眠る湖

きりもんじ

あらすじ

(シナリオ)北陸の美しい湖で事故死が続く。氷が解ける頃、着物姿の美しい女性の氷結死体が上がった。自殺か他殺か?事故死なのか?謎が潜む眠る湖に深い怨念が沈んでいく。

湖へ

○湖
まだ残雪のある山麓の湖。
小春日和である。

○湖岸
氷の張った湖。
桜並木を帽子をかぶった老人(東山)が歩いている。
老人、岸辺を見、はっと立ち止まる。

氷面へ下りかがみこむ。
帽子を掴み氷の面を磨く。

氷に閉ざされた美しい女性の顔。
着物姿の各務原悦子(25才)である。
老人大いに驚き慌てる。

○水中
水中でセーラー服の女生徒(18歳の悦子)が、
男子生徒(山本太一)の背中を蹴り沈めている。

○タイトル
『眠る湖』

○タイトルバック
水中の二人。
やがて男子生徒は下に沈み、
女子生徒は浮上する。

○水面
浮上した女子生徒(悦子)の顔。
大きく息をついでゆっくりと湖岸へ泳ぐ悦子。
遠くにボートが見える。

○湖岸
湖岸の岩に泳ぎ着き力尽きて岩につかまり気を失う悦子。

○湖
新緑に映える美しい湖の遠景。

○山道
4駆のバンが走っている。

○車、フロント
丸商陸上部の監督山下俊介が運転している。
助手席に鈴木隼人。皆ジャージを着ている。

○車内
中座席に各務原悦子と山本太一。
後部座席に中村瞳と竹内佳子が座っている。
皆楽しそうである。

(山下)「今年の3年生はインターハイ予選が
最高だったな。鈴木と中村、ごくろうさん」
皆、拍手する。

(鈴木と瞳)「ありがとうございます!」
(山下)「いよいよ卒業だ。就職のほうはどうだ?」
(瞳)「農協の職員に決まりました」
(皆)「ほう!」

(山下)「そうか、それはおめでとう!」
皆、拍手する。
(鈴木)「俺、警察官になろうと思うて試験受ける。
だめだったら車のセールスマン」
皆、笑う。

(山下)「そうか、がんばれよ」
(山本)「俺、家手伝えと言われとる」
(山下)「農家じゃったのお前んとこ。大事な後継者じゃ」

(佳子)「私も後継者。美容師になるの」
(山下)「そうか、専門学校じゃの。がんばりゃあ。各務原は?」
(悦子)「私は、何もまだ決めとらん」

(山下)「そうか。いまどきゃバイトでも何でもありゃあ。お母さんは?」
(悦子)「海女の仕事だけはさせんと言うとる」
(山下)「そうか。お前んとこ女手ひとつで大変じゃもんナ。はよ、楽さしちゃりや」

悦子、複雑な顔をする。
車、急カーブで大きく揺れる。
(皆)「ワー!キャー!先生!ハハハ!」

キャンプ場

○湖岸
鏡湖の表示が見える。
左手キャンプ場の矢印。
四輪駆動車バンが走ってきて
キャンプ場へと曲がる。

○キャンプ場
バンが走ってきて止まる。
全ドアが開いて6人飛び出し、
後部ドアに集まる。
山下、後部ドアを開けながら、

(山下)「男どもは炭焼きコンロをセット。
女たちはこのクーラーを運んで、
中の肉を串刺しにしてくれ」
(皆)「ハーイ!」

山下、鈴木、山本、バーベキューセットを運ぶ。
悦子、佳子、瞳、クーラーボックスを運ぶ。
悦子、クーラーを開けて、
(悦子)「わっ、すごいお肉」

(佳子)「山下先生、相当張り込んだ」
(瞳)「安い給料なのに」
3人、食材を出しながら笑う。

3人、肉とたまねぎ、ピーマンを串に刺していく。
(瞳)「山下先生いつ田中先生と結婚するんかな?」
(佳子)「えっ、もうプロポーズしたの?」

悦子がきっとにらむ。
向こうで男3人がコンロをセットしている。

(瞳)「この間、中央商店街で2人歩いているの
誰か見たって言うてた。楽しそうやったって」

(悦子)「そんなもん。なかなか結婚なんて
でけんわ。ふん、早う食べよ」

悦子、串を大皿に載せて運ぶ。
瞳と佳子、顔を見合わせる。
男3人、セットを組み立てている。

(山下)「そっちの脚、ちゃんと組んで、鈴木」
(鈴木)「こうですね」
山本、悦子を気にしながら炭を掴みコンロに入れている。

(山本)「炭、こんなもんでいいですか?」
(山下)「ああ、OK」

山下、悦子を見ながら微笑む。
山本、むっとする。
山下、炭に着火する。

(山下)「よしよしこの調子。炭はこのくらいでいい」
瞳が串を持って悦子と並ぶ。
佳子、クーラーからジュースとコップを持ってくる。

(山下)「さあ皆、集まって。適当に座ろう」
コンロを囲んで山下の両脇に瞳と佳子。
瞳の隣が鈴木、その横、山本。
佳子の隣が悦子、そして山本。

佳子、ジュースを紙コップに注ぐ。
(佳子)「先生、はいビール!」

山下、受け取りながら。
(山下)「ビールはないやろ」
(瞳)「ジュースです」
皆笑う。

コップがいきわたり。
(鈴木)「とにかく乾杯しましょう!」
(皆)「賛成!」

皆、コップもって立ち上がる。

バーベキュー

○キャンプ場
6人、バーベキューをしている。
皆、立ち上がってコップを持っている。

(鈴木)「先生、あいさつ」
(山下)「おお、それじゃ。とにかく3年間、
ほんとに苦しかったが、ま、楽しくもあった。
みんな、卒業してからもしっかりがんばってくれ。
それじゃ、乾杯!」

(皆)「乾杯!」
皆、コップをあける。
(山本)「それって、陸上部万歳!じゃないですか?」

(山下)「あ、そうかもしれんな。とにかく皆、
ほんとにご苦労さん。はい、拍手!」
皆、拍手し座る。

炭火が赤々と燃えている。
(山下)「それでは今日はたらふく食べてくれ。
皆、おれのおごりだ」
(皆)「ありがとうございます!」

串が金網の上にならべられる。
いい香りが漂う。
(山本)「うまそうですね」

(山下)「ふむ。それじゃ、みんな、たべよう!」
(全員)「オーッ」
全員、串をひとつずつ取り、食べ始める。

(瞳)「いやー。これまだ生焼け」
(鈴木)「じゃ、これあげるよ」
(瞳)「ありがとう」
瞳、串を手にして、
(瞳)「先生、質問があります?」

山下、串をほおばりながら、
(山下)「おっ、なんだ?」
悦子の目が走る。

(瞳)「いつ田中先生と結婚なさるんですか?」
山下、つまる。
皆、食べるのやめる。

悦子、山下、一瞬火花散る。
(山下)「うっ、やぶからぼうになんだ。
結婚?田中先生と俺が?」

山下、ジュースを飲む。
(山下)「あー、のどがつまった。それはない」
(佳子)「ほんとうですか?」

(山下)「誰かいい人がいるみたいだ、田中先生には」
(佳子)「ということは、プロポーズしたんですね?」

山下、ジュースを飲む。
(山下)「これ以上この質問はなし。あー、のどがつまった」

山下をにらむ悦子。
その悦子をじっと見つめる
瞳と佳子のいぶかしげに見合す顔。
皆、串を食べ始める。

○タイトル
『それから数日後』

○タイトルバック
新緑に映える美しい湖の遠景。

釣り場

○湖岸、釣り場
岩場、周りに葦が生えている。
東山老人が孫娘アキと釣りをしている。
はるか遠くにボートが見える。

ボートの男の子が立ち上がる。
女の子も立ち上がり、二人争う。
弾みで二人水中に投げ出される。

遠くでよく見えない。
アキ、ボートのほうを眺めるが、
気付かず、釣り糸に集中する。
老人はずっと釣り糸を見ている。

アキ、再びボートを見る。
アキ、又釣り糸を見つめる。
ボートが近づいてきている。
アキ、ボートに気づき、

(アキ)「おふね?」
アキ、老人を見る。
老人、釣り糸に集中している。

(老人)「ふむ」
ボートもっと近づく。
アキ、声高に叫ぶ。

(アキ)「じいじ、おふね!」
老人、ボートに気付いて釣竿を置く。
アキも釣竿を置く。
二人、立ち上がりボートに近づく。

(老人)「はて?誰も乗っておらんぞ?」
老人、竿を取りに戻りボートにあて
手前に寄せる。
ボートにはかなりの水が入っている。

老人とアキ、覗き込む。
中の水に浮かぶ大きな空瓶。
(アキ)「じいじ、これなに?」

老人、手に取り目を細めて見る。
(老人)「睡眠薬じゃ。ま、とにかく、
警察に電話じゃ。アキ、帰るぞ」

(アキ)「うん」
二人、竿を手に釣り場を去る。

○山道
パトカーと救急車がサイレンを鳴らして走っていく。

○湖岸
パトカーと救急車がいく。

○同、釣り場
ボートの周りに警官と救急隊がいる。
木村刑事、山田刑事がいる。

(山田)「投身自殺でしょうか?」
(木村)「まあ、そんなところだろう」
木村の携帯が鳴る。
(木村)「はい、木村だ」

(携帯の声)「300メートル東方の岩場に
女性が一人倒れています。担架、願います」
(木村)「息はあるのか?」
(声)「息はあります」

(木村)「よし、了解!担架!急げ、こっちだ!」
木村、山田、葦の岩場を走る。
担架も走って付いていく。

無理心中

○同、岩場
女性とが1人倒れている。半身水の中。
警官がしゃがんでいる。
木村、山田と担架が来る。

(警官)「まだ息があります」
(木村)「ふむ」
木村、しゃがむ。大声で、
(木村)「大丈夫か?おい、聞こえるか?」

悦子、ゆっくり目を開ける。
か細い声で、
(悦子)「山本君はどうなりました?」

(木村)「なに?山本?もう一人いたのか?えっ、おい」
悦子、ゆっくりとうなずく。
(木村)「担架、大至急病院へ!」

担架が置かれる。
木村刑事、警官に、
(木村)「もう一人いるらしい。
付近を徹底的に捜してみてくれ」

(警官)「はい、わかりました!」
敬礼して走り去る警官。
悦子が担架に乗せられている。

(木村)「山田、潜水班に待機を頼んどいてくれ」
(山田)「はい、わかりました」
山田、携帯をかける。
担架、悦子を乗せて走り去る。
木村、じっと湖面を見詰めている。

○岩場、夜
夜間照明が岩場を照らしている。
パトカー、救急車が止まっていて、
警官他十数名がいる。

(警官)「見つかったぞーっ!」
ざわめく人垣。
木村、山田、岩場の先端にいる。
脇に担架が控えている。

照明、水面を照らす。
潜水夫二人が男子生徒を担いで現れる。
(警官)「だめか?」

潜水夫、頭を横に振る。
ざわめく人垣。
担架に移される遺体。白衣の検視。

(警官)「だめだ、一人死亡!」
ざわめく人垣。

○病院、外
丸岡救急病院の看板が見える。

○同、個室、内
悦子がベッドで眠っている。
母、恵が付き添っている。
医師と看護婦が診ている。

木村と山田が入ってくる。
(木村)「失礼します。もう聞き取り大丈夫ですね」
(医師)「ええ、睡眠薬は全部吐き出してますし、
水もほとんど飲んでません。大丈夫でしょう」

(木村)「ありがとうございます」
医師と看護婦でていく。
木村と山田、ベッドに近づく。

恵、出て行こうとする。
(木村)「お母さんの恵さんですね。
差し支えなければいてあげてください」

恵、目礼してそのまま椅子に座りなおす。

それから7年後

○病院、個室、内
悦子がベッドに眠っている。
母恵と木村刑事が見守っている。

(悦子)「・・・・む」
悦子、目を覚ます。
恵、覗き込む。

(恵)「悦子、目が覚めた?気分は?」
(悦子)「大丈夫よ。とにかく、すごく疲れた」

木村、割ってはいる。手帳を見せながら、
(木村)「福井県警の木村と申しますが、ほんとうに
お疲れの所すみません。山本太一君は亡くなられました」

悦子、視線をそらせて、
(悦子)「そうですか」
(木村)「・・・・・」

(悦子)「山本君、一緒に死のうと言ってくれたんです。
二人で睡眠薬を飲んで湖に飛び込みました」
(木村)「・・・・・」
(悦子)「後の事は何も覚えてません」

悦子、木村を弱々しく見つめる。
(木村)「そうですか。山本太一君の部屋から日記が発見
されました。あなたを慕う言葉ばかりがつづられています」
(悦子)「・・・・・」

(木村)「事件前日の最終頁には、悦子さんと一緒に
死ぬんだという決意がびっしりと書き込まれていました」
(悦子)「・・・・・」

(木村)「覚悟の自殺だったんですね?」
悦子、視線を木村に移し、ゆっくりとうなづく。
(木村)「わかりました。ほんとにお疲れのところ
すみませんでした。ではお大事に。失礼します」

木村と山田、恵に目礼して去る。
恵、二人出て行ったのを確かめてから、
(恵)「ほんとうなの?悦子?」
悦子、目をつむりゆっくりとうなづく。

○タイトル
『それから7年後』

○タイトルバック
美しいもみじの山なみ。
山間の小都市を望む。

○スーパー、外
小さなスーパーマーケット。
車が数台止まっている。

○同、店内
山下が身重の妻絹江と買い物をしている。
カートを押す山下。
カートには食材が一杯。

(山下)「絹江、もうこれで全部か?」
(絹江)「まだあるわ。先にレジで並んでて」
(山下)「ああ」
絹江、奥へ去る。

再会

○スパーマーケット、店内、レジ前
山下レジに並ぶ。
髪をアップにして美しく化粧した悦子がレジにいる。
(悦子)「いらっしゃいませ。カードお持ちですか?」

山下、カードを出す。
(悦子)「お預かりします」
悦子、カードを通す。
(山下)「・・・・・」

悦子、カードを返す。
(悦子)「お久しぶりです。山下先生」
山下、悦子をまじまじと見る。

(山下)「えっ?か、各務原!」
(悦子)「いつか、お会いできると思って、
この町へ越してきました。ここへ電話してください」

悦子、紙片を渡す。
山下、まだ驚いている。
悦子、食材をバーコードに通している。

山下、紙片を手にしたまま見とれている。
悦子、目を合わせて微笑む。
(悦子)「以上でよろしいでしょうか?」

山下、我に返り紙片をポケットに入れる。
そこへ、絹江がポン酢の瓶を持ってくる。
(絹江)「これを追加してください。すいません」

悦子、瓶を受け取りバーコードに通す。
(悦子)「以上ですね?」
悦子、二人を見る。

二人、悦子に見とれている。
(絹江)「ひょっとして、各務原さん?陸上部の?」
悦子、微笑みうなづく。

(悦子)「そうです、田中先生、ごぶさたしてます。
この町へ越してきました」
山下、絹江、顔を見合す。

(悦子)「全部で9830円になります」
山下、財布から一万円札を出す。
絹江、カートを押してレジを抜ける。

悦子、山下につり銭を渡して、
(悦子)「どうもありがとうございました。
またおこしください」

悦子、次の客に対応する。
(悦子)「いらっしゃいませ。カードお持ちですか?」
まだ驚いている山下の顔。

○同、外
山下、カートを押している。
絹江が並んで歩いている。

(絹江)「各務原さん、すごくきれいになったみたい?ね」
(山下)「ああ、びっくりした」
(絹江)「気が付かなかったの?」

(山下)「全然。山下先生て言われて、まじまじと覗き込んだよ」
(絹江)「教え子が綺麗になるっていいことだわ」
(山下)「そ、そうだな」

○同、駐車場
二人、四駆のバンの所まで来る。
山下、助手席を開けて絹江を乗せる。

(絹江)「OK,大丈夫よ」
(山下)「袋、全部うしろに置くぞ」
山下、サイドドアを開ける。
カートの食材を移す。

(絹江)「お豆腐と卵を、つぶさないようにね」
(山下)「ああ、わかってる」
袋を積み上げながらこわばる山下の顔。
(山下)「・・・・・・くそっ!」

月光

○電話ボックス、外、夜
山下が話している。

○同、内、夜
山下が話している。

(山下)「どうしたんだいったい?」
(悦子の声)「べつに。あなたに会いたかっただけ」
(山下)「もうすぐ子どもが生まれるんだ。
かんべんしてくれよ。話はあの時つけたはずだ」

(悦子の声)「あの時はまだ、私も子どもだったから」
(山下)「今は違うと言うのか?」
(悦子の声)「ゆっくりと話したいの。昔の山下先生と」

(山下)「ちょっと待ってくれ。うーん。
とにかくもう一度すぐかけなおす」
山下、受話器をかけ、すばやく手帳をめくる。

意を決して電話をかける。
(山下)「来週の金曜の夜8時。スーパー向かいの
コンビニで待っててくれ。車で行く」

(悦子の声)「わかったわ。来週の金曜の夜8時。コンビニで」
山下、受話器を置き。殺意の顔で、
(山下)「くそっ、なんとかせねば。一生付きまとわれる」

○ホームセンター、外
山下の四駆が止まっている。
山下、スコップ、つるはし、ロープを抱えて店から出てくる。
後部ドアを開けて積み込む。
(山下)「これでよし、と」

○コンビニ、外、夜
店内に悦子が見える。
山下の四駆が走り来て止まる。
店内から悦子、走り出て助手席にかけ乗る。
山下、周囲に目配っている。

○車内、夜
山下予悦子の頭越しにスコップが見える。
(山下)「どこへ行く?悦子」
(悦子)「鏡湖」

(山下)「えっ?」
(悦子)「鏡湖へ行って。思い出の場所だから」
(山下)「よし分かった。そこでゆっくりと話をしよう」
山下、後ろを見てエンジンをふかす。

○コンビニ、外、夜
山下の四駆がバックし、急発進する。
店内の立ち読みの男がじっと見ている。

○山道、夜
満月である。
疾走する山下の四駆。

○同、カーブ、夜
湖が見えてくる。
月光を映し、とても美しい。

殺意

○車内、夜
月光にひきつる山下と悦子の顔。
(山下)「俺をゆする気か?」
(悦子)「・・・・・」

悦子、窓を大きく開ける。
シートベルトを確かめ、
ドアロックをはずす。

山道、カーブが続く。
(山下)「何とか言ったらどうなんだ?」
(悦子)「そんなんじゃないわ」

悦子、山下のシートベルトに細工をする。
(山下)「じゃ、一体何なんだ?あの時もう絶対、
俺の前には現れないって約束したじゃないか!」

(悦子)「・・・・・」
(山下)「俺にしてみりゃ、大金だったんだぞ!」

大きなカーブにさしかかり、悦子、
とっさに山下のハンドルにしがみつく。
(山下)「なにするんだーっ!」
急ブレーキの音。

○湖岸の崖、夜
湖岸の崖のカーブ。月光の中、
湖にダイブする四駆のスローモーション。

○水中、夜
月明かりで、浅い湖の底に
四駆が沈んでいるのが見える。

シートベルトをはずし、ドアを開け、
助手席から泳ぎ出る悦子。

山下は運転席でシートベルトがはずせず、
必死でもがいている。
もがき、息絶える山下の断末魔の顔。

○水面、夜
水面に浮上する悦子の顔。
月明かりに美しく映える。

○湖、夜
月光に映える湖の遠景。
沖に向かって泳ぐ悦子の波跡。

○湖岸
崖下の湖岸。
四駆が引き上げられている。
パトカー、救急車、警官、他。
木村刑事、山田刑事もいる。

(山田)「やはり事故でしょうね?」
(木村)「わからん。ブレーキ跡があるから
ハンドル操作を誤ったか、居眠りか、
眼の錯覚か、そこらへんだろう」

(山田)「先ほど、身重の奥さんが確認に
こられまして、それは可哀想で」
(木村)「それはそうだろう。生まれて
くる子もかわいそうだ。で?」

(山田)「帰り際に奥さんが?」
(木村)「?」
(山田)「何故スコップがあるのかしら?と」
(木村)「おとといはなかったのか?」

警官が駆け込んでくる。
(警官)「目撃者が現れました。コンビニで
昨夜若い女がこのバンに乗るのを見たと」

(木村)「若い女?」
(警官)「ええ、25,6の髪をアップにした
美人だそうです」

(木村)「よし、山田。すぐモンタージュだ」
(山田)「はい、わかりました」
山田と警官、木村に敬礼して去る。

木村、返礼したあと、湖を見ながら、
(木村)「殺すつもりだったのか?」

東尋坊

○道
木村刑事と山田刑事が歩いている。

(山田)「重要参考人は各務原悦子25才。
スーパーのレジ係でまだ勤めたばかり。
あの日以来店には来ていません。湖周辺でも
痕跡は見つかりません」

(木村)「ふむ。すぐに手配しよう。
親元と友人関係は?」

(山田)「三国町に50過ぎの母親が1人で住んでいます。
北海道松前から流れてきた海女で、ここ十年来の稼ぎ頭

だったそうです。今はみやげ物店の店頭でサザエを焼いていますが、
悦子には高校卒業してから1度も会ってないそうです」

(木村)「そうか、出たっきりか」
(山田)「友人関係は、高校時代の陸上部3名。
高三の時、山本という恋人を亡くしています」

(木村)「ああ、よく憶えている」
(山田)「そうでしたね、あの時の?」

(木村)「鏡湖で入水自殺を試みて、
悦子は助かり山本は水死した。その時
お母さんにも会っている、病院で」

(山田)「各務原と鏡湖ですか?」
(木村)「ふむ」
木村刑事、思案顔で黙り込む。

○東尋坊、先端
観光客でにぎわう東尋坊の先端。
木村刑事と山田刑事がいる。
絶壁を覗き込みながら、

(山田)「これじゃ、落ちたらいちころですね」
(木村)「夜もこのままだから、こわいよな」

(山田)「死神に取り付かれたら、ついふらふらと」
(木村)「ありうるな。後ろからどつかれても一発だ」
二人、絶壁をのぞきこむ。

○同、みやげ通り、夕
恵が店頭でサザエを焼いている。
夕方で人通りはまばら。
木村と山田、恵の話を聞いている。

(恵)「あの子も私と同じで男運が悪うてね。
好いた男にゃ逃げられるし。いやな男にゃ
付きまとわれるし。悦子は、高校卒業してからは

1度も私んとこへは帰っとらん。名古屋へ行くとか
言うとった。7年前じゃ。私も、こう見えても忙し

うてな。海女組合の理事やってるし、ベテランよ。
今でも時々潜る。もう5分は潜ぐれんがの」

(山田)「5分ですか?」
(木村)「・・・・・」
(恵)「今じゃ3分がええとこじゃ。素人と同じじゃ、ハハ」

(木村)「悦子さん、泳ぎは?」
(恵)「子どもの頃から泳ぎは得意よ。あの子は今でも
5分潜るよ。それでも高校生になると陸上部に入りよった。
よう分からんの。自分の娘でも、ハハハ」

木村、山田、サザエを食べている。

思い出

○イメージ
夕暮れの東尋坊の遠景。

○鈴木の家、外
郊外の新築の一軒家。
鈴木の表札がかかっている。

木村刑事と山田刑事がやってくる。
表札を確かめ、
山田、インターホンを押す。

(女の声)「はーい、どちら様ですか?」
(山田)「先ほど電話いたしました福井県警の
木村と山田ですが」

(女の声)「はい、すぐ参ります」
玄関の扉が開いて、鈴木隼人と瞳が出てくる。
瞳は赤ん坊を抱いている。

(木村)「どうも、休日のところすみませんが、
この方ご存知ですね?」
木村、写真を見せる。

二人、のぞきこむ。
(鈴木)「各務原悦子?知ってます」
(瞳)「同じ陸上部でした。すごく
綺麗になったみたい、髪型かしら?」

(木村)「先日の鏡湖転落事故の参考人として
探してますが、手がかりが全くありません。
7年前のことで恐縮ですが、何か心当たり?

鏡湖の入水事件、山本太一君が亡くなった、
あの頃のことを思い出してもらえませんか」

(鈴木)「あの事件の数日前に皆でバーべキュー
大会をやりました、鏡湖で」

(瞳)「陸上部の卒業打ち上げで、山下先生と、
山本、各務原、竹内佳子、それと私達」

(木村)「全部で6人ですね?場所は?」
(鈴木)「西岸のキャンプ場です。(瞳を見て)佳子
は山本と小学校以来の同級生で仲がよかったよな?」

(瞳)「でもね、実は悦子から山本君に付きまとわ
れて困ったものだわと聞かされたことがあるわ」
(鈴木)「いつごろ?」

(瞳)「高三になってすぐの頃」
(鈴木)「悦子が山下先生を慕っていた事は、
皆知ってたよな?」

(瞳)「そう、それは。それとなく皆が知ってたわ」
木村と田中ずっとメモを取っている。

○美容室、内、朝
開店前の美容室の中。
竹内佳子が、木村、山田と話している。

(佳子)「そう、あのバーベキューの時、瞳が、
山下先生いつ田中先生と結婚するんですか?と
質問して、山下先生どぎまぎして、あの時の

山下先生を見つめる悦子の目は異常でした。そうそう、
あの時悦子が言った言葉を思い出しました」

○イメージ
7年前のキャンプ場。
バーベキューの食材を点検しながら、
肉を串に刺している悦子、佳子、瞳。

(悦子)「そんなもん、なかなか結婚なんて
でけへんわ。ふん。はよ食べよ」
瞳と佳子、顔を見合す。

雪の鏡湖

○道
木村と山田が歩いている。
(山田)「なかなか各務原悦子の行方
が分かりませんね」
(木村)「ああ」

(山田)「名古屋あたりか、どこかで死んでたりして」
(木村)「それはない」
(山田)「えっ?」

(木村)「もし自殺するんだったら、必ず
その前に姿を現す、ここに」
山田、いぶかしげに木村を見る。

(山田)「・・・・?」
(木村)「俺の勘だ」

○イメージ
サザエを焼く各務原恵の明るい笑顔。

(恵の声)「あの子も私と一緒で、男運が悪うてね。
好いた男にゃ逃げられるし、いやな男にゃ付きまとわれるしね」

○屋台、内、夜
木村と山田、飲んでいる。

○同、外、夜
雪がちらついている。
木村と山田が暖簾を分けて出てくる。

(山田)「もう雪か。各務原悦子はどこにいるのでしょうね?」
(木村)「この近くだ」
(山田)「?」

二人歩く後姿。
暗闇に雪が降りしきる。

○鏡湖、民宿の庭
湖は一面雪に覆われている。
小春日和である。

民宿の東山老人と孫娘アキが、
雪の上、外庭で話している。

(アキ)「じいじ、春はまだなの?」
(老人)「春はもうすぐじゃ。雪がこんなに積もると、
その下には春が少しずつ芽吹いてくるのじゃ」

(アキ)「ふーん。春は雪ノ下にあるんだね」
アキ、しゃがんで雪を掘る。
(老人)「ワッハッハッハ」

美しい雪の鏡湖。

○車販売店、外
雪かきされている店舗。
新車が展示されている。
桜の木が1本植わっている。

乗用車が1台入ってくる。
鈴木が下りてきて桜の木を見る。

(鈴木)「もうすぐ春か?」
鈴木、店内に入る。

○同、店内
手前に鈴木の机。
奥に課長の机。
電話が鳴る。

(鈴木)「早いな」
鈴木、受話器を取る。
(鈴木)「はい、オート自動車販売、営業の鈴木です」

(悦子の声)「鈴木君?鈴木隼人君?各務原悦子です」
(鈴木)「えっ?各務原さん?君、今どこにいるんだ?
みんながさがしてるよ」

(悦子の声)「内緒にしてて、誰にも言っちゃだめよ。
今日の午後3時、鏡湖に来て。何もかも話します。
竹内佳子も呼んであるわ。絶対に他言は無用よ。
3人だけの同窓会、3時にね(ガチャ)」

鈴木、受話器を置き、卓上のメモに、
『鏡湖、3時』
と、大きく書きとどめる。

(鈴木)「佳子も来るんなら大丈夫だろう」

真実

○湖岸、キャンプ場
ここ数日の小春日和で道の雪は解けているが
周りには雪がまだのこっている。
湖の氷も融けかけてきている。

『氷上危険』のたて看板。
タクシーが1台来て止まる。
美しい着物姿の悦子が下りてくる。

(運転手)「夕方から天気が崩れますから気をつけてください」
(悦子)「ありがとう。友人が二人、車で来るから大丈夫です」
運転手、会釈して車走り去る。

悦子、氷の湖をじっと見ている。

○車販売店、外
店内の課長が見える。

○同、内
電話が鳴る。
課長が取る。

(課長)「はい、オート自販です。あ、奥さん、ご主人今
営業に出ています。確か三時にどこやらのメモが。
ちょっとお待ちください」

課長、鈴木の卓上を見る。
(課長)「鏡湖3時とメモに書いてあります」

○鈴木の家、内
瞳が電話をしている。
向こうにベビーベッドが見える。

(瞳)「鏡湖3時。分かりました。どうも」
瞳、静かに受話器を置き、宙を見つめる。

○鏡湖、キャンプ場
かなりの雪が残っている。
悦子が中央に立っている。

佳子の軽自動車が来て止まる。
ドアを開けて佳子が下りてくる。
(悦子)「おひさしぶり、佳子さん」

(佳子)「悦子さん・・・」
佳子、悦子の美しい着物姿に見とれている。
すぐにもう1台乗用車が現れる。

ドアが開いて鈴木が下りてくる。
(鈴木)「おひさしぶり。悦子さん」
(悦子)「お久しぶり。・・・3人だけの同窓会、
皆さん、お幸せのようですね?」

(鈴木)「山下先生を殺したのは悦子さんだね」
(悦子)「ホホホ、どうして分かるのそんな事?
あれは事故よ。山下はハンドルを切りそこなって湖
に突っ込んだのよ。私は運良く逃げ出せただけのことよ」

(鈴木)「やはりそうか。君は泳ぎが達者だから、
秋の湖でも・・・」
(悦子)「そうよ、へっちゃらよ」
開き直った悦子の顔。

○イメージ
湖岸の崖のカーブ。月光の中、湖に
ダイブする四駆のスローモーション。

○イメージ
水中、月明かりで浅い湖の底に
四駆が沈んでいるのが見える。
シートベルトをはずしドアを開け泳ぎ出る悦子。

山下は運転席でシートベルトがはずせず、
必死でもがいている。
もがき息絶える山下の断末魔の顔。

○イメージ
水面に浮上する、月明かりに美しく
映える悦子の顔。

吹雪

○元のキャンプ場
悦子、鈴木、佳子がいる。

(佳子)「もしかして、山本太一君もあなたが計画的に殺したの?」
(悦子)「ホホホ、その通りよ。一度体を許したら、もう
狂おしいまでに私を付回すのよ。うざいったらありゃしない」

(佳子)「でも、殺さなくても?」
(悦子)「山本太一は、一緒にならなきゃ、何もかも山下先生に
ばらしてしまうって言うのよ。そんなことされたら、大好きな
山下先生は私の元から去っていく・・・」

(佳子)「だから殺したの?」
(悦子)「太一と心中なんてばかばかしい。たらふく
睡眠薬を飲ませて、湖の中へ引きずり込んでやった」

(佳子)「悦子さん・・・」

○イメージ
水中でセーラー服の悦子が、山本の背中を
蹴り沈めている。やがて山本は下に沈み、
悦子は浮上する。

○イメージ
水面に浮上して大きく息を継ぐ悦子の顔。

○元のキャンプ場
悦子、鈴木、佳子がいる。
(鈴木)「山下先生にはもうすぐお子さんが
生まれるはずだった。君は知っていたのか?」

(悦子)「もちろんよ。7年前、私は散々もてあそばれた。
田中先生と結婚した山下先生は、私を裏切ったのよ。
もう2度と自分の前には現れないでくれと言って、
多額のお金を渡されたわ」

(鈴木)「なのに、なぜ?」
(悦子)「私の血なのよ。どうしようもできない私の
体内を流れる血が、何もかもを悪い方向へと、
巻き込んでいくのよ。これはどうしようもないのよ」

(佳子)「耐え切れなかった」
(悦子)「そう、命に宿る宿業はどうやっても変えきれ
ないのよ。命の奥底ですさまじい情念が私の体を勝手に
破滅へと走らせるのよ。全ての知恵とエネルギーを集中させて」

(鈴木)「それで山下先生を」

(悦子)「そう。山下先生も私の殺意を本能的に
察知していたと思う。私も車に乗り込んだ時、
もう先生の殺意を感じ取っていた。私の武器は

母親からもらった水中3分間の息止めだけ。それを
最大限に活用するしかない。水が入るように窓を
少しだけ開け、シートベルトをしっかりと締めて、

山下先生のベルトに細工をした。意を決して思い
切りハンドルにしがみついた。ここが1番浅い
湖底と知っていたから」

(鈴木)「なんてことを」
(佳子)「・・・・(涙)」

(悦子)「全てはうまくいったのよ。水の中は静かで
とても美しい。今度生まれてくる時は、過去の宿業
を断ち切って、清らかな命で生まれてきたい。・・・
ただそれだけ、あなた達に言いたかった事は」

悦子、湖面の氷上へ小走りに駆け上がる。
(佳子)「悦子さん、あぶない!」
悦子、さらに氷上を沖へと向かう。

佳子、駆け寄ろうとする。
(鈴木)「佳子さん、行っちゃだめだ!
彼女と心中することになる、佳子さん!」

佳子、立ち止まる。
(佳子)「悦子さん!」
悦子、さらに沖へ向かう。とその時、

一天にわかに掻き曇り。雷鳴が轟く。
稲妻が走り、ひょうが降ってくる。
(鈴木、佳子)「悦子さーん!」

悦子、にっこり笑って両手を挙げ、
氷の割れ目に水没する。
雷鳴、稲妻、ひょうが降る。

鈴木、佳子をかばって乗用車に乗り込む。
佳子、涙にくれている。
ものすごい吹雪。視界はゼロに近い。

その中を、赤灯を回転させながら
パトカーが1台ゆっくりと来る。
鈴木の車に横付けして止まる。

パトカーのドアが開く。
木村刑事が出て来て、鈴木の車の
後部ドアをすばやく開ける。

眠る湖(最終回)

○鈴木の車、内
後部ドアが開いて木村刑事が乗り込む。
(鈴木)「あ、刑事さん」
(木村)「ふむ、奥さんから電話があって、たどり着いたらこの吹雪だ」

佳子、助手席で泣いている。
(鈴木)「悦子はたった今、氷上の割れ目に水没しました」

(木村)「そうか。覚悟の入水自殺だったんだな。
これじゃ助かるまい。寒波再来、捜索は無理だ。先導する。
ゆっくりとパトカーの後に着いて来なさい。
佳子さんの車は私が運転する」

(鈴木)「分かりました。ありがとうございます」

○山道、夕
吹雪の山道を列をなしてゆっくりと進む3台の車。

○鏡湖、夕
ふぶき舞う鏡湖の遠景。

○鏡湖
積雪の鏡湖。晴天である。
民宿の庭で、東山老人が孫娘アキと話している。

(アキ)「なかなか春は来ないね」
(老人)「あー。なかなか春は来ない。じゃが、
冬は必ず春となる。ハッハッハッハ」

アキ、無心に雪を掘っている。

○車販売店、外
二分咲きの桜が見える。
鈴木の車が入ってくる。
鈴木、降りて桜に眼をやる。

(鈴木)「もう春か?」

○湖岸
まだ氷の張った湖岸の桜並木を
帽子をかぶった東山老人が歩いている。
老人、岸辺を見、はっと立ち止まる。

老人、ゆっくりと水面に下りる。
かがみこんで氷の湖面を覗き込む。
帽子を掴み氷の面を磨く。

氷に閉ざされた美しい着物姿の悦子の顔。

○鏡湖の遠景
パトカー、救急車が止まっている。
人垣に木村刑事と山田刑事がいる。
恵の姿が見える。

(恵の声)「間違いありません、悦子です。・・・
主人が死んで、北海道から10才の悦子を連れて
福井に来ました。北海道の昆布漁に比べれば、

まだこちらのほうが楽なもぐりでした。
不倫同士が恋仲になってしもうて。
主人は自殺したとです」

○イメージ
東尋坊の遠景。

(恵の声)「その時の恋人が、北海道の自分の家族
を捨てて、福井まで追いかけてきました。ところが
その男は15の悦子を犯したとです。私と悦子は、

夜陰にまぎれて、その男をだまし、東尋坊の北の崖
から突き落としました」

○回想、月夜の東尋坊、崖の上
月明かり、東尋坊北側の草原。
絶壁の上に悦子が赤灯を持って立っている。

向こうから白灯の男が近づいてくる。
草むらに身を隠す母、恵。
長い竹やりを持って構えている。

(男)「悦子」
(悦子)「ここよ」
赤灯に白灯が急接近する。

白灯めがけて恵の竹やりが突進していく。
(男)「わーっ!」
宙に飛ぶ白灯と男の影。

○イメージ
月夜の東尋坊。
絶壁の上から白灯と共に
海に転落する男のスローモーション。

崖の上。月下にたたずむ母娘の影。

(恵の声)「とにかく、わしらは男運が
悪かとです。どうしようもないとです。

今度生まれてくる時は、ほんと
清らかな命でと願うとります」

○イメージ
鏡湖の水中。
沈み行く高校生の山本太一と
セーラー服の悦子のスローモーション。

○イメージ
月下の鏡湖にダイブする山下の四駆。

○イメージ
雪の鏡湖の氷上から水没する着物姿の悦子。
悲しくも美しいその眼差しがゆっくりと
氷の割れ目に沈んでいく。



                     ー完ー

眠る湖

眠る湖

(シナリオ)北陸の美しい湖で事故死が続く。氷が解ける頃、着物姿の美しい女性の氷結死体が上がった。自殺か他殺か?事故死なのか?謎が潜む眠る湖に深い怨念が沈んでいく。

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-04

Copyrighted
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Copyrighted
  1. あらすじ
  2. 湖へ
  3. キャンプ場
  4. バーベキュー
  5. 釣り場
  6. 無理心中
  7. それから7年後
  8. 再会
  9. 月光
  10. 殺意
  11. 東尋坊
  12. 思い出
  13. 雪の鏡湖
  14. 真実
  15. 吹雪
  16. 眠る湖(最終回)