夢の蝶

 ある日から夢で蝶を見るようになった。蝶は全体的に白く、羽の模様が美しくて、幻想的な雰囲気を漂わせていた。

 蝶は「ついてこい」とでも言っているかのように、俺の周りを何周かして、どこかへ飛んでいく。俺は後を追いかける。だが、夢はいつも途中で終わってしまう。

「夢って儚いな……」

 なんて呟きながらいつも通り、会社へ出勤する。

 俺はサラリーマン。でも、会社にはあまり好かれていないようだ。

 そして今日、会社に行くと自分の机が無くなっていた。

「部長……。これは一体?」

「あぁ。明日から来なくていいから」

 そして、俺に辞令を投げ捨てた。

 何だよこれ。

 何だよ俺の人生。

 やりきれない気持ちを酒を呑んでごまかした。

 夜の街をふらふら歩いて、店から店へ飲み歩いた。

 途中でイカツイ兄ちゃんに声を掛けられた。

「なぁなぁ。金くんない?」

「うるせぇ!俺の邪魔すんじゃねぇ!」

「んだとコラ!」

 俺は顔を殴られ、地面に倒れ込んだ。そして腹を何度も蹴られ、持っていた物と上着を奪われた。

 いいのさ。これが俺の人生だから・・・。

 その時、目の前に蝶が現れた。

「夢で見た蝶だ!」

 蝶は俺の頭の上を何回か回った後、どこかへ飛び始めた。

 俺は立ち上がり、蝶の後を追いかける。

 これでやっと分かるんだ。俺の見ていた夢の続きが。

 着いた場所は草原だった。色とりどりの花達が、まるで自分を歓迎するかの様に風に揺れ、花の甘い香りが草原中に広がっていた。

 蝶はいつの間にかいなくなっていた。

「こんな所を『楽園』というべきかもしれないな。」

 俺は草原に横たわった。

「良い気分だ。」

 そして、俺はそのまま眠ってしまった。

 男が眠った後、花達が動き始めた。しばらく時間がたち、ついに花達が男を覆い隠した。そして、花達は根を男にくっつけた。

 少しずつ男が小さくなっていく。それとともに花達がさらに色鮮やかになり、黄金の蜜を作り出す。

 どこからか蝶が飛んできて、その蜜を吸い始めた。蜜が少なくなるとともに、蝶もまたさらに美しくなっていった。

夢の蝶

夢の蝶

作者 帰宅・・・・・969文字

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-04-01

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