少女の夢

少女の夢

 少女は夢を見た。
 
 
 赤いドレスに赤い靴。

 横には白いカラスだ。黄色い嘴。カラフルな尻尾と胸。

 彼女は宇宙のどこかで立っていた。白いカラスも宇宙のどこかで立っていた。

 昼のように明るい宇宙で、遥か遠く、闇が蠢いていた。まるで夜、星が瞬くかのように。

 尻尾をゆらゆらさせる白いカラス。尻尾をのばし、少女を撫でた。少女もそれに応じ、優しくカラスの嘴を撫でた。

 少女は何かを思い出した。星になった鳥の話を思い出した。遠くで蠢く闇は、星になった鳥と何か関係があるのだろうか?と思った。

 カラスはそれには答えない。ただ気持ちよさそうに少女に撫でられるままだった。

 少女は眠くなってきた。はてさて? 夢で眠るとどうなるのだろうか? 更なる深い眠りへと向かうのか、それとも眼を覚ますのか?



 眼を覚ますと(或は深い眠りへ向かうと)、そこには黒いカラス。カラフルな尻尾と胸。

 少女は赤いドレスに赤い靴。

 少女は思った。あぁ、あっちが表で、こっちが裏か。あっちが裏で、こっちが表か。どっちでもいいや。

 世界は闇で満ちていた。遥か遠くに星が瞬いていた。それは光の中で蠢く闇に似ていた。

 黒いカラスは尻尾で少女を撫でた。少女もカラスの嘴を撫でた。

 少女は星になった鳥を思い出した。

 白いカラスも、黒いカラスも、きっといつか星になる。

 きっと私もいつか星になる。

 みんな消えてなくなる。みんなひとつになる。

 怖くない。死ぬのは怖くない。


 少女は眼を覚ました。

少女の夢

少女の夢

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-09-08

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