I アヤタカ
雲がつかまえた光の粒、空に生まれた小さな存在であった。
金の光に包まれた空の中で、それは光を弾くように輝きながら降りていった。
世間で言われる妖精、幽霊、気。この手の物は形があって無いような存在である。しかし、その存在に肉体が与えられた。誰が与えたのか、何のためにしたのか。それは誰にもわからなかったが、人間たちと表裏一体の世界で、彼らは命を帯びていた。
光の粒の子供は、彩鷹「サイオウ」と名づけられた。虚空で風を切り青い空を彩る鷹の姿は、あの空の中でひと粒輝きながら降りるサイオウの姿と重なったのである。
そして肉体を持つ彼らには学び舎がある。その場所は、いわゆる「魔法学校」であった。その学園では上記されたも者の他に、人魚、悪魔、河童…といった伝説上の生き物達もいる。そんな怪物たちが愉快爽快に日々を過ごしているのであった。
「起立!礼!」
今日はその学園の入学式がとり行われている。校長先生と思しき人物が前に出て、生徒の名前を読み上げていった。何人かの名前が挙げられ、いよいよサイオウの番になった時、校長の口がふと止まった。
「サ…ショ…?えー…タカ…あーーー……。アヤタカ!」
この一言でサイオウの学園生活の呼び名は、急須で淹れたようなにごりの旨みの「アヤタカ」になった。
アヤタカは入学のバッジを貰いに、不思議な色に淡く輝く花が咲く道をすり抜け、半透明の階段を登った。
校長先生に殺意を向けて会釈をし、入学した証のバッジを貰った。そのバッジは金色の素材が半透明の桜色に覆われていて、中に彫られている紋様もなかなか格好良かった。なのでアヤタカの機嫌も少しはなおり、いそいそと胸元にバッジをつけた。
しばらくして、全員の名前を読み終えた校長が話を始めた。
「みなさん、入学おめでとうございます。知っての通りこの学園では、午前に魔法や天文学等の様々な皆が共通した授業をとり行う。そして午後からはそれぞれの種族に分かれた特別授業が行われる。
例えば人魚ならば、海を荒らしも鎮めもする歌と琴を学ぶ。月の精(ルナ)は魅了に長けているのでその辺とか…。様々な存在がいるということは当然争いも多い。ただ、刺激や価値観もその分多くあるので、大きな成長の場にもなる。それを乗り越え大きな成長を遂げるか、その厳しさに挫折するかは君たちにしか分からない。ただ、挫折や諦めはなにも悪いことではない。やめる、という判断は時に必要なものでもある。私は偉大になった生徒達を見てきた。しかしその生徒の多くは実力や地位を手に入れることばかりを大事にして、自分を大事にしなかった。
ここでの勉強は、私は何よりも君たちの幸せのために使ってほしい。彼ら彼女らのように私たちが偉大になれと教えたばかりに、悲しい死を遂げた者や永遠に続く罰に身を灼かれる者がもう出ないように…。」
I アヤタカ