雨が降る

Ril

水の粒

雨が降る。
どこまでも、どこまでも。
飽きることなく、水の粒が、何粒も、何万粒も降る。
音が鳴る。水がものにあったって弾ける音が。
ポツポツポツンと集まって、ざあざあと沢山の音の波になる。
ああ。また今日も雨なんて降って。
私の好きな太陽を隠してしまう。
私は水が嫌いじゃない。
むしろとても好きだ。空から水が降ってくるなんて、なかなかすばらしい現象だな。と思う。
でも、雨は太陽を隠すので、私はまた今日もカビの生えたパンみたいになって。畳の上で腐ってしまう。
頭の中はべとべとに溶けたバターみたいに複雑で役に立たない。
湿度が体にまとわりついてカビがにょきにょき胞子をまく。
頭に溶けたバターの詰まったカビ人間などが、まともに生きていけるわけなんて無いんだ。
カビに体が浸食されて、もう私の輪郭がなくなってしまった。
緑のフワフワに覆われてもう私が何なのか誰にもわからないだろう。
静かに静かに腐っていく。
太陽が欲しい。
どうして雨は太陽を隠すのだろう。
太陽の光が当たれば私に蔓延るカビだって焼けただれて浄化される。
こんなにこの世の中に太陽が必要な人間がいるだろうか?
きっといない。
まさか太陽だって自分が現れないとカビが生えて頭の中がバターになる人間がこの世に居ようとは思いもよらないだろう。
雨はだから嫌いなんだ。
水なんてものを御構い無しに落として行って、ざあざあとけたたましい音をさせて、あたりを暗くしていく。
もう少し人に気持ちを考えて欲しい。
もっと人に好かれるように努力をすべきだ。
例えば、どうしても水を落としたいのなら水音を美しい綺麗な音色にしてみんなが踊りだしたくなるくらい軽やかにすればいい。
太陽だって何も遮断しなくても、明るい中水の粒がキラキラ落ちた方がきっと何億倍も素敵なのだから。
そんなこと素敵なこと全部しないで、ただの憂鬱だけを残すなんて、雨の中に悪意が含まれているとしか思えない。
きっと雨って暗いやつだ。
たまに雨のかたを持って優しくするやつがいるからって調子に乗ってるんだ。
たまに優しくするやつだって、心から雨のことが好きなわけじゃない。しょうがないから好きになるように努力してるだけなのに。
そんなこともわからないで飽きもせずに暗い自分を振りまいてるなんて、本当に迷惑なやつだ。

雲も雨も太陽も昔はもっと素敵に見えていた。
私は雨なんかに振り回されることはなかった。
むしろ暗い雨とも友達だった。
水溜りが大好きだった。台風の日はわざと外に出て飛ばされごっこをした。
私が勝手に嫌いになったんだ。
大人になって。
自分の都合のいいものだけを好きになった。
大人はみんな自分に都合のいいものだけ集めるものだから、私も真似をしたんだ。
雨とだって仲良くやれていたのに、もう仲良くする方法もわからない。
大人になんてならなければよかったね。

小さな頃私はずっとピーターパンが迎えに来てくれるのを待っていた。
毎晩祈りながら寝ていた。
マンションの窓の鍵だってこっそり開けていた。

ピーターパンに会えなかった子供は大人になりたくなくて水の粒をこぼすんだ。

雨が降る

雨が降る

雨の中悲しい気持ちになってたら、別の悲しいこともで出てきて、それはまた今度別の話で書こうかな。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-14

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted