忘れてゆく

大好きだった もうすごく好きで好きでたまらなかった


その分 きっと盲目だったんだろう


前も後ろも見えていないんだ


だけど上を見たら 大好きなものがあって


それに夢中になって


横にいる 大切な人たちのことを忘れてしまったんだ


今は普通 ごく平凡だ


甘酸っぱい青春とかいう 恥ずかしいこともないまま


絶望とかいう どん底の気分でもない


ただ 大好きなものも見失った


あの時 大好きだったものは いつしかどこかへいってしまった


横にいた 大切だった人たちも 本当にいなくなってしまった


ひとりだ


なぜだか孤独だとは思わない


大好きなものがあった時だって 孤独だったわけだけれど


あの時は脱力感がなかったから ああそうか


と なんとなく納得して


部屋に落ちたカーテンと花瓶を拾い上げて


花瓶に花なんて飾るほど 人間らしいことをしたのはいつだったかな


そんな厨二くさいことを


全ての感覚を失ったみたいだ


否  本当に失ったわけではないのだけれど


なんだかそんな気がしている


死んでしまったような気がしている


生きているなんて そんな虚像


1tの重さを頭に抱えて


慣れって怖いなぁ


そう思って そう考えて なんとも居た堪れなくて


泣き吐いてしまった


これほどまで醜い自分を 


考えるとより一層の吐き気


目から液体が溢れ出る


ドロドロしたものが心臓からえぐれてくる


なんだか赤いなぁ


そうだ これは血か


死んじゃうのかぁ


なんだかなぁ



生きている気がしないってこういうこと

忘れてゆく

忘れてゆく

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-01-28

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