前髪の少女

あなたの目には わたし


春を全身にまとって


もう一度許して もう一度だけでいいから


ごまかしはきかないわ


ただ あなたのことだけでいいの


溶けた冬の残響が今も耳にあるわ


水みたいに怯えるんじゃあ ダメでしょう


いつかの知ったかぶりの あなたみたいにね


笑ってしまうわ 泣いてほしいなんてね


夏はこれからなのよ 今を楽しまなきゃね


髪を切りすぎたって 恥ずかしそうなあなたは


今どき流行りの 女学生みたい


わたしよりも 女の子らしくしないで


わたしの立場がないでしょう


そう言いながら あなたはまたかわいいことして


もう嫌になっちゃうわ


でもね やっぱり そういうとこ


嫌いじゃないわよ


少しだけ大目に見てあげるわ


もう一度許して もう一度だけでいいから


ごまかそうなんてしないから


ただあなたのことだけでよかったのに

前髪の少女

前髪の少女

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-11-07

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