Risa Magli /コットンレースフリル
アッシュグレーのハイライト。
私の髪が まだ長かった頃
世界は ずいぶん 狭かった
いつも なんだか曇り空
重たいスカートが 鬱陶しくて
不機嫌な顔 していた
「みんなと同じ」に苛立って
ずり落ちるくつ下が気持ち悪くて
知らないこと ばかりの
子どもでいることに
絶望していた
制服という記号を着せられて
わかりやすく社会に存在させられて
歩いても 走っても
誰かが見ていて
叱られるだけ いつも
今すぐに 少女 なんて 辞めたかった
2つ結びにした 黒いヘアゴムで
清潔な言葉を吐く大人たちを
括って 捨ててしまいたかった
そして
少女は 髪を切った
甘やかなレースの下着をつけて
声を出さずに笑うことを覚え
男の前で泣いてみせる
嘘を身に付けた
ストッキングの伝線に舌打ちして
ろくに歩けやしない
ハイヒールを脱ぎ散らす
姿見に映る
今夜を生き延びた女と見つめ合う
一体 どうして
私は大人になったというのか
教えてくれる 誰かを 探している
灰色の目をした少女と向かい合う
明日の天気も知らないままじゃ
「みんなと一緒」には並べない
午前3時 世界の隙間 で迷子になる
広すぎる ワンルーム
泣きそうな顔している
一体 どうして
みんな 私を置いて 大人になって行くのか
教えてくれ 誰か
Risa Magli /コットンレースフリル
リサマリ は下着ブランドの名前。
レースやチュールの甘い下着たちを
初めて身に付けた大人になったつもりだった頃。