メモリークッキ
きっとぼくは
こういう時に 前向きなことを考えられるほど
メンタルの強い人間ではないし
思いっきり悲しみ 涙を流すような
情深い人間でもない
どちらにもなりきれないんだ
春を思い出したこのにおいは
あなたの髪の毛のシャンプーのにおいなのだろうかと
密かに想像したことは確かだ
青く青く染めわたった 快晴を見る度に
悲しい悲しい 戦争の時を思い出してしまう
微かな小さな音 一番届くべきであろう
少女の悲鳴を
かき消すように 飛び回る飛行機
きっと そんなものだ
そんなところで その程度だ
ぼくは 考えるのが得意なんだ
痛くて痛くて 青くさくて
見るに耐えないような
そんな人
それはあなたでしょうに
理想という夢を掲げて
今日も独りよがり歩いているんだ
ぼくは呑気に 耳に電子機器でもぶっ刺して
再生音楽でも嗜むよ
高みの見物
耳の中の鼓膜を通って 脳に響いてくるそれは
きっと ぼくにとってなんでもないものだった
だけれど 無性に泣きたくなってしまうんだ
ぼくは 歌詞を感じて曲そのものを好むような人ではないはずなのに
とても悲しくて 胸が苦しくて
熱くて熱くて 抑えきれないこの感じ
歌詞というものに どうしても寄りすがりたくなる時も
あるのですね
ああとてもとても不思議だなぁ
なんて
悲しくなりながら そう考えてしまうんだ
ぼくは考えることが得意だから
音楽とは繋がっているものだ
そんな風に無為なことを思っていたら
痛々しいあなたが 痛々しい姿で帰ってきたよ
_おかえりなさい
__そう無理はするものではないさ
___ゆっくりでいいんだよ
優しい言葉なんて ぼくには似合わないだろうと
だけれど 悲しい気持ちのそのあとは
優しく優しく 抱きしめてあげるのが筋ってもんでしょう
ぼくはあなたのことが好きだから
好きであるからして許せないこともあるのだけれど
今は見えないようなふりをしているよ
そういうものさ
生きるってそういうものさ
ぼくはどちらでもない
なりきれないんじゃなくって ならないんだ
あえてね 意図的にね
だって ぼくは考えることが得意なのだから
メモリークッキ