【太陽の花】 江雪左文字+女審神者

ハローハロー、漆黒猫でございます。

アテンション→漆黒猫は刀剣乱舞、未プレイ民。

前作までとは、全く別の本丸、全く別の審神者さん。

意地と根性で、江雪左文字さんを喋らせてみました。
色々考えた結果、素直に悩ませてみた。

戦嫌い過ぎて欝病発症しかねない系江雪左文字さんと、
その苦しみにひとつの解決策を与える女審神者の話。

改めて見直すと、江雪さんのイメージから一番遠い花かも知れません、向日葵。
ひねくれてるなぁ、自分。

あと、全国の向日葵好きさんゴメンナサイ。
全国の、向日葵育ててる花卉農家の皆さま、ゴメンナサイ。

漆黒猫は向日葵、嫌いじゃないです。
咲いてる姿は好きです。ホントです。
アレ程、ひとつの季節を代表する花は無いと思ってます。ホントです。
向日葵万歳。

【太陽の花】 江雪左文字+女審神者


 それなら君は、向日葵の茎になるかい?

 主は江雪に、そう訊ねた。


「ひまわり・・・ですか。」


「そう、向日葵。」


「・・・・・。」


「向日葵は嫌いだった?」


「いえ、そのような事は。

 名前に日輪草(にちりんそう)と向日葵(ひゅうがあおい)、他にも名がある事を知っている程度には、好きです。

 ちなみに私は『向日葵』という漢字が判り易くて好きですが。日輪草は、日日草(にちにちそう)と紛らわしくて。意味としては確かに『日輪草』の方が的を射ているのでしょうが、『向日葵』の方がより特徴的でしょう。

 何にせよ、『ひまわり』はアオイ科ではなく、キク科の植物なのですけどね。」


「取り敢えず、君が向日葵が好きな事はよく判ったよ。」


「申し訳ありません、主。

 あまりに予想外のお言葉だったもので、少々動揺致しました。」


「いやいや、君のそういう、植物に詳しいトコは好きだよ、江雪。

 君の育てる花には心を、畑にはお腹を。いつも満たしてもらってる。」


「?? ・・・恐縮です。」


 何がどうして『こう』なった。

 そんなカオで取り敢えず礼を言う江雪に、主は柔らかく微笑んだ。コレは『取り敢えず礼を言っておけば失礼にはならんだろう。』と思っている時の対応だ。普段から口数の少ない彼は、あまり会話に長けていない。

 無口で口下手、だが、兄弟想いで平和を好む、誠実で穏やかな刀剣だ。

 その刀剣が、今夜、フラリと審神者の執務室を訪れた。

 戦も出陣も嫌で嫌でたまらない、出たくない。自分が刀である事すら疎ましい。自分の事を実戦刀と割り切る『戦闘家』同田貫正国や、主命を第一に負傷さえも主君への忠誠の内と捉える『戦闘狂』へし切り長谷部の考えには、賛同出来ない。

 弟である宗三さえ刀としての矜持を持っているのに。

 『可愛い』事に拘る乱藤四郎、加州清光さえ、服を汚して戦っているのに。

 周りの望むように振る舞えない自分が居る。

 だからといって、そう容易く性格は変えられない。江雪の『戦嫌い』は我が侭ではなく、神としての在り様の一部であるからだ。

 本霊の『江雪左文字』は、何を思って分霊を遣わす事に同意したのか・・・。

 分霊の、今のこの『江雪左文字』の悩みなど、見越せていた筈ではないのか。

 気の病でも発症してしまいそうな程、密かに悩み抜いて相談に来た江雪に、審神者である彼女は『向日葵』と、季節外れの花を持ち出した。

 景趣を秋に変えたばかりの庭先で、鈴虫が鳴いている。

 姐御肌で気骨のある、和服姿と煙管のよく似合う、中年の婦人だった。


「ねぇ、江雪。

 アタシはね、たまに審神者と刀剣男士の関係が、向日葵の花みたいに思える時があるんだよ。『花』と呼ぶには少々大きめの寸のアレの、種が出来る内側の丸が『審神者』。その丸を守るように配された黄色い花びらが、『刀剣男士』のようだな、ってね。

 丸が大きい程、審神者の霊力が大きい程、付けられる花びらも多くなる。顕現できる刀剣男士が多くなる。

 花びらに力を与え、歴史を守って次代に繋ぐ為に丸が在り、そんな丸を守る為に、花びらは無くてはならぬモノだ。この2つは不可分のものだよ、江雪。」


「不可分・・・。」


「そう。アタシらは一蓮托生さ。

 ただ、そんなアタシらも生き物だ。栄養が要る。その栄養を確保する為に、戦だけじゃなくて内番という代物がある訳だ。

 他の本丸じゃ、内番を軽視するトコもあるようだね。面倒だって。あるいは肉の器に慣れる為の訓練と捉えてるトコもある。

 アタシは逆でね。畑当番だの馬当番だのを、本来の意味で大事だと思ってるんだ。

 アタシらを支えてくれる、大事な『茎』だからね。」


「茎、ですか。向日葵の、茎・・・。」


「そうさ。

 そもそも兵站ってのは、戦略・戦術と並ぶ、勝利条件のひとつだ。

 『必要なものを、必要な時に、必要な量を、必要な場所に』。ソコが弱くて負けた例は、過去に幾らでも転がってる。

 江雪左文字。

 アタシは君の在り様を否定しない。

 今のままの君でいい、アタシの許で、兵站を任されてみないかい? 資材の管理や皆の出陣・内番・遠征シフト作り、その他諸々、内向きの事一切を君が仕切るんだ。

 生半な事じゃ務まらないよ?」


「承りました。」


「良かった♪

 じゃ、明日から君の出陣を増やす。

 構わないだろうね?」


「はい?」


「レベル99までカンストしたら、兵站部隊長に任じようと思う。

 戦争なんだ、弱くて生き残れる筈はないだろう? たとえ本丸に閉じ籠ってたところで、検非違使や時間遡行軍から襲撃されれば応戦せざるを得ないんだ。ココはそういう場所さ。好むと好まざるとに関わらずね。

 それに他の刀剣たちへの示しもあるからね。

 君程じゃなくても、戦に出なくてイイなら出たくないってヤツは居るんだ。彼らが抱くであろう不満は、君自身で納得させろ。同田貫とか長谷部とか気にしない連中も居るだろうが、アレは極端な例だからね。

 目の前でみすみす宗三と小夜を折られたい訳でもないだろう?

 強くなって、贔屓だと言われても武力で捻じ伏せられる位になったら。弱いから、嫌いだから出ないんじゃなく、『出られるけど出ないだけ』、そういう状態になったら。

 出陣免除の特待を与えよう。その代わり全ての兵站を担ってもらうけど。

 『兵站部隊長』に非番は無いから、そのつもりでね。必要に応じて人手は融通するが、基本は、君ひとり。出陣や遠征を全部他の刀剣にやらせる代わり、君が彼らの内向きの事、一切を担うんだ。

 審神者のアタシと、近侍と、兵站部隊長。3人の話し合いで本丸を運営していく。そういう形にね、前からしたいと思ってたんだよ。

 江雪左文字。

 君はアタシの許で、兵站を担う覚悟があるかい?

 ちなみに一度任じたら、無理そうだから元に戻すなんて甘やかしはしないよ、アタシは。」


「・・・・・・・・・・・・承りました。

 兵站部隊長の座、全力で狙わせて頂きます。」


「・・・ほほぅ、言うね。

 ならばアタシも、君のカンストを心して待つとしよう。

 それと、江雪。コレは今の話とは、直接関係は無いんだけど。」


「はい、主。」


「アタシは向日葵の、『咲いてる姿』が好きだ。

 だが枯れた姿は大嫌いなんだ。

 頭が垂れている様は、磔になった死体が首を垂れている姿に見える。種がぎっしりと詰まった真円は、肉を食い尽くされた後の死体に、人食い虫の卵が産み付けられているように見える。

 種が生え揃うまでの姿が一番嫌いだ。少しずつ腐肉が剥がれ落ちて、落ちた側から骨も見えない程に人食い虫に侵食されていくように見える。どうしてもゾンビを連想しちまって、気持ちが悪い。

 虫唾が走るったらありゃしない。」


「ソコまで仰いますか・・・。

 だから私が花壇を作りたいと言った時、『向日葵以外なら』何でも植えて良い、と仰ったのですか? 私は今の今まで、貴方は向日葵にトラウマでもあるのかと思っていましたよ。」


「トラウマがある訳じゃないけどね。

 ただ、生理的に受け付けないんだよ。枯れてく姿が、滅びの象徴のようでさ。

 だから、江雪左文字。」


「はい、主。」


「アタシの向日葵は、この本丸ひとつ。『生きてる』この本丸、ひとつきりだ。

 咲かせ続けたい。

 力を貸しておくれね、未来の兵站部隊長。」


「・・・かしこまりました、我が主。」


 その後、演練場にも出陣にも積極的に出掛けていき、強気の攻めでガンガン飛ばしていく『江雪左文字』の姿が、江雪育成に苦心する審神者たちの間でちょっとした話題になった。

 彼は今、毎日生き生きと内番を担い、主の傍で穏やかに笑っている。

 向日葵の花言葉は『あなただけを見つめる』。

 彼と彼女の向日葵は、ココに在る。1年中咲き誇る、大輪の向日葵だ。




                              ―FIN―

【太陽の花】 江雪左文字+女審神者

【太陽の花】 江雪左文字+女審神者

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-05

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二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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