Ⅳ アヤタカ 「星っこゲーム」

Ⅳ アヤタカ 「星っこゲーム」

ボワ〜〜ン、とドラのような音が鳴り響いた。
それと同時に、拡声器の通されたよく響く声がした。
「さあ、1年生の皆さん!今日一日お疲れ様!最後は僕たちと、レクリエーションをしよう!」
外を覗くと、いつの間にか沢山の先輩たちが外で待っていた。入学生たちは、いそいそと外の広間に出る。
学校の敷地内にある広場の床は真っ白な大理石で、美しい貝殻がまるで魔法陣を描くように埋め込まれていた。その細かく繊細な造りは、職人の技が光る一品である。
先輩たちは入学生たちが見えやすいようなのか、少し高いステージのような場所に立っている。入学生たちは少し見上げる形になり、先輩たちのニコニコした顔を見つめていた。
先輩たちの中で、気さくな人気者の雰囲気を纏った学生が話し出す。
「やあ!こんにちは。今からこの学園伝統のゲームをやるよ!これは新しく入学してきた学生たちにやる一種の通過儀礼みたいなものなんだ!でも、それにはちょこっと物体浮遊術について学ばないと面白くなくてね。だから初日なのにちょこっと授業があったんだよ!」
ほう、と入学生たちが声をあげる。すると、数百人はいるであろう先輩たちがおもむろに手をあげた。元気でも集めるのかな?と思ったのも束の間、一筋の閃光が生徒たちの視界を横切った。
それを皮切りに無数の光の粒が、まるで流星群のように落ちてきた。足元の地面に当たってはしゃらんと音を立て、光の粒を撒き散らして消えた。
「これは『星っこ』といってといって、パーティのショーとかでもよく使われる道具なんだ!でも、僕たちはそれをちょこっと改造してゲームに使っているんだ!名前は『星っこゲーム』!」
生徒たちは流星群のまばゆい美しさに目を輝かせながら、尊敬と期待の目で先輩達を見た。
「君たちは僕たちの操る星っこにあたっちゃだめ!鬼ごっこみたいなものだけど当たっても終わりじゃないよ。でも逃げるだけじゃ狙われたまんまだから、君たちの学んだ物体浮遊術で星っこを叩きおとす!一度落ちた星っこは光の粒になって消えるから、うまく地面まで誘導してね!」
生徒たちはよしっと意気込み、始まりを待った。うまくできるかな、なんだかドキドキするねと楽しそうな声が聞こえる。
「じゃあ行くよ!よーい…スタート!」
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド。
弾丸のような星っこがなだれ込んできた。
新入生たちは目を丸くして、ぽかんと口を開けている。
先程とはうって変わったスピードで落ちてきた星っこに、何人かはその弾丸をモロにくらった。
当たった箇所からは小さな煙が出て、痛みに生徒が悶える。
その瞬間、彼らはクモの子を散らしたように逃げ出した。
先輩たちが少し離れたステージに立っていたのはこのためであった。
捨て身で地面に特攻する星っこに、彼らが覚えたての物体浮遊術を使う暇はない。何人かはそれを試みようとして必死に念じるものの、努力の甲斐なく星っこは彼らを糾弾する。今星っこを操っている全ての先輩たちが、かつて同じ場所で逃げ惑っていた。
今の新入生たちもこの洗礼をきっと行う。
一匹狼であり女性と見紛う美貌を持った少年フレイヤは、呆然と空を見ていた。ふっと、フレイヤは自分の足元に転がっている被弾者の異変に気がついた。
当たった箇所からぷるぷるぷるっ…と何かが顔を出していて、それはぽんっ!と音をたててはじけた。そしてそこには一輪のお花が咲いていた。
フレイヤは、頭に落書きのようなお花が咲いた間抜けな男を見下ろし、嫌な予感が胸を掠めた。司会をしていた男が喋り出す。
「ちなみに、この星っこが生き物に当たると、そこからお花が咲くからねー!ちょっとしたペナルティみたいなものだよ!」
フレイヤの顔から血の気が引いた。
ー冗談じゃない…。そんな間抜けな姿になってたまるか。
フレイヤは自分の周りにボッ!とピンク色の炎を出した。炎を盾のようにして星っこを防ぐ算段である。
ブーーーーーーーッ!!『はい、反則ーーーーーっ!』
どこからともなく発せられた大音量の音がフレイヤに向けられた。周りからの注目が集まる。
『星っこゲームでは、物体浮遊術以外の能力を使ってはいけません!罰として、星っこ集中放火!』
フシャーーーーーーッ!!と、無数の星っこがフレイヤ目掛けて特攻した。
「うわっ!」ぱん、ぱん、ぱん。
いくつかの星っこがフレイヤに当たり、ぷるぷるぷるぷる…っぽん!とお花が咲いた。
しかしそのお花は先程の落書きのような花とは違った。
フレイヤは、鏡のように磨き込まれた大理石に自分の姿を映した。その姿を見てフレイヤは仰天する。
彼に咲いた花は、まるで童話のお姫様が頭につける花飾りのようだった。小さな白や薄紫の花が彼を飾り立て、間抜けというよりもその姿は…。
「…かっわいいじゃん」
アヤタカが背中越しにボソッと呟き、フレイヤに裏拳で殴られた。
さてアヤタカの方はというと、彼は直立不動のままくっと上を見ていた。
星っこの第二陣が降り注ぎ始め、新入生たちは再度逃げ惑う。
アヤタカは微動だにせず、星っこをしかと見つめていた。そしてとうとうアヤタカの頭上に星っこが差し掛かった瞬間、星っこはくんっと向きを変え、アヤタカの足元に次々と叩き落とされている。彼の目が曲がれと念じ物体浮遊術を発動させることで、星っこたちは従順にアヤタカを避け、地面へと抵抗もせず叩き落とされているのだ。
周りの先輩たちが、わぁ…!と感心するのを肌に感じて、アヤタカはそこはかとなくドヤ顔をした。
バシンッ。
アヤタカの横っ腹目掛けて星っこが飛んできた。
星っこはすべて上空から狙ってきているので、本来横からぶつかってくることは無いはずだ。星っこが飛んできた方向には、いくつかのお花を体に咲かせた女の子。金髪の三つ編み、ネームプレート「ラムーン」。
先程のルナの子がアヤタカの方を見てざまあみろという顔をしている。そして彼女の指はアヤタカに向いていた。つまり、アヤタカほどではないが物体浮遊術が達者な彼女は、アヤタカの妨害にいそしむことにしたのである。
しかし代わりに、アヤタカからの大量の星っこがラムーンに向かってなだれこんだ。
「きゃあぁっ!!」
ぱしゅん ぱしゅん。
ラムーンの右肩と左腕に星っこが当たった。ラムーンも何とか抵抗しようと物体浮遊術を使ったが、実力はアヤタカの方が頭ひとつ上だったので、ほとんどが防ぎきれず星っこをモロにくらった。
アヤタカは更に追随しようと思っていたが、アヤタカの星っこを当てられた場所からぷるぷるぷる…ぽんっ!とお花が咲いた。
「がっ!!!」
アヤタカは突然叫び、のけ反った。そのまま体をよじらせてもがいている。
アヤタカから咲いたお花はラフレシア、臭い臭いお花である。
改造され、更に臭い匂いになったラフレシアにアヤタカは苦しめられ、星っこを操る彼の力がつたなくなった。
ラムーンはその機会を見逃さなかった。
しゅんしゅんと星っこを操りアヤタカに攻撃を浴びせる。
集中力が散漫になったアヤタカは、うまく防ぎきれずにぱしゅんぱしゅんと星っこをいくつかくらった。
アヤタカはヤケクソになって、自分に当たる星っこを防ぎもせずただ星っこをラムーンに向けて飛ばし続けた。ラムーンもアヤタカに星っこを飛ばし続けている。
屍累々の生徒たちの上には星っこによる花が咲き、まるで見渡す限りの花畑だった。
有名な壁画に、戦いによって死んだ者たち、そしてその上に花が咲いている作品がある。この光景は、まるでその壁画を模したかの様であった。
その絵には様々な説があり、かつて悲惨な殺戮があった地でも平和を築くことができる。または争いなど考えられない地でさえ、殺されて捨てられた者たちの屍でできているなどの説がある。
今、ここで繰り広げられている光景は前者と後者、どちらに当てはまるのだろう。
空には美しい流星群がきらめいている。
また、来年もここで花畑が見れるだろう。

Ⅳ アヤタカ 「星っこゲーム」

Ⅳ アヤタカ 「星っこゲーム」

やあ!ぼく、アヤタカ。ぼくの容姿への記述はないけども、ぼくは亜麻色、もしくは砂色ともいう髪の色をしているよ。身長は165くらい、結構童顔って言われるな。顔は十人並みとしか言えない。よくクラスに5人はいそうって言われるよ。あと、強いて言うならポメラニアンに似てるって何年か前に一回だけ言われたね。目は緑色。目と髪の色だけは結構気に入ってるんだ。そうそう、ひまわりカラーとも言われたっけ。中肉中背、最近細マッチョに憧れてる。(=゚ω゚)ノ⇦この顔文字にちょっと似てる

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-10-28

CC BY-ND
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