人生航路〜我道ワガミチ・救道スクイミチ・凪道ナギノミチ〜

  
・本人談
   物語の始まりは俺が俺と出会う前から始まっていた。
   すべての航路はいつか終着港へ帆を広げる。
   俺の航路もその一つだった。
   夢や自らの運命さえもが囚われたこの惨めなどうしようもない世界で、それでも俺たちは抗い続けるのだ。
   俺たちの行く末は誰にもわからない。
   だからその道は、俺たちが決めてゆかねばならない、儚くも尊い人生航路なのだ。
   それがたとえ、永遠の別れだったとしても、俺たちの航海幕は旗を掲げるだろう。
   その先に待ち受けるものが、たとえどんなに困難なものであろうと、
   俺たちの瞳から正鵠を射る意志が消えることは決してないのだ。
   明日を向け、そこには今日よりも昨日よりも、お前を待ってるものがある。
   それこそは、人生航路なのだから…
・あらすじ
 『我海』
   名も知れない町で、安穏とした高校生活の三年目を岡本龍平は迎えていた。
   龍平は名の知れた宗教を、生まれたあと少ししてからから母親と共に学びだすようになった。
   まっとうで何事も勧誘も募金集めも行わない、そんな風変わりな宗教法人だった。
   聖書を用いることからここ日本での関心度は低く、その評判は決してよいものではなかった。
   だがその解釈の仕方は誠実で一切の誇張や偽りがなく、彼らは熱心な布教活動もしていた。
   人に好かれないその宗教での教えから逸れ、今ようやく自らの手で夢を描き始めた龍平のもとに、
   彼はやってきた、その時間軸に。その世界線に。
   世界の終わり。
   その日から時を超えやってきたもう一人の自分に、龍平は混乱の窮地に立たされていた。
   名前を語らないもう一人の自分。
   容姿が瓜二つで、どこか虚ろなもう一人の自分は、別の世界線の人間だった。
   もう一人の自分が語るに、この世とは別の世界で彼はその宗教が予言した終わりの日つまるところ、
   ハルマゲドンと呼ばれる出来事で永遠の滅びを与えられたが、その裁きに含まれた慈悲には、
   教えに逸れた自分ではなく、この世とは別のもう一人の自分を救う使命が与えられていたのだ。
   語る彼もかつては同じように別の世界線から来た自分に己の信仰を守るよう願い求められたという。
   だが判断を誤った彼は自分の理想を盾にその世界で成功を目指したが、
   結果として夢半ばに突然、その終わりの時がやってきたという。
   たった一つの人生を生きる龍平は、彼の語る真実をどう受け止めるのか。
   龍平の答えた己の選んだ道とは一体何だったのか。
   世界の終わりの先を知ったこれまでの自分たちは何をかつての自分たちに伝えたかったのか。
   すべては闇のなか。
   龍平はかつての自分の失敗を糧に、もう一度今を生きる世界で成功させることを決意する。
   夢もなくし、生きるすべも、恋人もなくして、すべてをなくしきった龍平は空を見上げていた。
   歳も中年すら通り過ぎようとするころ、その日はきた。

 『救海』
   与えられた慈悲を胸に、生き抜く希望を盾に、救えなかったかつての自分を救うため、
   龍平の「航海幕」が今一度、己の人生とその未来をかけて、旗を掲げる。
 『凪海』
   とある青年が和風庭園の隅にある椅子に腰かけていた。
   彼はかつての日々を思い出し、かつて自分を救った中年の顔を思い出して、夢うつつに涙を流したのだった。

人生航路〜我道ワガミチ・救道スクイミチ・凪道ナギノミチ〜

人生航路〜我道ワガミチ・救道スクイミチ・凪道ナギノミチ〜

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-04-15

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