無題
久しぶりに短編が思いついたので、こっそり投稿しておきます~。
ハヤブサさん×シュバルツさんのBL小説です。
ちょっとしたエッチ場面が書きたかっただけの小説なので、文字通り、山なし、落ちなし、意味なしになっております~
楽しめる方だけ、どうぞ~~
「何度言ったら分かるんだ!! お前は────!!」
「ハヤブサ……!」
シュバルツ・ブルーダーの目の前には今、怒りに燃えるリュウ・ハヤブサの姿がある。
ハヤブサに強引に腕を掴まれ、半ば引きずられるように、そのまま彼の里の奥まった場所にある屋敷の中へと連れ込まれてしまった。
ダンッ!! と、乱暴にシュバルツの身体が叩きつけられたのは、その地下室に設えられた座敷牢の床。
「う………!」
受け身も取れず、低く呻いているシュバルツの上に、ハヤブサの身体が覆い被さってくる。
「あ…………!」
直ぐ間近に迫ってくるのは、鋭い眼光を放つ、色素の薄い、燃えるグリーンの瞳。
「俺がお前に飽きるだなんて……捨てるだなんて……! どうしてそんな風に思うんだ……!」
「ハヤブサ……!」
「俺の、お前に対する想いは、そんな程度だと思っているのか!?」
「ち、違う……! そんな……!」
直ぐ近くで、怯えたように見開かれる、シュバルツの深い紫黒の瞳。
ハヤブサは、素直に「綺麗だ」と思って、愛おしいと思って────
自分の中で、嗜虐心が加速していくのが分かった。
どうすれば、分かってもらえる?
どうすれば、彼に信じてもらえるのだろう。
俺のパートナーは、お前しかいないのだと。
シュバルツの胸元に手を掛けると、半ば引き裂くように、彼のヒトの身体から服を奪う。
露わになった白い肌に、噛みつくようなキスを落とす。
「あ…………!」
愛おしいヒトは抵抗するでもなく、ただ、甘やかな悲鳴を上げる。
煽られてしまう。
そして、哀しくなる。
どうして────俺の『暴力』とも言える行為を、このヒトはあっさりと受け入れてしまえるのだろう。
優しいヒト。
優しすぎるヒト。
大切にしたい。
刻みつけたい。
蹂躙してしまいたい。
矛盾する感情が、胸の内で交錯して爆発する。
やりきれない想いが、拳という形になって、彼のヒトを襲い、その身体を壁際に追い詰めていた。
「ハヤブサ……!」
涙目になっている愛おしいヒト。それには構わず、座敷牢の壁に押しつけて、強引にその身体をこじ開けた。
「い……痛い……!」
シュバルツが小さな悲鳴を上げる。
彼のヒトの敏感な箇所が、壁と木の格子に擦れてしまっているのだろう。
「あ………! くう………ッ!」
ぺしゃっと音を立てて、白い液体が、壁に爆ぜたのが見えた。
「ハヤブサ………」
許しを乞うかのように、振り返る愛おしいヒト。
赦さない。
赦してやらない。
俺の『想い』は、こんな程度では収まらないのだ。
愛している。
愛しているのに。
その身体をこじ開けて穿っても、目の前で愛おしいヒトが喘いでいても────
自分の『想い』が、まるで彼のヒトに届いていないような気持ちになるのは、何故なのだろう。
「ハヤブサ……!」
優しく触れてくる愛おしいヒト。
その手が哀しい。
やめろ。
やめてくれ。
俺はお前を傷つけて、蹂躙しているだけなのに。
どうしてお前は。
お前は────
「ああっ!! あ…………!」
ひときわ大きく震えて、脱力してしまう愛おしいヒト。
ハヤブサがはっと我に返ったときには、自分の腹の下で、ボロボロに傷つけられて横たわっている、彼のヒトの姿があった。
(どうして……! こんな……!)
強烈な自己嫌悪が襲い来る。
「……………」
顔を覆って、座り込んでいると、愛おしいヒトが身じろぎながら瞳を開けた。
「ハヤブサ………?」
そっと身を起こしながら、手を伸ばしてくる愛おしいヒト。
その優しさが、切なかった。
「シュバルツ………」
ハヤブサは、そっとその手を包み込むと、愛おしむように頬ずりをする。
「済まない……」
謝りながらその手をシュバルツに返すと、その頬に、優しく口付けを落とした。
「俺は、しばらく任務で出なければならない……。座敷牢の鍵は開けておく。好きに出て行ってくれ………」
ハヤブサはそう言い置くと、立ち上がり、そこから出て行った。
後ろを振り返ることも、もうしなかった。
「ハヤブサ………」
シュバルツは、しばらく床の上から起き上がることが出来なかった。
出来ぬままに、顔を覆って、身体を震わせて泣いた。
哀しかった。
切なかった。
あまりにも、孤独に震えるハヤブサの『ココロ』が。
そんな中でも『愛している』と言い続けていた、ハヤブサの『ココロ』が────
済まない。
済まない、ハヤブサ。
私には、こうするしか────お前に応える術がなかった。
総てを赦し、曝け出し、受け入れることでしか
応える術が、もうなかった。
彼になら、引き裂かれてもいい。
殺されてもいい。
自分は本気で、そう思っている。
しかし──
自分が、そう願う度に、誰かが囁く。
(どうせお前は、死ねないのだろう?)
そう。
死なないモノが、いくら命をかけようとしたところで────
それは結局、ただの欺瞞でしかなかった。
自分の言葉には、『誠意』が宿らない。
『真実』がない。
ハヤブサにも、それが伝わってしまっているのだろう。
魂が無いモノに、いくら愛を囁いても、それは空しく地に墜ちるだけだった。
それがハヤブサを、孤独へと追いやった。
きっと酷く、傷つけてしまった。
済まない、ハヤブサ。
本当に済まない。
早く気づいてくれ。
結局の所、私はお前を、傷つけることしか出来ないのだから─────
「………………」
シュバルツはのそりと身を起こし、開いたままの座敷牢の扉を、じっと見つめていた。
この座敷牢は、きっと、ハヤブサの『ココロ』の表れなのだ。
閉じ込めておきたいのに、そうすることを選ばない、優しい人。
傷つけられたのに、尚も愛を囁こうとする、優しい人────
(どうすればいいのだろう)
ハヤブサは、『任務に行く』と、言っていた。ならば、しばらくここに帰ってくることは無いはずだった。
どうすればいい。
ハヤブサのために、私は一体どうすれば
(任務……大丈夫だろうか……)
シュバルツはただ、座敷牢の出入り口をじっと見つめていた。
それから1週間後。
里には任務を終えた龍の忍者が、無事、帰還を果たしていた。
喜びに沸く里の者たち。
だがそれとは対照的に、ハヤブサはむなしさに襲われていた。
初めてだ。
こんなに任務中に、自らの『死』を願ったことは。
しかし残念ながら、龍の忍者が『死』に至るには、その任務はあまりにも、難易度が低すぎて。
こうしてまた、おめおめと、里に帰還してきてしまったのだ。
(さすがにシュバルツは、帰ってしまっただろうな……)
長老に任務の報告をしながら、ハヤブサは半ば泣きそうになってしまっていた。
やつ当たってしまった。彼に。
ひとえに、自分の『弱さ』が原因であるが故に。
彼が、懸命に自分のことを思いやり、手を伸ばしてきてくれていたのは明白だった。
彼は、彼が出来る最大限の『誠意』を、自分に向けてくれてきていた。
それを、受け止められなかったのは自分だ。
子どものように、勝手に傷ついて、孤独に陥り、理不尽に彼を傷つけてしまったのは、他ならぬ自分なのだ。
そんな自分がどうして────彼に『側にいて欲しい』などと、望む権利がある、と言うのだろう。
最悪だ。
愛する人を、きちんと愛することが出来ない自分であるならば。
生きている意味などありはしない。
自分など死んでしまった方が、よほど、愛する人を幸せに出来るのでは無いかとさえ、思ってしまう。
(きっと、いない)
出来れば、そこに向かいたくない。
だけど、確認だけはしなければ、と、ハヤブサは己を奮い立たせて、シュバルツを軟禁した座敷牢のある屋敷へと向かった。
きっと、シュバルツはいない。
いるわけがない。
いたらおかしい。
そう考えながら、座敷牢のある部屋へと降りたって────
「………………!」
虚しく空になっている、出入り口の開いた座敷牢を見つめる事となった。
がっくりと膝をついて────ハヤブサはそんな自分に、思わず苦笑してしまう。
この期に及んで何を
何を期待していたのだろう、自分は。
シュバルツは、帰ってしまったんだ。
いいんだ。
それが正常だ。
あれだけ踏みにじってしまったんだ。
それで、まだのうのうとここに居たら、それこそシュバルツの『正気』を疑わなければならない。
(どうやって死のうか……)
膝の上で拳を握りしめながら、ハヤブサが漠然とそんなことを考えていたとき────『その声』は、突然にハヤブサの耳朶を打った。
「あれ? ハヤブサ、帰ってきてたのか」
「─────!」
驚いてハヤブサが顔を上げると、ちょうどシュバルツが、座敷牢の壁を抜けて、中に入ってきているところだった。
「済まないな。田悟作さんの家の者が、夜番に当たっていて、母親の方も、寄り合いに行かなければならないとか何とかで────そこの家の子守を引き受けていたんだ」
「え…………」
「母親が帰ってきたから、お暇しようとしたのだがな……。なんだかんだと引き止められてしまって……」
「………………」
「やっと今、帰ってこれたんだ……。あれ? もしかして、私がここに居なかった方がよかったか?」
呆然と目を見開いたまま固まってしまったハヤブサを、シュバルツが心配そうにのぞき込んでくる。
「い………いや………」
ハヤブサは慌てて頭を振った。おずおずと見上げると、シュバルツはほっとしたように微笑んでいた。
「そうか……。よかった……」
「シュバルツ……」
「かなり悩んだんだが、やっぱり、お前の顔を見てから帰ろうと思ったんだ。その方が………あ!」
ここでいきなりハヤブサに抱きしめられるから、シュバルツの言葉は止まることとなってしまった。
「シュバルツ……! シュバルツ……!」
「ハヤブサ………」
シュバルツは、震えるハヤブサの背中を、優しく撫でる。
「済まない……! 俺はお前に、酷いことをしたのに………!」
「私なら平気だ。謝る必要なんてないよ」
優しい言葉に、しかし、ハヤブサは頭を振った。
優しすぎる。お前は。
踏みにじることすら、平気で許してくれるヒト。
そんなお前だからこそ、俺は────
大切に、愛さなければならなかったのに………!
「シュバルツ………」
そっと呼びかけて、唇を求めると、愛おしいヒトも、優しく応えてくれた。
そのまま2人とも、甘やかな口付けに没頭する。
「……………」
気がつくとシュバルツは、ハヤブサによって、座敷牢に設えられた褥の中に押し倒されていた。
「あ…………!」
少し驚いたように瞳を見開くシュバルツの上に、ハヤブサが覆い被さってきた。
「任務から帰ってきたばかりじゃないのか? 少し、休んだ方が……」
こちらを案ずるようなシュバルツの言葉に、ハヤブサは優しく微笑みかけた。
「案ずるな。優しくゆっくり抱いてやるから……」
「……………!」
「まずはお前に、触れさせてくれ………」
「お……お手柔らかに……」
腹の下で可愛らしく恥じらう愛おしいヒト。
それを見たハヤブサは、ニコッと微笑んだ。
(無理だな)
こんなに可愛らしくて愛おしいヒト────徹底的に乱れさせる以外、選択肢が無いじゃないか。
愛している。
これからも、愛し続ける。
どのようになろうとも、これから先ずっとだ。
「あ…………!」
衣服を少しずつ乱されながら、ハヤブサに優しく触れられる。
甘やかな嬌声を上げながら、シュバルツもまた、決意していた。
愛している。
愛している、ハヤブサ。
どのようになろうとも、私は自分から、お前と離れるつもりは無いから。
お前が必要とする限り、私は側に居続けるから────
座敷牢の中に、シュバルツの喘ぎ乱れる声が響く。
里の夜はまだ────深まっていくばかりであった。
無題
いつも通り、定番のワンパターンでございます。
これ以上無いほど激烈に両思いなのに、微妙にすれ違っちゃったりするカップルが好きなんですよ。個人的に……。
なので、私は非常に楽しんで描かせていただきました。
もうすぐ第4子を出産しなくてはならないので、また、小説が長いこと書けなくなっちゃったりしますが、子育てが落ち着いたら、また戻ってきたいと思います。
また、よろしくお願い致します<(_ _)>