金閣消失(A探偵団3)

あらすじ

(シナリオ)またまた変面から挑戦状が探偵団に送りつけられて来た。世界遺産を盗むから心して待機せよと書いてある。清水寺か金閣寺?まさか丸ごと盗むことはできないと思うのだが・・・・?

また来た手紙

○京都、鴨川、秋

○京都、嵐山、秋
   紅葉がとても美しい。

○シネマ村、内
   撮影風景。

○同、大店街
   セット脇に6人が集まっている。

山本「久しぶりに変面から手紙が来たって?」
原田「そうなんだ、これ。まだ開けてない。
 皆に見せようと思って」

   皆、覗き込む。
   原田、慎重に手紙の端からめくる。

   『原田、久しぶりだな。我ら変面軍団は
   技に益々磨きをかけて次なる世界遺産を狙っている。
   心して待機せよ!準備が整ったら又連絡する。変面』

   手紙の文字がすっと消える。
亜紀「ああっ、字が消えた」
木村「世界遺産ということは?」

高田「清水寺とか金閣寺とか?」
太一「かなり大きいのと違う?」
高田「そう、かなり大きい」

山本「まだ何か分からん?とにかく兄貴には伝えておこう」
   皆、うなづく。

○京都府警本部、正面

○同、本部長室、外
   本部長室と書いてある。

○同、内
   デスクに山本本部長が座っている。
   出羽と亀山が立っている。

本部長「と言うわけだ。世界遺産ということで、
 金閣寺か清水寺が要注意だ」
出羽「金閣寺?」

亀山「清水寺?丸ごとと言うことはないでしょう?」
本部長「多分、本尊とか宝物だとは思うが、丸ごともありうる。
 前の事件も未解決のままだし、今度こそ尻尾を掴むんだ!」

出羽と亀山「ははっ、分かりました」
   二人、敬礼し去る。

○同、廊下
   出羽と亀山が並んで歩いている。
出羽「又追って変面から連絡があるというてたな?」
亀山「準備が整った時と言うてました」

出羽「その前に尻尾を掴もう」
亀山「どうやって?」
   出羽、亀山に耳打ちする。

○原田のアパート、外
   白い面をかぶった男が子供と話している。
   男、面と手紙を子供に手渡す。
   子供、うなづいてアパートに入る。

消火栓

○原田のアパート、廊下
   出羽と亀山が張り込んでいる。
   子供が上がってくる。
   二人身を隠す。

   子供、原田の部屋の前で立ち止まり、
   手紙をポストに入れようとする。

出羽「今だ」
   二人出てくる。

出羽「ちょっと僕、すまんけどなおじちゃんたち
 警察の者や。これが警察手帳」
   出羽、警察手帳を子供に見せる。

出羽「その手紙、こっちへかしてんか」
   子供、恐る恐る手紙を出羽に渡す。

出羽「ついにやった、でかした僕ちゃん!
 誰にこの手紙もらった?どんな人?」

   メモを取っていた亀山が子供の
   手に持ったお面を手にして、

亀山「あっ、ひょっとして?」
   変面の顔が大写し。
出羽と亀山「へんめん!」
   二人の顔が大写し。

○京都府警本部、正面

○同、本部長室、内
   デスクに山本本部長が座っている。
   出羽と亀山が立っている。
   出羽、手紙を手にしている。

本部長「でかした二人とも!」
   本部長、はがきを手にしてゆっくりとはがした。

   『みなさま、ごくろうさまです。変面』
   三人顔を見合わせる。
   文字、消えていく。

○同、外
   出羽と亀山の大声が聞こえる。
出羽と亀山「すみませんでした!」

○金閣寺、参道
   出羽と亀山が歩いている。
出羽「名案たとおもうたんやが」
亀山「とにかく金閣寺をよく探ってみましょう」
出羽「何を盗むっちゅうんや、ほんまに」

○金閣寺、内
   あちこち工事している。
出羽「やたら工事が多いなあ」

   観光客に混じって庭を歩く二人。
出羽「美しい庭やなあ。あれがいわゆる金閣寺やな」

亀山「あれ全部金張りですよ。昔所化が放火して小説
 や映画になりました。それから消火栓がいたるところに」
出羽「なるほど」

亀山「清水寺は本尊なにやら如来が国宝で、あの
 能舞台が世界遺産です」

出羽「ここはあの金張りが世界遺産やろ?」
亀山「そうです」

   出羽、立ち止まり。
出羽「それはないやろう!あの金張りは盗れへんで!」
   観光客がいぶかしげに二人を見つめて通り過ぎる。

露天風呂

○シネマ村、内
   撮影風景。
   宿場町で撮影が終わる。

   観客の中に白い面の男がいる。
   スタッフと俳優達が引き揚げる。

○撮影所、通路
   6人が歩いている。
   スタッフ、道具を運んでいる。

スタッフ「お疲れ様でした!」
皆「お疲れ様でした!」
亜紀「あれ?原田さん、これ何?」

   侍姿の原田の帯に封筒がある。
太一「あ、ほんとだ。手紙だ!」
   原田、封筒を手にする。

木村「ファンの人かも?」
高田「そやね、お札かも?」
   原田、封筒を開ける。
   中からいつものめくるはがきが出てくる。

山本「あ、変面からや。いつのまに?」
   皆、道の脇による。

原田「開けてみるよ」
皆「うん」とうなづく。

原田、はがきの端からゆっくりとめくる。
   『としあけて ゆきのつもるひ きんかくは
    ほのおのなかを くらやみにまう』

   原田、ゆっくりと文字を読む。

○京都府警察本部、正面

○同、本部長室、内
   デスクに山本本部長が座っている。
   出羽と亀山が立っている。
   本部長、立ち上がり紙を広げる。

   『年明けて 雪の積もる日 金閣は
    炎の中を 暗闇に舞う』

   出羽と亀山の驚きの顔。
出羽「炎の中を?」
亀山「空を飛ぶ?」

出羽と亀山「あの金閣寺が?」
本部長「それはないやろう!と思うやろう。それが
 あるかもしれん。必死で警備に当たるように!」

出羽と亀山「はっ、了解しました!」
   二人、敬礼する。

○変面の里、遠景
   のどかな山奥。変面の里の標示がある。
   小さな盆地に川が流れている。
   広場があり地下入り口が数箇所見える。

   天空を見上げる天文台のような大砲がある。
   ヘリポートに見張りがいる。

○同、露天風呂、外
   露天風呂入り口の標示。
   『ただ今入浴中!』の札がかかっている。

○同、脱衣場
   脱衣場の棚にシルクハットとマント、
   ステッキ、黒マスク眼鏡が置いてある。

○同、岩風呂、湯舟
   長い金髪の若者の後ろ髪。
   若者、後ろ髪を束ねゆっくりと立ち上がる。
   美しい若者の裸体シルエット。

○夜空
   変面の顔をしたコウモリが飛んでいく。
   狼の遠吠えが聞こえる。

初詣

○晩秋の嵐山

○小雪舞う嵐山

○京都府警本部、正面
   雪が舞っている。

○同、本部長室、内
   窓越しに雪が舞っている。
   山本本部長が立って外を見ている。

本部長「もうすぐ正月か。その後何の音沙汰も無いが、
 変面は必ずやってのけるんだろうなあ」

○京都の正月、八坂神社

○同、平安神宮

○同、清水寺

○同、金閣寺

○金閣寺、参道
   初詣の人波。
   参拝客に混じって出羽と亀山がいる。

出羽「いよいよ正月や」
亀山「雪が積もる日はもうすぐですよね?」

○同、庭園
   出羽と亀山、金閣寺がよく見えている庭園にいる。
   二人、じっと金閣寺を見つめている。

出羽「大丈夫や、消火栓は完璧やし。どうやって
 空から盗りに来るんや?」

亀山「きっとヘリコプターで盗りに来るんですよ」
出羽「それはないやろう?そうなったら軍隊やで」

亀山「ありえますよ。オウム真理教もヘリ持ってました」
出羽「ありえるか?そうなったら府警じゃとても手が回らん」

   金閣寺がひときわ美しく見えている。

○金閣寺、参道
   初詣客で一杯である。
   山本、原田、木村、高田、亜紀、太一が歩いている。

○同、庭園
   金閣寺、借景の山すそに美しく映えている。
   東と西に建築中のビルが見える。
   6人が参拝客に混じって歩いている。

山本「どうもあのビルが気になるな」
原田「そうやろ。俺もそう思う。同じ高さで
 同じようにクレーンが屋上にある」

   木村と高田が加わる。
木村「まるで左右対称」
高田「ほんまやね。規制緩和で高いビルが建て
 られるようになったからやろか?」

   太一と亜紀が加わる。
太一「クレーンをこう向けて輪ゴムを通せば」
亜紀「あそうか。金閣寺が空に舞い上がる」

原田「そんなおもちゃがあったよな昔」
   皆、うなづいている。

不審なビル

山本「消火栓はたくさんあるみたいだ」
原田「この間テレビで放水テストをやってたけど、
 火には完璧に対応してますと言ってた」

木村「私も見たわ。夜には誰一人入られないしね」
高田「雪の日は凍らへんのやろか?」
木村「京都で凍結て、聞いたこと無いね」

高田「そやなあ」
   亜紀と太一、池に棒を突っ込んで遊んでいる。
原田「こらこら、池をかき回したらあかん。鯉が怒るで」

   皆、金閣に近づく。
   山本、じっと金閣の土台を見つめている。

原田「先輩、なにか?」
山本「ふむ、日本の古い建物は、釘を一本も使わずに、
 柱も土台の石の上にただ乗っかってるのが多いが、
 ここは火災で建て替えられてもいるし・・・」

原田「それは大丈夫でしょう。なんなと工夫されてるはずです」
   山本、金閣と建設中のビルを交互にじっと眺めている。

山本「それはないな」
原田「えっ?」
   原田、不審げに山本を見つめる。

○金閣寺、出口
   6人が歩いてくる。
   一番後ろで亜紀と太一が話している。

太一「池をいじってるだけで怒られた」
亜紀「原田さんやろ?」

太一「山本さんも原田さんもあのビルが気になる言うてた」
亜紀「そや、太一、あのビル探検してみよ!」
太一「そうや、原田さんの鼻をあかしてやろう!」

   二人、大きくうなづきあう。
原田「こら、二人とも、早よ来い!」
   二人、舌を出して駆け出す。

○建築中のビル、外、夜
   遠くからビルを目指して歩む太一と亜紀。
   突然、音もなく屋上のクレーンが半回転する。
   二人、驚き止り、顔を見合わせる。

亜紀「いま、動いたよね」
太一「うん」

○同、入り口、夜
   二人、懐中電灯をつけ入り口を入る。

○同、階段、夜
   慎重に上る亜紀と太一。

○同、最上階に上がる天井扉。
   はしごで押し上げ戸になっている。
   太一が上り、少し持ち上げて中を見る。
   太一、驚き、すぐ亜紀と代わる。   

住職への手紙

○屋上への天井扉
   扉を押し上げ覗く亜紀の顔。

○屋上部屋、内、夜
   「エッサーホイサー」の掛け声の下、
   大きなパネルに絵を描く忍者達。

○同、はしご
   亜紀と太一、うなづきあって大急ぎで下りる。

○同、階段
   走り下りる二人。

○同、入り口、外、夜
   走り出る二人。

○原田のアパート、夜
   階段を駆け上がる亜紀と太一。

○同、原田の部屋、外
   亜紀と太一、激しくドアを叩く。
二人「原田さん!」

○同、原田の部屋、内
   山本と原田がいる。
原田「どうした二人とも?」

   亜紀と太一が転がり込んでくる。
   二人息を切らしながら、

太一「あのビル、ハアハア」
亜紀「工事中の、ハアハア」
太一「クレーンのある、あのビル」
亜紀「忍び込んだら」
太一「忍者がパネルを描いていた」
亜紀「クレーンも動かしてた」

原田「よく分かった。まあ落着け」
山本「やっぱりあのビルは怪しかったな」
原田「そうだ、ちょっとまって」

   原田、用紙を持ってくる。
   皆、覗き込む。
   山本が略図を描く。

山本「それにしてもクレーンじゃとても届かない、
 変面たちは一体どうやって金閣寺を?」

   皆、腕組みをして考え込む。

○金閣寺、庫裏、内
   住職と出羽、亀山が話している。
   住職、手に大きな封筒を持っている。

出羽「年賀状の中に変な手紙がきてたと?」
住職「これですが、いたずらですかね?」
   出羽、封筒を受け取り裏を見る。

出羽「やはり予想通りだ」
   封筒の裏に大きな変面の顔が描かれている。
   変面、表を見る。

出羽「『中身をご覧になったら出羽警部にお渡しください』
 だと、ふざけやがって変面の奴」
   亀山、メモを取っている。

   出羽、中身を取り出し開ける。
   『年明けて 雪の積もる日 金閣は
   炎の中を 暗闇に舞う』

出羽「思ったとおりや」
住職「やはり、いたずらでしょうか?」
出羽「いや、ほんまに起こりえるんです」
住職「ひええっ!」

不審な金庫

出羽「でも心配は要りません。消火栓は完璧です。
 これから本部からの警備も付けますから」
住職「よろしくお願いします」

   亀山、窓の外のビルを見上げている。

亀山「あのビルちょっと目立ちますね?」
住職「規制が緩和されて、あっちもこっちも
 新しいビルが建ってますのや」

亀山「クレーンが異常にでかい気がしますね?」
出羽「ああ、気のせいや。完成してクレーンがなくなったら、
 普通のビルよりちょっと高いくらいや」

   亀山、茶菓子をほう張りながらお茶を飲む。

○建築中のビル、外、夜
   暗闇に浮ぶクレーン。

○同、階段、夜
   懐中電灯を点けて上る山本、原田と太一。

○同、屋上の部屋、夜
   暗闇、誰もいない。
   山本、原田、太一が入ってくる。

   薄明かりの中かなり大きなパネルの影。
   中型の金庫。ワイヤーロープの束がある。

原田「誰もいない?」
山本「結構無防備やナ?」
   太一、金庫に触れている。

太一「あれ、これ何?」
原田「金庫やナ。開くのか?」
   太一、ゆっくりと金庫を開ける。

太一「中身がこれ、なに?」
   驚く太一の顔。

○金庫
   中型の重々しい金庫が開いている。
   3人の灯が中を照らす。

   金色に輝く一角獣のような老人の像
   が灯に浮かび上がる。
   驚くみんなの顔。

太一「何か書いてある」
   原田、覗きこみ照らす。

原田「金閣爺」
山本「きんかくじい?又何かたくらんでるな?」
   3人、まじまじと像を見つめる。

○パネル
   大型パネルの影が見える。
   3人、パネルを照らす。

太一「あ、金閣寺!」
原田「かなり大きな金閣寺の絵だ」
山本「と言う事は、2枚?向こうのビルにも2枚とすると」

   3人、考え込む。

ワイヤー

○金閣寺、庭園
   木村、高田、亜紀がいる。
   あちこちに消火栓がある。

高田「ほんま、消火栓だらけやなあ」
木村「年に何度も訓練してる」
   亜紀、先のほうで何かを見つける。

○池のほとり
   亜紀、何かを見つける。
亜紀「何か変なのがある?」
   木村と高田が近づく。

  池に向けて放水銃のような管がある。
   一見消火栓のように見えるが、ふたが
   してあって、こすると変面の顔が現れた。

3人「あ、変面の顔!」
亜紀「臭い、なにこれ?油の匂い?」
高田「油?」
木村「皆に知らせよう!」

   3人が走りかける。
   亜紀が倒れる。
亜紀「なにこれ?いたーい!」

木村と高田「大丈夫?亜紀?」
   大きなワイヤーが埋まっている。
   ワイヤーは池の中を通りずっと遠くまで続いている。

木村「このワイヤーも変ね?」
高田「よっしゃ、急ご!」
   3人、駆け出す。

○原田のアパート、内
   6人、地図を広げている。
山本「大体読めてきたぞ。まずパネルで金閣を囲んで」
木村「金閣を盗み」

原田「金庫を置いて」
高田「最後に火をつけるの?」
山本「その前に、池に火がつくかも知れんな」

木村「どうやって、パネルと金庫を?」
   山本、じっと考える。

山本「ふむ。あのワイヤーはビルとつながっている」
原田「あの工事中のビルと?」
山本「そうだ。あれが無ければこの芸当はできない」

亜紀「どうやって金閣を盗むの?」
山本「たぶんヘリコプターだ。彼一流のパフォーマンス。
 しかも盗み出した後に派手にやるはずだ」

原田「年明けて 雪の積もる日 金閣は
 炎の中を 暗闇に舞う」

太一「ヘリコプター?」
山本「そうか、炎は最後だ」
   皆、山本の顔を見つめる。

超寒波

○京都府警本部、正面

○同、本部長室、内
   デスクに山本本部長が座っている。
   出羽と亀山が立っている。

本部長「いよいよ大寒波が襲ってくる。変面はこの
 寒波を利用して金閣を盗むに違いない。心して
 警戒に当たるように。私も今夜から泊り込む。以上」

出羽と亀山「では、行ってまいります」
   出羽と亀山、敬礼をして去る。
   窓の外は大雪。

○同、駐車場
   パトカーの後部に乗り込む出羽と亀山。

○パトカーの中
   前に警官が二人乗っている。
出羽「交替で仮眠や。辛いで今日は」
亀山「今回もこの4人ですか?」

出羽「前失敗したから又この4人や」
   パトカー、スリップしながら進む。
   10cmくらいの積雪。

○北大路通り、夕
   大雪。車がライトをつけてのろのろと走っている。
   パトカーがゆっくりと進む。

○パトカーの中
   のろのろ進むパトカー。

出羽「チェーンを巻いたほうがええのとちゃうか?」
運転の警官「大丈夫でしょう。スタッドレスですから」
亀山「今晩はもっと積もりますよ」

   パトカー、のろのろと進む。

○東のビル、正面、夕
   雪の中に大型のジープが2台止まっている。

○裏山の茂み、夕
   雪の中に6人の乗ったワゴンが止まっている。
   茂みからは金閣がよく見える。

○ワゴンの中
   6人がいる。

山本「何か変化が有るまでここで待とう」
原田「向こうのビルを見てくるよ」
山本「そうだな。すぐもどれよ」

   原田、うなづいて出て行く。

○金閣寺、入り口、夕
   パトカーが雪に埋もれて止まっている。
   警官二人が仮眠している。
   原田が通る。

○同、庫裏、夕
   出羽と亀山が住職と話している。
   原田が通り抜ける。

○西のビル、外、夕
   雪の中に大型ジープが止まっている。
   原田が入り口に近づく。

○同、内、階段
   密かに上る原田。

○同、屋上の部屋
   10人ほどの忍者が作業をしている。
   エッサーホイサーの掛け声が聞こえる。
   原田、すぐに引き返す。

雪の金閣寺

○裏山の茂み、外、夕
   雪の中にワゴンが1台止まっている。
   ワゴンから亜紀と太一が出てきて茂みの中に入る。

○茂みの中、夕
   茂みから金閣寺がよく見える。
   二つのビルもよく見える。
   薄暗がりの中、小雪が舞っている。

   二つのビルのクレーンがちょっと動く。
亜紀「あ、今動いたよね?」
太一「うん、動いたよ。知らせてこよう!」

  太一、茂みを出る。
   亜紀、目をこらしてクレーンを見つめている。   

○茂みの外、夕
   雪の中、ワゴンが1台止まっている。
   太一が駆けて来て扉をあける。

山本「どうした?」
太一「クレーンが動いたよ!」
   皆、起き上がる。

山本「よし行こう!」
   皆、車から降りて茂みに入る。

○茂みの中、夕
   亜紀がじっとクレーンを見つめている。
   皆が駆け込んでくる。
   亜紀が指差す。

○二つのクレーン
   夕暮れ、小雪の舞う中に二つのクレーンが
   ビルの屋上に見える。
   二つのクレーンでワイヤーがピーンと張っている。

○茂みの中、夕
   6人がいる。
山本「なるほど思ったとおりだ。皆よく見てろ、金庫が来るぞ」
   みんなの顔が輝く。

○二つのクレーン、夜
   西のビルから黒い物体がスススと張ったワイヤーを下りてくる。
   クレーンでコントロールされながら金庫と忍者二人が、
   金閣の脇に下り、金庫を下ろす。

   再びクレーンでワイヤーがぴーんと張る。
   次に、二つのクレーンが一瞬反転したかと思うと、
   大型パネルが1枚ずつ、両側から滑空してきて、

   さらに1枚ずつ、あっという間に金閣の周りを覆った。
   見ると、薄明かりに輝く金閣がそのままあるように見える。

○茂みの中、夜
   6人の驚きの顔。
山本「変面の得意技だ。そろそろ空から来るぞ」
高田「なにが?」

太一「ヘリコプターだよ」
   皆、耳を澄ます。
木村「きたわ、ヘリの音よ!」

○庫裏、外、夜
   庫裏から出羽と亀山が出てくる。
   二人、夜空を見上げる。
   稲妻が光り雷が轟く。
   ヘリの音がかすむ。

○金閣寺入り口、夜
   パトカーが雪で埋まっている。
   ドアが開き二人の警官が出てくる。
   二人空を見上げる。

   原田の姿が通り過ぎる。
   稲妻が光り雷が轟く。

○茂みの中、夜
   皆、空を見上げている。
   稲妻が光り雷が轟く。
   原田が来る。

山本「思ったとおりだ」
原田「そうみたいだな」
   ヘリの音が近づく。

金閣消失

○夜空
   二つ羽根の大型ヘリが急接近し
   瞬く間に金閣を吊り下げる。

   ピーンと張ったワイヤーの中央から
   パラリと大きな垂れ幕がたらされる。

   ヘリコプターからライトが当たる。
   『金閣は確かにいただいた。変面』の字が浮ぶ。
   とその時、池にパッと火が走る。

   出羽、亀山、警官らが驚き見とれている。
出羽「消火栓だ!」
亀山「凍結しています!」
   皆、うろたえる。

   一気に金閣パネルに火がついて
   炎は垂れ幕に燃え移る。

   ヘリが空高く遠ざかっていく。
   強力なワイヤーに吊り下げられて
   金閣が夜空に浮かび上がる。

   皆、呆然と立ち尽くす。
   出羽の叫び声が響き渡る。
出羽「やられたー!」   

○東のビル、夜
   ジープ2台が急発進して去る。

○東のビル、夜
   ジープ2台が急発進して去る。

○茂みの中、夜
   6人が見張っている。
太一「あっ!」
亜紀「しっ!」

○池の中央、夜
   池の灯油がまだ燃えている。
   中央部の跡地に黒い物体が見える。
   出羽、亀山と警官が近寄る。

出羽「なにかあるぞ?」
警官「金庫のようです?」
亀山「金庫?あ、ほんとだ」

   亀山、開けようとする。
出羽「金庫?開くのか?」
亀山「あ、開きました。何か像が入ってます?」

   亀山、そろりと像を出す。
亀山「何か彫ってあります、なになに
 『金閣爺』きんかくじい、だそうです」

   出羽、近寄ってまじまじと見つめる。
出羽「なんやて?金の角の爺さんで、
 きんかくじい、か。くそ!」

またしても

○茂みの中、夜
   6人がいる。
   顔を見合わせてうなずく。

○茂みの外、夜
   雪の中にワゴンが止まっている。
   6人が出てきて飛び乗る。

○北大路通り、夜
   大雪の中、1台のパトカーがのろのろと走っている。

○パトカーの中、夜
   警官二人、出羽と亀山が後ろに座っている。

出羽「チェーンを巻いたほうがええのとちゃうか?」
警官「大丈夫です。スタッドレスですから」

   のろのろと走るパトカー。

○京都府警本部、正面、夜
   大雪である。
   のろのろと1台のパトカーが入ってくる。

○同、本部長室、内、夜
   デスクに本部長が座っている。
   前に出羽と亀山が立っている。

出羽「・・と言う訳でまたまた取り逃がしてしまいました」
本部長「ごくろうさん。まあ、人的被害がなくてよかった」
出羽「又こんなものを残していきました」

   亀山が合図をすると扉の外から
   警官二人が像を運んでくる。

本部長「なんだこれは?」
出羽「ここに刻銘がしてあります。金閣爺」
亀山「底に手紙が入ってました」

   亀山、手紙を本部長に手渡す。
   本部長、手紙を広げて読む。

本部長「金閣寺は確かにいただいた。再建までの間
 この金閣爺で頑張ってくれたまえ。変面」
出羽「くそ、変面め」

本部長「しかしながら、なかなかのものだ」
亀山「又裏に変面作と書いてある。何作まで作るつもりだ?」

○雪道、夜
   雪道を1台のワゴンがのろのろと走っている。

○ワゴン車の中、夜
   6人が話しをしている。

高田「あんなもん盗んでどないするんやろ?」
木村「お金に換えるのかしら?」
高田「よほどの大金持ち」

山本「金に任せて世界の美術品や骨董品を
 かき集めている連中がいる」
太一「そんなのおんの?」

山本「武器をかき集めるよりええと思うが?」
亜紀「だれそれ?」

山本「アラブの王様!油で儲け過ぎて、ほかに
 買うものがないから、連中は全世界の
 芸術品をかき集めていると言う話だ」

原田「なるほど」
   皆、納得してうなづいている。

金閣爺

○京都府警本部、正面
   雪かきがされ多くの車が止まっている。

○同、記者会見室、内
   長机に山本本部長、出羽と亀山が座っている。
   記者たちがメモを取りながら座っている。
   記者1が立ち上がる。

記者1「事前に予告らしきものは何もなかったのですか?」
本部長「一応こういうものが来ておりました」
   本部長、手紙をかざす。

本部長「『年明けて 雪の積もる日 金閣は
 炎の中を 暗闇に舞う』と書いてありました」

記者1「そのまんまじゃないですか?
 何故公表されなかったんですか?」

本部長「公開すれば大騒ぎになる事は目に見えております。
 それはお分かりですな」

記者2「当日張り込みはされておりましたか?」
本部長「出羽と亀山が張り込んでおりました」

出羽、立ち上がり、
出羽「えー、いきなりヘリコプターが現れまして、
 見上げますと天空に変面の顔が映っておりました。

 音が大きくて声は聞こえませんでしたが、
 幕が下りてきました。
 『変面参上!金閣は確かにいただいた』

 と書いてありました。その幕が
 金閣の上に落ちました。すると突然、
 炎が舞い上がり、あっというまに

 金閣は天空に消えていきました」

記者2「金閣は燃えたのですか?」
出羽「それは大きなパネルでした。
 その後に金庫が1つ残されていました」

記者2「金庫?」
   皆、ざわつく。

出羽「そしてその中には!亀山刑事!」
   亀山、警官と一緒に布をかぶった像を
   台車に乗せて運んでくる。

出羽「この像が入ってました」
   出羽、布をとる。
   金閣爺の像が現れる。
   皆、驚く。

出羽「金閣爺の像です」
   記者たち、席を立って前に行き
   写真をとりまくっている。

   原田と山本が1番後ろに座っている。
   もう一人、忍者の姿をして寝てる奴がいる。
   原田と山本、そっと部屋を出る。

○廊下
   原田と山本が並んで歩いている。
山本「まだまだ続きそうだな」
原田「ああ」

○元の記者会見室
   記者たちが像の写真を撮っている。
記者1「本部長、出羽警部、亀山刑事。
 像のそばに並んでください!」

   像のそばに3人が並ぶ。
   記者たちがカメラを構える。
記者2「出羽撮りますよ!ハイチーズ!」

   フラッシュの閃光。
   像と3人のストップモーション。

                    −完−

金閣消失(A探偵団3)

金閣消失(A探偵団3)

(シナリオ)またまた変面から挑戦状が探偵団に送りつけられて来た。世界遺産を盗むから心して待機せよと書いてある。清水寺か金閣寺?まさか丸ごと盗むことはできないと思うのだが・・・・?

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-12-18

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  1. あらすじ
  2. また来た手紙
  3. 消火栓
  4. 露天風呂
  5. 初詣
  6. 不審なビル
  7. 住職への手紙
  8. 不審な金庫
  9. ワイヤー
  10. 超寒波
  11. 雪の金閣寺
  12. 金閣消失
  13. またしても
  14. 金閣爺