12月の時雨日に。
走り行く車のライトが
雨の色を
オレンジ色に浮き上がらせた
細かい雨が爪の先を濡らして
作り物みたいに綺麗
ドアの向こうで
あなたが立ちあがる音がした
この部屋はあたたかい
世界はきっとこんなにも素敵
誘惑と衝動に甘んじた
12月の夜
あの日 私は
「おやすみ」 と
あなたに言っただろうか
ドアの閉まる音を聞いた
頬を付けた冬は冷たい
枯れ葉を頭に乗せたまま
見上げた雨粒
靴下 汚れてしまった
帰りたい 靴がない
名前を何度も呼ばれているような
あなたの声が 泣いているような
私 帰りたい
ねえ
靴下 汚れてしまった
「おやすみ」
ドアの閉まる音が聞こえた
12月の時雨日に。
或る12月の出来事がモチーフです。
あの日があるから私がいる。