To dear my brother

To dear my brother

元気にしていますか。

元気だといいな。


今もまだ歌っていますか。
伏し目がちにギターを抱えて
優しい声で歌っていますか。



先日、あの子に会いました。
かつてあなたの恋人だった、彼女に。

あなたとの日々を彼女は
「遊園地だった」と
笑って話してくれました。


楽しくて
たくさんはしゃいで
たくさん笑って

でも
閉園時間があって。

「遊園地は
ずっと居られる場所じゃないもの。」

そう言って彼女は
健やかに笑っていました。

私がどうしても座れなかった
あなたの1番の席を
自ら手放した彼女は
もうすぐ人妻になるそうです。



前置きはこの辺にして。

あなたに手紙を出そうと思ったのは
ビッグニュースがあるからです。

私も昨日、驚いて驚いて
胸がバクバクしたのです。



あのね、私、もうね、
あなたに会いたいと
思わなくなりました。


あなたの匂いはまだ覚えている。
どんな風に傷付けあって
どんな別れ方をして
離れてしまったのかまだ覚えている。
それでもいつか会えることだけを
信じて生きてきたはずだったのに。


どうしよう。

もう、ね。

あなたに会いたいと

思えなくなっていました。
そしてひどく寂しくて
それなのに少し楽になって。



どんな歌を聴いても
メロディーを聴いても


会いたいと 切なくなって
涙が出ることがなくなりました。


ね、
ビッグニュースでしょ?


あなたの日常なんて
これっぽっちも知らないけど
このまま知らずに
私は生きていけるようです。


ただ

ひとつだけ。


あなたが歌う

裸の王様

が聴きたいです。

ほんとうにただ、それだけです。


私はなんにも変わっていません。

髪も短いままです。

孤独を受け入れるつもりもないし

あなたが許さなかった道を歩いて
ここまで来ました。

これからも歩き続けるでしょう。



でも でも

いつまでも

私の 私の 大切な人。

それだけは変わりません。




だから どうか、これからも
私を忘れて
あなたの世界を生きてください。




my dear.

To dear my brother

To dear my brother

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-07-05

Copyrighted
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