決別

決別

山岡 敦

後先を考えないというのは、人類が最古に最も大きな…文化を守ろうとしたから。

見渡す限り

「あぁぼくは足がないよ」

しょうがないわね、この人は

居間(いま)で。…将三(しょうぞう)には足がないのだ

「だからなんだよ、ピンピンしてる」

「食器を片付けますから」

「少しどいてくれない?」

母。回り込むように。気をつかわせていたら

「考えろというのが無意味よね」

「なにを?」

「ほら、見つめてでもね」

「あなたは、きっと選ばれたのよ」

「数少ない中で」

「天使(てんし)が羽をもらうよう」

「本当かなぁ」

「少し外出をしない?」

「天気もいいし、風だって強ければいいよね?」

「大人ね?」

「まぁね」

ドアを先に開ける

「どう? 」

「いい風だね」

「私(わたし)の心配は必要なかったようね」

「そうだよ、ぼくはこうやって待って」

―素振りを含め

―電話

携帯(けいたい)が鳴る

「はい、棚上(たなうえ)です」

「施設の田中です」

「あぁ、田中さん」

「早いですね」

「わかりましたか?」

声で

「そうですか…」

「きょうは将三(しょうぞう)さんと二人で会話がしたく、お電話しました」

「急ですね」

「…ええ」

続けて

「家事をされてましたか?」

「真っ最中だとか?どちらにしてもお気をつけて」

「はぁ…なにか、なにか?あったんですか?」

「そうですね、そういった対応もあながち間違ってませんよ」

「それではまた」

電話を切る

「誰?」

「田中さん」

「多分リハビリよ」

「あっそっか…片足がぱんぱんだ、それじゃ世界はヤバいね」

―数日後

「お元気ですか?経過(けいか)はどうです?吐き気はないでしょうか?脚気(かっけ)はどうです?」

「脚気(かっけ)はありません」

「吐き気は少々」

「あぁなぜ?」

「毎回ちらつくんです」

「少女が、死んだはずの」

「どういう?」

「万引きをしていて、盗る(とる)前の」

「で、途切れてしまう」

「あぁ」

「他に」

「できるなら、より添えればと」

「手を」

「そこから自分さえも手を商品に…なるほど」

「知り合いですか?」

「また、いまはキツくないですか?」

と、礼

「キツくはないですが」

「ちらつく頻度(ひんど)を考えると到底楽にはなれないと」

「義足は、考えてませんか?」

「楽ですよ?」

「まだまだすすめますよ、最新もある」

「あなたは両足でなくてよかったですよ、料金も倍ですしね」

「…不覚ですよ」

「申し訳ない」

「どうですか?田中さん」

会話の途中に井木が入ってくる

「うん、順調だよ」

「リハビリは…」

「早く元通りというか?になればいいですね?」

「そうだね、彼次第」

「歩いていいですか?」

「どうぞ」

リハビリに入る

「キツい」

「はっきりいいますけど、それはね」

「あのオジさんはいいですよねぇ」

「気にしない」

「疲れてるんですか?」

「いや目まいが」

「あっあの人は倉庫の仕事をしていて」

「それで、ありがとうございます」

「わざわざ」

「ほら?体を動かして…」

「ぼくは大丈夫でしょうか?」

「なにが?」

「勝手に理屈ばっかいっているようで」

「苦しくないんでしょう?ならいいじゃないですか?」

「そうしたらそれさえ失うことになる」

「あなたの精神を形成(けいせい)しているわけではない」

「例の少女ですか?」

「はい」

「形成(けいせい)しているんではないんですか?」

「だとします…」

「仮に」

「ちらつきとはいえない」

「そうでしょうか?」

「わかりたいんですよ、なにか」

「なにを?」

「引っかかって…」

「あぁ、つまり進展できないと?」

「理解しがたい」

「違います」

「だってそれがわかればそれだけでいい」

「いや油断ですよ、あなたの会話から思うに」

「どこが?いって下さい」

「まぁいいじゃないですか?関係ない事」

「それはそうです」

「しかし、ぼくではない」

「わかりますか?本当に」

「わかるわからないではありません」

「あなたは歩けないんです」

「なにを知ってるんですか?」

「あなたは歩けない、そして変」

「排除されるものを利用している」

「利用?言い訳みたいにいわないで下さい」

「歩けなくなっていい」

「引き換えに?」

「ええ、なんだっていい」

「それがわからない内はなにもすすまない」

「あなたはでしょう?」

「話したくないです」

「脳波(のうは)をみられているようなもの」

「違いますか?」

「脳波(のうは)といっていない」

「我流なんですよ、それでは我流」

「記憶にしろあるのに」

「それが我流ですか」

「なくそうとは思わないんですか?」

「まったく」

「あなたの立場はわかりませんが、ならそれのために努力や犠牲をだせますか?」

「…だせますよ?絶対」

「そうしたらあなたと話す意味はありませんね」

「ありますよ、意義は」

「どこにありますか?誤解ですよ、力量」

「ぼくは、生きている」

「笑ったらいいんですか?あなたの視点じゃないですか?」

「ええ、ぼくの視点ですよ」

「不愉快だ」

「どこからきたんですか?それは」

「エセ極まりない、引っかかりたくもない」

「なら直感だけもつ」

「情けないですよ、学校の裏サイトみたいです」

「関係ありませんし、ハゲてない」

「ハゲてない?どこがどう」

「ハゲてないです」

「疲れてるんでしょう?やめますか?」

「やめたいですよ、余裕はない」

「なんですか?余裕って」

「あなたも人間関係をいうんですか?」

「じゃあ、あなたはもう歩きたくないんですか?二つ足で?いつもの様に」

「それが目的なんでしょう?」

「はっきりとわかる」

「わかるじゃない、理解(りかい)ならなおさら」

感情的になる礼

「黙るわけにはいかない」

「頭にくるという」

「つまりあれです」

「怒る(おこる)理由がない」

「不思議すぎて、なにをいってるか不明」

「どうしてですか?ほら?」

「それが不思議なんですよ」

「突然、敬語になったり時間無視で行動したり」

「行動はしてません」

「いつ、しましたか?」

「あなたはいいかもしれません」

「いいかもしれませんがが?」

「が?ではない」

「質問に質問で返してます」

「じゃあ本心です」

「ですよ?あなたの家族は支えているんですよ、少なからず」

「ぼくがマリファナを?」

「なんでそうなるんですか?迷惑です」

「いくらいおうと彼は正気を保つ気だし」

「言い訳(いいわけ)主義です」

「信じてください」

「…いいですよ、いまちらつきが顕著(けんちょ)ですね」

「それまで」

「それでは一生無理といっているようなものですよ、あなたがいつも通り歩くまで」

「歩けますよ」

「どう?」

鍋だってつかむ事ができるし、笑うこともできる」

「笑ってください」

「解放運動ですか?お断りします」

「ネタでしょう?薬の対応がない」

「あるわけない」

「欲しいと思わないし、美空でさえ」

「ひばり?一体なぜそう?」

「ガンだから」

「あなたが?」

「あなたが?」

質問を返す将三(しょうぞう)

「きょうはここまでです」

「後は、自主的に」

「イエスサー」

「どうぞ」

考え込む礼、つまりいたわりはあると

「…ならば逆の方法を使って」

「田中さーん」

―居間で

「なぁ?母さん、あのトレーナーはなに?」

「ああいう人なのよ、お風呂わいてるわよ?」

「ピーナッツが食べたいな」

「ないわ」

「ピーナッツが食べたいな」

「ない」

泣き崩れる母

「わざとなの?」

「違うよ、モルモン」

「少し黙ってくれない」

「はにかんだフリだね、ぼくも」

「黙って」

「お風呂が遠すぎるよ」

「そうね」

「半里(はんり)先」

「そう」

「歩ける心配しちゃいけない」

「しないわけがないでしょう?親だもの」

「都合いいよ」

「都合?そうね、でも思い出すわ」

「昔、あなたと歩いたでしょう?並木道を」

「あそこ?」

「覚えているの」

「おじいちゃんもいたね?」

「二人きりよ」

「ポケモンゲトだぜェ」

「…そう」

「負け惜しみじゃあない」

「なによ、その笑い」

「まっいい」

「感覚の許す範囲」

「感覚?ならいいわ」

「早めに入って、夕食もあるから」

「イエスサー」

―施設の会話

「どうでした?経過」

「順調とはいえない、もっと心理に迫らないと」

「具体的に解決してないんですか?」

「なにが?」

「本心なの?」

「いやキン肉マンのマスクを借用できたらなぁと思うんだ」

「頼めばいいでしょう?」

「怖い」

「ああなりたくないから」

「普通は、漫画家の方ですむ話しよ」

「それじゃオレの気が…」

「どういう?」

「100%自分のために時間を使うんだからオレの気」

「もう終わりね、寝なさい」

「…ブタの行進イラつく、ブサイク共」

「半端女が女優なれず」

「それは、なに?」

「聖書の一ページです」

「エキストラの気が違い、いきなり汚臭」

「早く寝なさい」

「ゴミクズ理解しない」

「寝なさい」

施設の会話

「薬では無理なんですか?」

「たしかに睡眠薬(すいみんやく)や他投薬の方が早いかもしれない、ただ」

「ただ?」

「煽り(あおり)にのってはいけない、奇行、暴行など男色の所業」

「おやすみなさい」

―朝、電話が鳴る

「あら?あなた、いつ帰ってこれるの?」

「しばらくは無理だね、再建の方に注力してるから」

「そう」

「体には気をつけて」

「わかったよ、将三(しょうぞう)はどうしてる?」

「施設には通ってる」

「そうか、わかった」

「で、結局はるなをどうすると、ストーカーとなんら変わらないしあきらかに邪魔」

「タレントの?」

「首吊るとか逮捕されるとか噂あるわね」

「さっ行きましょう?」

―車内

「うまくいってるの?リハビリ」

「この前電話があったしきっと」

施設に到着

「きょうもお願いします」

「いいか?興味をそらすんだ、義足を」

「はい」

「おはようございます」

「私(わたし)はこれで」

軽く挨拶をし、母帰宅

「お菓子が食べたい」

「疲れたんですかいやブスの海見たんですか?」

「私(わたくし)をああいえばこういう性格というのは勘弁して欲しい」

「はぁ」

「なかなかになかなかに」

「きょうは増やしました」

「いつもの歩行訓練はなしで、壁紙をみてもらいます」

「イエスサー」

「こちらへ」

「どうです?楽しそうな家族でしょう?笑いに満ちている」

「関係ない」

「ほら?手をとっている」

「関係ない」

「こういういつも通りの景色です」

「次は、こちらへ」

部屋の移動

「これになんの意味が」将三の問い

「あなたには意味がないですよ」

続けて、勝彦(かつひこ)

「視力検査みたいなものです」

「ぼくは、どこも悪くない」

「悪いとか悪くないではないです」

「虫酸(むしず)だ虫酸(むしず)がはしる」

「ぼくはなににも止められないし、とらえられるわけがない」

「あなた次第です」

「大丈夫ですか?」

「やめろ」

小声で、アーアーと

「死んでやる」

「追うもの追われるものの典型ないいま」

転じて礼

「政治あるでしょう?」

「政治家と聞かないし、興味ない」

「よし出るんだ」

礼の合図により退室

「次は図形に入りましょうか?」

「なるほど、あなたとぼくと」

「他にだれかいますか?」

「なるほど」

「ではこの図形、これはなんですか?」

「円形、底もなく漂う」

「いいです、それで」

「円筒を指し感情操作か」

「はい、そうします」

「胸板の厚い畜生(ちくしょう)が」

「想定を振り切った模様、どうですか?」

「…はい」

「きょうはここまでです」

「君は声をかけてくれないのか?」

「なんの意味が?」

礼、退室

「まだだ…確固であるなら」

「迎えに来てくれるか?」電話をかける

―公衆電話から

「いいわよ、手も空いてるし」

「占いに行こうかなぁ」

「出先から行けないわ」

「お金を捨ててもいいよ、誰か拾う」

「あなたはね」

10分ほど話す

「疲れたわ」

「切ってもいいいや」

「あなたには出る義務があるし聞く義務もある」

「断るよ」

「野宿ね、帰ってこなくていいわ」

「望むよ」

「オレから連絡をとる事にする…」

「わかりました、切るわね」

「よろしい、ラインでとろう」

電話が切れる合間

「これが従者、これがオレ」

「ここからゴミと流れようと流されようと」

「…まずはサングラスでも買うか?そうしよう?花がついてる方が」

「連絡は後でいいや…」

自然に

theory


「この時期の酒はしみるな」

―施設の会話

「やる気をだしてくれればまずは成功、特有(とくゆう)なら前例ないもの」

「苦しそうに見えましたが」

「そうやって押し出す」

「そこがそもそもの間違い、狂気だとすれば連続殺人」

「これを解釈するか?」

「あの…家に肉を保存していた?」

「『それ』をシリアルキラーとして、被害となる自覚ありますよね?」

「あるに決まってる」

「ひがみだよ、妬み(ねたみ)といった方が正しい」

続けて

「いまは、論文を公表している場合ではないんだ」

「仁(じん)が市民の安全を守れない?と」

「無理だね、錯覚(さっかく)は生まれもってのもの」

「もう少し話そう」

「はい」

「君に花瓶を見せるよね、感情を出すと」

「…きれい?」

「きれいですね」

「ではいきなり花瓶が動く、どう?」

「ついていけないですね」

「ここにあるんだよ、君が濁った(にごった)感情を持っていればこれを不思議と思う」

「なぜですか?」

「なぜですか」

質問に質問で返す礼

「証拠を」

「そうなるよね」

「不可解だからですね」

「基づいた(もとづいた)情報で、安心を得てもそれは公共が生んだ掃き溜め…ロダン」

「そう、ロダン」

「あの前に列ができるのもそういう」

「考える人ですね」

「そう、薄っぺらいだけのものを賞賛する」

「近所の子供の方がまだマシだよ」

「はぁ」

「ここまで、帰ろう」

「どうしようかなぁ、酒は限界あるし」

「いつぶりだろう?こんなにワクワクするのは」

「こんなにこんなにネオンはきれいだ」

「悪酔い(わるよい)ではないの?」

「あなたは?」

B級のブランド品に身を包めた女

「汚ない、それどころではない」

「笑うわけね?私が男だとしたら」

「そういうわけがないです」

施設の会話

「元通りに歩けますか?」

「可能性はある」

「というと?」

「他のだれも…そうだな、まったく害されず彼が自分のしたい事をする」

「歩くのは補足と」

「そうだね、もうそういってしまうしかない」

「気づきでしょうか?」

「少し違う」

「通常の歩く状態までしたい」

「責任はあるよ、ないといってしまうと担当する必要がないしね」

「ですね」

「心配ありません、次は」

「はい、まずぼく一人で彼と話す」

「君は、余計な事をして時間を超過させる」

「なるほど」

「まっ時間の概念(がいねん)」

「より集中的にですか?」

「そうだね」

「ただただ…」

「肉体的疲労に加重して歩くとは」

「…いいか?前に行った(おこなった)リハビリが抵抗Aとする」

「壁紙ですね」

「そう」

「これによると抵抗Bが生じたわけ」

「そうですね、関係ないですし」

「抵抗はね、それが彼と話す事ができない要因」

「結局、無理なんですか?」

「1%くらいかな?10%でも90%でもできるけど」

「理論上では?」

「そういえば…刷り込みがあったよね」

「あぁCMとか」

「同じ映像を見せ続けるそう、慣性」

「あれを使えば」

「下手すると人格否定ですね」

「訴えられない、彼は当事者だから」

「万事いいですね」

「成功すればね」

「どれくらいかかりますか?」

「毎日通所して二週間、価値観を逆転させる必要が」

「まず義足配置、動画も使う」

「旧型の義足をコンマの間に」

「本当ですか?憩いですよ、ここ」

「うん、最悪のパターン、新型も」

「合図するから、よろしく」

「わかりました」

「他の利用者は、二日間義足を使う利用者だけ」

「わかりました」

「電話連絡は控えて(ひかえて)受話だけ」

「来るんでしょう?」

「はい」

「きょうは」

「おはようである」

―将三通所

「おはようございます」

「隣の女性は?」

「彼女らしいです」

「素敵です」

「そうかい?」

「ええ、似合ってますよ」

「ぼくもそう」

「まずストレッチから、よく伸ばして」

「見ててくれよ?妻」

「休憩はとりますか?」

「とるのかよ?」

「ええ、どうぞ」

礼のマニュアル化したトレーニングが続く

―一週間後

「なぁ?オレはなにがしたいんだ?なぁ?」

「始まったか?解離(かいり)状態が」

「なんですか?それ」

「本来の自分を自分で守る」

「抑制ではなく…」

「オレは一体だれで?どこに向かえばいいんだ?」

同一


「他の利用者は?」

「大丈夫、ビデオをかえて」

―一週間後

「女性いないですね」

「それはいいんだ」

「もう少し」

足を組み座る将三、ブツブツブツブツと

「大体足がなくなったのは物資が足りないせいで」

利用者に目をやる

「それを下さい」

―急に礼が立つ

「なっなにを?」

将三を押しこかす

「義足を、義足を下さい」

うすら笑みが残るのであった

決別

と、できれば重複しないようにっ。

決別

登場人物 棚上 将三 田中 礼 井木 勝彦

  • 小説
  • 短編
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-07-31

Copyrighted
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Copyrighted
  1. 見渡す限り
  2. theory
  3. 同一