急にあふれた優しい記憶 

急にあふれた優しい記憶 

急にあふれた優しい記憶 

 急に思い出す人がいたりするのは、夢がきっかけだったりすることが多い。
 昔好きだったあの人が、私の夢の中に出てきたのはさっき。目が覚めてからゆっくりと消えゆく記憶溶かさないように必死に堪えながら、その夢の断片を少しずつ思い出していた。

 私たちがは、中学二年生の夏。確かに両思いだったはずなのに、友達のままそれ以上進展することはなかった。ずっと同じマンションに住んでいて、幼馴染の君とは、結果的に中学校卒業のその時までとなってしまったんだ。
 もし、私たちが付き合っていたとしたら、どうなっていただろうか?
 所詮中学生の恋だ。何かしらの理由を付けて二人は別れて、「まあ、そんなことあったよね」なんて簡単な思い出になってしまうのはなんとなく目に見えているけれど、今は、当時素直になれなかった中学二年生の私とあなたにとても後悔している。
 私たちは、もう少しだけでも距離を詰めるべきだったんじゃないかって。
 変に格好つけたりせずに、もっと率直に気持ちを伝えるべきだったんじゃないかって。
 そんなこと思ってみてもどうにもならないんだけど、夢に君が出てきてしまっているから。それに私はもう結婚もして、二人の子供もいる。君だって同じ。でもそれを私は君から直接聞いた訳ではなく、友達を通して聞いた。 
 君は私が結婚して、子供を二人産んだことを知っているのだろうか。それより、こんな私をたまにでも思い出すことがあったりするのだろうか。
 なんでもいい。旦那や子供たちには悪いけど、今日だけはなんだか君のことを考えていたいと思う。
 分からないけど……、きっと、もう会うこともない。記憶の中だけの君を、中学二年生だったあの時のように想いながら、私は空を見た。
 
 青く、まるで君とは似つかない、快晴の空。
「好き」
昔言えなかったその言葉を、大きな空へ投げてみた。

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急にあふれた優しい記憶 

急にあふれた優しい記憶 

蘇った、小さな記憶の中の君

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-02-27

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