宵神戦争

物語の概要

二○某某年 某県某市
宵神学院高等学校(ヨイガミガクイン)
総生徒数二五八三名
第一○八期生徒会総員一七○○名
委員会数、四三個。
生徒会の抗争を主軸とする物語。
生徒会の内部から歴史を重点に様々な委員会同士の戦いを追った生徒会戦争。
代議員会に所属した一人の少年の視点で描かれるファンタジックなシリーズ小説。
生徒中心とした生徒会であるのに対し教職員が敵対関係として描写されるシーンが極めて多く、教職員との討議会も多々あるという。
教職員側は各職員の職員会がある模様。
全校生徒数の約半数を占める宵神学院の生徒会では、各部署ごとに設けられた役割が政治的行為にも匹敵するなど、高等学校でありながら犯罪を黙認とする異例の超法規的教育機関である。
未成年者による軍事的行為や飲酒喫煙などの描写も含まれるため、読者からは賛否両論の声があがっている。

ーーー歴史
第二次世界大戦後の連合国軍最高司令官総司令部による民主主義定着政策の1つとして、学校における生徒の自主活動が推進され、小学校、中学校、高等学校などに各種の自治会が設けられた。なおその後、小学校、中学校、高等学校などの自治会の活動は学習指導要領に規定され小学校などでは「児童会」、中学校、高等学校などでは「生徒会」という名称に統一された。
ここ宵神学院においても生徒会は同様の位置付けとなっている。
尚、当校の現生徒会における統治体制のみは旧国連軍最高司令官総司令部直属の組織とし、ここに政府公認の特許を置く。
国として宵神学院は今後機能していくことになり、それは武偵教育機関や居凰高校に匹敵する。

*=後々主人公の昇進する位置

ーーー主要組織一覧
@生徒会@

〜専門委員会〜
・生徒会研修部(数ヶ月から一年)
代議委員会『代議員』
ー評議課『演説組』
ー所轄課『見廻組』*1
学級委員会
環境委員会
体育委員会
風紀委員会
清掃委員会
衛生委員会
放送委員会
部活委員会
選挙管理委員会
奉仕活動委員会
通学安全委員会

・生徒会成業部(研修部から卒業まで)
開拓委員会
軍紀委員会
司法委員会
ー検察課
ー弁護課
ー調停課
諜報委員会
救護委員会
監視委員会*2
尋問委員会
自治委員会
他校共栄委員会
結社統一委員会
ー(雇傭結社一覧参与)
情報管理委員会『砦』
戦略自衛委員会
復興支援委員会
後方支援委員会
公安理事委員会*3


〜枢密院〜
・龍攻党(入学後選択可)
龍攻党代表
龍攻党事務課
龍攻党活動課
ー密偵班
ー研究班
・虎衛党(入学後選択可)
虎衛党代表
虎衛党事務課
虎衛党活動課
ー工作班
ー会合班
・鬼律党(二年目より選択可)
鬼律党代表
鬼律党事務課
鬼律党活動課
ー他局班
ー作業班

〜総会〜
・生徒会執行部『中央(評議会)』
執行部役員局『本部』
ー生徒会会長『総会長』*7
ーー会計課長
ーー事務課長
ーー発議課長
ーー処理課長*5
ー生徒会副会長『総副会長』*6
ー専門委員会会長
ー専門委員会副会長
ー枢密院長
ー枢密院長補佐
執行部法務局『第一支部』
ー特攻課
ー特捜課
ー特殊課
執行部内務局『第二支部』
ー監査課
ー監督課
ー監事課
執行部外務局『第三支部』
ー公営課
ー公務課
ー公使課*4

・生徒会総務部『地方(評議会)』
三学年代表勢『第一副部』
ー序学年代表
ー破学年代表
ー急学年代表
専門委員会会員勢『第二副部』*1.2.3
枢密院総員勢『第三副部』



@宵神機関@『神童』

〜宵神議会〜
・総帥議長『宵神』(主人公の消失した兄)
総帥議員『元老院』
総帥議員『執行者』


@結社@

〜結社協定会〜
・独立結社
宵神信者『信仰者』
真整組合
異端教理会
解放聖歌隊
祭壇放浪会
人類科学道会
選定立志組

・雇傭結社
腎目会
洋志会
改世会
仙石会
蘭仰会
立塔会


ーーー各部署の説明
・代議委員会
別称、代議員。
数ある部署を研修部の範囲内で代議役を命じられている委員会。
各部署内の見廻り役であり、中でも所轄課は徳川幕府一橋家から取られた見廻組という名で知られている。
他校にも一般的に活用されている代議員とは多々異なる点はあるものの、特殊な成業部とは縁の無い活動分野であるため、それらの活動は上層部より黙認されている部分もある。
一方で、もう一つの評議課においては小規模の議会であり、所轄課との仲も犬猿と謳われるほどである。

・結社統一委員会
独立結社とは違い、生徒会として行動している雇傭された六つの結社、それらを統括しているのが、結社統一委員会である。
主義主張の枠を越えた部署のため、結社統一委員会といえど、行動制限が課せられているわけではない。
結社であることから、それぞれの行動理由は宗教や概念などにおいて多種多様である。
一方で独立結社の連中と揉めることもしばしば起こることもあり、生徒会成業部の手中にあるわけではないため、結社そのものはどちらにしろ予測不可能な部署と称されている。

・情報管理委員会
世界的に有名なエシュロンと同様の役割を担う部署。
生徒の携帯、学校全体の管理情報から全てに至るまでを主に統制している。
情報分野では屈指の制御機関。
そのため、警察分野の委員会においては共同作業が多い。
機密情報などの管理もここで行われているため、ここが宵神学院の情報としての最後の砦と称されている。
だが実質上管理できているのはあくまで情報捜査が可能な範囲であるため、存在するかも証明されていない宵神機関のような不確かな存在の管理は行われていない。

・戦略自衛委員会
宵神学院における、軍事的行為の全権を握らされた武力組織。
その一方で公安理事委員会や枢密院との抗争もここ十年続いたままであるため、解決方法を行う際、中央の認可が必要とされる。
だが、急を要する場合のみは独断行動を行う。
武力での対抗や処置を行うことから、武器による犯罪行為が黙認されている。
砦による情報操作で他校や国とにこれらを隠蔽していることから、彼らの行動はどの手段を用いても外へは流れない。

・鬼律党
生徒会の心臓部分として機能する枢密院を第三者の視点として働く組織。
第二学年からの入会が可能であるため、他党からの入会も多々ある。
生徒会総務部から選出される生徒も多い。
タカ派として学院規則を改新し続ける龍攻党に対し、ハト派として学院規則の守衛を押し続ける虎衛党の対極的な関係から離れた学院党である。
片方の学院党につくわけではないため、主に二つの調停役としての働きが必要とされている。
銃刀法を逸脱した生徒会内での反乱運動に備えて取り作られた学院規則の制御盤である枢密院の心臓部としても活躍している。
そのため枢密院をまとめる枢密院長は必ず鬼律党から、補佐は他党から一人ずつ選ばれている。

・執行部役員局
別称、本部。
生徒会の中心とも言える総会、それを指揮し別称を中央と呼ぶ生徒会執行部、その中に存在する全支部を束ねる、最高議決権を持った学院内の総本山。
総会長こと生徒会会長を中心とする各部署の総代表十二名による円卓会議。
ちなみに総副会長を除く各部署の副会長や補佐には二名が必要とされている。
総会長の下層部に位置する各課の課長をも一人ずつ選ばれているため、円卓会議においての執行部役員局は全体像として、総合的統治組織とされている。
総会の生徒会執行部において、この組織に上は存在せず、教職員側とは一切関係を持っていない。
執行部役員局の円卓会議は非公開であるため、中ば陰謀論と叩く者も多いが、神童と違って確認されている組織であるため、誰もが届かぬ領域と、本部への昇進を諦めている。

・枢密院総員勢
別称、第三副部。
中央である生徒会執行部に対してもう一つ存在する、地方と呼ばれる生徒会総務部、その中の一つにある枢密院の院長と補佐を除く総員を指す。
組織上において中央の下部にあたり、中央の四局の直下の教育組織となる。
他の副部との連携した合同会議として地方評議会を開くが、中央評議会と違って議決権が存在するわけではないため、第一副部であるところの三学年代表勢がそれらの議案を中央に差し出す形としての機能しか持たない。
そして、その地方評議会は生徒会においては最大の議会であり、各部署の総員が出席するため、生徒会の九割がここで集結する。
そのため、地方評議会においては専用の大会議場が設けられている。
もとより教育組織としての部署であることから、枢密院の三党の役所の生徒で組織されているが、もとより中央を目指さない者も地方評議会での出席を強制されている。



ーーー宵神学院の組織像
・専門委員会
総会を通して活動する専門分野に特化した委員会。
数ヶ月から最長でも一年で研修部を終えた生徒は有能な者に相応の成業部に移され第二学年より、生徒会の本業となってゆく。
分野によっては犯罪行為同等の部署も存在するが砦と公安理事委員会によりそれらには黙認されている
また、志願によっては部署も変更できる。
生徒会の重要な役割を担う生徒もここで育成され、後々は本部行きになる者もいる。

・枢密院
学院内の統制分野において特別に割り当てられた政治活動組織。
三つの学院党により構成されており、議会を開くことで中央とは別の議決権を持っている。
学院内での規律はここに集結しているのだ。
第一学年より志望者は枢密院へ入会可能であるが、専門委員会との連携作業は許されていないため、枢密院への入会は中央へ上がるかそのままの枢密院総員勢となるかのどちらかとなる。

・総会
生徒会における最高議決権を有する生徒会執行部とその教育組織である生徒会総務部を備えた学院内の決断を最終的に決定する組織。
専門委員会や枢密院と同等の立場でありながら、役職上、取り扱う分野は宵神学院の管理と永久的統制なので、実質上の統治組織である。
超法規的な宵神学院の統制を維持できる優秀な人材が、総会特に中央やその本部に集中していることから、そこへ辿り着ける者は遥かに僅かだ。

・宵神議会
宵神学院の歴史上最強にして最恐の機関、宵神機関、その中の唯一の議会のことである。
神童と恐れられる機関である彼らが行う議会はどこにも存在せず、だがどこかに存在し、年々変わりゆく生徒会と違って、理論上存在しえないはずのその組織は、歴史をも塗り替えるほどの偉業をなしてきた化け物の集まりである。
生徒会がここまでして予算を保てているのはここからの影響があると推測されている。
宵神と称される総帥議長の下に二種類の総帥議員を数十名ほど配置している模様。
元老院と呼ばれる方は統治の要であり、執行者と呼ばれる方は元老院の意見と共に学院あるいは学院外の場所で組織を裏から操る者に分けられる。
宵神と恐れられる人物はどれくらいの周期に変わっているのかは当然のこと、生徒会さえも全てを知ることが不可能な謎に包まれた暗闇の組織なのである。
当人がそもそも実在するのか、宵神とは名前なのか、それとも役職上の名前なのか、人間なのかすら疑うほどにそれらは全ての組織を遥かに凌駕する存在である。
総会をコインの表とするなら、宵神議会を裏と例える事例が多い。

・結社協定会
独断で行動する独立結社は各々の信仰または目的とする組織であり、一方で結社統一委員会の直属となる雇用結社は生徒会の指示で働く組織である。
その双方を束ねる同好会として設立させたのが結社協定会だ。
協議するものも存在しないため、この会は形上の協定会となっている。
いざという時の存在価値が高いためか、宵神戦争が開始された当初から固い中立の立場を維持している模様。


ーーー最終話までの大幅なあらすじ

S1-1クール回
高校生活を新たに踏み切った主人公・明澤カイトは兄が三年前に死んだ結果失意のどん底にいたため、他人との距離を開けることを、理由に隣町の私学へ入学した。
山奥の街一つ無いそのど真ん中に位置する宵神学院高等学校は学院の名を持ちながら高等部のみの学校であったり、生徒数が三千人近くいたり、何より莫大な費用が生徒会にかけられていたりと、学院内に漂う謎への執着を持ち始めたカイトは、生徒会に入会することになる。
研修部の代議委員会であるところの所轄課で、様々な事件に遭遇しながらもそのほとんどに立ち向かったカイトは八ヶ月を経て成業部の監視委員会に所属する。
研修部時代の功績を認められていたカイトは先輩のツテもあって二ヶ月後に公安理事委員会でも厳しく鍛えられていった。

S1-2クール回
昇進限界と呼ばれる専門委員会成業部をなんとわずか五ヶ月で卒業したカイトはその鍛錬の成果にようやく自信を持ち始めることができていた。
謎残しの多い数々の未解決事件は、全て宵神学院最大の謎である、『宵神は誰(God Who)』に繋がっていたことに気づいたカイトは、専門委員会の直轄である生徒会総務部の第二副部からの昇進を申し込み、地方評議会から中央評議会への道に上がる。
各部署との抗争や結社の陰謀は後をたたず、諸問題を解決できなくなりつつあった学院内では生徒会の崩壊が寸前に迫っていた。
その一方でカイトは執行部外務局の第三支部で公使課として学院外で、関西地域内の管轄大使を命じられていた。
各地方での教育委員会やその監督下にある他校の生徒会との総合討論会で他校からの疑惑が既に全国的になりつつあることにカイトは不安を抑えきれずにいた。
そんな中ついに政府から送られた室馬と名のる男に拉致されたカイトは東京で尋問を受けることとなる。
結社統一委員会の直下にある雇用結社・賢目会の助力もあって命からがら抜け出せたカイトは政府からの密命を預かっていた。
二重スパイとして国からの援護を受け、その一方で学院側の立場でいることなったカイトはその罪悪感故に自身の感情を押し殺すことしかできなかった。
生徒会総本山である生徒会執行部の執行部役員局、つまり本部への昇進。そして生徒会会長直属の処理課長として努力を重ねていたカイトはいまだ政府からの密命を隠し通したまま生徒会でのルーキーとして名が知れ渡っていた。
処理課長としての役目は名の通り、学院内での事件後の整理や後処理に対処しきれなくなった場合に出動させる特許の処理部隊のことであり、その最高司令官の任にカイトは居座っていた。
だが、本人の心の罪悪感は既に消えなくなっており彼自身の秘めた闇となっていた。
生徒会会長への忠義は誰よりも固く、生徒会での発言はその影響力を高めていた。
高校二年生も終わりを迎える三学期に、カイトは東京への出入りを多くし始め、闇の内を誰にも明かさずに意地でも自我の精神を強く持とうとする一方であり、新たな部署への通知に驚きを隠せずにいた。

S2-3クール回
生徒会において総会長の次にとなる総副会長つまり生徒会副会長へ奇跡の昇進を果たしたカイトは学院内に残された裏問題を着々と終わりに向かわせた。
現生徒会会長である三年の沖田サナエへの忠義がいつの間にか一人の女性として見るようになっていたカイトは、己が決意への問いに目的を喪失することとなる。
室馬との戦いはまだ終わっておらず、政府との連携は続いていても、関係は既に因縁のものとなっていた。
カイトは権力者でありながらもその謙遜さは薄れることなく存在し、沖田からも周りからもその信頼は確かになっていった。
処理現場での任に当たっていた時に、カイトはそこにいた瀕死の三年に宵神機関の名を口にしたのに疑問を持ち、都市伝説であるはずの宵神機関に興味を持ち出していった。
一方で宵神信者と呼ばれる独立結社最大の組織が中央評議会に反発を示したために生徒会内で信仰者側と生徒会側の対立が起き、ときに武力衝突も多々起き始めた。
この混乱は生徒会歴でも珍しく、少数派の独立結社が反発することがあっても、巨大化しつつあった宵神信者との対立はいまだかつて無かったことから、その損害は最悪なものとなっていた。
そんな中で本部内の信仰者側だった一部の生徒が起こした犯行により、沖田が偶発的に死亡した。
その混乱を沈めたのはかつてないほどに怒り狂ったカイトだった。
邪心の暴れるがままに殺戮を歌ったカイトは、その身に頼る大勢の部下と共に、圧政的な残虐行為に足を踏み入れようとしていた矢先、室馬との再会を果たし、その場でカイトが隠し通した真実を語られることになる。
最悪の状況を破壊した最悪の事態にカイトはその全ての部下と友人たちからの信頼を失ったため、反乱を終え静まってゆく生徒会内で唯一孤立するようになった。
反逆として信仰者からも生徒会からも罰せられることとなったカイトはなす術もなく、生徒会副会長を降ろされるのは勿論のこと、中央第二支部である執行部内務局の監査下で監禁状態になった。
カイトの中にはもはや止めようのない闇で溢れていた。

S2-4クール回
投獄された闇の中でカイトは全てを終わらす決意をしていた。
消えることの無いおぞましい記憶と過去に終止符を打つことを決心したカイトは脱走後、東京へ向かうことにする。
東京で自らに正面から敵と言える存在を見つけた室馬の人生エピソードが始まる。
向き合った二人は最後の決着を必ずつけると宣言したカイトの一言をもって別れた。
己が信念のために闘う男と、己が復讐のために闘う男の物語がここで始まったのだった。
戻ったカイトを出迎えたのは新生徒会会長となったかつての友人だった。
裏切り者のレッテルを貼られていたカイトは、拳のぶつかり合いにもめげず、ただの学校生活を送ると宣言しその時から生徒会との関係を完全に断ち切った。
平凡な日常の中で、憎まれていた生徒会と違って普通の毎日はカイトの心をようやくひらかせるようになってきていた。
生徒会に入らなかった最初からの知り合いはカイトの心をほぐし慰めていってたのだ。
沖田を想いながら今を生きようとするカイトは誰の目からも輝いて見えていた。
誰かの上にたつのではなく、誰かの下で誰かのために働くことを喜びと感じていたカイトは三年の二学期に忽然と姿を消した。

S3-5クール回
この学院を見えないところで制し、国そのものさえ恐れている暗黒組織・宵神機関。
その全貌を暴くために身を潜めつつも様々な場所で探り続けていたカイトは、突如として生徒会会長の前に現れる。
死亡と判断されていた本人の到来に生徒会は混乱状態になる。
全てを捨て、幸せだった普通の学校生活をも投げてここへやってきた理由がカイトの口によって語られることとなった。
『God Who』の解明は目前にあること、それらを必ず暴き、それが終わった暁には全てを終わらす決意を言い放ったカイトは生徒会からの邪魔が入りつつも堂々とその場を離れていった。
一匹狼と呼ばれ始めたカイトの噂は一般生徒のなかでも有名だった。
生徒を統べる者への復讐とこの不幸に犠牲となったいままでの人々のための野望。
それらは歪んでいてさえもカイトの中に根強く残っていて、もはや揺らがない精神がそこにあった。
そんな中でカイトはある事柄を処理課の面々が来る前に事件現場で見つけた。
それをきっかけに繋がり出した一連の事件の全容を理解したカイトは少しづつではあるが手がかりを導き出していった。
都市伝説を本気で探るカイトを笑っていた生徒たちに、カイトは物ともせず粘り続けた。
そしてあきらかな異変を察知しかつての友人にして現生徒会会長が宵神機関と関わりがあることに気づく。
情報をもとに辿ってゆくこれまでの経緯を再び解析しながらカイトの高校生活にも終わりが近づいていることに焦燥感を覚えていた。
その頃、室馬は既に宵神機関唯一の議会に立っていた。
存在しないはずの、政府までもが怯えていたその宵神の全てを司る者に室馬は自分の全てをこの戦いにかけると誓ったのだった。
カイトに組するものは既に幾十人かいて、カイトの信頼性は一部でも生徒会内で戻りつつあった。
だが、彼の前に立ちはだかったのは生徒会内に存在した宵神機関の執行者と呼ばれる者たちだった。
戦況がしだいに荒れ出した宵神学院のなかでは一般生徒の見える場所でも抗争がはっきりとなっていた。
カイトは信頼を誓い合った仲間たちと共に非武装勢力として、様々な戦場でどちらの側でも人を助けていた。
全ての原因を工作し、虚偽と深淵のなかに潜む本当の悪にカイトは立ち向かっていった。

S3-最終6クール回
人里離れた山奥に存在する最大にして最強の学院・宵神学院高等学校。
その全てを統べ、果ては国さえも揺らがさんとしているこの学校の真の神、宵神。
それらが表だつ行動をとり出した結果起きた戦争は生徒会どころか一般生徒に加えて他校へ被害を出し、国中にその名を知らしめた張本。
全てを司る全能と謳われた組織・宵神機関。
それらがようやく暴かれることとなった。
執行者と共にやって来た暗闇の中でカイトは、宵神の正体について、真実を知ることになる。
カイト達の政府を通して国に口外したこれまでの隠された歴史、それらに怒りを表した宵神機関は執行者の一人にカイト本人のみを出迎えさせたのだった。
全ての謎を生んだ総本山にカイトは闇の人物たちに喋り続けた。
静寂と神秘の中に生きるその頂点に立っている宵神議会の総帥議長にして宵神と呼ばれる人物は議会とは違った存在だった。
元老院はかつての宵神学院の卒業生であり宵神本人もそのようなのだとカイトは言ったが見た目はどこか儚げな年上の好青年だった。
そうして暗闇の世界から放されたカイトはその惨状に世界が止まるのを感じていた。
宵神学院に向けて囲んでいた国の軍隊に、カイトは出る言葉を失っていたのだ。
徹底的な裁きという惨劇を執行しだした軍に学院はどの武装勢力をもってしてでも次々とうち払われていっていた。
圧倒的な力の差になす術もなく朽ち果ててゆく無惨な死体の山に、ただ泣く事しかできないでいたカイトに宵神はこれからの闘いに共に立ち向かうことを約束した。
二人が命がけでやって来た学院校外の山の頂上に、室馬本人はいた。
ただ単なる憎み合いではなく、それぞれの想いと信念をかけた関係に、室馬は別の場所で出会いたかったと語り始める。
戦況が一方的な虐殺になってるなか、各部署の総員は全力で一般生徒を守り、学院そのものを救うために血も汗も涙もかけて戦っていた。
室馬との最期の会話が終わると同時に、走ってきた兵がカイトを狙いすぐに打ったのだった。
刹那の出来事にカイトは理解できていなかった。なぜなら、放たれた銃弾はカイトを守った宵神の胸を貫き通したからだ。
困惑するカイトに、宵神はようやく本音を語り出し、最期の瞬間、
「男になったな、かいと」の一言で宵神であったカイトの兄は死んだのだった。
驚愕的な真実にただ何も言うことのできないカイトに室馬はその真実を語る。
自分自身であり、兄でもあった明澤セイジの亡霊かはたまた自分の虚像か、それらに関しては誰にも答えることは出来ない。
そうしてようやく立ち上がったカイトに、もはや誰も太刀打ちすることは出来なかったであろう。
それは、カイトの復讐でも野望でもなく、ただ純粋な完結としてだった。
カイトの構えに対し室馬リエンは構えた。
双方が全力で互いに向かって走り出した時、全ての物が儚い時間だったのだと悟った。
それらが、若者に与えられた替えられない大切なものだったのだと。
青春の幻影は、そこにあったのだ。と。
光に包まれたカイトは室馬と相討ちとなって双方共に倒れていた。
日の燃え盛る山の中を二人は互いに支えながら歩き出していた。
これまでの道のりを振り返って、物語にようやく終止符を打てたのだ。
その後の話。
焼け野原となった宵神学院において、多数の死者を出した結果、それらの原因となった室馬の部署とそこで繋がっていた宵神学院の職員総勢数百名また卒業生が暗躍していた宵神機関を完全解体し、関係者以外は刑務所へと行った。
今回の大事件において、政府内が通じていたこともあり、国は全体的な大改装を行うことを決めた。
彼らの罪は計り知れない。
悪の反対が善であるとは限らない。
だが、善の反対が悪だとも限らないのだ。
あの結果は正しくもあれば悪くもあった。
カイトはそうぼんやりと病室のベットから空を眺めながら考えていた。
同じくカーテンを隔てた向こう側の誰かも。
その本人は向こう側からもよく響く低い声で最後にこう、締めくくった。
「先は長い。お前たちの人生はこれからが本場さ」

宵神戦争

宵神戦争

  • 小説
  • 短編
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-04-15

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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