春を待つ

桜がひらひらと散っているのを

もう何年見ていないんだろう

僕は もうずいぶん長い間

冬の中に閉じ込められているように

すごく寒くて 冷たくて

きらきら輝いているものなんて 

しとしと降っている雪ぐらいしか見当たらない

そんな感じ


春が待ち遠しい

春は 街行く人も天も音も優しくて

目に見えるもの全てが美しく見えて

儚さと切なさを一度に感じられるような

そんな季節です

春は出会いと別れの季節だなんてよくいうけど

僕はちっともそれを味わえないままでいる

なんでだろうなぁって少し考えてはみるのだけれど

やっぱり答えなんてさっぱりわからなくて

すごく前の春の季節に出会った君のことを

まだ昨日のことのように鮮明に覚えています


君は美しかったなぁ

これも春の幻想だったのかもしれないけれど

春は僕に夢を見せてくれる

そんなところが好き


なんでだろうなぁ

会いたいなぁ 君に

今すぐにでも この冬を終わらせてはくれないかな

ああ 春は夢を見せてくれる

もしかすると 僕にとっての春は

その存在自体が幻想で 僕の妄想に過ぎないのかもしれない

だとしたら 世界はずいぶん僕に味方してくれるものだ

こんな僕のために世界の天候を変えてくれるなんて

不思議なもんだなぁ

なんだかあったかくなってきたような気がしてきたな

それでも まだまだ 寒いような

冷たいな 世界が凍っているように思う



そんなこんなで ふと思い出したんだ

君じゃない 君なんかじゃない

僕のことだ


あれは寒い冬の日


今日のような寒空の下


僕は真っ赤に染まって


それからどうしたんだっけな



ああ そうか



僕は死んだんだ

春を待つ

春を待つ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-03-14

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