届かない

かなかな

届かない

 来ない手紙を待っている。
 他人には滑稽に見えるらしい。叶わない夢を見て、毎朝毎夕、からの郵便受けを眺めているのだから。
 不思議なことに、いつからか私の所へは一通も郵便が届かなくなった。
 何故だろう。
 この話をすると、人は小馬鹿にしたような眼で私を見る。
 当然じゃないか、と誰かが言った。
 私には分からない。極当たり前のように言えてしまう彼らの思考についていけない。
 いつでも私は、何故、と問う。
 彼らの答えはすぐ返ってくる。
 だって郵便事業は廃止されたのだから。

 私には分からない。
 日々、膨大に送られてくるメールの着信を見つめながら、たった一通の郵便を待ち続けている。
 それは馬鹿馬鹿しいことなのだろうか。

届かない

届かない

ショートショート

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2016-05-07

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