あるって。エリーを王にしようとしてるみたいに、今の王族や王政に関わる全員をクビにしようってわけではないの。彼女がやろうとしている事に有用な人材は残すはずよ。」
「だろうな。キルシュのじいさんとか、それこそカメリア姫だってそういう人材だろうしな。」
「ふふふ。まぁ、そんな人材にどうやって言う事を聞かせようとしているかはわからないけれど、とりあえず彼女が今やっておきたい事はその逆よ。」
「逆?」
「無用な人材の排除。地位や血筋だけでその役職についているような、彼女が無能と判断した人物を掃除しようとしているのよ。」
「な――掃除だと? 一人残らず殺すってか?」
「それをするならさっきの要求の段階で王と一緒に出てくるように言うでしょうね。アレをさせるまではそういった無用な人材も生かしておくはずよ。」
「アレ?」
「無用な人材の命を片っ端から奪ったとして、そうやって空いた役職に彼女が思う適任者を新たにつかせるとして、この時もまた王の座のように求められるモノがあるの。」
「地位と血筋ってやつか?」
「ちょっと違うけどそんな感じね。いくら強大な暴力を持っていても、紙切れ一枚の約束事で身動きできないなんてことはよくある事なの。他国と戦争を始めようっていう彼女が国内にゴタゴタの種を残すわけはないから、その辺はキッチリさせると思うの。だからそういった、無駄に力を持っちゃってる紙切れを後任者に譲渡させるはずよ。」
「本人には興味ねぇがそいつが持ってる権利とかは欲しいってことか?」
「ええ。そして今、空から水が降ってくるような現状、重要な役職についている者は相応の避難所に残らず移動していることでしょうね。」
「! つまり連中がこの一時間でやろうとしてることってのは、誰もいないくなった今の内に、無能と判断した貴族やら何やらの家に侵入して必要な書類をかっさらうことか!?」
「一時間後に国王が出てこなくて水を落とすことになったら、そういう書類がどこかに行ってしまうかもしれない。だから今のうちに手に入れておいて、後日、脅すなりして正式に手続きさせるんでしょうね。ああいう書類って基本的に魔法で署名されているモノだから、前任者はその為に必要なの。」
「権利云々はともかくとしておいおい! ただの火事場泥棒かよ!」
「そうね。少し政治寄りの空き巣よ。」
 だはーっと頭を抱えるフィリウスだが、今の話を聞いていたアイリスは少し深刻な表情になる。
「……避難……されない方も中にはいるかと思うのですが……その場合は空き巣ではなく強盗になってしまいませんか……?」
「そうね。家にシェルターのようなモノを作っていたり、個人で騎士団を雇っている人もいるからいくらかはまだ家にいるでしょうね。だからきっと――」
 そう言いながら、カメリアは壁に浮かんだ映像の一つ――オズマンドの序列十位から四位の顔を映したモノを指差した。
「基本的には組織の下っ端が空き巣をするでしょうけど、そういう特殊な家の為にこういう強そうなメンバーが出向いている可能性は十分あるわ。その場合は強盗だから、護衛の騎士団なんかは危ないかもしれないわね。」
「……つまり……」
 今までの作戦会議とカメリアの話をセルヴィアがまとめる。
「今の私たちにできることは、最悪の事態に備えて住民の避難を行いながら、この壁を生み出している装置を探してそこにいるであろう護衛を倒して壁を消し、同時に街中を走り回る空き巣やら強盗やらを倒していくこと……というわけか。」
「ったく、「相手のボスを倒す」とかがねぇのがしまらねぇなぁ、おい。つーか今の予想通りだとしたら、空き巣連中は住民を避難させようとしてる国王軍と鉢合わせ――」
 と、そこまで言ったフィリウスは自分の言った事に首を傾げる。
「――そうだ、鉢合わせる。カメリア姫の言う通りなら空き巣も強盗も割と重要任務だが、住民の避難で国王軍が動くなんてこたぁ誰にでも予測できる。んな状況で泥棒ができるわけがねぇ。」
「そうね。そこはどうにかこうにか、泥棒さんたちが見えないようにする魔法をかけるとか、もしくは――」

ドゴォンッ!!

 突如鳴り響く轟音。反射的に王城の外を見たフィリウスの目には、街の中からたちのぼる煙が映った。
「――目立つ何かで注意を引きつけるか、ね。」



「ふん、あっちの上級騎士はともかくあの顔色最悪のガキはナニモンなんだ?」
「よそ見とは余裕じゃねぇかっ!」
 フィリウスさんほどじゃないけど鍛えられた身体での斧――バトルアックスのフルスイング。攻撃が相手に当たるほんの一瞬に強化魔法を凝縮することで威力を爆発的に引き上げるっていうアレキサンダーの攻撃に対し――
「ふん、少なくともお前の攻撃は余裕だ。」
 ラコフの、炭を塗りたくったみたいに黒く染まった腕からの単純なパンチ。バトルアックスの刃に向かって素手の拳を突き出すんだけど、響く音は金属同士がぶつかったみたいな音。しかもアレキサンダーの方がパワー負けして後退させられた。
「ふん、オレと力比べなんざ百年早――」
「『ヒートレーザー』!」
 交流祭の辺りでお披露目になったアンジュの新技。周囲に浮かせた『ヒートボム』から出張版ミニ『ヒートブラスト』を放つっていう技で、維持できるのは数秒だけど貫通も切断もできる光線……というか熱線が結構な速度と数で相手を襲う。
 だけど――
「ふん、直線的で見やすい。」
 半分位置魔法の瞬間移動みたいな速度で『ヒートレーザー』の網をくぐり抜けてアンジュに迫ったラコフ。だけどその剛腕はアンジュの前に出現した氷の壁に止められる。加えて、その壁に予め空いてた小さな穴を通ってラコフの目に銃弾が向かったけど、それを信じられない速度でかわしたラコフは舌打ちしながら後ろに跳んだ。
「ふん、やっぱそこの氷使いが厄介だな……どんな硬さしてんだか。しかもそっちのライフルは躊躇なく目ん玉狙いやがる。一体どういう教育してんだかなぁ、セイリオスは――お?」
 跳躍したラコフの足が地面につく瞬間、足元に出現した短剣が絶妙な角度で着地を邪魔し、ラコフがバランスを崩したところへ――
「『コメット』っ!」
 二つのガントレットを爆炎と共に撃ち込んだ。
「――っが!!!!」
 短い声をあげてラコフが草原の彼方に吹っ飛ぶ。ランク戦や交流祭みたいに周囲に壁は無いから「叩きつける」分の威力がないんだけど、それでもそれなりのダメージは与えられたはず……
「なんかボクの短剣を踏ませるってすごく嫌なんだけど。」
 短剣を瞬間移動、かつ位置魔法で遠隔操作したリリーがぶすっとする。
「あ、あたし……躊躇ないとか……そ、そういうつもりじゃ……」
「そういえばそこのアレキサンダーくんと戦った時も目を狙っていたな。」
「だ、だって……ワ、ワイバーンと戦った時に……め、目を狙うと相手の視界をう、奪えて色々と便利って知って……だから……」
「それでもそれなりに躊躇するもんっつー話だ。しかしあのバカ力め、数魔法ってのはとんでもねぇな。」
「強化魔法の使い手が「バカ力め」とか言っていーのー? ブーメランになんないー?」
 飛ばしたガントレットを両腕に戻したあたしがパムとユーリの方を見ると、温存ってことで何もしてないカラードが厳しい顔をした。
「分身が消えていないということは、まだ意識があるようだな、あの男。」
 分身。そう、今のあたしたちはラコフっていう一人の敵を二つのチームで相手している。

 戦闘開始と同時に……本当に吐くかと思ったくらいに気持ち悪かったんだけど、ラコフが分身を出した。ランク戦でカルクがやったのと同じ、身体が魔法でできてるってこと以外は完全に本人そのものっていうコピー。それが……たぶん、百体近く現れた。
 あの筋肉自慢の身体と「戦闘狂です」っていう顔したのが目の前で突然増殖して雪崩みたいな勢いで襲い掛かって来たんだけど、横からパムが砂の津波みたいのを出してその分身を丸ごとからめとってあたしたちから遠ざけ、そのままパム――とあとユーリが分身の相手を始めた。
 無数のゴーレムを操るパムと、太陽光の下とは言えスピエルドルフでの戦いを見る限り相当な強さのユーリならただのマッチョ百人程度すぐに倒してしまう――って思ったんだけどそうはいかなかくて……とんでもない事に、ラコフの分身は魔法を使った。
 カルクから聞いたことがあるんだけど、すご腕の数魔法の使い手は分身の身体に魔力を蓄積させて、分身の判断で魔法を使えるようにできるらしい。
 ラコフが元々そういうレベルの使い手なのか、それともツァラトゥストラのおかげでできるようになったのかはわからないけど……仮にあの百体の分身がそれぞれに自身の身体能力を『十倍』にするような数魔法を使ったら、単純計算千人のラコフを相手にする事になる。まぁ勿論そんな単純な事じゃない……っていうか実際はもっと深刻なはずで、結果パムとユーリは分身の相手で手一杯になった。
 魔力を持った分身を百体って、普通はそれだけで気絶すると思うんだけど、これまたツァラトゥストラのおかげで負荷がないのか余裕のニヤケ面を浮かべたラコフは――
「ふん、メインの前には前菜ってか。お楽しみは後にとっとかねぇとな。」
――って言った。残ったあたしたちはこっちの本物を相手する事になったわけだけど……思うに、こいつはあたしたちだけで倒さなきゃならない。
 パムとユーリが分身を全滅させてこっちに戻ってくるのにどれくらい時間がかかるのか、その時まであたしたちは耐えれるのか……いえ、耐えるどうこうじゃなくて、こいつをあたしたちでしっかり抑えておかないと……もしも気まぐれを起こしてあっちの戦いに加わったら、分身相手で余裕のない二人には厳しいかもしれない。
 こいつの言うメインとやらに行かせちゃいけないし、二人が戻ってくるまで耐えればいいなんていう防御の姿勢じゃ最悪のパターンになりかねない。
 だからあたしたちは――『ビックリ箱騎士団』は、こいつに勝たなきゃいけない。

 そもそも、確かに格上ではあるけど勝機が全くないわけじゃない。全部の系統をまんべんなく教えるセイリオスの授業でも習ってるし、同じ一年生Aランクのカルクと授業が一緒になる関係で、あたしたちは数魔法をそれなりに知ってる。

「見ろエリルくん。あの男、腕をぐるぐる回しながら笑顔でこっちに歩いて来るぞ。」
「うわー、お姫様の攻撃をまともに受けてあれって、相当やばいよねー。」

 第十一系統の数の魔法。これには位置魔法みたいにいくつかのルールがある。
その中で最も基本的なモノが魔法をかける対象についてのルール。これは位置魔法と同じで、自分や自分の持ち物に対しては何ら制限はないけれど、他人や他人の持ち物の、例えば大きさや個数を操ることはできないというモノ。できるとすれば、それは相手が魔法の使用を許可した時のみだけ。
 ラコフは今、自分自身の攻撃力とか防御力とかを倍増させていて、見た目以上に怪力で頑丈になってる。圧倒的なパワーと頑丈さで相手に突撃してねじ伏せるっていう、戦法としてはアレキサンダーと同じなんだけど、そのパワーアップ具合が尋常じゃない。

「ぐ、具体的に……どれくらい、倍にしてるのかわかんないけど……さ、さっきロイドくんに魔法をかけた時、は……『千』っていう数字を……使ってたよね……」
「ああ? 『千』だとなんかあるんだっけか?」
「アレク、一応授業で習った事だぞ。」
「そうか? 数魔法って小難しいから頭に入んねぇんだよなぁ。」

 学生としてどうかと思う事を言ってるアレキサンダーはともかくとして、『千』っていう値を使えるっていうのは結構すごいことだったりする。
 数魔法の使い手の力量をはかるモノの一つとして、そいつがどれくらい大きな数字を操れるかっていうのがある。
 例えばあたしがランク戦で戦ったカルクは自身の力を『十倍』、『二十倍』にして戦ってて、最終的には『八十倍』くらいまで倍増させた。一年生の時点で『八十』まで使えるっていうのはかなりすごいらしく、卒業して一人前の騎士になったくらいがだいたい『百』を扱えるレベルらしい。
 そこから先は、『五百』を超えるとかなりの使い手、『千』になればセラームでも上の方、『五千』まだ行けば歴代の十二騎士――《ノーベンバー》に並ぶレベル。そして『一万』を超えたら正直化け物クラスで、歴代の《ノーベンバー》でもそこまで到達したのは数人らしい。
 つまりラコフの強さは……パムの予想通り、さっきの『千分の一』が全力だったとしてもセラームクラスは確実で、まだ上があるとしたら十二騎士クラスって事もあり得る。

「んま、さっきロイドにやったみてぇないきなし『千分の一』ってのはもうないんだろ? あいつにどこまで上があるか知らねぇが、俺らの力がそれを超えさえすればいいわけだ。」
「そう単純な話ではないぞ、アレク。桁外れの強度に加え、トラピッチェさんに斬られた首を一瞬で治してしまったあの治癒能力……ツァラトゥストラの特性なのか他の何かか、そっちもどうにかしなければならん。」

 他人にかける場合は許可がいる……位置魔法と同じこのルールだけど、数魔法には一つだけ例外があって、このせいでロイドはいきなり……ああなった。
 数魔法で何かの数を操る時、対象となる数値は大きく分けて二種類ある。一つはきちんと数字にできるモノ。モノの大きさや重さ、個数なんかがそれにあたって……こっちに関しては自分と他人っていうルールがきっちり働く。
対して例外になっちゃうのがもう一つ……数字にできないモノ。何メートルとか何個とかみたいな具体的な単位がなく、あったとしても個々の感覚で値に差が生じるモノで、体力なんてのがまさにそれ。
 なんでこっちの方が例外になるかというと、それは認識がふわふわしてるから……らしい。
 例えばあたしが思う「体力が百ある状態」とロイドが思うそれにはたぶん差があって、それが個人の感覚の差なわけだけど……「自分の体力は今、自分の感覚ではこれくらいだな」みたいな事を常に意識してる奴なんていない。誰かに聞かれた時や極端に疲れた時とかに初めて考えるようなモノで、その数値が常に頭の中にあるわけじゃない。
対して……例えば自分の武器が何個だとかどれくらいの大きさだとかは、大体だとしても無意識に頭の中になんとなくの数値が、考えるまでもないくらい当たり前にそこにある。
 この、それに対する数値が頭の中にあるかないかで数魔法が効く効かないがわかれるらしい。
さっきのロイドはラコフが数魔法の使い手だなんて知らない状態だったから、当然自分の体力について何かの数値を思い浮かべてるわけもなく、魔法がそのまま効いてしまった。
 あたしたちはそんな攻撃を――体力を『千分の一』にするなんていう攻撃を見た後だから、それに対する意識が頭の中に生まれ、ラコフの数魔法が効かなくなった。

つまり今、あたしたちが相手にしてるのは……ちょっとパワーがあってちょっと身体が頑丈なだけのただの脳筋男。
……なによ、そう考えたら全然大したことないじゃない。最近ならキキョウの方がまだ強そうだったわよ。

『その意気や良しだが、ただの脳筋ではなさそうだ。』

 余裕の顔でのんきに歩いてくる脳筋男を眺めながら数魔法について整理してたらいきなり……頭の中に声が響いた。
「うお、なんだ!?」
「耳――ではないな。直接言葉が頭に送り込まれるような感覚……「この声は」というと少し変かもしれないが、この声はフランケンシュタインさんか?」
『はっは、ユーリで構わない。名字は長いからな。』
 あたし以外にも聞こえてるらしいこの声は、向こうで脳筋男の分身と戦ってるユーリのモノだった。
『人体の構造には詳しいのでな。脳から出ている電波を拾って思考を読み取り、魔法で作った特殊な電波を送ることで会話を可能にしている。』
『これは便利ですね。なんとかマジックアイテムで再現できませんか?』
「パムまで……あんたたち、正直こっちから見ると会話する余裕があるようには見えないわよ……?」
 ラコフがのろのろ歩いてるから妙な空き時間が出来ちゃってるあたしたちとは対照的に、全方位を囲むラコフの分身の相手をし続けてる二人。無数、かつ多種多様な形のゴーレムを従えて戦うパムと、さっき装着したメカメカした右腕から雷を放ちながら暴れるユーリなんだけど……とてもそうとは思えないほどに、頭の中に響いてる声は落ち着いてた。
『余裕はありませんよ? 今もてんてこ舞いです。』
「そんな淡々とした声で言われても説得力ないわよ……」
『ああ、この会話のやり方だと声色や表情が伝わらないからな。私とロイドの妹は叫びながらしゃべっていると思ってくれ。余裕は本当にない。』
「ややこしいわね……それで余裕ないクセに話しかけてきたのはなんでよ。」
『そちらに少し間が空いているようなので伝えておこうかと。』
「何をよ。」
『こちらではさっきからそうであるし、おそらくそっちの本物も何度か見せたのではないか? 尋常ではない速度の動きを。』
「あー、それねー。あたしの『ヒートレーザー』を瞬間移動みたいな速さで避けたよー。」
「あ、あたしの銃弾も……見てから避けた……と、思う……」
『やはりか。その動きなのだが、数魔法でどうこうした故の速さではない。』
「どういう事よ……」
『速いのではなく、早いのだ。』
 たぶん、耳で聞いてたら「は?」って思っただろうけど、頭の中に響くからなのか、言葉のニュアンスがハッキリと伝わった。
「……時間魔法ってこと……?」
『魔法ではない。が、自身の時間経過を早めて動きを加速させていることは確かだ。』
「! 魔法なしで時間を操ってるって言うの!?」
『それも違う。私も初めての感覚なのだが……上から下へ水が流れるように、まるでその現象が自然の摂理であるかのように起きているのだ。』
「意味わかんないわ……」
『私もだ。だが相手の高速移動はそういう類であると認識しておくだけでも不利を一つ減らせ――おっと。』
 頭の中で静電気がはじけたみたいな変な感覚を最後にユーリの言葉が聞こえなくなり、直後二人が戦ってる方ですごい衝撃音が響いた。
「……ふむ、あっちはあっちで大変そうだ。わたしたちも頑張らねばな。」
「そうね……」
「しかしどうする? エリルくんの攻撃があまり効いていないとなると、何が決め手となるか……温存させているブレイブナイトの攻撃も最悪効果なしという事に……」
「……あんたの氷、今のところあいつの攻撃を全部防いでるわよね?」
「当然。ロイドくんからの愛を受けたわたしは無敵だとも。」
「…………じゃあその無敵の氷でくし刺しにでもしなさいよ……」
「それは可能だが、あの再生能力がな……」
 あっさり可能って言ったわね、こいつ……
「だが……ふむ、内側から凍らせてみるか。」

 ロ、ロイドからの愛とか…………でも実際、ローゼルの氷は自然界の氷を超える文字通りの魔法の氷って感じですごく強力になってるわ……
 ローゼルは感情が魔法に影響しやすい性質らしいけど……い、いくらなんでもよ……
 まったく……他人からの許可とか本人の認識とかイメージとか感情とか……魔法っていうのは頭と心の影響を受けすぎ…………
 …………心の……影響……感情…………

 まんまと敵の罠にはまってこんな事態になった悔しさ、自分への怒り。
 す、好きな人を――恋人を苦しませる脳筋男への怒り。
 第四系統の使い手は燃え上がる猪突猛進の熱血。何があろうと突き進み、焼き尽くす。
 真っすぐな決意で全力全熱……

 ……感情が武器になるっていうなら……あたしも、ちょっと試してみてもいいかもしれないわね……

騎士物語 第七話 ~荒れる争奪戦とうねる世界~ 第六章 数の魔法と水の檻

実はきちんと解説されたのは初めてな気がしますが、あまり登場していなかった数の魔法の使い手が敵として登場しましたね。筋肉自慢のキャラなのであまり知的なバトルにはならなそうですが……ワイバーン以来のチーム戦に注目ですね。

エリルが更なるパワーアップをしそうですが、ラコフもこの後、ちょっとすごい事になる予定です。

騎士側もオズマンドの曲者たちとのバトルが始まり、あまり書く機会のなかったセラームの皆さんや十二騎士の本気バトルがあちこちで起きます。
ですが……作者としてはフィリウスとセルヴィアの関係の進展が気になるところですね……

しかしユーリは完全に巻き込まれですね。

騎士物語 第七話 ~荒れる争奪戦とうねる世界~ 第六章 数の魔法と水の檻

ローゼルのあれこれでロイドやエリルが悶々とし、アネウロの計画に後手をとってばかりのフィリウスたちが警戒態勢をとる中、ついに本格的な攻撃を仕掛けるオズマンド。 首都ラパンを丸ごと巻き込んでの戦闘が始まる一方で、オズマンドの刺客がエリルの元にやってきて――

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更新日
登録日
2018-08-15

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