汽水域

汽水域


折れた腕の痛みも忘れて

幸せを抱く 夢を見ていた

生ぬるい愛を飲み干して

火傷するつもりじゃなかった


怠惰な日々を積み重ねて

もう この部屋にさえ

居場所はない


昨日を 脱ぎ散らかして

放り込んだ 箱を蹴飛ばした


舌打ちくらい

上手に出来たのなら

簡単に捨ててしまえたかしら



シンクにもたれて

機械みたいに吸う煙草

なにもかも 乾いている

ひりつく喉

思い出せない 夜のこと




迎えに来てくれる人が居ないことの安心


誰も知らない 私の罪


おもちゃにして 遊び続ける




破れなかった手紙

泣けなかったあの日


守りたかった ただ ひとつ

いつか 帰る場所



もう
いいよ



なにも

なくなった



夢と現の境界が

日々 曖昧になってゆく


生と死の狭間を

ふらり ふらりと歩いている



夜になれば

またこの部屋を飛び出して


朝が来るなら

また 少しだけ 泣いて



さよなら



さよなら



割れた

しあわせ

汽水域

汽水域

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-06-28

Copyrighted
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