女子高生

女子高生

いつもの道、いつもの風、いつもの人...。

私はいつもの時間にいつもの決められた道を歩いてる。学校が毎日決められた時間に始まるからであって、私が好きでこうも決まりきったリズムで生活しているんじゃない。

だけどそれは、自然と私の一部となって、私はこんなに同じ毎日の繰り返しに少し居心地の良さを覚えたり、まあ、不満を感じることはあまりないかな。
だってこれはもうなんだか当たり前になってしまっているから。
そう、当たり前になってしまっているんだ。


 いつもの交差点で、いつもと同じ人たちとすれ違った。こんなに同じ時間を共有しているというのに、私はそのいつもすれ違う人たちとは未だに他人でいる。

 でもやっぱり、それをそんなに不思議に思ったりはしない。学校の友達だって、同じ場所で同じ時間を共有しているから友達になる訳で。だから私とすれ違ったこの人たちと私が友達になったとしてもそれはなんら不思議なことではないはずなのに、私は友達にならないことを不思議にも思わない。

こんな考えが生まれたのだって今日は初めて。

昨日ベッドでぼおっとしていた時に、不思議な違和感を感じて、それを問い詰めてみたら、この感情が生まれた。

”不思議なはずのことを、当たり前に思っていること”

ま、でもそんなのどうでもいいじゃん。

きっと同じクラスの美由紀に言ったら、そう簡単にあしらわれるに決まってる。彼女がその言葉を口にしながら、眉間に皺を寄せるあの顔が容易に想像できてしまったことでまた少し笑える。

そうだね、なんて言って私だってすぐにそれを諦めてしまうに決まってる。
だから実際どうでもいい事なんだ。どうでもいいってのは、”別に考えなくても生きていける”ことだと私は思ってて、そう考えると、世の中のほとんどのことは”どうでもいいこと”になるんじゃないかって、教室の窓から青い空を眺めながらなんとなく思った。


「あー、つまんないや」


そんなこと言うつもりじゃなかったのに、私は一人になるとよくそんな言葉を吐く。

熱く熱したコンクリートに吐いた言葉はすぐにその言葉を溶かしてしまって、何後もなかったかのように知らんぷり。

地面だって私の相手をしてくれないのか、と拗ねていると、背中にじわっとかいた汗が鬱陶しく感じられて


「早く夏終われ!!」


と少し大きな声で言ってみたり。ボロボロになってしまった竹ぼうきは、もうほとんど掃くことなんてできない代物で、いくら掃いても掃いても落ち葉はその場に鎮座している。

何の意味もない行為に時間を費やしている自分を客観的に見たら、私はひどく寂しい気持ちになるに違いない。

だけどこーやって無駄な時間を使う事が楽しいことでもあったりしてやめられないのだからどうしようもない。

「ほらーちゃんと掃除やれよー」

担任の荒木が私に暴言を吐く。うるせえ、やろうにもやれないんだよ。と言いたかったけど、一応この学校では優等生で通っている私には不似合いだから、
「はい」と笑顔で頷いて見せた。

「あーそのホウキな、もうダメだ」

もう早くどっかに行ってくれればいいものを、なぜそこに気付いてしまうのだろうか、間の悪い担任だとつくづく思わされる。

「昨日の職員会議で新しいの買ってくれって先生言っといたからなー。すぐに新しいのがくると思うよ」

はいはい。と心の中で何度か言った。表面的には「はい」としっかり言っていたけど。

ホウキのことなんてどうでもいい。古いものだろうが、新しいものだろうが、私のやることは何も変わらないのだから。

 そう、私のやることなんて、この世界にはほとんどないんじゃないかって思ってみたりする。

 大体、その人のやることなんて決まってるわけなんてないし、というか、それが決まっているんなら早くに教えてほしいし。

「あなたにはね、あなたのやるべきことがあるの」

まだ小さかった頃の私に、母はそんなことを言っていて、その時の私にその言葉の意味なんて分かるはずもなく、いや、今でも分かってなんかいないけど。
でもその時からなんとなく思ってたかもしれない。

”やるべきことなんて私自身に分からないじゃん”って、そんな風に。

 そんなお母さんも三年前に死んだ。でもその二年前から闘病していたから、それはもちろん悲しかったのだけれど、なんていうか、心の準備みたいなのはできてた。お母さんが死んで私は目いっぱいの涙を流したけど、流し終えてしまえば、幾分すっきりはしていたように思う。

でもまた不意に、お母さんが”私と同じこの世界では生きていない”と考えると、涙は急ぎ足で流れ出したりもした。

 そうやって私は女子高生になったけど、未だに私は私のいるべき意味が分からない。別に悲観的な意味なんかじゃなくてさ。

 ただなんとなく、私はどこにでもいる、そこらの女子高生となんら変わらないって思うんだよね。その他大勢でひっくるめられるようなそんな弱っちい当たり前みたいな存在。


 だから何を考えたって、それはただの空虚なその他の中の思考に過ぎないから。

 私はいつだって、その広い空を眺めていたりする。意味を探すのか、別になんの意味もないのか、そんなの分からないままに。

 とにかく私に分かるのは、今日は天気がいいってことくらい。


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女子高生

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私はやっと女子高生になって。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-07-24

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