流失渡月橋(A探偵団4)

きりもんじ

あらすじ

(シナリオ)またもや変面から手紙が来た。『春惜しむ 桜吹雪に 花いかだ 歩いて渡れ 船の渡月橋』。まさかとは思うが渡月橋が盗まれる?一体何のために?橋をどうすると言うのだ?

不審な手紙

シナリオ『桜流れの渡月橋』(シネマ村探偵団第4話)

○桜花爛漫の京都

○シネマ村、正面

○シネマ村、内
   撮影風景。
   休憩に入り高田と木村が話している。

高田「それにしてもヘリコプターはすごいね」
木村「変面は大金を持っている。どこかでお金に
 換えてるってことね」

高田「誰が買うんやろな?盗品てすぐ分かるやろし」
木村「国内ではないと思うわ」

高田「いてるな。お金が有り余ってて値打ちも分からんと
 ブランド買いあさる奴が」
木村「いるいる、きっとそういう連中よ」

   亜紀と太一が来る。
亜紀「変なおじさんがこれを原田さんにて」
   亜紀、封筒を木村に手渡す。

木村「どんな人?」
太一「帽子かぶっててサングラスをしててマスクをして
 たから全然分からなかった」

高田「そりゃわからんわ」
   そこへ、山本と原田が来る。
   木村、原田へ封筒を手渡す。

木村「原田さん、これ」
原田「誰から?」

木村「それがよく分からないの?変なおじさんから
 原田さんに渡してくれって亜紀ちゃんと太一君
 が預かったらしいの」

山本「村の人じゃないな。観光客に混じってか?」
原田「差出人も書いてない。とにかく開けてみよう」

   原田、封筒を開ける。
原田「あ、変面からの例の手紙だ」
   皆覗き込む。

木村「あ、ほんとだ」
山本「ゆっくりと開けてみてくれ」
   原田、ゆっくりと手紙をめくりはがす。

   原田、文字を読む。
原田「『春惜しむ 桜吹雪に 花いかだ
 歩いて渡れ 船の渡月橋』。渡月橋て嵐山や」

原田危うし

木村「舟の渡月橋て何か意味ありそう?」
高田「今度は渡月橋もって行かはんの?」
山本「多分そうだ。春の終わり4月の中旬」

   皆、思案顔になる。
山本「それにしても一体何のために金閣や
 長刀鉾を?」

原田「だんだん大掛かりになってきている」
高田「さっぱりわからへん?どこかに
 大きな基地があるのとちゃう?」

原田「変面の基地か?是非あって見たいものだ。
 ゆっくりと話してみたい」

山本「よし、とにかく兄貴に知らせておこう。
 スタッフにも気をつけなければ、
 一味が混じっているかもしれない?」

木村「十分気をつけましょう。渡月橋が
 消えてなくなります」

高田「そやね」
山本「じゃあ、今日はこれで解散」

亜紀「明日は朝からロケ」
太一「8時出発6時起き」
高田「原田さんは明日休み、ほな?」

   原田を残して皆帰る。

 X X X

   原田、ベッドで考えている。
   原田、腕時計を見る。

まだ9時か。腹が減ったなあピザでも取るか」
   原田、携帯をかける。

○原田のアパート、外、夜
   黒の野球帽を深くかぶった男がピザを運んでくる。

○同、廊下
   男、原田の部屋の扉を叩く。
   扉が開いて原田がお金を渡しピザを受け取る。

原田「どうもありがとう」
   男、深々と礼をする。
   暗くてよく見えないが男は忍者である。

○原田のアパート、内、夜
   原田、ゆっくりとピザを開け食べはじめる。
   缶コーラを手にする。
   コーラの缶には変面の顔が書いてある。

   原田、気付かずコーラをごくりごくりと飲む。
   又ピザを食べる。
   急に眠気がしてきてベッドに横たわる。

   原田、すぐさま熟睡する。
   扉が開いて忍者が二人入ってくる。
   すばやくベッドごとかかえて出て行く。

○同、外、夜
   路上にジープが止まっている。
   忍者が後部ドアを開けて待っている。

   忍者二人がベッドを抱えてきて積み込む。
   ドアを閉めて急発進。

○国道、夜
   疾走するジープ。

○夜空、
   変面の顔をしたこうもりが飛んでいく。

○山奥、夜明け
   変面の里の標識が見える。
   盆地の風景が割れてジープが入っていく。
   すぐに元の風景に戻る。

○変面の里、天空
   山奥の盆地、小川が流れている。
   その風景が中央から円形に開く。
   大阪ドームの数倍の大きさである。
   

変面の里

○変面の里、遠景
   山間の盆地。梅や桃が咲いている。
   中央に川が流れていて橋が2本かかっている。
   広場があって鏡餅のような本部棟が見える。

   変面の旗がたなびいている。
   両側にかまぼこ型の建物があって、
   その一つには赤十字のマークがある。

   地下への入り口が数箇所見える。
   所々に忍者の衛兵が立っている。
   高台に天文台のような砲台がある。

   その反対側の丘にヘリポートがあって、
   大型ヘリが止まっている。
   丘の麓に金閣寺と長刀鉾が見える。

   ジープが1台、峠の入り口から現れる。
   広場に忍者達が集結してくる。
   かなりの数である。子供もいる。

○医務室、内
   ベッドに原田が横たわって点滴を受けている。
   脇に金髪の若者が座っている。

藤原「おきろ!原田!おれだ!ふじわらだ!」
   原田、おぼろげに眼を開ける。

原田「おお、純友!藤原純友じゃないか?」
   原田、起きようとする。
原田「あ、頭が痛い」

藤原「昨日飲みすぎて二日酔いだ。まあゆっくりして
 ベッドに臥していてくれ。ベッドごとこの
 変面の里を案内してやる」

原田「ああ、ありがたいが、何か夢のようだ」
   忍者達がベッドを持ち上げる。

原田「はて?昨日飲んだかな?意識が朦朧としてきた。
 いい気持ちだ。まあいいか?今日休みだし」
   担がれていく原田。

ヘリポート

○変面の里の全景

○変面の部屋、内
   テレビとパソコンのモニターが10数台並んでいる。
   棚には演劇美術芸術の本がびっしり。
   デスクの上にはフィギアが一杯。大きな地球儀。

   変面がソファーに座っている。
   原田がストレッチャーで担ぎ込まれてくる。

変面「ここが俺の部屋だ。上はヘリポート。
 演劇はいつでも見に行ける」

   原田は起き上がろうとはするが起き上がれず、
   横目で変面を見つめている。

○ヘリポート
   双発ヘリが2機止まっている。
   衛兵が立っていて高射砲が見える。

○もとの変面の部屋、内
   変面がしゃべっている。
   原田がストレッチャーに寝たまま聞いている。

変面「もっともっと色んなものを集めねばならぬ」
原田「一体何のために?」

変面「前に言ったじゃないか。世界一の劇団を作るためだ」
原田「しかし劇団と言うよりは・・・」

変面「そうさ、一つの軍団、帝国を作るのさ。
 盗むのも芸術なら国づくりも芸術」
原田「芸術?」

変面「そうさ、盗むのは最高のスリリングな芸術だと思っている。
 それも誰も盗めそうにない価値あるものをナ」
原田「でもせっかく盗んでも?」

変面「ところがちゃんと金になるのさ。世界には途方もない金持ち
 がいるもんだ。しかもアホだ。高ければ高いほど食らいついてくる」
原田「そうか、それでも人の命だけは?」

芸術家変面

変面「分かっている。絶対にそれはない。もし
 失敗した時は、俺がこの芸術を止める時だ」
原田「分かった。よく分かった。昔のままだなお前も」

   楽しそうに笑う二人。

○坂道
   坂道を降りる変面。
   原田を担いだ忍者達が続く。
   向こうに色んな像や風変わりな建物が見える。

原田「ちょっと止まってくれ」
   皆止まる。
変面「お、どうした?もうすぐ終わる」

原田「もうすっごく眠くてしょうがない。最後に
 教えてくれ。あの像や建物は何だ?」

変面「あああれか。あれは俺の作品群だ。
 ここからは見えないが、まだたくさんある」
原田「あの自由の女神も、あのお城もか?」

変面「ああそうだ」
原田「ひょっとして?」

変面「そのとおり。じっくりと時間をかけて、
 芸術とはそういうもんだ。そもそも1度しかない
 人生をどう生き切るか、天才はその才能に
 身も心も破れそうになる、つまり・・・あれっ?」

原田「(おおいびき)グーグー」
   原田、熟睡している。
   変面、原田の首にペンダントをかける。

変面「アチャ!」
   変面、原田に敬礼をする。
忍者達「アチャ!」
   忍者達、原田を担いで坂を下りる。

○原田のアパート、外、夜
   ランドクルーザーが1台来て止まる。
   忍者が飛び降りベッドを引き出す。

○同、廊下、夜
   ベッドを担いでくる忍者二人。
   そのまま原田の部屋に入る。

○原田のアパート、外、夜
   走り去るランドクルーザー。

   X   X   X

   白々と夜が明けてくる。

短冊

○原田の部屋、内
   ベッドに眠る原田。
   ケータイがなる。
   原田、目を覚ます。

原田「今日は休みなのに、誰からだ?」
   原田、ケータイを耳に当てる。

山本の声「原田!今日9時から撮影だぞ!
 今すぐ走って来い!」
原田「えっ?先輩、今日9日じゃ?」

山本の声「何を言ってる今日は10日だ!」
原田「ええっ?はい、わかりました!」

   原田、飛び起きる。
原田「なんだって?」
   驚く原田の顔。

○桜花爛漫の嵐山
   桜花爛漫の嵐山の全景。

○川岸
   堤の下の川岸に花いかだの流れがある。
   4,5人の男女のグループがいる。
   少女1、岸辺にしゃがみ込み短冊を拾い上げる。

少女1「まあきれい。何か書いてある。『春惜しむ
 桜吹雪に花いかだ歩いて渡れ舟の渡月橋』なにこれ?」

少女2「どうしたの?」
少女1「これみて」
少女3「アラこちらにも短冊が流れ着いてる」
少女4「なにこれ?」

   皆が集まってくる。
   たくさんの短冊があちこちに流れ着いている。

○短冊の文面
   『春惜しむ 桜吹雪に 花いかだ
   歩いて渡れ 舟の渡月橋』

○京都府警本部
   正面全景。

○同、本部長室、内
   山本本部長、出羽、亀山がいる。
   デスクの上にたくさんの短冊がある。

出羽「いたずらでしょうか?」
本部長「いたずらではない。あの
 渡月橋がもうすぐ消える」

出羽「やはり変面の仕業?」
本部長「私の信頼おける筋からの情報だ。
 間違いない」

亀山「今回はどういたしましょう?
 やはりずっと張り込みますか?」

本部長「ま、とにかく。怪我をせぬよう。
 うまいこと見張ってて、奴が尻尾を出す
 のを待つしかないな」

出羽と亀山、深々とうなづく。

ペンダント

○撮影所の食堂、内
   山本、原田、高田、木村、太一と亜紀がいる。
   皆、食事をしている。
   どんぶりをかき込む原田。

原田「いやもう、あわてたあわてた」
木村「昨日の夕方に寄ったら『ただ今外出中』
 の札がかかっていたわよ」

高田「そうそう、そんな札いつ買ったん?」
原田「いや」
山本「一体どこへ行ってたんだ?丸一日?」

原田「ちょっと待って。今考えながら食べてる」
   皆、原田を見つめている。
   原田、一息ついて、

原田「そうだ。やっぱり夢だったんだ」
亜紀「夢?」
   太一、原田のペンダントに気づく。

太一「原田さん、そのペンダント何?」
   原田、胸のペンダントを探り。
原田「あっ?」

   皆、覗き込んで驚く。
亜紀と太一「へんめん!」
木村「いやだ、変面ペンダント?」
高田「いややわぁ」

   原田、ぽかんとしている。
山本「原田、これは?」
原田「夢じゃなかったんだ」
   皆、真剣に原田を見詰める。

○(フラッシュ)原田のアパート
   連れ出される原田。

○(フラッシュ)変面の里
   藤原との出会い。

○(フラッシュ)藤原の部屋
   藤原との語らい。

○(フラッシュ)ヘリポート
   ヘリポートと彫刻群。

○もとの食堂
   6人が真剣に話している。
原田「と言うわけなんだ」
   皆、不審な顔で首をかしげている。

山本「夢のような話だな」
高田「ずっと藤原さんと会いたい言うてたし」

原田「夢のようなと言えば、あのピザ?」
木村「ピザ?」

原田「前の晩にピザを頼んだんだ。食べた後に
 コーラをがぶ飲みしたら急に眠くなって、
 それからはずっと夢の中のようだった」

太一と亜紀「それ変面」
木村「まちがいない。変面の仕業ね」
   皆、うなづく。

前触れ

○原田のアパート、内
   ドアが開いて6人が入ってくる。
   おとといのままである。
   ピザの食べガラとコーラの瓶がある。

太一「あった」
亜紀「やっぱり間違いないね」
   太一がコーラの瓶を、亜紀が変面の
   顔が描かれたふたを持ってくる。

山本「変面特製の眠り薬入りコーラだ」
原田「ということは、間違いなくやつらは
 渡月橋を盗みに来る」

山本「兄貴が昨日たくさんの短冊が
 見つかったと言っていた」

高田「短冊が嵐山の川に」
木村「たくさん流れ着いた」

高田「文面は皆同じ」
木村「春惜しむ 桜吹雪に 花いかだ」

高田「歩いて渡れ 舟の渡月橋」
山本「わかった。決行は明日だ」
原田「何で?」

山本「明日の晩から朝にかけて春の嵐が来る。
 これだけしつこく春惜しむ桜吹雪に花いかだ
 という事はこの春の嵐のことや」

木村「わかったわ。じゃあ、歩いて渡れ舟の渡月橋というのは?」
山本「わからん。明日の晩それを確かめに行こう」
原田「あめの用意してナ」

高田「そうしょそうしょ。吹き飛ばされんように」
木村「この一晩で桜の花は全部散る。昔の人は
 この春の嵐をとても憎んだのね」

高田「ロマンチックやわア」
山本「くれぐれも吹き飛ばされんように」
   皆、顔を見合わせる。

高田「橋を盗むんやろか?」
原田「金にはならんやろ」
山本「盗みは芸術なり、か。さっぱりわからん」
   皆、うなづく。

○変面の里
   山奥の盆地。
   大型トレーラーが2台見える。
   たくさんの川舟を積み上げている。

   先頭に馬上の変面。トレーラー。クレーン車。
   忍者達。見送るその家族。
   変面がステッキを突き上げて隊列が出発する。

○同、遠景

○夜空
   変面の顔をしたこうもりが飛んでいく。
   犬の遠吠え。満月。

   満月に雲がかかりすっかり見えなくなる。
   風が強まり震える木の枝。

くのいち

○渡月橋東詰め、夜
   6人のワゴンが渡月橋の東詰めに来る。
   そのまま通り過ぎて川岸に止まる。

○車内、夜
   6人、ずっと橋を見つめている。
高田「12時回ると人っ子ひとりいてへんね」
木村「夜はもともと暗くて人がいないところ」
原田「それにしても川もが桜で真っ白だ」
山本「今夜の嵐で全部散る。桜の花びらで幾重にも散り重なる」
高田「今は静かやけど」
木村「時々突風が吹くわ」
山本「では二手に分かれて探りにいくか。向こう岸を原田、高田、太一。
 こちら岸を俺と木村、亜紀で。30分でここにもどる。OK?」
皆「OK」
原田「俺たち先に行くワ」
   原田、高田、太一、車から下りる。

○渡月橋、夜
   橋を渡る原田、高田、太一。
○同、西詰め、夜
   西詰めに来る3人、立ち止まりしゃがむ。
   原田、目配りをしながら、
原田「しー、誰かあそこに人がいる」

○中ノ島、橋下、夜
   テントが見灯がもれている。
原田「太一、そっと見て来い」
太一「OK」
   太一、テントに忍び寄る。

○テント、外、夜
   テントの中をそっと覗き込む太一。
○テントの中、夜
   狭いテントの中に一升瓶が二本ある。
   出羽と亀山が泥酔している。
出羽「最後の花見や。亀山様子見て来い」
亀山「はい、様子を見てきます、先輩」
出羽「警部と呼びなさい」
亀山「はい、警部殿。では」
   亀山、立ち上がろうとする。
   太一、すばやく身を隠す。

○テント、外、夜
   太一、駆け上がり原田のところへ戻る。
   3人、橋の向こうに隠れる。
   亀山、テントを出て大きくあくびをし、
   周りを確かめて立小便をする。

○渡月橋東詰め、橋下、夜
   山本、木村、亜紀が橋下から見上げている。
   亜紀が何かに気づく。
亜紀「山本さん、これなに?」
山本「なに?」
木村「これチョークの跡よ」
山本「くのいち、くのいち。女忍者?」
   亜紀、向こう側をライトで探っている。
亜紀「こっちにもある。へのに」
山本「へのに?」
木村「大きなちょうつがいの所よ」
山本「ちょうつがい?そうかなるほど。
 急いで向こう岸も調べてみよう」
   3人、渡月橋を渡る。

春の大嵐

○ワゴンの中、夜
   6人がいる。
   突風でワゴンが揺れる。
山本「間違いない。連中は必ず来る」
高田「見て、花吹雪!」
木村「風が出てきたわ。わあ、すごい!」
   暗闇の中をものすごい桜吹雪。
   川面は一面重層な花いかだ。
   ぽつぽつと大粒の雨が降り出す。
原田「雨が降り出した」
山本「もう、連中はそこまで来ている」
   風が強まり時折突風で車が揺れる。

○川土手、夜
   ゆっくりと大型トレーラーが行く。
   忍者がその側面にへばりついている。
   雨が降り出す。

○渡月橋東詰め、夜
   トレーラーが着くと同時に忍者たち飛び降りて、
   二人一組で舟を運ぶ。もう一台のトレーラーが
   川土手に現れる。クレーン車が続いている。

   大勢の忍者達が雨の中、橋と川面に別れて作業を
   始めている。雨の音が激しく彼らの音は聞こえない。

   橋げたにはしごが括り付けられ、それに川舟が差し
   込まれ固定される。数十隻の川舟の橋ができる。

○渡月橋西詰め、夜
   橋が分解され小分けにされてクレーンで引っ張り
   忍者達が担いでトレーラーに積み上げていく。
   忍者達雨の中、リズミカルに何か叫んでいる。

○橋の下、夜
   への一番とへの二番の大きなちょうつがいが、
   大きなバールとハンマーで打ちはずされ、
   最後の橋げた部分が担ぎ出される。

○渡月橋東詰め、夜
   土砂降りである。
   ゆっくりと橋を積んだトレーラーが動き出す。
   クレーン車と忍者達あっという間にいなくなる。

○ワゴンの中、夜
   6人の驚きの顔。
高田「見た?」
木村「見た」

原田「これはすごい、芸術だ」
山本「戦国時代、木槌一振りで橋が一瞬にして
 崩壊すると言う話を聞いたことがある」

原田「歩いて渡れ舟の渡月橋とは?」
山本「あの舟の渡り橋のことだ。これも戦国時代によく使われた」
   皆、納得して大きくうなづく。

消えた渡月橋

○渡月橋西詰め、夜
   橋下にテントの灯が見える。
   土砂降りである。

○テントの中、夜
   土砂降りである。
   出羽と亀山が寝ている。
亀山「これはすごい雨だ」
   出羽、おおいびきで眠っている。
   亀山、寝袋の中にもぐりこむ。

○テント、外、夜
   土砂降りの中はためくテントと灯。
   X  X  X
   木の葉の雫が落ちる。
   雨がやんで、白々と夜が明けてくる。

○渡月橋
   すっかり散った嵐山の桜。
   川も一面の桜花いかだ。
   橋げただけの渡月橋が見える。
   桜の花びらに埋もれた川舟の渡り橋。

○テント、外
   テントから出羽と亀山が起き出して来る。
   二人、大きくあくびをして気づく。
出羽と亀山「ええっ!」
   驚く二人の顔。

○京都府警本部、正面

○同、記者会見場
   記者会見が行われている。
   山本本部長、出羽と亀山がいる。

記者1「まさかのまさかですが何か今回を予告する
 ようなものがありましたか?」
   本部長、短冊を手にして、

本部長「えー今思えばこの短冊だと思われます。この短冊が
 5日ほど前に大量に川に流されていました。文面は、
 『春惜しむ桜吹雪に花いかだ歩いて渡れ舟の渡月橋』」

記者2「そのままじゃありませんか。何故公表されなかったんですか?」
本部長「何しろ金閣寺騒動以来いたずら手紙が多くて、
 いちいち公表はいたしておりません」

記者3「何か対策はしておられたんですか?」
本部長「まさかとは思いましたが二人の刑事を張り込ませておきました。
 こちらの出羽警部と亀山刑事です」

最後の花見

出羽「ま、桜散る頃の嵐の夜ということで、昨日の
 夕方からテントで張り込んでおりましたが、真夜中
 雨風が強まり必死でテントにしがみ付いておりました」

記者1「何の音も聞こえませんでしたか?」
亀山「風雨が強まる前に見回ったんですが、何の音も聞
 こえませんでした。後は風と雨の音だけです」

記者2「雨風もおさまり夜が明けてみれば、もうそこには
 渡月橋はなかったというわけですね?」
出羽と亀山「そのとおりです!」

本部長「いやまさに、大掛かりな装備と特殊訓練の窃盗軍団だと
 思われます。その目的は何か?基地はどこにあるのか?謎だらけ
 ですが詳細に捜査してまいりますので今しばらくお待ちください」

司会「以上で会見を終わります!」
   記者たちが退場していく。
   後ろの席に忍者が一人眠っている。
   腕に報道の『腕章』をしている。
   慌てて目を覚まし最後について出る。

○シネマ村、内、大店街
   撮影風景。
助監督「本番!よーい、はい!」
   カチンコが鳴り、侍が走る。
   新撰組が後を追う。

助監督「カット!OK!39分休憩!」
   皆、休憩に入る。
   観客が見ている。
   その中に変面がいる。

○オープンセット脇
   6人がセット脇に集まる。
   山本、新聞をかざす。

○見出し
   『変面窃盗団、渡月橋を盗む!』
   6人、顔を見合わせうなづく。

○山奥
   山桜が咲いている。

○変面の里
   川が流れている。
   桜が満開である。
   変面たちが花見をしている。
   橋がかかっている。

○橋のたもと
   渡月橋と大きく書いてある。

             -完-

流失渡月橋(A探偵団4)

流失渡月橋(A探偵団4)

(シナリオ)またもや変面から手紙が来た。『春惜しむ 桜吹雪に 花いかだ 歩いて渡れ 船の渡月橋』。まさかとは思うが渡月橋が盗まれる?一体何のために?橋をどうすると言うのだ?

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-01-08

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. あらすじ
  2. 不審な手紙
  3. 原田危うし
  4. 変面の里
  5. ヘリポート
  6. 芸術家変面
  7. 短冊
  8. ペンダント
  9. 前触れ
  10. くのいち
  11. 春の大嵐
  12. 消えた渡月橋
  13. 最後の花見