黄金の半跏像(シナリオA探偵団1)

京都シネマ村

○京都の全景。初夏。

○京都、シネマ村、外
大手門「京都シネマ村」とある。

○同、内
行楽日のシネマ村の風景。
大店街で実際の撮影をしている。

(原田竜太のナレーション)「僕、原田竜太はシネマ村に勤める俳優の卵だ」
撮影現場で出番待ちをする侍姿の原田。

(原田のN)「同期の木村由香、高田早苗。子役の田中太一と斉藤愛。
それと大先輩の山本一。この6人は大の仲良しである」

出番待ちをする浪人姿の山本。
おいらん姿の木村。町娘の高田。
農民の子ども姿の太一と愛。

(原田のN)「山本先輩の兄さんは京都府警の本部長」
○京都府警本部、外
○同、内、本部長室
デスクに座る威厳ある山本の兄。

○シネマ村の遠景
(原田のN)「僕には高校時代熱中した演劇部で藤原純友という
ライバルがいた。彼は突然『俺は世界一の劇団を作る』といって
行方不明になった。その藤原から久しぶりに謎の手紙が来た」

○安アパート、廊下
Tシャツ姿の原田が自室に帰ってくっる。
郵便受けに手紙を見つける。
端からはがす貼り付け手紙。

(原田)「だれだろう?」
手紙を端からゆっくりはがし読む。

(原田)「劇団を作る態勢が整った。これから資金集めに入る。
京都には隠された財宝が腐るほど眠っている。一つ一つ頂いて
いくから捕らえられるものなら捕らえてみたまえ。怪盗変面」

手紙の文字がゆっくりと消えていく。
(原田)「やややっ!へんめん?」

○メインタイトル
『広隆寺黄金の半跏像』
ー怪盗変面とシネマ村探偵団ー

○タイトルバック
シネマ村、時代劇の撮影風景。
『ハーイ本番』の声。
チャンバラ演技中。
『はいOK』の声。

○オープンセット脇
くつろぐちょんまげ姿の俳優達。
修学旅行生たちがロープ外で見ている。
原田と山本がしゃがんでいる。

(山本)「で、手紙が来たって?」
山本、タバコに火をつける。
(原田)「ああ、7年ぶりだったんだが、その手紙を読み終わったら
文字が消えてしまったんだ」
(山本)「消えた?」
(原田)「ああ、すぐに」
(山本)「ふーむ?なんて書いてあったんだ?」

仲良し6人組

(原田)「京都に眠る秘密の財宝をこれからひとつずつ
盗んでやる。捕らえてみろ。怪盗変面」

(山本)「変面?なんだそりゃ?」

(原田)「あいつだったらやりかねない。京都には
隠された財宝が腐るほど眠ってるって言うじゃないか。
あいつの有能さは狂気じみていたからな」

○舞台、夜(回想)
学らんを着て金髪のリージェントの藤原、
白い顔に赤い隈取の目、長い赤鉢巻。
上着を脱ぐと背中に刺青『狂鬼』。
一気にバック転を三回して前方に三回転。
そのまま客席へ。「きゃー」の悲鳴と逃げ惑う客席。

○元の撮影現場
(修学旅行生)「すいません写真とって良いですか?」
(原田)「(我に返り)ああ、いいですよ」
山本も一緒に立ち上がってポーズ。

○撮影所、食堂
おいらん姿の木村。町娘の高田。
農民の子ども姿の太一と愛、食事をしている。
原田と山本、トレイを持って隣の席に座る。

(木村)「怪盗変面が出たんですって?
山本さんに聞きました」
(原田)「もうしゃべったのか」
(山本)「あ、すまん。さっきな。だって、変面じゃ、
やっぱりおかしいよなあ?」

木村、高田、子ども達うなづく。
原田一人憮然として食べ始める。
(高田)「あのな、へんめん、てなんやの?」
(子ども達)「へんめん!」

皆顔を見合わせる。
原田一人黙々と食べている。
(山本)「すまん俺が悪かった。意味も知らんと、
怪盗変面が来るぞと言うてしもうた、すまん原田。
教えてくれ!変面てなんや?」

皆原田をじっと見詰める。
原田もくもくと食べている。
おもむろに水を飲み、立ち上がる。

(原田)「中国の芸人さんのことや。大昔からある
大衆芸能のひとつ、・・・こうやって」

原田、顔を次々とめくる格好をする。
(原田)「こうやって、次々と布のお面を張り替えて、
何十人もの役をやりきる一人芝居のことだーっ!」

原田、狂ったように顔をめくっている。
(山本、木村)「わかった、わかった」
(山本)「(周りを恥ずかしそうに見渡しながら)まあ座れ」

皆、しらけて食事をし始める。

変面出没

(高田)「ひょっとしてそれ、怪人二十面相とちゃうん?」
(皆)「怪人二十面相!」
皆顔を見合わせて、やおらじっと原田を見つめる。
一人がつがつと食事をする原田。

○撮影所正門、夜
普段着で帰る原田と山本。
(守衛)「お疲れ様でした!」
山本と原田、同時に手を上げて挨拶。

○道、夜
山本と原田、並んで歩いている。
(山本)「そやけど、いつどこで、何を盗もうというのやろ?」
(原田)「おれにもようわからん。もう始まっとるかもしれん」

○清水坂、真夜中、イメージ
シャッターを閉めた商店街。
隠れがくれ清水寺へ向かう忍者姿。
首領らしき者が指図をしている。
シルクハットに黒マスクめがね。
タキシードにステッキを持つ変面の姿。

○高台寺、石段下、真夜中
白馬に乗って逃げるシルクハット。
必死で走りながら荷車を押す忍者姿。
天空に向かって高笑いする怪盗変面。

(変面)「まだまだこれからだ!原田!ハッハッハッハ」

○平安神宮、正面戸口、真夜中、イメージ
隠れ隠れ忍び込む忍者姿。
最後を確認し戸を閉める変面。

○同、真夜中、イメージ
戸口が開く。重そうに物を運び出す忍者姿。
最後を確認し戸を閉める変面。

○八坂神社、石段下、真夜中、イメージ
白馬で駆け抜ける変面。
必死で走りながら荷車を押す忍者姿。

○京都府警、本部、外
京都府警の外観。

○同、内
盗難課と書いてある。
『京の夕刊』を見ながら話す古参の
出羽警部と初々しい亀山刑事。

(出羽)「またや、こないだ清水寺別院の黄金の仏像
かと思うたら、今度は平安神宮奥の院の純金の神器や。
これ何かあるで?お前どう思う?」

亀山、美人の婦警に微笑んでいる。
(亀山)「えっ?あ、はあ」
(出羽)「ひょっとしたら大掛かりな何かが・・・・」

出羽、帽子を手に握り締めニヤリと笑む。
(出羽)「早よせえ、行くぞ亀山」
(亀山)「あ、はい!」

出羽警部、戸を開け出る。
後を追う亀山刑事。

出羽警部

○清水寺、別院、イメージ
所化に様子を聞く出羽警部と亀山刑事。

○平安神宮、奥の院、イメージ
女官に様子を聞く出羽と亀山。

○同、中庭
女官が笹ほうきで庭を掃いている。
出羽が質問し亀山がメモしている。

(出羽)「すると、事件の朝に掃除してたら
紙くずが落ちていたというわけですな」
(女官)「思わず拾って広げてみたら大きく
『変面』て書いてあったんどす」

(出羽、亀山)「へんめん?」
(女官)「へえ、変な人の変とお面の面」
(出羽、亀山)「変な人の変とお面の面!変面!」

出羽と亀山互いに顔を見合わせもとの質問に戻る。
(出羽)「・・・で、その紙は?」
(女官)「はあ、もう燃やしてしまいました」

出羽、亀山、薪の灰の跡を見る。
亀山、近寄って調べる。
(亀山)「もう、わかりませんワ」
(出羽)「ふむ」
うなづく出羽警部の顔。

○清水寺、別院、イメージ
『変面』と書いた紙をかざす亀山刑事。
所化を前に紙をかざして詰問する出羽警部。
困った顔をして首を横に振る所化。

○産寧坂
出羽と亀山が並んで歩いている。
(出羽)「間違いない犯人は変面や」
(亀山)「ところで先輩、変面てなんですか?」
(出羽)「そりゃ、おまえ。変な顔と言う意味とちゃうか?」
(亀山)「変な顔ねえ・・・」
不審げに首を傾げる亀山刑事。

○撮影所、食堂、内
侍姿の山本、入り口の電話機で電話をしている。
(山本)「ああ、兄貴。ほかでもないんだけど、
原田が、昔の友人から手紙が来て・・・・・・」

○京都府警本部長室、内
電話をしている山本本部長。
(本部長)「わかった。変面やな。まだ新聞には出ていない
ようだな。盗難課あたりでさりげなく聞いてみるワ」

山本本部長

○京都府警本部、外

○同、内、階段下
山本本部長が階段を降りていく。
出羽と亀山が帰ってくる。
本部長と出くわして直立敬礼する二人。

(出羽、亀山)「あ、本部長」
(本部長)「ああ、君たち、ちょっと。盗難課だね?」
緊張する二人。

(本部長)「最近どうかね?何か変わった事はないかね?・・ん?」
(出羽)「変わったこと?全くありません。いたって健康です」
亀山、肘で出羽をつつく。
(出羽)「あ、事件のほうですか?事件のほうは・・へんめん、
あ、いや盗難事件が」

(本部長)「へんめん?」
本部長、周りを見、二人を脇へ連れ込む。
(本部長)「いま、変面とか言ったな」
(出羽)「あ、はい」
亀山、不安そうに見つめている。

(本部長)「二人ちょっと部屋まで来なさい!」
(出羽、亀山)「は、かしこまりました」
不安顔で互いに顔を見合す二人。

○本部長室、内
デスクがでんとあり。『山本本部長』のプレート。
デスク前にテーブルとソファー。
ソファーに本部長、向かいに出羽と亀山が座り、
秘密めいた雰囲気で話している。

(本部長)「(大きくうなづきながら)そういうことか・・・」
(出羽)「ええ、まあ」
二人うなづきあいほっとしている。
本部長、腕組みをして考え込んでいる。

(本部長)「実はな、変面というのは怪人二十面相のことなんや」
(二人)「ええっ!」
(出羽)「怪人二十面相てあの・・」
(亀山)「少年探偵団の・・・」

本部長、ゆっくりと立ち上がり、つぶやく。
(本部長)「これはひょっとすると大事件になるぞ」

○盗難課、内
奥で課長と美人の婦警が仕事している。
出羽と亀山がそっと入ってくる。
(出羽)「これは大変なことになりそうや・・・」

課長が立ち上がり二人に何か言おうとしたその時に電話。
課長、電話を取る。二人神妙にたたずんでいる。

(課長)「(二人をにらんだまま)ハイこちら盗難課!
えっ?本部長!・・・あ、はい。・・はい、分かりました。
しっかり頑張るように、ハイ、激励しておきます。ハイ」

出羽と亀山、顔を見合わせ笑む。

予告

20081225

できたばかりの杭州大橋を渡る。
寧波から2時間半で上海に着く。
30分かけて橋を渡りきった。

黄色く濁った遠浅の海が続く。
すぐに眠たくなってきた。

上海には5つのユースがある。
船長(キャプテン)。明堂(ミントン)。
易途(イーヅー)。白蘭(バイラン)。
藍山(ブルーマウンテン)。

白蘭路の青年旅舎に泊まる。
8人部屋のドミトリー、1泊60元(900円)。

年10泊以下だったらメンバーにならないほうが得だ。
年齢に関係なくいろんな人が泊まりに来る。

消灯して夜中にノックの音が聞こえた。ここはユースだ、誰だ?
安ホテルでは絶対に開けてはいけない。鉄則だ。

又ノックの音がする。恐る恐る明かりをつけてドアをあけた。
そこにはパンツ一枚の男の子が立っていた。

なるほどフロントは女の子ばかり。ドアはプッシュロック。
そのまま閉めてシャワーを浴びに行ったのだ。

広隆寺

○府警本部、外

○同、盗難課
こっそりと扉を開ける本部長。
出羽、亀山が気付く。本部長2Fを指差す。
出羽、亀山そっと抜け出す。

○同、本部長室、内
デスクにでんと座る山本本部長。
出羽と亀山が入室して敬礼。
(出羽)「本部長、御用は何でしょうか?」

本部長、デスクの上の紙をかざす。
『次の新月の夜、広隆寺の黄金の仏像を頂く。怪盗変面』
出羽、亀山、覗き込み驚く。

(出羽)「こ、これは?」
(本部長)「私が書いた」
ガクッとする二人。

○広隆寺、境内
本殿の真裏の白土塀。
愛と太一が塀を乗り越えて忍び込む。
本殿脇から木蔭伝いに隠れながら庫裏に近づく。
せむし男が庭を掃いている。
住職と出羽、亀山が話している。

(住職)「近頃変わったことと言われても?」
(出羽)「ほら、たとえば脅迫状とかお面とか?」
住職、腕組みして考え込む。
メモを取る亀山、ちらちらとせむし男と目が合う。
木蔭から愛と太一が覗いている。

(住職)「おお、そういえば」
住職、僧衣をまさぐるが見つからず、付近を捜す。
せむし男が近づいてきて紙くずを住職に渡す。

(住職)「おお、これじゃ」
せむし男、またもとのところに戻り掃きはじめる。
出羽、亀山、二人の動きを見つめている。

(住職)「子供のいたずらじゃと思うとったがの」
住職、紙を手にかざす。
『次の新月の夜、広隆寺の黄金の仏像を頂く。怪盗変面』

出羽、亀山、驚く。
(出羽)「こ、これは?まさか?」

笑う本部長のイメージカット。
愛と太一、顔を見合わせて木蔭から姿を消す。

(出羽)「(せむし男を見)あの男は?」
(住職)「ああ、あの作男はおしでな。耳もよく聞こえない。
もう30年以上になるかな・・・捨て子じゃよ。門前にな」
出羽、亀山、悲しげにうなづく。

謎の庭男

○撮影所、食堂、内
原田、山本、木村、高田が食事中。
愛と太一、血相を変えて駆け込む。
(原田、山本)「どうした?」
(木村、高田)「どうしたの?」
(愛)「(息せき切って)見た。今。刑事さん。広隆寺」
(太一)「(ぜーぜー)新月。仏像。変面」

(山本)「わかった!今広隆寺に忍び込んだら、
ちょうど刑事が住職と話をしてて、次の新月の夜に
黄金の仏像を盗むと変面から手紙がきてた。そうだろ?」

愛と太一大きくうなづく。木村と高田が
二人の背中をさすりながら水を飲ませる。
(原田)「黄金の仏像。どうしてもやるつもりだな、あいつは」
皆原田を見つめる。

○広隆寺、本殿、内
国宝半跏思惟像が厳重に安置されている。
住職、出羽、亀山が話している。
(出羽)「これが国宝第一号か・・・すばらしい」

亀山、像に近づきキスをしようとする。
『ブー』とブザーが鳴る。
亀山、飛びのく。
(住職)「30年前に学生がキスしようとして国宝の指を
壊したことがありました。それから、警報器がつけられました」

出羽、大きくうなづいている。
亀山、像に見とれている。
(出羽)「ところで、黄金の仏像というのはどこに?」

住職、ニコッと笑み、出羽に耳打ちする。
(出羽)「ええっ!ほんとうですか?」
出羽、まじまじと仏像を見つめる。

亀山、気付いて出羽に歩み寄る。
出羽、像の胸のあたりを指差して、
(出羽)「黄金の像は・・・この中に埋め込まれている?」
(亀山)「ええっ!このなかに?」

(住職)「だから絶対に盗まれん」

○せむしの作男が掃除をしながら
不気味に大笑いするイメージカット。

○京都、嵐山、初夏
観光シーズンの嵐山の風景。

○京福電鉄、太秦駅
電車が到着し降りてくる木村と高田。
女子大生風のよそおい。

○広隆寺、山門前
重厚な山門を見上げるラフなスタイルの原田と山本。
木村と高田が合流する。
(山本)「じゃ、行くか?」
(皆)「OK!」

○同、境内
せむし男がじっと四人の動きを目で
追いながら掃除をしている。
四人、本殿へ向かう。

国宝半跏像

○広隆寺、本殿、外
住職が四人を招きいれる。

○同、本殿、内
国宝半跏思惟像が厳重に安置されている。
住職と四人がいる。
(木村)「まあきれい!」
(高田)「ほんまや。こりゃとてもかなわんわ」

原田と山本、像をチラッと見ただけで他を探っている。
(住職)「えー、この半跏思惟像は国宝第一号でありまして、
半分足を反対の膝に乗せているので半跏。思索にふけって
いるので思惟、このまなざしと麗細なる指の形は・・・・」

木村と高田はうなづき傾聴している。
山本は天井を見たり柱に触ったりしている。
原田はじっと像を凝視している。

(住職)「・・・と言う訳で国宝第一号となりました」
うなづく木村と高田。
原田がいきなり像の胸を指差して、
(原田)「ずいぶんと重そうですね?この像」

(住職)「そりゃ重いですよ、中身が一杯詰まっていますから」
住職、しまったと思う。
(住職)「ええと、高さが150センチ。重さはと・・・」

原田、しめたと山本に目配せする。
四人、顔を見合わせてうなづく。

○同、本殿、外
住職に礼をして去る四人。
じっと見送るせむし男。
振り向いてニタリと笑う。
四人、いきなり近づいて、

(木村)「すいません。こっちからも出れますか?」
せむし男、大いに驚き、ううう!とうなづく。

○京都府警本部、外

○同、本部長室、内
山本本部長がデスクに座っている。
出羽と亀山が立ったまま報告をしている。
(出羽)「・・・・と言う訳であります」

(本部長)「ふむ、それじゃあ当日何人か応援をまわそう。
パトカーも1台でどうだ?」
(出羽)「は、ありがとうございます」
出羽と亀山、深々と頭を下げる。

○同、廊下
出羽と亀山が並んで歩いている。
(出羽)「この手で変面をとっ捕まえてやる」
(亀山)「そう簡単に捕まえられますかねえ?」
(出羽)「なに?」
出羽、亀山をにらみつける。

変面の里

○シネマ村、日本橋
撮影風景。
山本、同心姿。
原田、一心太助ふうの町人。
木村、高田は町娘。
子役の太一と愛。
撮影スタッフと見物客。

(監督)「ハイ、本番!」
緊張が走ってスタンバイOK.
ロープ脇に『お静かに』の扇子もち。

(監督)「ヨーイ、スタート!」
カチンコが鳴る。
通行人の間を抜けて走る原田と山本。

(監督)「ハーイOK!30分休憩!」
緊張が解けたみんなの笑顔。

○同、日本橋、橋下
6人が車座になってしゃがみ込んでいる。
(山本)「いよいよ明日の晩が新月の夜だ」
皆、真剣にうなづく。

(原田)「どうやってくるかさっぱり分からん?」
(山本)「府警のほうからパトカー1台と警官4名
刑事が2人張り込むそうだ」
(愛)「刑事って多分あの2人だね?」
(太一)「うん」

(木村)「黄金の像は間違いなく」
(高田)「国宝の中やね!」
(原田)「ふむ」
(山本)「とにかく明日はこまめに交替で探りを入れよう」
皆うなづく。

○京都、夜
東山に新月直前の月。
犬の遠吠え。
シルクハットの変面の顔をしたコウモリが飛んでいく。

○山奥、変面の里、真夜中
シルクハット、マント姿の変面。
HENMENブランドの忍者姿十名。
5名が2列で並んでいる。
赤青の忍者ユニホーム、胸に番号。

変面、HENMENとかっこよくデザインされた
シルクハットを白手袋の右手で掴み胸の前に持ってくる。
左手には金の玉の付いたステッキ。マントのすそを掴み、

(変面)「アチャ!(左に首を傾ける礼をする)」
(手下全員)「アチャ!」
(変面)「いよいよ明日が決行の日だ!準備はいいか?」
(手下全員)「(右手を突き上げて)オーッ!」

一列目5人が前方宙返りすかさず後方宙返り。
二列目がそれにつづきヒップホップダンスを
かっこよく踊り、最後に両手を天に突き上げて、

(手下全員)「オーッ!」
(変面)「(おもむろに)アチャ!」

○山道、真夜中
下りの山道、星明りで明るい。
白馬に乗った変面を先頭に、
荷車を押す10人の手下達。

A探偵団

○広隆寺、山門前
パトカーが止まっている。

○同、境内
せむし男が掃除をしている。

○同、本殿、外
警官が一人立っている。
木蔭に愛と太一が潜んでいる。

○同、本殿、内
国宝像の脇に警官が一人立っている。
住職と出羽、亀山が話している。

(出羽)「もうこれで大丈夫でしょう」
(住職)「ありがたいことじゃ。万が一国宝が盗まれ
でもしたら、この寺は潰れてしまう」
(出羽)「絶対に大丈夫です。この私が変面を捕まえますから」
亀山、像に見とれている。

○撮影所、食堂、内
原田、山本、木村、高田が食事中。
愛と太一が入ってきて報告をしている。
(山本)「そうか、何の変化もないか」
(原田)「仕事は真夜中だ。今のうちに眠ってたほうがいい」
皆うなづく。

○高台の草原
眼下に京の町が見えている。
おおいびきをかいて昼寝している変面一味のイメージカット。

○京都府警、本部長室、内
腕組みして空をにらむ山本本部長。

○安アパート、外、夜
安アパートの夜の全景。

○同、内、廊下

○同、内、原田の部屋
六人が雑魚寝をしている。
原田、目を覚まし時計を見る。
(原田)「あっ!おい、みんな起きろ!」

皆、目を覚まし起き上がる。
(山本)「それでは、みんなは、本殿のよく見える木蔭で
じっと見張っとくように。俺と原田は、周りをパトロール
してから木蔭に行く。夜でも分かるよな?」

(愛と太一)「まかしといて」
(山本)「じゃ、行くか」
(原田)「ああ」
皆、立ち上がる。

○広隆寺、外、夜
鐘楼脇出入り口付近の低い土塀。
六人が集結している。
原田が中腰で膝を立てる。
山本が介助して、愛、太一、木村、高田が入り込む。
最後に原田が周りを確認して山本が引っ張りあげる。

○同、境内、夜
木立の間を隠れ隠れに行く六人。
本殿、山門付近に灯がある。

○同、木蔭の拠点、夜
ちょうど6人入れるほどのくぼみ。
6人身を寄せ合ってしゃがんでいる。

(山本)「ここからだと正面に庫裏。右に本殿。
左が山門で全てがよく見える」
皆、うなずく。

山門、パトカーの警官が一人立ってあくびをしている。
本殿入り口に警官が一人立っている。
庫裏の戸が開いて、せむし男がお茶を運んでいる。

(山本)「それじゃ、パトロール行こうか。原田は外、
俺は内側。30分で戻る。OK?]
(皆)「OK」

忍者?

○京都府警本部、本部長室、外、夜
ドアノブに札がつるされている。
『今晩泊まり、起こすな!山本』

○同、内
デスクで眠る本部長。

○広隆寺、本殿、内、夜
柱の影に身を潜める山本。
警官と亀山、像の脇に立っている。
住職と出羽、椅子に座って将棋をしている。
出羽、腕時計を見て、

(出羽)「おお、もうこんな時間か。和尚、
後は我々に任せてゆっくり休んでください」
住職、あくびをしながら、

(住職)「そうじゃな。そうさせてもらうわ」
住職、立ち上がる。
山本、柱に身を隠す。

○同、土塀、外、夜
原田が土塀伝いに歩いている。
星明りで明るい。
原田、土塀のたて溝を見て、

(原田)「・・・うん?」
近づいて手で触れる。
(原田)「これは?」
原田、驚きの顔。

○京都、夜
東山の全景。星明りの暗闇。
犬の遠吠え。
HENMENと書かれたシルクハットの
変面の顔をしたコウモリが飛んでいく。

○京都府警本部、本部長室、内、夜
デスクで眠る山本本部長。

○広隆寺、山門前、夜
パトカーで眠る二人の警官。

○同、本殿入口、夜
椅子に座り眠りこけてる警官の姿。
庫裏の戸がそっと開いて、
周りを確かめニタリと笑うせむし男。

○同、本殿、内、夜
出羽、亀山と警官一人が
像の前で椅子に座り眠りこけている。

○同、木蔭の拠点、夜
愛と太一が木村と高田の膝の上で眠っている。
木村と高田も眠っている。
山本と原田は見張りをしている。

(原田)「ちょっと土塀のあたりをみてくる」
山本うなづく。

○東寺、五重塔、夜
東寺の五重塔を背に忍者10人が荷車を猛スピード
で押しながら駆け抜けていく。
白馬の変面はいない。

○広隆寺、土塀、外、夜
原田が探りながら歩いている。
突然、向こうから忍者の一群が
猛スピードで荷車を押してくる。

原田、すばやく隠れる。
不思議と音はしない。
荷車にはパネル、木箱、竹竿、映写機、
つるはし、スコップ等が積んである。

(忍者達)「エッサーホイサー。エッサーホイサー」

隠れている原田の目の前で荷車止まる。
原田、目を丸くして驚く。

忍者達『エッサーホイサー』をずっと繰り返しながら、
二人が土塀のたて溝と次のたて溝とに沿って立ち、
ゆっくりとしゃがむ。

3mほどの土塀が手前に動き、横にスライドする。
荷車、中に入り、土塀がしまる。

原田、目を丸くして驚いている。

エッサーホイサー

○広隆寺、土塀、内、夜
土塀の中。荷車の周りにパネルが立てられる。
三人の赤忍者、本殿の屋根伝いに竹竿と
映写機、スピーカーを運ぶ。

青忍者6人、手際よく猛スピードで穴を
掘り始める。場所は本殿の真裏である。

(忍者達)「エッサーホイサー。エッサーホイサー」

○同、土塀、夜
原田、土塀の上から内側に飛び降りる。
黒々として静か、何も見えない。
歩き出そうとしてパネルにぶつかる。

(原田)「いてっ!」
不審げに、両手で空中を触っている。
(原田)「あれっ、これは?」

風景と見事なまでに同化したパネル。
原田、木に登り中をのぞく。
目を丸くして驚く原田の顔。

○同、パネルの中、夜
ランタンの灯だけでがむしゃらに掘り進む青忍者6人。
(忍者達)「エッサーホイサー。エッサーホイサー」

だんだんと動作と掛け声が早くなる。
さらに狂おしく早くなって、
みるみる砂の山が高くなる。

○同、本殿の屋根の上、夜
赤忍者3人がいる。一人が竹竿を持ってスクリーンを
広げながら庫裏の屋根を伝い大木にわたる。
あと一人は映写機とスピーカーをセットする。

残る一人は竹竿スクリーンを持って屋根の上に立つ。
(忍者達)「エッサーホイサー。エッサーホイサー」

○京都府警本部、本部長室、内、夜
ソファーで眠る本部長。

○広隆寺、山門前、夜
パトカーで眠る二人の警官。

○同、本殿入り口、夜
さっきよりだらしなく眠る警官。
空中にスクリーンが見える。

○同、本殿、内、夜
さっきよりだらしなく眠りこけている
出羽と亀山と警官。

○同、木蔭の拠点、夜
愛と太一、木村と高田の膝の上で眠っている。
高田は山本に寄り添いながら眠っている。

○同、庫裏、内、夜
奥で住職がいびきをかいている。
土間にせむし男と赤忍者一人がいる。

赤忍者、たたんだマントの上に
シルクハットを乗せて両手で持っている。

(せむし男)「よしっ!」
赤忍者が衣装を差し出す。
せむし男がくるりと一回転すると、
シルクハット、白顔、口裂け、黒目がね。

マント姿の怪盗変面に変身している。
変面、ステッキを掲げ宙をにらみ、
(変面)「よーい!スタート!」

○同、本殿裏、夜
忍者達、荷車の木箱を降ろしている。
(忍者達)「エッサーホイサー。エッサーホイサー」
原田、木から飛び降りる。

○同、木蔭の拠点、夜
皆眠っている。
山本、ふと目を覚まして、正面を見て驚く。

変面参上!

○広隆寺、本殿前、夜
庫裏上空の大スクリーンに変面の顔が映る。
スピーカーからの声が響く。
(変面)「ワッ八ッハッハ!怪盗変面参上!お待たせしたな。
ワッハッハッハ!怪盗変面参上!ワッハッハッハ」
居眠りの警官、驚いて立ち上がる。

○同、山門前、夜
パトカーの二人、スピーカーの声に驚き飛び出す。
その隙に赤忍者がパトカーに何かを細工する。

○同、本殿、内、夜
眠りこけていた出羽、亀山、警官、目を覚ます。
(出羽)「ん?なんだ?」
(亀山)「ん?」

警官、立ち上がり入り口へ走る。
(警官)「あ、大変です!変面が現れました!」
(出羽、亀山)「なんだって!」

三人、入り口へ走る。
柱の影から原田、仏像を見ている。

○同、木蔭の拠点、夜
完全に目を覚ましスクリーンを見つめる
山本、木村、高田、愛、太一。

○同、本殿前、夜
スクリーンで変面がしゃべっている。

(変面)「さあ諸君。今はスクリーンだが、
このあとすぐに本物が現れるからお楽しみに。
まずは我らのすばらしい踊りを紹介しよう!
レッツゴー!変面ダンサーズ!」

画面で忍者のヒップポップダンスが始まる。
皆、ボーっと見とれている。

○同、本殿、内、夜
柱の影で像を見つめる原田。
突然、像が台座ごとガタンとゆれる。
ゆっくりと像が下降する。

完全に見えなくなって5秒後、ゆっくりと
『笑う人魚の像』が上がってくる。
(原田)「あわわわ?」
像の台座に『怪盗変面作』とある。

○同、本殿裏、夜
一瞬にしてパネルをたたみ像を乗せ、
土塀を開けて荷車を押し出す青忍者。
(忍者達)「エッサーホイサー。エッサーホイサー」

○同、本殿前、夜
皆、スクリーンに見とれている。
(変面)「それでは本物を紹介しよう!怪盗変面参上!」

画面が消え真っ暗。すぐにスポットライトが点き、
シルクハット、マントがなびくシルエットが画面に浮かび上がる。

(変面)「ワッハッハッハ。諸君、怪盗変面はここだ!
捕まえられるものなら捕まえてみたまえ!おっとその前に、
国宝と黄金の像は確かにいただいた。ワッハッハッハ!」

怪盗変面は本殿の屋根の上。
変面の体が宙に浮き、天空のワイヤーを
滑空して山門を超えて消える。

○同、山門前、夜
パトカーの後方で赤忍者が白馬を用意している。
変面が滑空してきて白馬にまたがる。
赤忍者と変面うなづきあう。
白馬が山門前を駆け抜けていく。

○同、本殿前、夜
皆、混乱している。
(出羽)「変面を捉えろ!いや、仏像が先だ!」
右往左往するみんなの姿。

結局、警官四人が追跡に向かう。
出羽と亀山、本殿に入る。

○同、山門前、夜
パトカーに乗り込む4人の警官。
何度やってもエンジンはかからない。

○同、本殿、内、夜
『笑う人魚の像』の前に呆然と立ち尽くす出羽と亀山。
同時に手帳を落とす二人の後ろ姿。

○東寺、五重塔、夜
白馬で駆け抜ける変面。
白馬止まり、前足を掲げていななく。
ステッキで天をさす変面。

(変面)「ワッハッハッハ!」
忍者達が荷車を猛スピードで押してくる。
(忍者達)「エッサーホイサー!エッサーホイサー!」
変面たち、夜の闇に消えていく。

捜査本部

○京都府警本部、本部長室、内
床でだらしなく眠る山本本部長。

○広隆寺、庫裏、内、夜明け
いびきをかいて熟眠する住職の姿。
にわとりの鳴き声。

○シネマ村内、中村座前、
撮影風景。
山本、原田、町人姿。
木村、高田、町娘姿。
子役の太一と愛。
撮影スタッフと見物客。

(監督)「ハイ、本番!」
緊張が走ってスタンバイOK。
ロープ脇に『お静かに』の扇子もち。

(監督)「ヨーイ、スタート!」
カチンコが鳴る。
『すりだ!』の男の声。
通行人の間を走り抜ける原田と山本。

(監督)「ハーイOK!30分休憩!」
緊張が解けて皆散る。

○同、中村座脇
6人、車座になって座る。
皆、睡眠不足で眠たそう。

(山本)「お前どこ行ってたんだ?」
(原田)「実は、あの晩土塀のところで・・・・・」

○イメージカット
荷車と忍者の到着から、穴掘り、木箱を下ろすところ。

○元の中村座脇
みんな真剣に原田の話を聞いている。
(原田)「・・あれは特別訓練されたプロ集団だと思う」
皆、顔を見合わせる。

(原田)「あのあと本殿に忍び込んだんだが、・・
変面の笑い声が外で聞こえて・・・・」

○イメージカット
国宝の半跏像がガタンとゆれて、
『笑う人魚の像』が上がってくる所。

○元の中村座脇
みんなの驚きの顔。
(高田)「一度見にいかなあかんね」
皆、うなづく。

(山本)「なるほど、そうか、そうだったのか。
兄貴に報告しといたほうがいいな」

○京都府警本部、外
正面『京都府警本部』とある。
警官が1人立ち、出羽と亀山敬礼して入る。

○同、本部長室、内
デスクに山本本部長。電話をかけている。
(本部長)「よし分かった」
本部長、受話器を置く。

出羽と亀山、力なく入ってくる。
(本部長)「君たち、ご苦労であった」
(出羽)「どうもすみませんでした。取り逃がして
しまって、ほんとにすみません!」

(本部長)「何を言っとるんだ。顔を上げなさい」
出羽と亀山、顔を上げ複雑げ。
(本部長)「今日は君たちのスタートの日なんだから、
元気を出して、ん?」

(出羽、亀山)「えっ?スタートの日?」
(本部長)「午後の記者会見には二人も同席して
もらうから、そのつもりでいてくれたまえ」

出羽と亀山、不安げに顔を見合わせる。
(本部長)「心配しなくていい。君たちは胸を張って黙って座っ
とくだけでいいから。その前にちょっと相談したいことがある」
(出羽、亀山)「あ、はあ?」

記者会見

○京都府警本部、記者会見場、内
正面に長テーブル、中央に山本本部長。
両脇に出羽と亀山、不安げに座っている。
十数名の記者達。一人覆面をしている。
司会の警官が脇に立っている。

(司会)「それでは記者会見を始めます。
状況説明!山本本部長!」

(本部長)「えーまず状況を説明させていただきます。
昨夜の広隆寺国宝窃盗事件。さらにその前の平安神宮
神器窃盗事件。さらにその前の清水寺黄金仏窃盗事件
は、同一犯ということが判明しました。犯人は!」

皆、メモの手を止めて本部長を見る。
(本部長)「犯人は、怪盗変面とその一味!」
皆一斉にメモを取る。覆面うなずく。

(記者1)「へんめん、てどんな字ですか?」
(本部長)「変な人の変とお面の面です」
(記者1)「なんですか、それは?」

(司会)「あー質疑応答はあとで願います!」
皆、へんめんといいながらざわめく。

(本部長)「えー本日、怪盗変面窃盗団捜査本部が設置
されました。本部長はこの私。現場の責任者はこちら、
出羽警部と、こちら、亀山刑事」

出羽と亀山、立ち上がって礼をし着席。
(本部長)「以上で状況説明を終わります。
質問を受け付けます」

(記者2)「ハイ!」
(本部長)「どうぞ」
(記者2)「一味の人数は何人くらいですか?」
(本部長)「少なくとも十数名と思われます」

皆一斉にメモを取る。覆面が一人、腕組みして
うなずいていたが、皆と同じようにメモを取る。

(記者3)「ハイ!まだ事件は続きますか?」
(本部長)「相当訓練されたプロの集団のようでして、
即刻逮捕は、ちょっと無理です」

(記者1)「ハイ!変面てなんですか?
見たひといるんですか?」

(本部長)「実は見たものがおるんです。こちらの
二人がそうです。本日は日ごろご協力をいただいて
おります皆様方に特別プレゼントをいたします」

本部長、目で出羽に合図をする。
(本部長)「この優秀なる二名の記憶力を下に、
怪盗変面のモンタージュをを公開いたします」

出羽と亀山、立ち上がって大きな紙の巻物の
両端を持って広げる。

HENMENと書かれたシルクハットにピエロ顔、
黒マスクめがねのものすごくへたな絵である。

記者たち驚き、前に進み出る。
覆面男が一人後ろの席で眠っている。

○広隆寺、山門前
タクシーが止まりドアが開く。
ほんもののせむしの作男が降りてくる。
大きく息をして山門を入る。

○同、境内
立ち入り禁止の警察のロープ。
鑑識課数名が作業中。
住職、出羽、亀山がいる。

(住職)「とほほもうこれでこの寺もおしまいじゃ」
(出羽)「まあまあそう落ち込まないで、国宝は
必ず探し出してあげますから」

そこにふらりと作男が現れる。
皆驚く。
(作男)「ううあうあうあ?(なにかあったんですか?)」
(三人)「あうあうあうあ?(おまえどこにいたんだ?)」

亀山が紙と鉛筆を持ってくる。
作男、紙に何か書いて皆に見せる。
『山奥の温泉に一ヶ月いた』

○温泉、露天風呂
温泉につかりご馳走を食べる作男のイメージカット。
変面の里と書いた標識が見える。

○広隆寺、元の境内
住職、出羽、亀山、作男がいる。
作男、懐から大きな手紙を出して住職に手渡す。
(作男)「ううああう(預かった、読め)」

住職、弱々しく手紙を受け取り読み始める。
皆、注目している。
(住職)「おお(少し明るく)・・おお(背筋がのびて)
・・・おお(目が輝いてくる)」

皆驚き、住職を見つめている。

笑う人魚の像

○輪転機
新聞の輪転機が回っている。
各紙の一面が次々重なる。

『怪盗変面!京都に現る!』
『怪盗変面!府警に挑戦状!』
『超プロ集団!怪盗変面窃盗団!』

写真入り文面がそれに続く。
かっこよく修正された笑む怪盗変面の
写真と『笑う人魚の像』が大写し。

○広隆寺、山門前
長い人の列ができている。
ほとんどが今までの登場人物である。

『怪盗変面作笑う人魚の像写真撮影会会場一回千円』
の大看板。アルバイトが二人『お静かに』と
『待ち時間1時間』の扇子を持って整理している。

○同、境内
長い列ができている。
受付に作男とバイトの女の子が座っている。
ダンボール一杯のお札が見える。

作男振り返ってニタリと笑う。
出羽と亀山、山本本部長も私服で並んでいる。
記者の皆さん。

原田、山本、木村、高田、愛と太一。
撮影所の皆さん。見物客の皆さん。
盗難課の課長と婦警。

所化、女官、監督。修学旅行生。
変面と忍者たち隠れてきている。

○同、本殿、内
『笑う人魚の像』がある。
台座に『怪盗変面作』と書いてある。

写真撮影風景。
バイトの撮影係が、セットしながら、
フラッシュ、シャッターを切っている。

(撮影係)「ハイチーズ!・・ハイOK!」
脇で住職と出羽と亀山が話している。

(出羽)「いやあ、大盛況ですな」
(住職)「ああ、ありがたいことじゃ。変面さんの
アイデアで、これから有名になるから撮影会をやりなさい、
と手紙に書いてあったんじゃよ。ほほほ」

(出羽)「そうですか、しかし、大盛況ですな」
亀山、メモを取りながら、
(亀山)「犯人は必ず現場に戻るはずだ」

フラッシュが輝く。
(撮影係)「ハイ、次の方」

薄暗がり、長い列の先頭から愛、太一、高田、木村、
原田、山本が出てくる。
(山本)「(係に)六人で一枚!」

薄暗がりに次の客が出てくる。よく見えないが
その客はシルクハットをかぶっている。

愛と太一が像の下に顔を並べる。
木村と高田、山本と原田両脇に顔を出す。
(撮影係)「ハイ、変面!」

フラッシュが輝き、『笑う人魚の像』と
六人の顔のストップモーションが大写し。

                    第一話 ー完ー

黄金の半跏像(シナリオA探偵団1)

黄金の半跏像(シナリオA探偵団1)

(シナリオ)京都に怪盗変面が現れた。次々と財宝を盗んでいく。まずは広隆寺の半跏思惟像に隠された黄金だ。突然天空に浮かび上がる怪盗変面の笑い顔。京都府警の厳戒態勢の中をまんまと白馬にまたがり逃げていく。痛快A探偵団!こうご期待!

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-11-15

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 京都シネマ村
  2. 仲良し6人組
  3. 変面出没
  4. 出羽警部
  5. 山本本部長
  6. 予告
  7. 広隆寺
  8. 謎の庭男
  9. 国宝半跏像
  10. 変面の里
  11. A探偵団
  12. 忍者?
  13. エッサーホイサー
  14. 変面参上!
  15. 捜査本部
  16. 記者会見
  17. 笑う人魚の像