忘れてゆく
大好きだった もうすごく好きで好きでたまらなかった
その分 きっと盲目だったんだろう
前も後ろも見えていないんだ
だけど上を見たら 大好きなものがあって
それに夢中になって
横にいる 大切な人たちのことを忘れてしまったんだ
今は普通 ごく平凡だ
甘酸っぱい青春とかいう 恥ずかしいこともないまま
絶望とかいう どん底の気分でもない
ただ 大好きなものも見失った
あの時 大好きだったものは いつしかどこかへいってしまった
横にいた 大切だった人たちも 本当にいなくなってしまった
ひとりだ
なぜだか孤独だとは思わない
大好きなものがあった時だって 孤独だったわけだけれど
あの時は脱力感がなかったから ああそうか
と なんとなく納得して
部屋に落ちたカーテンと花瓶を拾い上げて
花瓶に花なんて飾るほど 人間らしいことをしたのはいつだったかな
そんな厨二くさいことを
全ての感覚を失ったみたいだ
否 本当に失ったわけではないのだけれど
なんだかそんな気がしている
死んでしまったような気がしている
生きているなんて そんな虚像
1tの重さを頭に抱えて
慣れって怖いなぁ
そう思って そう考えて なんとも居た堪れなくて
泣き吐いてしまった
これほどまで醜い自分を
考えるとより一層の吐き気
目から液体が溢れ出る
ドロドロしたものが心臓からえぐれてくる
なんだか赤いなぁ
そうだ これは血か
死んじゃうのかぁ
なんだかなぁ
生きている気がしないってこういうこと
忘れてゆく