12月の時雨日に。

走り行く車のライトが
雨の色を

オレンジ色に浮き上がらせた
細かい雨が爪の先を濡らして
作り物みたいに綺麗

ドアの向こうで 
あなたが立ちあがる音がした
この部屋はあたたかい
世界はきっとこんなにも素敵

誘惑と衝動に甘んじた
12月の夜
あの日 私は 
「おやすみ」 と 
あなたに言っただろうか


ドアの閉まる音を聞いた
頬を付けた冬は冷たい
枯れ葉を頭に乗せたまま
見上げた雨粒

靴下 汚れてしまった

帰りたい 靴がない

名前を何度も呼ばれているような

あなたの声が 泣いているような

私 帰りたい
ねえ
靴下 汚れてしまった

「おやすみ」

ドアの閉まる音が聞こえた

12月の時雨日に。

或る12月の出来事がモチーフです。
あの日があるから私がいる。

12月の時雨日に。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-01-20

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