お嬢様と爺や(ダイエット編)

お嬢様がダイエットをする話です。

お嬢様と爺や(ダイエット編)

「爺や、あたくしダイエットをしようと思いますの。」
「さようでございますか。差し支えなければ理由を聞いてもよろしいですか?」
「今テレビで言っていたのです。食後に運動をしないと太るみたいですわ。あたくし、昨日のディナーの後から今までずっとこのお屋敷にいましたの。だからきっとあたくしは太っているのですわ。」
だってあたくしがしたことと言えばベッドで寝たことくらいですもの。昨日より太っているに違いないですわ。
「だから爺や、すぐにでも脂肪が燃焼される運動とか薬を用意なさい。」
「しかしお嬢様、脂肪を燃焼することは危険なことでございます。」
「なぜかしら?」
「脂肪も体の一部にございます。つまり、何かしらの使い道があるからこそ体にたまっていくのでございます。」
「どんな使い道があるのかしら?」
「とてもお腹がすいた時、体は脂肪から体を動かすエネルギーを得るのです。」
「このお屋敷にはいつでもシェフがいてあたくしに料理を作ってくれますわ。」
「そうですね。お嬢様が望む時にシェフは料理を作ってくれます。しかし、例えばこのような状況になったらどうでしょう?ある日、お嬢様がとても良い運動をなさったとします。お嬢様はとてもお腹がすいていることでしょう。そしてお嬢様はシェフに料理を作るよう言います。すると料理が出てきます。」
「当り前ですわ。」
「そしてお腹を満たしたお嬢様が運動の気持ち良さを求めて再び良い運動をなさり、またお腹をすかせたとしましょう。もちろん、お嬢様はお食事を希望します。」
「料理が出てくるのでしょう?」
「もちろんでございます。しかし、このお屋敷のコックは料理に愛をそそぎ、お嬢様のことを第一に考えるプロのシェフでございます。常に最高のものを作ろうとするでしょう。」
「そうですわね。」
「しかし……良いものというものは短時間では完成いたしません。つまり、お嬢様には空腹をがまんしなければならない時間が生まれるのです。」
「あら。それは困りますわ。お腹がすいたままは辛いですもの。爺や、何か妙案はないの?」
「脂肪をためておけばよいのです。」
「そうですわね。ではあたくしは今後運動をしませんわ。」
「それは良い考えです。しかし、それはいささかやりすぎとなる可能性があります。」
「なぜかしら?」
「このお屋敷のシェフは優秀でございます。最高のものをつくるのに時間を要するとは言っても、何時間も待たせるようなことはありません。つまり、お嬢様が体にためておかなければならない脂肪は少しなのです。」
「そうですわね。では爺や、あたくしが適度な脂肪を常にためておくには何をすれば良いのかしら?」
「脂肪は日頃の食事でたまってゆきます故、すべきことは余分な脂肪を燃焼することでございます。」
テレビを見ていますとほんの少しでも脂肪を燃焼させることはとても大変のようですわ。あまり面倒なことはしたくありませんわね。
「ではパッと適度な脂肪が燃焼される運動とか薬を用意なさい。」
「すぐに。しかしお嬢様、短時間で脂肪を燃焼させるのはあまりお勧めいたしません。」
「なぜかしら?」
「先ほど申したように、脂肪も体の一部でございます。故に、少量であっても、急激に減少いたしますと体が驚くのです。」
「なにがおこるのかしら?」
「体は体からエネルギーが無くなったと思い、脳に食事をとるよう命じるのです。つまりお腹がすくのです。体もびっくりして気が動転しているのでいつもよりお腹がすくことでしょう。おそらく、お腹が鳴ります。」
「お腹が鳴る。なんてはしたない。あたくしがそんなことをするわけにいきませんわね。」
「また、これに加え、お薬を使用して燃焼させる場合はさらに厄介でございます。」
「なぜかしら?」
「お薬が脂肪を燃焼させる方法は……本当に燃焼させることなのです。」
「なんてこと!それではお腹が熱くなってしまいますわ。」
「さようでございます。聞く所によりますと、相当な温度になるとか。」
「こわいですわ。爺や、何か妙案はないの?」
「少しずつ脂肪を燃焼させれば良いのです。」
「そうですわね。少しずつなら体も驚きませんでしょう。爺や、あたくしは何をすればよいのかしら?」
「毎日、少しの運動をすればよいのです。」
「そうですわね。少しの運動……シカ狩りとかかしら?」
「良い考えでございます。しかし、脂肪は体中、まんべんなく燃焼させなくてはなりません。シカ狩りでは銃を持つ腕ばかりを使うことになってしまいます。また、しゃがむことも多いですので腰を痛めてしまうかもしれません。毎日行う運動には向かぬかもしれません。」
それもそうですわ。それにお洋服が汚れてしまいますし、火薬のにおいは好きではありませんわ。
「爺や、何か妙案はないの?」
「全身をまんべんなく使い、無理なくできる運動……となるとやはりジョギングでしょう。脚を使い、腕もふる。また全身を躍動させますので。」
「そうですわね。ではあたくし専用のジョギングコースを作りましょう。」
「そうですね。しかし……ジョギングはひとりで行う運動でございます。ですので何か楽しみがないと走るのが辛くなってしまうかもしれません。」
「辛くなってしまっては毎日できませんわね。爺や、何か妙案はないの?」
「人のいる所で行うのです。すれちがう度に挨拶をすれば気持ち良く走ることができましょう。」
「そうれはよいですわね。では爺や、あたくしに運動するための道具を一式用意なさい。」
「はい、お嬢様。」
さっそく走りましょう。今日も良いお天気ですわ。絶好のジョギング日和というやつですわね。

風を切り、お日様を受けて走る。こんなに気持ちの良いことでしたのね。それでいて脂肪も燃焼させられるなんてすばらしいですわ。
「爺や、聞こえているかしら?」
『良好でございます。あ、そこを右に曲がりますとお嬢様と同じようにジョギングをしている方々に会えます。気持ち良く挨拶などしてみては。』
「そうですわね。挨拶は大切ですわね。」
爺やの言う通り、曲がった所に何人か走っているわね。
「ごきげんよう、みなさん。」
「えっ……あ……こ、こんにちはです。」
「そちらの方もごきげんよう。」
「は、はい!ごきげんようです!」

『あれってあのお屋敷の……?』
『すごい!あんな高貴なお家の方なのにジョギングしてる!』
『それに俺たちに挨拶までしてくれたぞ!』
『偉ぶったとこがなくていいよねぇ。』


お嬢様の評判がまたひとつ上がりました。

お嬢様と爺や(ダイエット編)

ダイエット……ええ、ええ。
楽に痩せたいものです。

お嬢様と爺や(ダイエット編)

どこかのお屋敷に住むお嬢様と爺や。 お嬢様のお願いを……そこそこ大変なお願いを爺やが何とかするお話です。 形態としては終始二人の会話です。 これがこのシリーズの二作目です。 今日はダイエットをご所望のご様子……

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-11-30

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