戦国BASARA 7家合議ver. ~問・秀吉と元就の共通点は何か?~

はじめまして、こんにちは。
どうぞよろしくお願いします。

これは戦国BASARAの二次創作作品です。
設定にかなりオリジナル色が入っている上、キャラ崩壊が甚だしい・・・。

別物危険信号領域。


かなりの補足説明が必要かと思いますので、ここで書かせて頂きます。

まず、オールキャラ。
カップリングとしては、『まず』、片倉小十郎×鶴姫。
そして何より、長曾我部元親×毛利元就、からの、豊臣秀吉→毛利元就←長曾我部元親。

ヒデナリとか、マイナーも甚だしい・・・。


前提としては・・・。

まず、家康さんが元親さんに、こういう提案をしました。『天下人が1人じゃなきゃいけないって縛りが、戦国が終わらない元凶じゃね? 日の本を7つに分割して代表家を決め、その7家の合議で政治をしてけばいんじゃないの?』という提案です。

元親さんが乗り、慶次さんが乗り、『中国地方は我の物』が口癖の元就さんが乗り。
九州→島津家、四国→長曾我部家、中国→毛利家、近畿→豊臣家、中部→前田家、関東→徳川、東北(奥州)→伊達家、という担当になるの前提で、7家同盟が成立している状態です。

代表家になる予定ではないながら、謙信公と信玄公も理想に共鳴し、助力してくれてます。

この先は、合議制なんて反対だっ! って言ってる人たちを武力で纏める段階です。


そして鶴姫さんが元就さんの事を、何故か『兄様』って呼んでスーパーブラコン状態発動です。
元就サンも『明(あかる)』ってオリジナル名前で呼んで、スーパーシスコン状態発動です。

実は2人は『陰陽8家』という、術者を纏める裏組織の西ツートップ。
幼い頃から色々あって、2人で生きてきた的な部分がかなり強く・・・という、設定があります。
えぇ、オリジナルです。

『陰陽8家』の設定は、今回あまり出てきません。スルーしても読めますので、ご安心下さいませ。


今回投稿したこのお話は・・・。

・・・あまり、まとまりがなくなりましたが。

鶴姫さんがストーカーに晒されたり、ナリ兄様がインテリヤクザ全開で陰陽師をいたぶってたり、
秀吉さんのブラックな面がチラ見せされたりしております。


最終的に、元親さんと秀吉さんの間で、元就さんをめぐる協定が結ばれた。
そんな感じのお話です。

あ、小十郎さんと鶴姫さんの微エロがありますが、ホントに『微』で、
エロの範疇に入れるべきかすら、作者的基準ではギリギリ、という。
まぁ、一応、床の上に布団が敷いてあるので、『微』エロとしておこう・・・。


こんな感じでオリジナル設定てんこ盛りのお話ですが、楽しんで頂ければ幸いです。
本当に、この上なく幸いです。

チキンハートに石を投げないでっ。

戦国BASARA 7家合議ver. ~問・秀吉と元就の共通点は何か?~

 いちごに にんじん さんまに しいたけ
   ごぼうが ろっぽん なっぱ はっぱ くさった とうふ・・・・


 奥州・伊達屋敷。
 夕暮れ刻の縁側で、庭と向き合った少女が、数え唄にお手玉を乗せて遊んでいる。
 日の本の人間にしては希い、栗色の髪。活動的なショートヘアに翠の石を使った髪飾りがよく似合っているが、日焼けしない質なのか色は白かった。濁りのない気性を表したかのような澄んだ茶瞳は、今はリズミカルに回るお手玉を追っている。
 傍らには若い男が居て、手許で扇を弄びながら、やはりお手玉遊びを眺めていた。柱に背を預け、行儀悪く立膝をつきながら。不思議そうに小首を傾げている。

「『苺』ではなく『無花果』ではなかったか?」

「少々アレンジしてみました。
 兄様、先日言ってらしたでしょう? 長曾我部さんに苺もらった時。『イチジクより苺の方が好き』」

「あかるっ。
 だからそなたは、そーゆう事を軽々に喋るでないわっ! 良いか、独眼竜辺りの目の前で、絶っっっ対に、口に致すでないぞっ?!」

「まだキャラ崩壊がどうとか、気にされているのですか? 今更だと思うんですけど・・・。兄様の甘味好きもフルーツ好きも、皆様、好意的に捉えて下さってますよ?」

「それでもっ! 気分の問題ぞ、気分の。」

 切れ長の瞳を渋めて扇で口許を隠す、女のような細面の美男。どうやら彼は、少女の兄であるらしい。
 本当に綺麗な男だった。
 紫がかった茶色というのも珍しい髪色だし、それをラフな切り口で肩で切り捨てているのも、高貴な雰囲気に反してむしろ目を惹く。その白皙の美貌は十中十、母親似で、そして確実に母親以上だ。
 どうやら本人は甘味好きもフルーツ好きも隠したいらしい。桜色の爪で扇を弾くが、そんな高飛車な仕草すら、美猫が尻尾でタシタシと床を叩いて食餌を要求しているような、思わず許してしまう可愛らしい高貴さがある。
 妹は兄の不機嫌に頓着しないつもりらしく、むしろ更に笑みを深めた。

「兄様。髪、伸ばしたら宜しいのに。」

「何だ、急に。
 長髪の似合う男は貴重だとか、元親のような事を申すつもりではあるまいな?」

「いえ、まぁ、ソレもありますけど・・・。
 髪飾りで遊べるのにって。兄様、本当は綺麗なモノもお好きでしょう? もしかしてソレも隠したいのかなって、思って。
 謙信公が、兄様とそういう綺麗なモノ談義がしたいのに振っていいのか判らないって。そう零していらっしゃいましたよ?」

「明・・・そなた、本当に橋渡しが上手くなったな。たまに腹立つくらいに。」

「謀神と謳われた兄の妹です。結構イイ線、いってるでしょう?」

「我のオフレコ話を、もう少し黙れたら及第点をくれてやるわ。」

「フフフ♪」

 再びお手玉を回しながら、妹はやっぱり笑みを含んでいる。
 やがて完全に陽が落ちた頃、縁側に新たに2人、現れた。

「よぉ、鶴、元就。待たせたな。
 メシ食おうぜ、メシ。やっぱ礼服は窮屈だな。つっかれた~。」

 1人は20歳前後と思われる、精悍な面差しの、右目に立派な眼帯を付けた隻眼の青年。着替えたばかりらしく、着流しの襟を気にしている。
 もう1人は黒髪をオールバックにまとめ、左利きなのか、右腰に刀を差している30代と思しき壮年の男。兄に明と呼ばれ、青年には鶴と呼ばれた少女を見て、黙って瞳を和ませた。
 少女も少女で、左利きの男への視線だけ、明らかに別の『慈しみ』が含まれている。

「お帰りなさい、片倉さん。
 南蛮のお使者との会談、お疲れ様でした。」

「今帰った、鶴。すまねぇ、大分、待たせちまったな。」

「いえいえ♪」

「うぉーい、鶴? オレも会談したんだけど? つかオレが会談したんだけど?
 オレには何も言ってくんねぇの?」

「政宗さんへの『友愛』は、言葉ではなく行動で示します。
 今日のお夕食、政宗さんのお膳だけおかずは全部私のお手製って事で♪・・・作ったのが私ってだけで、お膳の内容同じですけど。待ってる間に厨房お借りしました☆」

「くっそぅ、膳の内容が同じでも、作ったのが鶴ってだけでオールオッケー、色々騙されちまうオレの単純味覚っ。」

「安堵せい、独眼竜。気持ちは察するぞ。共感はしないが。」

「うるせぇ黙れ八つ当たりすんぞ保護者っ。」

 青年の黒髪に殊更優しく手櫛を通しながら、笑みを含んだ毒をあっさりと吐く美男。彼の手を邪険に払いのけ、下から睨み上げる青年。左利きの男が苦笑し、少女が男に寄り添いながら楽しそうに微笑んでいる。
 あけすけに言い合いながら、どこか安心感・・・安定感のある光景だった。
 ふと、美男が青年に向けて眉を顰める。

「会談ひとつに、結構かかったな。南蛮の使節との交渉は、そんなに難航しておるのか?」

「いや、そういう訳じゃ、ねぇんだが・・・。
 仕事面じゃ、順調なくらいだと思うぜ?」

「?」

「・・・先方に1人、鶴に興味津々なヤロウが居んのよ。オリエンタル・ビューティーとかいうの? しかもどっっっか、粘着質でヤバそうな方向性でな。
 会わせねぇっつってんのに、しつこく食い下がってくるソイツを断るのに、ちょっと、な。」

「そういう事か・・・得心致したわ。」

「その人きっと落胆しますよ、『本物』見たら。だって私、全然『東洋美人』じゃありませんもの。」

『・・・・・・・。』

「兄様っ! 少なくとも兄様は頷くトコですっ!
 大和撫子っていうのは、もっと綺麗な黒髪に黒い瞳で、戦場になんか絶対に出ないような、十二単が似合うようなお姫様の事なんですからっ。」

「いや、そなたの『大和撫子』観も微妙に違うと思うが・・・というか、そなたとて一人前の『毛利家の姫』であろうが。」

「政宗様も俺も、そうそう頷けやしねぇんだが・・・。
 それはともかく、鶴。欲しがってたブツが届いたぞ。中庭に置いてあると、成実殿から連絡があった。」

 半ば無理矢理に話題を変えた左利きの男の気遣いに、少女はイチもニもなく乗り込んだ。胸の前で両手を握り締めて、大喜びしている。

「わぁ♪ ありがとうございます、片倉さん♪♪」

「賢妹よ・・・そなた、嫁ぎもしないうちから、婚約者に何をねだった?
 イヤな予感しかしないのだが。」

 少女の喜びように第六感を働かせたらしい美青年は、眉を引き絞って扇を握り締める。既にしてこめかみには青筋が浮かんでいた。
 少女は少女で、兄の怒りにトコトン頓着というモノをしないつもりらしい。
 あっさりと、こうのたまった。

「え~? 苺の苗♪」

「あかるっ!!」

「あっははっ♪」

 扇で頭をはたかれそうになるのを身軽く避けると、鶴姫はリズミカルな足運びで3人に向き直った。
 その瞳が悪戯っぽく笑んでいる。

「寒いトコでも育つ品種の中でも、敢えて酸味の強いのを選んだんです。
 琉球産のサトウキビと、南蛮はオランダから根付かせた苗で。いつか甘~い『ジャム』を作って、食べさせてあげますからね、兄様っ♪」

「違う・・・決定的に何かが違う・・・っ。
 大和撫子というのはな・・・大和撫子とは、前田の妻女のような女の事をして申すのだ。断じて『アレ』ではない・・・!!」

 少女の優先順位は、夕食より苺の苗らしい。一目散に中庭へ確認しに行く妹の後ろ姿に、美青年が壁に手をついて落ち込んでいる。
 一体どこで育て間違った。
 当の『アレ』に惚れ込んで今がある青年たちは頷けないものがあるが、『アレ』の兄としての苦労くらいは、察せられる。間を取って苦笑しながら、『アレ』の兄の肩を叩いてやるくらいしか出来ないが。

「ま、イイんじゃねぇの?
 オレらのやろうとしてる大業にゃ、1人くらいああいう破天荒な女が居ねぇとな。男だらけじゃ華もねぇ。人妻と忍が居ても、華にならねぇんだよ。」

「政宗様の仰る通りです。
 『寒い国にこそ、暖かい国の果実を根付かせたい。』。そのような願い、我ら伊達一門でなくば到底叶えられますまい。」

「大和撫子はそんな、月天人の如き我が侭は言わぬ・・・アレは何処のかぐや姫ぞ?!
 付け込まれておる・・・そなたら、惚れた弱味に付け入られておるぞ・・・っ。」

「うっせぇな、いんだよ、付け込ませてやらぁっ。
 どうせ貿易以外にも、土地付きの基幹産業が欲しかったトコだ。果樹農業、ウチのカラーにするには悪くねぇ選択だ。試してみるさ。」

「政宗様、毛利殿。取り敢えず、夕餉へ。」

「おぅ、今年の野菜は旨いぜぇ~♪
 いつかデザートに、ストロベリーが付くようになるかもな。」

「うるさい黙れ。我は水菓子が嫌いだ。」

「はいはい。」

「今の絶対、流したであろうっ?!」

 途切れる事無く続いていく口喧嘩が、廊下の奥に消えていく。
 全て、見ていた。その『瞳』は、3人の男たちは見送らない。誰にも看破されぬまま、『瞳』は本来の監視対象を見つけに行った。



 数日後、関東は甲斐・武田領。
 鶴姫が馬上から放った一矢は、見事に敵忍者の瞳に命中した。

「今です、佐助さんっ!」

「おぅっ♪」

 片目を射抜かれても猶、林間を伝って逃げようとするのは流石の根性だが。
 そこは天下の猿飛佐助、根性だけで逃げ切れるような生半な相手ではない。彼のクナイは真一文字に敵の喉笛を切り裂いた。

「いや~、やっぱ伊予の姫様、仕事が早いわ。頼りになる~♪」

「いえいえ、佐助さんのお働き、いつもながらお見事でございます。」

 無事に機密文書を取り返した鶴姫と佐助は、殊更わざとらしく他人行儀な言葉を交わして、同時に吹き出した。信頼し合い、背中を預け合っているからこそ出来る会話だ。
 2人の笑いさざめく声が、木漏れ陽の間を抜けていく。
 今日は天気が良い。こんな日は本当は任務などせず、大木の影にでもゴロンと寝そべっているべきなのだ。丁度今、2人がそうしているように。

「佐助さん、私、イイ物持って来てるんです。
 甘い物、お好きでしょう? 一緒にキンツバ食べません?」

「キンツバって・・・伊予の姫様、何でも持ってるよね、ホント。」

「フフフ♪
 任務に失敗する気なかったんで、佐助さんと外でお茶しようと思って。」

 そう笑いながら、鶴姫は懐紙に包んだキンツバを懐から出し、草の上に置いた。
 同盟に共鳴する家門も、大分増えてきた。その中でも真っ先に共鳴した最古参の家門の筆頭が、上杉・武田の両雄だ。その武田忍軍の長として、鶴姫とは相応に長い付き合いになってきた訳だが・・・。
 この姫は、戦場以外で・・・時に戦場でさえ、いつも笑顔を絶やさない人だった。
 兄・元就の怜悧な無表情とは、真逆と言えるくらいに。
 まぁあの旦那の印象も、大分変わってきたけれども。

「頂き物なんですよ、謙信公からの。」

 そう話しながら、同じ水筒から2人分。竹を割って作ったカップに黄緑色の冷水を注いでいく。
 コレもまた、凝り性な彼女のオリジナル・ブレンドだ。初見の感想は『二番煎じみたいな色』だったが、まろやかな美味しさに驚いた。さぞかし高級な茶葉なのだろうと思っていたら、本人が直接市場に出向き、安い茶葉を更に買い叩いた最低級品なのだと教えられて、もっと驚いた。
 『経済観念というより、遊戯事の感覚なのだろうよ。』と、彼女の兄は苦笑していたが。
 当の彼女は、目の前でのほほんと咽喉を潤している。

「公が普段から参詣なさっているお寺があって、その近くに美味しいお茶屋さんがあるんです。公はかすがさんとご一緒に、よく行かれるそうで。そこのキンツバがホンッッットに、美味しいんですよ。
 昨日、公の御許に伺った時、私も初めてご一緒させて頂いたんですけど。その時、公が私にって、お土産に包んで下さったんです。
 じゃ~ん♪ コレが越後は上杉謙信公、ご推薦のキンツバで~す♪」

「眩しいっ、キンツバだけに眩しいよっ、姫様っ!」

「2つ持って来たんで、1つずつ分けましょ♪
 あ、信玄公と幸村さんにはご遠慮申し上げなくて大丈夫です。沢山持ってきてるんで、後でまた改めて4人でお茶会しましょ♪
 他ならぬ武田一門のお腹に収まるなら、謙信公ももっと喜んで下さる筈♪」

「流石姫様、そーゆートコが常人離れしてんだよねぇ。」

 この程度の気遣いは序の口なのだ、この人の場合。
 半端に小賢しいお姫様の、その場限りの浅はかな好意ではない。

「そういえばさ、伊予姫様。
 試験運用で伊達領に作った薬草園、わざと蘆名領との国境に作ったって、聞いたんだけど・・・色々ヤバいんじゃないの? 大丈夫?」

「はい、わざとです♪ そして大丈夫です。
 蘆名のご当主とは、戦場で幾度か『ご挨拶』した事があります。名門意識が強くて、プライドの高い人。自己中心的な色は強いですが、決して邪悪な人ではありません。自分をしっかりお持ちで、規律を重んじ、その基準から外れる事を嫌う。
 まぁ、だからこそ、規律にハマらない政宗さんとはソリが合わないって面も、あるんですけど・・・。」

 そう言って、困惑の笑顔でキンツバを解す鶴姫。
 だが彼女の中では、『蘆名公』とは未だ交渉の余地があるのだろう。彼に対する興味は尽きていないようだった。
 鶴姫は優しい人だが、『あの』兄の妹らしく、一度切り捨てた相手には周囲がハッとする程に手厳しい。ただ、そうと判断するまでに、仲間内の誰よりも和解に手を尽くす、というだけだ。彼女もまた、戦国の女である。

「酔狂を好む人です。面白いと思って興が乗れば、盤外交渉にも付き合って下さる。自分の基準に照らして、道理に悖るような行いはしない、潔癖な人です。
 そして非軍事施設への攻撃は、あの御方の『基準』に悖る。ソレが判った上で、『ココを戦場にすんな♪』って意味の土地選びだったんですけど・・・。
 『今度~、薬草園を作る事になりました。きゃっ♪ 民の為なんだから邪魔しないでね♪』って書状送ったら、『コレ、ウチの激レア品。開園祝いにやる。根付いたら株分けして。』って、漢方の超貴重な薬草の苗が送られてきたんですよ。
 まぁぶっちゃけ、これから土を作ろうって段階からそんな貴重品もらっても困るんですけど。
 枯らしたら、きっと開戦の理由にされたりするんだろうな~めっさ腹立つww とか思って困ってたら、とある梟さんがイイ事を教えて下さいまして。」

「フクロウ・・・? あの、梟の旦那っ?
 なに、姫様、あのヒトと直電オッケーなの?!」

「フフフ♪
 梟さん曰く、あの草ね、日の本の土に直植えしちゃダメなんですって。鉢植えにした上で、土と温度管理を熱帯域に再現できたら。そうしたら、株分け出来るくらい大きくなるだろうって。何でも、大陸の原産地がそういう気候らしくて。
 梟さんは、絶対に無理だって言いたくて教えてくれたみたいなんですけど。
 私はイケると思うんですよね。」

「イヤイヤイヤ、俺様もソレは無理だと思う。」

 『あの』梟・・・博覧強記・一流の教養人でもある『あの』極悪梟が言うからには、その条件さえクリアすれば根付くのだろうが。
 現実、ココは日の本。温帯である。それも奥州は北の地で、ソコでどうやって熱帯植物が根付くというのか。最初に試した蘆名公も、確かに大概、酔狂だが・・・。
 だが続く鶴姫の台詞に、佐助は思わず茶を吹きそうになった。

「そんな事ないですよ。要するに原産地の状態を再現すれば良い訳だから・・・。
 今の私、琉球語の通訳と翻訳で豊臣家を起点に動いているでしょう? だから秀吉さんにお願いしたんです。豊臣家に頂いた私の部屋の前庭に、温室を作らせて下さいって。
 これで温度の問題はオッケー。私の手でガンガンに蒸し暑くしておきますから。
 土の方は、私個人のお知り合いに頼みます。その人は国とは無縁の漂泊人で、大陸どころかアジア全域を漂ってるような人なんですけど・・・。
 ちなみに賭博の極意は、その人に教わりました。
 その賭博の師匠に頼んで、何トンか『本物』を持って来てもらいます。そうですね、一気に2、3トンくらい有れば足りるかな? 鉢の数自体は少ないんですけどね~、自前で作れるようになりたいから、配合の研究にも使いたいし。
 とにかく、コレで土の問題も解決です。
 で、成功したら、同じ温室を奥州に作ればいい。直植えにして育たないのは近畿でも奥州でも一緒なんだから、根付く為の温室を試すだけなら、大阪でやってもイイでしょう?
 ね、イケそうな気がしてきたでしょう?」

 『キロ』じゃないんだ? 『トン』なんだ?
 そういうツッコミは最早無意味な気がして、佐助は他の言葉を口にした。

「・・・豊臣の旦那が、そこまで姫様に甘いって。
 そっちの方が俺は気になる、かな?」

「うふふ♪ 別にゆすってませんからね~?♪
 それに、甘いのは私にじゃなくて、半兵衛さんにです。」

「?」

「その薬草、呼吸器系に効くんですよ。昔っから地味に言われてるんです、医療関係者の間で。半兵衛さんのあの病の、特効薬が出来るんじゃないかって。
 戦続きで支援する大名も居なくて、本に出てくるお伽話レベルに留まってますけど。
 秀吉さんが温室を作らせて下さったのは、私の為というより、半兵衛さんの為なんです。間に合うか判らないけど、試せる事、可能性のある事は全てやってみたいって。
 苗が根付きさえしたら、兄様が薬効を抽出して、薬に調合して下さるって。」

「へぇ、あの日輪の旦那が・・・。」

「元々、毛利家は自然科学に特化した家柄です。血に自然操作の術能力を宿しているだけあって、昔から医者や学者を多く輩出してきました。高利貸しなんて始めたのも、研究費用を捻出するのが大元の目的だったそうで・・・兄様もそのお一人です。
 今はね、大阪に温室を作りながら、私の『賭博の師匠』がこっちに来てくれるのを待ってる段階です。連絡取って事情を説明したら、一度、苗の現物を見ておきたいって。
 だから、土が来るまでコレは植えられませんって言って、苗は蘆名公にお返ししてきました。」

「え?」

「だって、直植えも出来ないままずっと伊達家で保管してて、枯れちゃったらコトじゃないですか。根が腐ったりして、それを片倉さんのせいにされても困るし。
 賭博の師匠が来日したら、蘆名家にご挨拶に伺いますからって。
 目下絶賛準備中だから、コレ『返却』じゃなくて『保管依頼』だからって、念押しして。むしろお前が枯らすなよ系?」

「マジで・・・蘆名家って、まだ同盟軍にも入らず敵対してる家でしょ? 反伊達家の旗印みたいに扱われてる家じゃない。
 そこに1人で乗り込んで、『枯らすな』って啖呵切ってきたと?」

「ひ、1人じゃないですよっ。
 片倉さんに付き添ってもらいましたもんっ。」

「余計悪いわっ! 2人共闇討ちされたらどうすんのさっ?!」

「佐助さんに叱られた・・・蘆名公、盤外交渉でそういう事はしない人だっていう自信があったから、やっただけなんですけど。実際されなかったし。
 それに、私は1人でも平気って言ったんですけど、片倉さんが『どうしても心配だから』って。政宗さんも『連れてけ。』って。
 そしたら、酷いんですよっ、佐助さん!」

「な、何がっ?!」

「片倉さんは護衛で、説明は全て、私から蘆名公に申し上げたんですけど。
 蘆名公が大笑いしながら仰ったんです。『剛毅で現実的で、行動力のある娘だ。謀神の妹を名乗るだけある。巻き込まれる分には面白くてイイが、コレが妻女となると、惚れた方は心配で肝が冷えっぱなしだろう。』って。
 そしたら片倉さんが、『あぁ、まぁ、うん、正直ちょっと、最近胃が・・・。』って。胃を押さえながら、遠い目をなさるんですものっ。
 私はただ、ただ・・・、」

「ただ?」

「ただ、『コレが根付くトコ見たかったら、結果出るまで大人しくしててね♪』って蘆名公と梟さん相手に盤外交渉して、半兵衛さんの為に薬の苗を植え、伊達領の基幹産業のひとつとして、果樹の他にメディカルラインもどうかしら、とか画策してるだけなのにっ。」

「『ただ』じゃねぇよっ!」

「全ては巡り巡って奥州の為、政宗さんと片倉さんの為。なのに・・・なのにっ。
 『胃の腑が』とか、ヒドイっ。」

「・・・・・・。」

 ソレは痴話喧嘩? 痴話喧嘩なのか? それとも惚気?
 よよよっとウソ泣きする鶴姫に、思わずツッコミを入れそうになって、佐助は辛うじて踏みとどまった。
 この話だけで、もう何度ツッコミを入れただろう。鶴姫の武勇伝は戦場の武勲だけでは『なさすぎる』。
 いやホント、この人、弓『も』スゴいんですけどね。スケール大き過ぎてたまに引くわー。
 複雑な溜め息を吐きながら、佐助はキンツバの最後の一片を口に含んだ。

「メディカルねぇ・・・。
 育つの? 植物って、あったかいトコの方がイイんでしょ? 九州とか四国とか。お兄さんトコの中国とか。
 奥州がそれこそ温室だらけになんない?」

「え~? 結構多いですよ、むしろ『寒いトコでないと』育たない薬草って。環境が厳しいからこそ、植物もレアな成分で生き残ろうとするのかも知れないですけど。
 進化に影響を与えるくらい環境が厳しいからこそ、人の手が入らなくて、地元にしか知られてないか、たとえ広く知られてても、流通自体レアだから価格が高騰する。
 それが安定して奥州で手に入るとなれば、充分収益として見込めるし、日の本の為になると思うんですけど。」

 確かにそうだ。確かにそうだが・・・。
 易き事ででもあるかのように、ケロリとした顔で言うコトじゃぁ、ねぇよな、うん。
 佐助は心中でのみ、深く頷いた。そういう表情をする人間の9割方は、心の何処かでコトが実現しないと思っているからこそ、そういう表情が出来るものだが。彼女の場合は、実際に自分で動く行動力と知力、財力、それに人脈まで兼ね備えているのだから始末に負えない。

「何つーか・・・伊予の姫様って、ホント情熱的だよね。
 真田の旦那と別の意味でさ。」

 たったひとつの薬草を巡る盤外交渉で、蘆名家との実質の停戦を勝ち取り。
 『あの』戦国の梟雄・松永久秀の悪行を止め。
 豊臣サイドの重要人物の救命に光明をもたらし。
 毛利サイドと豊臣サイドの連携の道筋を付け。
 更には婚約者の所属する伊達サイドの将来まで見据えている。
 以前から政宗が、貿易と並ぶ、あるいは代わり得る地場産業を欲していた事は皆の知る所だ。貿易は良くも悪くも、貿易相手・・・南蛮諸国の情勢と無縁ではいられない。己自身でモノを創り出している訳ではないからだ。政宗は外国に精通している人物だが、だからこそ、その危険も熟知していた。
 それに近畿と中国。隣り合い、陸で続いた2つの地方の連携が上手く機能する事も、日の本の重要事項である。近畿の主の親友を、中国の主とその妹が救う。これ以上に劇的な絆はそうあるまい。
 バランスの取れた、ムラのない行動力・・・否、その行動力を効果的に使える知力、か。
 それに、日の本の将来設計を具体的に思い描いた、広い視野。
 この姫は、もしかしたら兄以上の軍師になり得るかも知れない。

「伊予の姫様は、何でそんなに・・・日の本が大好きなんだろうね。」

「愛国心? 強く見えますか? ぶっちゃけ私、この国そんな好きじゃないですけど。好きか嫌いかの二択なら、嫌いを選ぶかな。」

「え?」

「前に敵に『愛国心なんてないクセにっ。』とかディスられた時も、別に何も感じなかったし・・・『ありませんけど何か?』って返したら、相手、絶句してましたけど。」

「・・・・・・。」

 軽い気持ちで繰り出したジャブに、重いストレートが返ってきた気分だった。
 あっさりと『日の本が嫌いだ』と言い放った最重要人物のひとりは、日向の笑顔でキンツバを飲み込んでいる。
 彼女の口調は、悲劇的でも押しつけがましくもなく、あくまでも淡々としていた。

「私が大元、捨て子だったってのは、ご存知ですよね?」

「うん・・・。」

 いきなりディープなネタきた。
 立ち居振る舞いや豊富な知識。全て『名家の姫君』を名乗るに相応しい彼女が、実は赤子の頃に伊予神社の外に置き去られていた捨て子だった。その事実は、佐助やかすがにとって結構な衝撃であった。
 気位が高く、高飛車で、社交性皆無で、自家を名門と言って憚らない『あの』毛利元就が『賢妹』と呼んで溺愛するからには、同じか、近い血が流れているのだろうと。神社の巫女などしているのは、養女にでも出されたのであろうと。
 完全な『義』兄妹なのだと本人たちから知らされるまでは、漠然とそう思っていた。
 鶴姫は穏やかに笑っている。

「私の人生は、否定から始まりました。どんな感慨があったにせよ、私を生み出した人たちは結局、殺す方を選んだ。私は一度死んでいるんです。
 兄様が自我を与えて下さるまでの8年間、上級巫女たちの操り人形として洗脳されていた私は、死んでいたも同然でした。
 そうして一度、完全否定されたからこそ、思うんです。私は肯定する人でありたいと。
 他人の破滅を願って回るより、笑顔を見て回りたいと・・・『私はあなたたちのようにはならない』って、顔も知らない親に対する復讐心も、あるのかも知れませんが。
 それと私は、国に興味がありません。政治にも。民同士、殺し合いがお望みなら殺し合えばいいと思うし、泣きたければいつまでもメソメソしてればいいと思う。
 でも、大切な人が居ます。
 昔は兄様だけだったけれど・・・今は片倉さんや政宗さん、沢山の人が居ます。半兵衛さんには長生きして欲しいし、島津さんや大谷さんにも、もっと色々教わりたい。かすがさんやまつ様には憧れています。あんな女性になりたいと思う。
 沢山、沢山、大切な人が居て・・・出来て。その人たちが生きる国なら・・・だからこそ。最高の状態になって欲しいと思う。
 国だからというより、場所だから、と言った方が正しいのかも知れません。
 私の大好きな人たちが生きる、生きていかなきゃいけない場所だから・・・その為に・・・その為だけに、私は戦っているんです。
 『最高の状態』にする為に、戦で勝ったり、医薬品を揃えたり、他国との付き合いを考えたり、産業を整えたりする。
 兄様や片倉さんだけじゃなく、同盟軍の主要メンバー、全員にいつも申し上げている『大好き』は、リップサービスじゃないんです。だって私の『やる気』と直結してるんですもの。皆さんが1人も居なくなったら、私、何処か外国に漂泊に行っちゃうかも。言葉の問題は既にクリアしてるから、賭博の師匠みたいに放浪しようかな。
 だから佐助さん。お願いですから長生きして下さいね?」

「・・・かなわないなぁ、伊予の姫様には・・・。」

 寝っ転がったまま両腕で瞳を隠す佐助の上を、気持ちよく風が吹き抜けていく。彼の口許は微笑んでいた。
 この姫の瞳は、国とか家門とか、そんなモノ超越してしまっているのだ。
 かつて信玄は言った。『国とは人そのもの』だと。他ならぬ自軍の大将が示した精神を、かつての敵の妹が体現しているとは思わなかった。
 この場で『俺も姫様が大好きだよ。長生きしてネ♪』とは言えない立場に、複雑な気分になる。佐助は、武田と毛利が再び相分かたれ、争うような事になれば、真っ先に鶴姫と刃を交えなければならない立場なのだ。信玄と幸村が聞いたら、『そんな事にはならんっ!』と怒るのだろうが・・・2人を最前線で守る立場の者、その長として、佐助は軽々に頷けない。頷かない事が、せめてもの誠意だと思う。
 そんな佐助の葛藤すら、鶴姫は見透かしている。見透かして彼と戦う覚悟も決めた上で、『大好きだ。』と口にするのだ、この姫は。
 かなわない、と思う。当主の義妹という地位より、身に宿す異能の力より。
 何よりその、器で。

「・・・っ、」

「伊予の姫様、どうかした?」

 大風が吹く青空を、見上げて瞳に険を宿す鶴姫に。その剣呑な気配に、佐助は俊敏に体を起こして膝をつく。右手の指先は既にクナイに掛かっていた。
 一見すると、佐助が仕える相手は鶴姫であるかのようにも見える位置取りである。

「いえ・・・気配は既に去りました。
 ここ最近、たまに妙な気配を感じるんですよね~。見られているというか、何というか。」

「敵の監視ってコト?」

「・・・敵意という程、濃く明確な気配ではありません。もっと薄くて、捉え処が無くて・・・ペタペタと粘着質な感じ。
 それに、場所が一定していないんです。先日は奥州で感じ、昨日は越後で感じ、今また、甲斐で感じた。コレが敵意だとするなら、敵は組織ではないのかも知れません。」

 考え込み、言葉を選びながらの鶴姫の言葉を、聞いた佐助が咄嗟に思い出したのは政宗の内意だった。
 曰く『来航中の南蛮人の中に、ひとり、妙な具合に鶴に執着してるヤロウが居る。勝手も知らねぇ外国で誘拐もねぇだろうし、オレの客に好きにはさせねぇが・・・。一応、含んどいてくれ。上杉の忍には、オレから伝えておくからよ。』と。
 日の本の流儀を知らないからこそ、はぐれの術者を港で雇った可能性はある。『はぐれ』は客を選ばない。相手が外つ国の人間でも、対価さえ貰えれば働くだろう。完全には開いていない異国の地で、フワフワした夢見心地感覚で。お土産に人形でも買い求める感覚のまま、人1人、連れて帰ろうと発想してもおかしくは・・・まぁ、おかしいのだが、変態のしそうな発想ではある。
 ソレは立派な誘拐だし、そして誘拐は犯罪だ。

「伊予の姫様・・・毛利忍軍、は、前に信用ならないって言ってたけど。
 黒脚絆組の誰かを、護衛に付けてもらったら?」

 黒脚絆組(くろはばきぐみ)。
 伊達軍が誇る独立諜報部隊、伊達忍軍である。小十郎が作り上げた、政宗の親衛隊・忍バージョンと思えば良い。幾度か一緒に仕事をした事があるが、心根も技も中々の者たちだ。政宗の友にして執心の相手、そして小十郎の婚約者。その護衛となれば、希望者が殺到するであろう。
 対外的な筋としても、いずれ輿入れしてくる姫に伊達家が護衛や従者を付けるのは、何ら不自然な事ではない。元就も納得するだろう・・・というか、系図に名も載っているような立場の姫に、決まった従者1人付いていない今の状態の方が、そういう意味では不自然なのだ・・・まぁ、十中十、元就の人間不信が原因だろうが。
 兄の影響を受けてか、妹も今イチ乗り気ではないらしい。余人を遠ざける事で命を繋いできたような兄妹故、それも致し方ないのだろうが。

「でも・・・そこまでする程の事でしょうか。」

「竜の旦那から、ヤバい南蛮人が来航中って聞いてる。心配してたぜ?
 俺もかすがも、常時は傍に居られない。俺らを安心させてよ、ね?」

「判りました・・・佐助さんが言うなら。
 もう少ししたら、薬草の件で奥州に行くんです。その時、成実さんにご相談してみますね。」

「? えっと・・・伊達成実公、だっけ。竜の旦那のイトコだとかいう。
 何で成実公? 仲イイの?」

「フフフ。ここで頷いたのがバレたら、多分成実さんはすごくイヤなカオをします。
 そういう関係♪」

「平たく言うと?」

「う~ん・・・『批判的な味方』、かな?
 成実さんからすると、『詭計智将の妹』が『竜の右目』の妻に・・・婚約者になったと聞いて、警戒心マックスだった訳です。実際に政宗さんも片倉さんも私にド甘いから、自分がコイツを押さえつけなくちゃ奥州の財政その他がっ、て。
 元々2人が破天荒だから、自分が堅実でいなくちゃって思っていたそうで。
 だから最初は、地味に対立に近かったんですよ。私の提案を片っ端から質問攻めにするんですもの。正直、『にゃろうめ。』って何度も思った。
 でもね、気付いたんです。質問攻めにされる事はあっても、頭ごなしに反対された事も、見下された事もないんだって。
 口調は丁寧で嫌味な所もないし、私の体調も気遣ってくれます。『白毒症』っていう一般には超意味不明であろう病にも、差別的じゃなかったし。
 私が作った趣意書の穴を、成実さんが質問という形で指摘し、私が直して、成実さんに再提出して見てもらう。そうして不備を潰していって、実現性を増したモノを、最終的に政宗さんと片倉さんに見てもらって、判断を仰ぐ。
 ソレが一番、伊達家内部では効率が良い事に気付きました。
 原案のうちは2人にしか判らない会話も多いから、片倉さんにすっごく妬かれるんですよ♪」

「ゴメン姫様、今すごく右目の旦那に同情しちゃった・・・。」

「え~?」

 小十郎の胃の腑が痛むハズだ。半兵衛や三成の傍で仕事されるだけでも気が気でなかろうに、身内にまで親し『過ぎる』人間が居ようとは。内憂外患もイイトコである。
 『仕事上のライバル』から恋愛関係に発展するケースは、古今東西、いくらでも転がっている。

「成実さん、政宗さんよりずっと私の片倉家入りを楽しみにしてくれてるっぽいのに・・・。」

「あぁ、うん。まぁ、ね?」

 『そう』装っているだけなのか、あるいは成実のアプローチが、鶴姫の中で『そう』変換されているだけ、という可能性もある。本当に『そう』なら、何の波風も立たないのだが・・・ちなみに元就は『最愛なる賢妹』の絶対的味方なので、彼に仲裁は期待しない。
 コレは一度、ちゃんと伊達成実という人物を見極めておいた方が良さそうだ。
 まぁ、あの政宗が信頼している人物である。そうそう悪い方向には転がらないだろうが。

「取り敢えず護衛の件、大丈夫そうで安心したよ。」

「はい♪
 成実さんは女の子に優しい気遣い屋さんです。きっと手練れを付けてくれますよ。そしたら、佐助さんとも仲良くなれるかもですね。かすがさんとそうなれたみたいに♪」

「ははは・・・。」

 どうやら『成実公』はジェントルマンらしい。
 佐助はますます小十郎に同情を深くした。



 と、佐助には言ったものの
 奥州に行く前に、鶴姫には幾つかやる事があった。草や言葉の世話だけが、彼女の仕事ではない。
 そのひとつが・・・他ならぬ、自分の世話。

「明、よく参った。」

「兄様♪ お久しぶりです、兄様♪♪」

「久しいな、本当に。妙に久しい気分だ。
 息災にしておったか?」

「はい、兄様も♪」

 元就の指先が、さも大切な宝物であるかのように、鶴姫の髪を撫でる。
 彼は自分で『最愛の』と言う通り、妹と居る時に最も穏やかな顔を見せる。秀吉はソレを複雑な表情で眺めていた。
 所は大阪・秀吉の屋敷。その一室・・・通称『保健室』。
 今日は鶴姫自身の検診日なのだ。

「なんて顔をしてるんだい、秀吉。」

「半兵衛。」

 自分のテリトリー、それもプライベートな屋敷なんだから、堂々としていればいいのに。少し離れた場所から再会を喜び合う兄妹を眺めている主君兼親友に、その物言いたげに所在ない姿に。思い当たる節があって、半兵衛はフローラルに含み笑いながら友の横に並び立った。

「毛利君はしばらく九州は島津公のトコに居たし、鶴姫君はしばらく奥州と中部・関東を飛び回ってたし。君もボクも、2人に会うのは久し振りだろう?
 普通に挨拶してくればいいと思うんだけどな。」

「・・・・・・。」

「君、ねね君の時も、しばらくそうやって遠巻きにしてたよねぇ。」

「半兵衛っ。」

「ごめんごめん、でもさ、フラグなら既に立ってるんじゃないの?
 相手は日の本を左右する運命共同体、同盟家の当主同士。背負う荷物の中に、共有できるモノも多かろうと思う。三成君たち抜きにして、2人きりで話す機会も多いんだし。
 琉球への2人きりの旅行だって、向こうから言い出してくれた話だろ?」

 構想段階の話だが、事実だった。
 例の、琉球との貿易の件。既に奥州で売買実績のある南蛮貿易と違って、琉球貿易はこれから色々と詰めていく話である。
 毛利と豊臣の共同で進めている話だ。海外進出に意欲的で情報が豊富だった豊臣と、地の利と水軍を合わせ持つ毛利。この2家が担当する事は、ごく自然な流れだった。
 幸い先方は前向きで、話自体は順調に進んでいるのだが。
 先方の実務担当者から『具体的な条件を詰めるにあたって、王家の責任者と会って欲しい』という要請があったのだ。しかも滅多に表に出て来ないタイプのその王族は、大層な人見知りだという。担当者は『随行員は極力制限して欲しい。』と。
 ならばいっその事、自分と秀吉、2人だけで行こうかと
 冗談めかした口調で言い出したのは、誰あろう、元就自身である。

「毛利君は繊細な男だ。
 そして『繊細』っていうのは、悪く言えば『神経質』って事だ。その毛利君が、君と2人で旅行してもいいって、冗談でも自分から言うって。『嫌われてない』っていうより、相当気に入られてると思うんだけど。」

 王族と会う事自体は既に決定事項。『名目上の』責任者とはいえ、向こうの都合を無碍にする訳にもいかない。貿易国の支配者と会談するのを拒否するというのも、不自然な話であろう。物理的な距離は南蛮よりずっと近い、同じ文化圏だというのに。
 船など、すぐに作れる。
 残る大きな判断は、随行員の件のみ。秀吉大事の三成が例の勢いで猛反対していて、正式な決定は先送りにされている。
 まぁ、実際に手漕ぎの小さな船で往復する訳ではない。三成だって、本当に元就への不信が募っている訳ではないのだ。単に、この歴史的なターニングポイントを、大好きな秀吉の傍で迎えたいと思っているだけだろう。なにせ、皆無ではないにせよ、接点など無に等しかった2つの国が国交を開こうというのだ。戦端ではなく。間違いなく、後の歴史に残る転換点になる。
 三成を含めた随行員を編成し、上陸して宿に泊まるのは2人だけ、という形になるだろうと思う。それが、琉球側との落とし処だろうと。
 そう。
 先方が用意した宿で・・・寝室で、2人きり、という訳だ。

「先方には、寝室は1つでいいとか言っとこうかなぁ♪
 鶴姫君は置いてくからね♪ 彼女が居ると、毛利君は鶴姫君ばかりに気が向いてしまうんだもの。ちゃんと秀吉を見てもらわないと。
 三成君にも、あんまり2人の間に入らないように言っとかないとね。あの子は素直だから、大丈夫だと思うけど。
 日程はどうしよっかなぁ~♪ 戦費が少し浮いてきたし、滞在費は心配しなくていいよ。1泊2日と言わず、長めに取っておこうか。
 腰を据えて詰めたい話なら、幾らでもあるだろう?」

「楽しそうだな、半兵衛。」

「うん。楽しい。すごく楽しい。こんな余禄があるとは思わなかった。
 正直、忘れていたよ。人と人とを結びつけるのが、こんなに楽しいなんて、ね。」

「・・・・・・・。」

 昔・・・もう、本当に遥か昔。何十年も前に感じるが、『あの頃』はまだ数年前の事なのだ・・・『彼女』が生きていた、『あの頃』は。
 あの頃も・・・奥手で慎重だった秀吉と、慎み深かった彼女を結びつけたのは半兵衛だった。慶次が随分と半兵衛に文句を言ったものだ。
 まず慶次と秀吉が友となり、半兵衛が2人と出会い、そこに『彼女』が加わり・・・今は『彼女』が居ず、三成や吉継と出会い、そして元就たちと出会った。元就たちとの同盟は、背負うモノ全てを懸けるに値するものだと。そう決断して今がある。
 そうやって出会いと別れを繰り返していくのが、人間なのだ。
 変わっていく。全て。

「ねぇ、秀吉。」

 少しずつ何かを遺しながら、ほんの少しずつ、変わっていく。
 毛利兄妹を見る半兵衛の瞳は、とても眩しそうだった。

「慶次君も、今はもう、理解を示してくれた。彼女には最初から許されてる。
 秀吉。君はもう少し、自分の幸せを望んでいい。」

「・・・・・・。」

「半兵衛、秀吉。始めるぞ。
 大谷は何処におる?」

 ひとしきり妹を構った元就が、鶴姫を伴って2人に寄る。
 今現在、半兵衛、鶴姫、それに吉継の3人は実質、元就が主治医を務めているのだ・・・この3人は口の悪い元親に、『病人のクセに戦場に出てくる3バカトリオ』などと呼ばれているのだが。三成の飛び蹴りは、日々元親に鍛えられていると言っても過言ではない。
 鶴姫はもちろん、『我が最愛なる賢妹のついでに』半兵衛と吉継も。普段の軍医とは別に、定期的に元就が経過を診察していた。
 最初、秀吉が吉継のカルテを見せたのは、信の証、程度のつもりだったのだが・・・。
 妹の事があるからだろう、医に関して、元就の意識の高さは並々ならぬものがある。何か交渉の道具にする事もなく、無償で診察しているのだ。
 流石に薬代や検査費など、実費は秀吉が出しているが・・・それだって、最初は眉を顰めたくらいだ。
 鶴姫への溺愛と、医術・・・命に直結する技術の、陰謀とは無縁の使い方。
 ソレを見た故に、最初『不義なる男』と元就を疑っていた謙信や信玄辺りが、彼を信じる気になったのだ。
 3人に限らず、戦場で元就の医術に命を留められたメンバーは既に多い。が、きっと元就は救った人数など数えてはいないだろう。
 こと医術に関して、元就とはそういう男だった。

「大谷君なら、三成君と一緒にお昼ご飯に行っているよ。
 例の、君と秀吉の琉球行きの件。午前の打ち合わせが長引いたとかで。」

「そうか。
 良い。今日から新しい薬を始める故、腹を満たしてから診察に来いと言ったのは我だからな。石田も同席したいと申しておったから、丁度良かろう。
 順序立てはいつも通り。
 まず明の、自己血輸血用の血液を抜く。
 半兵衛の診察をする間、横になったまま休む。
 血液量が回復する頃には半兵衛の診察は終わる故、明の診察をする。
 その頃には大谷も参るであろうから、石田の同席の許、大谷を診る。新しい薬効に、体が耐えられるか。その判断もあるから、少し時間をかけるつもりだ。最後の方が良かろう。
 それで、終いぞ。」

『はーい♪』

 『先生役』の元就の引率の許、鶴姫と半兵衛が子供のような返事をする。互いに顔を見合わせて、クスクスと含み笑う2人に元就が呆れて顔をしかめ、秀吉が保護者気分で苦笑している。
 鶴姫と半兵衛。2人とも、既にして一流の戦士であり、策士である。他者に判断を委ね、導かれるという感覚がとても新鮮なのだ。
 まぁそれも、当の『他者』を信用しているという大前提の許で、の感覚だが。

「おいで、明。」

「はい、兄様♪」

 妹を手招いて、椅子に座らせる。最初に細い針を付けた注射器で少量の血を抜き、試薬を浸み込ませた紙に擦り付けて、血液の状態を見る。保管に値する血液か・・・薄過ぎたり濃過ぎたりしないか、その判断だ。
 試薬の紙を光に透かす、兄の横顔は真剣そのものだった。
 そして、問診。

「体調はどうだ、明。
 食事はまともなのを摂ってきたか? 疲れ易かったりなどせぬか。」

「大丈夫です、兄様。問題ありません。」

 鶴姫自身にも、元就から伝えられた医療の知識はある。ソレに照らして答えた妹に、元就は口許で軽く笑んで頷いた。
 コレが素人だと、もっと色々、具体的に訊かねばならない。意識に上がっている症状・・・状態というのも、一度に大量の血を抜いて良いか、その大事な判断材料なのだ。
 これで、問診もクリア。
 既に幾度となく繰り返した手順、鶴姫は自分から布団に横になった。

「針を入れるぞ、明。」

「はーい・・・。」

 『何度やっても慣れない。』という顔をする鶴姫の、その柔らかい前髪を、元就の手が優しく撫でつけていく。
 30cm以上の段差を付けた床の上、高い方に布団を敷いて、患者が横になる。その、利き手とは反対の腕。肘の内側の静脈に針を刺す。試行錯誤した元就が、最終的に行き着いた血抜きの方法だった。
 鶴姫の血液型は、元就曰く『万人に1人の血』らしい。元就の知識のお蔭で同盟軍の医療には『輸血』という選択肢が存在するが、そもそも、彼女の体に適合する血液の持ち主が、仲間内には居ないのだ。
 故にこうして定期的に、予め本人の血を抜いて、大切に保存しておかねばならない。

「このまま20分。
 気分はどうだ、明。」

「ん、大丈夫です。」

 管を固定した元就が、鶴姫の左腕を温めるように撫でながら、彼女の表情を観察する。血を抜いている腕は、すぐに冷たくなってくる筈だ。それに元が我慢強い彼女は、気分が悪くなっても無意識に耐えてしまう癖がある。
 全ては妹を想えばこそ、自然に出る仕草。
 そんな兄に鶴姫は、静かで淡い微笑みを見せる。

「保管してある分は、全て使える血だ。少し整理してな、不適格分は廃棄してある。
 保管場所は変えておらぬから、我が琉球に行っておる間、もし何かあればあそこから持ち出して使うように。
 念の為、保管場所と使い方は前田の妻女と上杉の忍、それに竜の右目と半兵衛にも伝えておくぞ。そなたが意識不明に陥った場合を想定してな。
 何かあれば、その4人を頼れ。良いな、明。」

「大げさだなぁ、兄様は。
 大丈夫ですよ。琉球に行くと言っても、すぐにお帰りになられるのでしょう? そうそう、輸血が必要な程の大怪我など致しません。」

「そう思っている時に限って、狙いすましたかのように負傷するのだ。
 そなたとて例外ではない。充分に留意せよ。」

「は~い。
 それより兄様、琉球のお話をして下さいな。ご滞在は何日ほどになりますか? お会いになる王族の方は、女性のシャーマンと伺いました。どのような御方でしょう。
 それに、自然♪ 飛べない鳥や、鱗が石のように硬い魚が居ると本に。そういうのをご覧になるお時間は、ありましょうや?」

「滞在日程は出ていないし、会談相手の気性など、人見知りとしか聞いていない。
 観光に行くのではないのだぞ、明。強いて言うなら、そういう生き物が実在するかどうかくらいは訊いてきてやるわ。」

「わ~い♪ お土産話、期待してます♪」

「そなた、兄を何だと思っておるのか。」

「鶴姫君。琉球に行きたいのかい?」

 無邪気な笑顔で元就を揶揄う鶴姫に、傍らで兄妹の会話を訊いていた半兵衛が訊ねる。その優しい紫の瞳には、困ったような苦笑が宿っていた。
 愛しの彼女の希望を容れるべきか、大事な親友の恋の芽を育てるべきか。流石の天才軍師でも迷う所だ。
 柔らかい茶瞳は、楽しそうに微笑んで否定した。

「行きたくないですよ~♪ 薬草園の事とか、色々ありますし。
 私は3回目以降くらいでいいです。琉球貿易、ちゃんと続いてくって、信じてますから。」

「そっか~、そうだよね、薬草園の事とか、色々あるものね。
 琉球の事は、秀吉と毛利君に任せとけば続いてくものね。」

「はい、半兵衛さん♪ 『秀吉さんと』兄様に、お任せしておけば、間違いはないと信じております。私も通訳と盤外交渉くらいなら、お手伝いできるかと存知ますが。」

「盤外交渉か・・・最近、君の固有スキルみたいになってきたよね、それ。
 最近のヒットは蘆名家との交渉だと思うけど。」

「やっだなぁ~、半兵衛さんたら♪
 盤外はあくまで盤外。本来の戦勝や調略あっての、ついでの交渉ですから。おまけみたいなモノですよ、お・ま・け♪」

「みんなその、可愛らしい笑顔に騙されるんだよねぇ。
 ボクも含めて♪」

「ふふふ、片倉さん以外は騙されちゃダメですよ~♪」

 半兵衛は確信した。どうやら秀吉の意中の人の妹は、秀吉の味方と思って良さそうだ。
 鶴姫と半兵衛の間に『秀吉の恋応援し隊』が結成された瞬間である。
 当の秀吉は微妙な心理で軽く額を押さえ、もう片方の当人は気付く事すらなく、天然全開でスルーしていく。

「量はこの程度で良かろう。
 明。針を抜くぞ。」

「はーい・・・あぁ、楽になった♪
 今日は随分とお早いのですね。もう20分ですか?」

「いや、せいぜい15分弱といったところであろう。
 今日は随分、出血の程が早い。後で血小板の量を診ておかねば。」

「大丈夫ですよ、兄様。血がサラサラだっただけかも知れないし、試薬はクリアしてるんですし。たった1回、血が溜まるのが早かっただけでは何とも申せますまい。」

「油断するでないぞ、明。あの試薬は最低限の基準を測れるに過ぎぬ。アレひとつきりで、全ての項目のチェックは出来ぬ事、存知ておろう。
 こういう些細な所に、大病が隠れていたりするのだ。」

『・・・・・・。』

 大真面目にのたまう元就は、自分が今、いかにシスコン全開な事を口走っているかの自覚はないらしい。
 コレもイチから自分で開発した、血液保管専用の皮袋に妹の、まだ生温い血液を保管する。保存剤と共に丁寧に梱包していく兄の背中に、妹は小さく嘆息した。

「コレだから琉球に行けないんですって。」

「何か申したか?」

「イイエ、ナニモ。」

『・・・・・・。』

 どうやら本格的に、賢妹の見解は天才軍師と同一のモノらしい。
 『西海の鬼』は良いのだろうか。

「では次、半兵衛だな。」

「は~い♪」

「半兵衛殿、元就。診察中にスマン。
 急ぎで2人のサインと、あと琉球語の辞書を貸して欲しいんだが・・・。」

 利家が『保健室』に顔を出したのは、そんな時だった。
 律義者で周囲からの信望篤い、他の6人の調停役。他のメンバーが診察の邪魔をしようとしても柔らかく諌める立場の利家が、自ら診察を中断させるとは珍しい。それだけ急を要する案件なのだろう、そう好意的に判断させるだけの人望を、利家は持っていた。
 半兵衛と元就、気難し屋ツートップの反応も素直なものだ。

「構わないよ、前田君。
 でも手許に墨を切らしてる。書斎まで取りに戻らないと。」

「辞書は俺のをやろう。殆ど全く使ってないからな。新品同様だぞ。」

「君、語学苦手だもんねぇ。
 琉球では毛利君から離れちゃダメだよ?」

「うるさい黙れ俺は子供かっ。学んで3か月にも満たない短期間で、向こうの人間と琉球語で喧嘩できる毛利の才が出色なのだ。俺は普通だぞ。」

「あの喧嘩、向こうでも伝説になってるらしいよ。」

「とにかく、辞書は俺のを使え。
 半兵衛、墨のついでに、前田に俺の辞書を渡してやってくれ。」

「りょーかい♪」

「我にも急ぎではないが、利家に渡そうと思っていた書類があるのだ。
 秀吉、すまぬが妹を見ていてやってくれるか。」

「判った。任せておけ。」

「それと口喧嘩というのはな、コツがあるのだ。人間、興奮状態で用いる言葉など限られている。ソコを把握して、上手い事誘導する技術がな、」

「わかったからっ、毛利君、君の邪悪さはよく判ったからっ。
 レクチャーしてくれなくていいよっ。」

「絶対、後々役に立つと思うのだが・・・。」

「ゴメン、どんな状況なのか全然想像できない。」

 一気に人が減って、『保健室』は秀吉と鶴姫、2人だけになる。
 貧血状態の鶴姫が眠りに落ちると、秀吉だけが残された。
 そしてその、実質秀吉しか居ない・・・拳が飛び交っても止める者の居ない『保健室』に新たにやってきたのは・・・長曾我部元親。
 元就の『イマ彼なんだかモト彼なんだか』にして、目下、ごく一部のみが察し得る理由で、秀吉と微妙な空気が流れている相手である。

「よぉ。」

「あぁ。」

「・・・元就が、こっちに来てるって聞いて、な。」

「あ~・・・たった今、前田が呼びに来てな。急ぎでサインが必要とか・・・。
 戻るまで、そう時間はかからんと思うが。」

「そっか。」

「あぁ。」

「・・・なぁ、秀吉よ。」

「なんだ、長曾我部。」

 眠る鶴姫の枕元に秀吉。その傍らに、自分も座しながら。
 元親は、思い切って自分から口火を切る事にした。

「お前、元就に惚れてるだろ。」

「―――っ、お前といい半兵衛といいっ!
 お前らよくそうホイホイと口に出来るなっ?!」

「うるせぇっ、慎みなんぞ気取れる内はマジじゃねぇんだよっ!
 ここで頷けないようなら一生渡さねぇからそう思えっ!」

「おお惚れてるわ、悪いか海賊っ!
 大体長曾我部よ、お前、毛利に殆ど相手にされておらんのだろうがっ。自然消滅同然で、イマ彼というよりモト彼と言った方が正確なんだろっ?!
 九州に居る間、ノリノリで戦に励むばかりで一言たりともお前の事を口にしないと。会いたがりすらしやしねぇ、アイツらホントにデキてんのか? って、島津が書状で首を捻ってたんだからなっ?!」

「ちょっ、おま、いきなりイタいトコ突きやがったなコノヤロウっ!
 こっちゃガキの時からの付き合いなんだぞっ?! 途中十年以上抜けてるけどっ! 妹だって領国の人間だしっ! 殆ど帰ってないらしいけどっ!
 とにかく、今でもちょっかいかければ、ちゃんと応えてくれるんだからなっ!」

「可哀想かもコイツとか一瞬本気で思ってしまった・・・。
 セフレと恋人が違う事くらい判ってるんだろうがっ! 昨日までに何人と寝ていようが、肝要なのは今日、今現在。いつ始まっていつ終わったんだかも判らん、相手にされてるかどうかも不明瞭な輩に負けはせんっ!
 毛利は俺のモノだっ!」

「お~、海賊相手によく吠えた! インテリヤクザの相手がテメェに務まるかよっ!」

「俺とて昔は荒れていた。慶次と半兵衛と、3人で喧嘩三昧の毎日を送っていたものよ。
 賭場の用心棒、薬の売人、人買い、しまいにはアングラ締めてる実力者相手に、生業賭博したりしてな。鶴姫の戦場を使った生業賭博など、まだまだ可愛く思えるくらいだ。
 下層の暗闇ならよく知っている。
 そういうお前こそ、瀬戸海相手に荒れてはいても、ある意味『健全な荒れ』だろう。
 西半分の『裏』金の流れを、一手に握ってる悪徳高利貸しの相手が務まるのかっ?」

「その悪徳高利貸しの一番の上客がこの俺、長曾我部元親サマよっ!
 借金の取り立てシーンどころか、アイツが売人タコ殴りにしてるトコも、敵対組織ぶっ潰して高笑いしてるトコも、全部見てきたんだからなっ!」

「要するに借金まみれの上に、カタとして用心棒させられてただけだろうがっ!」

「うるせぇ黙れ有り体に言うなっ!」

 肩で息をしながら、元親はぐったりと天井を見上げて右眼を覆い、巨体を丸めた秀吉は深過ぎる溜め息を、肚の奥底から吐き出している。
 どちらからともなく、顔を見合わせた。

「俺らって、もしかしなくても、すっげオンナの趣味悪くね?」

「・・・良くないのは認めざるを得んな。」

『・・・・・・。』

 クツクツと、笑い出したのも同時だった。
 『それでも』自分たちはあの男から離れられはしない・・・『毛利元就』が嘆き悲しむ所など、もう、見たいと思えないのだ。そういう前向きな諦念を含んだ笑いである。
 元親が悪童の笑みで、秀吉に向けて右の拳を突き出した。
 秀吉が瞠目する。

「喧嘩しようぜ、秀吉。
 元就を賭けてよ、どっちがアイツの心をモノに出来るかの喧嘩だ。元就だけが勝敗を決められる喧嘩だ。
 どっちが勝っても、恨みっこナシだぜ?」

「よく言った、元親。自分で言った事だ、俺が勝った時に恨むなよ?」

 ニヤリと笑って、秀吉も自分の右拳を、元親のソレにコツンと当てる。それで約束は成立だ。
 それからしばらくして、三成や吉継も伴って、元就が戻ってくるまで。
 秀吉と元親は、自分の知っている『元就の可愛いトコ自慢』で盛り上がっていた。



「っていう感じで、お2人共とっても仲良くなられんたんですよ♪
 同じ相手に惚れた者同士、男の友情、みたいな? さすが秀吉さん、さすが長曾我部さん、そしてさすが兄様~♪」

「ホンット、楽しそうだな、鶴。」

 そして可愛い。
 彼女に膝枕された姿勢から、小十郎は穏やかに苦笑して手を伸ばす。鶴姫は大好きな婚約者の、その刀を握り慣れて節だった指先に、己の繊手を絡めて自分の頬に押し当てる。
 夕食の直前になって大阪に到着した小十郎は、他に佐助と、黒脚絆組の手練れ2人を伴っていた。手練れ2人は鶴姫の護衛用だ。
 佐助の判断だった。伊達領で話をした時の彼女の、その乗り気でない様子から佐助は、彼女自身に話をさせると、護衛が付くまでには相当の時間がかかってしまうと踏んでいた。
 だから直接、信玄と政宗に話したのだ。護衛なり従者なり付けた方がイイと。元就の人間不信は、同盟に参加した今でも治まった訳ではない。元就に話を通してからとか言っていると、いつになるか判ったモノではないのだ。
 故に、取り敢えず護衛を選んでから、その面通しという形で元就には話そうという事になった。夕食の直後、何やら元就は『保健室』に引っ込んでしまったので、まだ『面通し』は出来ていないが。
 だがたとえ済んでいたとしても、今夜は不要だろう。
 『竜の右目』片倉小十郎が忍んで来ているのだから。

「秀吉公の長曾我部殿への呼び方が、下の名前に変わってるのには気付いちゃいたが・・・。
 そんな裏事情があったとはな。」

「ね♪ 秀吉さんが下の名前で呼ぶ同格って、家康さんの他は長曾我部さんくらいなんじゃないでしょうか。」

「だな。俺と半兵衛たちみたいな関係が、もう一組出来上がった訳だ。」

 元親と秀吉の間で、あの『約束』が交わされた時。バッチリはっきり起きていた鶴姫は、小十郎の台詞に笑顔で頷いた。
 婚約者の柔らかい頬の感触を、愉しんでいた小十郎の指先が色を帯びる。

「結局、お前の兄貴が惚れてんのはどっちなんだ?」

「さて?
 長曾我部さんが『特別』なのは疑いようがありませんが、『特別』過ぎて、恋愛方面突き抜けちゃってる感じがしますし。
 秀吉さんにも相当気を許してる感じがありますが・・・何せ『あの』人間不信の塊みたいな兄様が、2人きりで異国を旅しても良いとまで仰った方ですから。
 でも、ソレが恋愛方面の『好き』なのか、判断材料がありませんし。
 私がお慕いしている御方がどなたかは、はっきりしてるんですけどね~♪」

「はっきり、な。」

 上体を起こし、右手で体を支えた小十郎が、ゆっくりと唇を近付ける。左手の指先は彼女の髪に触れ、愛撫するように後れ毛を耳にかけていた。

「えぇ、とてもはっきり。」

 重ねた唇は互いに、僅かに甘酒の味がした。
 義弘が『鶴姫に渡せ。』と、元就に持たせてくれたのだ。大阪で鶴姫に会う元就の予定を知っていて、どうせまたいつものように、1人で飲まずに皆に振る舞うのだろうと、大量に。
 ちなみに。
 『甘酒』というチョイスは、『飲む点滴』と呼ばれている程、体に良いと。そう元就が何の気なしに呟いた事による。何でも、麹が体に良いのだとか。
 つくづく、皆に愛されている女性なのだ。

「愛してるぜ、鶴。」

「―――っ、なんなんですか、もうっ。
 不意打ちとか、ズルいですよ片倉さんっ。」

 柔らかい躰を布団の上に投げ出して、自分を押し倒す男を涙目で見上げる少女。
 こめかみに口づけがてら、雫を舌で舐め取る。その程度の刺激にすら、火照り始めた感じやすい彼女の躰に、ビクンっと小さく震えが走る。
 彼の手を、指を、舌を欲して、彼女の肌が色づいているのが夜着の袷から、裾からのぞく素肌で判る。白い布地と淡いピンクに染まった肌の対比は、男の獣性を存分に誘った。
 だが、だからこそ、じっくりじらし、高めたくもなる。

「鶴。」

「っ、・・・ぁ、ぃ、・・や、そ、だめ・・・んっ、・・」

 夜着の上から、乳房を愛撫する。硬い指先で撫で回し、爪で乳首を弾き、柔らかく揉み込んでいく。それでいて、鼻先で袷を割り開いて胸元を乱し、細く華奢な鎖骨を熱い舌で舐め取るのだ。その骨格、骨の形まで、彼女に知らしめるように。
 その先をねだって、鶴姫の両手が小十郎の背中に回り、肩甲骨の谷をなぞっていく。
 小十郎の太腿が裾を割り開き、強引なまでの力強さで、彼女のソレと絡み合う。いきり立った彼の分身が、情熱的に彼女の入り口を擦り上げていた。

「っ、・・か、たくら、さんっ、おねがい・・・。」

「イイのか? もっと馴らさなくて・・・。」

「・・は、い・・もぅ・・・いっかい、イっとかないと、きけん・・・。」

 潤んだ瞳で愛する男を見上げてから、鶴姫は恥ずかしそうに瞳を逸らした。

「逢瀬の度に・・・いけない子になってる気がします・・・。」

「普段、俺を我慢してるからだろ? 可愛いじゃねぇか。
 そうして間隔が短くなっていって・・・いつか、俺に抱かれてからじゃねぇと眠れねぇ夜が来るかもな?」

「片倉さん依存症? 絶対治んないですね、ソレ。」

 蕩けた瞳で、小十郎の愛撫に身を任せる鶴姫。
 もう一度、唇が重なる、その、間際。

「何モンだ、テメェっ!」

 枕元の長刀『黒竜』を一挙動で引き抜くと、小十郎は同じく一刀の許に『ソレ』を斬り捨てた。
 黒いモヤは瞬時に四つ目の化け犬に変じると、彼の喉笛を食い千切らんと、天井を蹴って飛び掛かってくる。

「藍菊(らんぎく)、浄化してっ!」

 鶴姫の声に応え、中空から踊り出てきた毛並みも美しい忠犬。その鋭い顎から、呼気の様に噴き出した炎は金色に輝いていた。
 炎が収まった後にはただ1枚、ヒトガタに切り抜かれた紙が舞い散るのみ。

「ありがとう、藍菊。」

 フンフンと鼻先を擦り付けて鶴姫に甘える、純白地に深藍色のマーブル模様が入った美しい獣。仲間内で一番大柄な『あの』秀吉の、肩口近くもあるであろう立派な体躯を持つその獣は、コリー犬のような気品のある面立ちで毛足が長い。毛並には綺麗に櫛が入り、よく手入れされた様子は愛玩動物を思わせるが、この獣の種族名は『黒帝白玉(こくていはくぎょく)』という。戦闘用に鶴姫と契約し、名を『藍菊』と付けられた霊獣である。
 術者ではない小十郎だが、傷だらけになったヒトガタには見覚えがあった。

「鶴、こいつぁ式神、か?」

「はい、片倉さん。
 この家紋は土御門家のモノ。それも中枢近くの実力者のみに許された家紋です。」

 陰陽8家があるとはいえ、建前上、日の本中の術者・宗教関係者は全て『陰陽寮』の管轄だ。そして平安は安倍晴明以来、陰陽寮の仕切りは全て土御門家が任されてきた。
 土御門に攻撃される事は、陰陽寮に攻撃される事と同義。
 尋常な事ではない。

「兄様に上奏して参ります。」

「俺も行こう。」

 じっくり艶事が楽しめると思っていたのが、一転、戦の気配すら漂ってきた。それでも彼と彼女の選択に迷いはない。今この瞬間も、どんな謀略が進行しているか判ったモノではないのだ。この件は文字通り一分一秒の判断の遅れが命取りだと、2人の軍師スキルが告げていた。
 てっきり既に休んでいるとばかり思っていた元就は、しかし起きていた。それも怖いカオで・・・彼の寝室には秀吉はじめ利家たち一門の長、それに半兵衛、三成や吉継、佐助まで。今この大阪に居る仲間たち、全員が同席している。
 皆一様に重苦しく心配そうで、苦々しいカオで・・・。
 一瞬、どう口火を切るべきか迷った鶴姫だが、元就に先手を取られた。

「気の乱れを感じた。
 先程、土御門の式が襲撃してきおったな。」

「御意。数は1、片倉公の黒竜と藍菊の炎で浄化致しました。
 そのご報告に上がったのですが・・・。」

 着流しを纏って冷たい声音の兄に、殺気立った面子。
 鶴姫は覚悟を決めて、肩の力を抜いた。
 自分は何も悪い事はしていないのだから、堂々としていれば良いのだ。むしろここで自分が委縮してしまったら、男性陣の暴走を諌める者が誰も居なくなる。まつもかすがも居ないのだから、自分がしっかりしなくては。
 それぐらいの自負心を持たないと、この面子の中で仕事など出来ない。
 気を取り直して、鶴姫は兄に問うた。

「兄様。皆様も、殺気立ってどうなさったのですか?
 このメンバーで怖いカオされると、本気で怖いんですけど。
 特に兄様の着流し姿が、一番怖いんですけど。」

「安堵せよ、賢妹。別にそなたや片倉がどう、という事ではない。」

 これ以上ないくらいの本音で素直に白状すると、主要メンバーからフッと、煙が霧散するように殺気が消えていく。利家や佐助辺りには、笑顔すら戻って来た。
 声音を和らげた元就にホッとしたのも束の間、続く台詞に、彼女は耳を疑った。

「預かっていたそなたの守り刀な、就寝前に手入れしようとしたら、毒が塗られていた。
 どう思う?」

「・・・毒の成分分析をして、産地を特定してからお答えさせて頂きたく。」

 そういえば、預けていた。
 いつもの習慣で検診時に元就に預け、今日に限って預けっ放しにしていたのだ。いつも持ち歩いている、毛利の家紋付きの懐剣を。秀吉の膝元で、滅多な事など起こるまいと油断していた・・・それでなくても鶴姫本来のクラスは弓兵なので、正直、刀はあまり使わないのだ。武器というより、毛利の姫としての身分証のような感覚である。
 だが、だがしかし、だ。
 当たり前だが、毒など塗った覚えはない。元就以外の誰かに触らせた覚えもない。
 一体、何故。いつ、何処で、誰が。

「産地の特定なら済んでおる。
 前田領だ。」

「・・・・・・。」

 前田領。
 鶴姫は掌中の、式の残骸に目を落とした。土御門の紋を。
 つながった。
 つながった途端、とてつもなくイラッときた。勿論、あの家に。
 声だけは冷静に、兄に向かってゆっくり、短く、力を込めて訴える。

「陰陽寮の姦計でございますれば、どうか前田公をお疑いなきよう。」

「土御門、ではなく、陰陽寮、か。
 何故、そう思う。言い切る根拠は?」

「式の家紋は、土御門の要職者に特有のモノでした。 
 それに前田領には小さいながら、天領がございます。天皇陛下の園とは申せ、出入りしているのは実質、陰陽寮の複数の家門。薬草採取という名目ですが、扱っている品目の中には毒物もございます。
 ただでさえ土御門はかの寮の指揮官家だというのに、刀から出た毒物が前田領産とあっては。土御門の単独犯とは、とても思えません。
 仮にそうだとしても、他門の土御門一門への、監督不行き届きの責は免れますまい。
 あと、これは私見ですが。
 伊達公とご縁があり、豊臣公のお側近くに控える、長曾我部公のご領出身の毛利の人間に、前田公のご領で採れた毒付きの刀を持たせるとは。
 折を見て私の心を乱し、豊臣公に刃向わせる心算だったと推察致します。合議の根幹を揺るがす大罪を、前田公お1人になする心算であったと。
 その卑劣な遣り口が、あのヒトとかあのヒトとかあのヒトとかのやりそうな事だと思いまして。
 えぇ、私見ですが。」

「そうか。」

「はい。」

『・・・・・・・・。』

 兄の、周囲の、一瞬の沈黙。

「だから申したではないかっ! 我がちょっと殴り込みかければ済む話だとッッ!!!
 止めるな元親っ!!」

「待てっ、待て元就ッ!!
 お前の『ちょっと』は『ちょっと』じゃねぇんだよっ! 取り敢えず着流しはヤメロっ、せめて鎧バージョンの冷静なお前で行けっ!」

「ええと・・・秀吉さん?」

「つまり、こういう事だ。
 前田領産の毒がお前の刀に塗られていた時点で、毛利はお前と同じ結論に達していたのだ。俺たちを叩き起こした時はそりゃもうエラい剣幕でな。『今からすぐカチ込みに行く、秀吉、お前の領で勝手を致すぞっ。』と。
 事前に俺たち全員に通告するようになった辺り、少しは成長したのかも知れんが。
 あんまりなキレように、ちょっと待て、と反射的に止めたんだが、条件を出されてな。
 妹も叩き起こして、どう推察するか問い掛ける。
 毛利と同じ結論に達したら着流しでカチ込み、違う結論に達したら思い留まる、と。」

「そして私は、兄様と同じ結論に達して『しまった』、という・・・。」

「そういう事だな。」

「あぁ・・・。」

 鶴姫は思わずため息をついて、滂沱の涙を流した。
 最初に入って来た時、敬愛する兄とその仲間たちは、鶴姫を呼びに行こうとしていた所だったのだ。元就の『怖いカオ』は陰陽寮への怒りで、仲間たちの『怖いカオ』は、懸命に彼を止めようとしていたからだった、と。
 知っていたら、もう少し違う答え方をしたのに。
 と、いうのが、鶴姫の正直な気持ちなのだが。流石に今それを言っても、兄の怒りの業火に油を注ぐだけなので、取り敢えず黙っておく。

「こんだけナメられて鎧で済むかっ!
 着流し(バージョンの方の我)でアタマ(数を)集めて殴(り込みをかけ)ってやる!」

「おーちーつーけ―――――っ!!」

「ええと・・・鎧バージョンと着流しバージョンで、どう違うって?」

 今の彼女の安らぎは、小十郎だけである。
 戸惑い顔で問うてきた彼の左手を、鶴姫は何となく取って右手を繋ぎながら。嘆息全開で説明した。

「平たく言うと通称『鎧バージョン』が、片倉さんもご存知の『詭計智将☆今は随分丸くなったけどね祭り☆』。通称『着流しバージョン』が・・・『西の裏金オレのヨメ☆悪徳高利貸しフェスタ☆』。こっちは絶賛とんがり中。
 兄様が高利貸しの皮を被ったヤクザとして、対立組織に殴り込みかける時の・・・まぁ、制服みたいなモノが、『着流し』っていう・・・。
 一晩で血まみれ泥まみれになるから、着替え易く、捨て易い服がイイって。」

「毛利の一面として島津から聞いている。
 曰く、毛利と喧嘩した連中に『あの着流し集団どうにかしてくれ。』と泣き付かれた事があるとか。速攻でぶち断ったそうだが。」

「俺、降伏勧告した敵から『舎弟になったらあの着流し集団から守ってくれますか?』って真顔で言われた事あるぜ? 叩っ斬ったけどよ。」

「島津公と長曾我部公が、ぶち断って叩っ斬ったのは・・・?」

「『着流し着た時の目が怖いんじゃ。』と何度も言っていたぞ。いくら鬼島津と謳われた自分でも、アレとは関わり合いになりたくない。そう思わせる目だと。」

「着流し着てる時の目が怖ぇんだよ、アイツ。
 俺も武将として敵対してたし、戦場じゃ何度もキレたアイツと斬り結んじゃきたが・・・『鎧バージョン』のアイツと『着流しバージョン』のアイツ、やっぱ目が違ぇのよ。
 下手に対立組織身内に入れて、『着流しバージョン』のあの目に睨まれたくねぇ。コレ、家臣団全会一致の統一見解。」

「・・・・。」

「私も・・・着流し着てる時の兄様は・・・ちょっと、少ぉしだけ、怖いかなぁ、とか・・・。」

「・・・・・・・・。」

「ほら、インテリヤクザって、任侠とも海賊とも鬼とも違うコワさがあるっていうか。」

「なってねぇ! フォローになってねぇよ賢妹っ!
 『竜の右目』黙らせるとか、どんだけ怖ぇの元就っ?!」

「してませんもんっ! いくら賢妹でもフォローできない事はありますっ!!
 大丈夫、片倉さんっ。兄様の暴力の恩恵を受けられるのは敵対者だけ、敵を壊滅させれば憑き物が落ちたようにすぐ、落ち着きますからっ。八つ当たりはしないしっ。」

「何だよ『暴力の恩恵』ってっ。
 言葉の使い方違くねっ?!」

「そなたら、好き勝手ぬかしておるが・・・。
 コレを見ても、まだ我がやり過ぎだと思うか?」

 張り付いた笑顔に青筋を浮かべながら元就が見せたのは、数枚の紙切れ。しっかりした厚紙に、何やら黒い陰影が写り込んでいる。
 一連の写真に共通するのは、人物メインのスナップ写真という事。そして、人物の1名は必ず鶴姫である事。

「我が最愛なる賢妹が、最近ストーカーに晒されているらしい。その気配は以前から察しておった。」

 ギロリ、と、鬼島津でも腰が引けるという瞳で睨まれて、佐助の額に汗がにじむ。

「人を動かすより自分でやる方が早い。過去視と念写の組み合わせで、明を見ていた者が誰なのか、探っていたのだ。
 そして、結論は出た。ココを見よ。」

 元就の綺麗な指先で、示された先に写るのは黒い目玉。
 よくよく見なければ判らない程度の大きさだが、確かに写っている。全ての写真の全ての背後。彼女の後ろから、彼女を見ている。虹彩に土御門の家紋を刻んだ双眸が、2つの目玉が、粘着質な色を浮かべて鶴姫を視界に収めている。
 仲間たちの間に、言いようのない沈黙が下りた。
 気持ちワルイ。
 写真に写っている彼女の表情は、仲間たちに囲まれて幸せそうだ。
 作戦中なのか真剣だったり、当主たちに交じってお菓子を食べていたり、幸村に手伝わせて鉢植えを作ったり、三成と翻訳文の表現で議論したり。
 政宗の正室・愛姫と琴を連弾している写真もある・・・政宗があからさまに執心する鶴姫の事、愛姫は鶴姫に嫉妬するかと思いきや、この2人、妙に仲が良くて、伊達家の男性陣を戦々恐々とさせているらしい。
 それはともかく。
 鶴姫の表情が自然で、輝いていればいる程。背後の目玉の不気味さが際立つのだ。

「念の為、超形式的な感じで一応、訊いておこう。まぁ、こんなのを伴侶に選ぶほど悪趣味に育てた覚えはないが。
 賢妹よ、コレがイイか?」

「殺して下さい、今すぐに。」

 反射的に即答して、鶴姫は咄嗟に口を押さえた。
 ここは安芸ではない。元就の膝元ではないのだ。ちゃんと秀吉に許可を取って、許しを得てからでなければ、軽々しく刀など取るものではない。
 そう思って言い直したのだが。

「失礼致しました。
 豊臣公のお許しが出次第、すぐに殺して下さい。」

「俺が許す。
 殺せ。ストーカーなんぞ生きるに値せん。とっととこの世から摘み取ってしまえ。」

『・・・・・・・。』

「ストーカーと性犯罪者と差別主義者に人権はない。ソレが俺の持論だ。」

「ボクら、ストーカーと性犯罪者と差別主義者には苦労させられてるもんねぇ。」

 先程までの冷静さは何処へやら。
 少々乱暴な口調で言い切り、険しく眉根を寄せた顔で腕組みした秀吉。彼の副官は優雅に苦笑しながら、諌めもせずむしろ肯定してみせた。

「思えば秀吉と慶次君と初めて会ったのも、ボクが自分のストーカーを殴殺してる真っ最中だったっけ・・・。ねね君も、見た目か弱い系の優しい人だったから、その優しさを勘違いする輩が多くてね。
 ボクと三成君は、生まれつき銀髪だってだけで。大谷君も治る病気だってのに、無知で愚かな人間から侮辱されるんだもの。冗談じゃないよね、まったく。」

「おうさつ・・・殴殺・・・?」

 懐かしげなカオでどんな昔話を語り出すかと思えば・・・いくら顔が綺麗でも、病弱でも。やっぱりコイツも戦国の男だ。
 周囲の反応をどう解釈したものか、半兵衛は可愛らしく釈明している。

「あ、勘違いしないでよね、『ドレもコレも』正当防衛なんだからさ。
 道端で人殺すとか日常茶飯事の生活だったけど・・・ホント、筋目を通『させた』だけの正当防衛だから。タダでお茶飲めるから好きだったなぁ、捕吏の詰所。
 だからボク、殺人で示談金、支払ったコト無いんだよ?」

「正当防衛なのだ、当然と言えば当然だがな。」

「だよね~♪」

 あははははは。
 コレが豊臣当主とナンバー2の会話である。三成は明後日の方向に判断を丸投げし、吉継は『もう慣れた』というカオで苦笑していた。
 何か・・・一度は慶次と袂を分かち、家康と利家が傘下から離脱した理由が判る気がする。
 それはともかく。
 元就は楽しげに、黒い含み笑いを紅い唇に佩いていた。

「気が合うではないか、秀吉。
 『ストーカーと性犯罪者と差別主義者に人権はない』。良き言葉ぞ。我も等しくそう思う。我の大事な賢妹も、白毒症だという、ただその事実だけで謂れなき嘲弄を浴びせられてきた。それは陰陽寮の木端役人も同じ事。
 ソレを今更、見目が良いからとて手を伸ばすか。痴れ者め。」

「心強いぞ、毛利。
 卑しき目で我らの大事な姫を見た挙句、前田を陥れんと暗躍し、伊達と毛利と長曾我部を軽んじ、本人の意思を無視して我が豊臣に刃向わせんと画策した罪。
 万死に値する。
 敵がストーカー属性と判った以上、最早猶予はない。奴らは訳の判らん事で簡単に狂気を加速させるからな。とっとと殺すに限る。
 止め立てなどしないし、全ての攻撃方法を容認しよう。可及的速やかに動いて、ケジメを取らせて来い。」

「承知した。『領主の許可』は願ってもない好条件。
 さ~て、アタマ数を揃える所から始めるとするか。大阪のアンダーグラウンドの親分連中、片っ端から叩き起こして若い衆を駆り集める。
 この兄が面白いモノを見せてやるぞ、明。」

「あぁ、なんだか今、手を組んではいけない2人が手を組んでしまったような・・・。
 日の本の歴史が変わった気配がする・・・。」

「まぁ、アイツを怒らせた土御門が悪ぃんだけどよ・・・。
 せめて俺らも一緒に行って、アイツがやり過ぎねぇように見張っとくか・・・。」

 『見張り』というより『傍観』になりそうだけど。
 心の声を共有して、鶴姫を元親は重い溜め息をつく。彼らは『あの』元就を見るのが、あまり好きではないのだ。



 明けて、翌日。
 昨日と同じ、大阪は秀吉邸にて・・・鶴姫と元親は、真っ白な紙を前にして悩んでいた。

「赤いアクマ。」

「月夜の哄笑。」

「『新月』の方が良いのでは?
 昨夜は新月でしたし。」

「んじゃ『新月の暗闇から這い出てきた悪鬼羅刹』。」

「それで行きましょう。」

「そなたら2人、一体何の相談ぞ?」

「何の、ですって・・・?」

 優雅に扇を使いながら怪訝そうにのたまう元就に、鶴姫の可愛い顔、その上半分が一瞬でベタ塗りになる。兄に突き付けられた妹の指は、その先にまで青筋が浮かんでいた。

「兄様のやんちゃの後始末に決まってるじゃないですか、ばかぁっ!」

 1000坪以上はあったであろう土御門邸、全焼。

「どうせ別邸であろうが。とっとと京都に帰れ。」

 焼け出された・・・というか『生き残った』家人、野宿。

「我が名で『一夜たりとも宿貸し罷りならぬ。野宿させよ。』。そう回文を回したのだから、そうなるのは当然だな。安芸毛利の名に反応しないアングラの人間はおらぬ故。」

 保管されていた公文書、全焼。

「保管責任者は土御門家であって、毛利家ではない。
 というか、何故公文書を本邸ではなく別邸に置く?」

 土御門の本家当主・土御門春時、再起不能・廃人確定。

「当然の報いである。我に逆らった土御門が悪い。」

「だとしてもアレはやり過ぎですっ、ホント、やり過ぎですからっ!!
 私へのストーキングだって、土御門卿ご自身が犯人という確証はありませんし・・・部下の不行状は主の不行状だとしても。
 陰陽寮の管理職連中、とうとう兄様からの名前じゃ始末書すら受け取ってくれなくなっちゃったじゃないですかっ! 『提出に及ばず』って式神で伝令された時の私の気持ちが、兄様に判ってたまりますかっ。」

「敢えて言おう、賢妹よ。」

「はい?」

 妹の説教に、兄の返事はたった一言。

「名を署名した始末書を受け取られなくなったのは、そなたが先だぞ?」

「――――――藍菊、藍嘉(らんか)っ!
 ちょっと兄様にお灸を据えて差し上げてっ!」

「面白い。
 翡翠、瑪瑙。久し振りに遊んでやれ。」

 鶴姫の傍に、2頭の獣。純白地に深藍色のマーブル模様の入った『藍菊』に、全身が純白の毛並に覆われた『藍嘉』。
 元就の傍にも2頭の獣。黒地に大きくひとつ、花のような白い柄の入った『翡翠』。全身が漆黒の艶を持つ『瑪瑙』。
 虚空から現れた霊獣たち、4頭とも気品ある面差しに大柄な体躯を持つ、陸上霊獣『黒帝白玉』である。主の趣味が出るのか、元就の『翡翠』と『瑪瑙』は銘々、同じ名前の宝石を嵌め込んだ首飾りをしていた。
 兄妹2人、素足で庭に飛び降りて、霊獣たちを指揮して戦い始めてしまう。
 コレが毛利家流の『兄妹喧嘩』なのだ。既に見慣れた元親は、意にも介さず白紙と睨めっこしている。
 そこへ外から帰ってきたのは、佐助、小十郎、それに利家の3人だった。

「ただいま~♪」

「おぅ、お疲れ。
 猿飛・・・お前、顔が真っ赤だぞ? 大丈夫か?」

「大丈夫じゃないよ、もう暑くって。
 だからちょっと小休止♪ 鬼の旦那、伊予の姫様は?」

「あそこ。」

『・・・・・・。』

 元親が指し示した、庭先。『毛利家流の』兄妹喧嘩を、見慣れて久しい3人はやはり意に介さず、元親に向き直った。

「茶なら俺が淹れてやろうか? 鶴姫印のあの葉っぱで♪」

「ん~ん、いい。あのお茶っ葉、姫様以外が淹れると激マズなんだもん。
 普通ので俺が淹れるよ、鬼の旦那の分も。前田の旦那と右目の旦那も飲むでしょ?」

「あぁ、頼む。」

「ありがとう、猿飛。」

「茶が入るまで水飲んどきな。テメェも、ホラ。」

 日陰に置いておいた水桶から、元親が3人分、椀に汲んでくれる。今日は確かに好天だが、好天過ぎる。こんな暑い日は土木作業には向かないのだ。せめてもう少し、雲が欲しい。雲を呼べる上に今の事態を招いた当人は、ただいま絶賛兄妹喧嘩中だが。
 大阪は今日『は』平和である。
 数百人からのヤクザ者に乱暴狼藉を働かれ、焼き討ちされて、ボロボロになった土御門邸は結局、更地に戻す事になった。そうと決めたのは秀吉だ。
 土地の所有権自体は未だ土御門家が持っているので、彼は今頃、半兵衛を連れて役人の許に赴き、交渉している真っ最中だ。何でも豊臣家肝入りの武道場を作りたいのだとか。元々『富国強兵』が彼の理想の柱だったのだから、丁度良いのだろうが。
 術者の家の跡地に武術館とは、皮肉が効いている。直接暴れるのは元就に譲った分、まだ怒りは持続しているらしい。
 利家、小十郎、佐助の3人は、土御門家別邸のあまりの壊滅状態に何となく後ろめたくなって、自主的に焼け跡を解体しているのだ。ちなみに、流石に専門業者がメインで入っているが、ソレを手配したのは三成である。
 その三成は、吉継と共に内政に精を出していた。土御門がどうなろうが、日々の通常業務は続いていくのだ。琉球の件だって遅滞も間違いも許されない。吉継が体調次第で抜ける事がある分、部下たちの牽引役として三成以上の働きを示せる者は居ない。彼は確かに豊臣のナンバー3だった。通り名すら、飾りに思えてしまう程に。
 そして元親はと言えば、今度の一件の始末書を書いていた・・・自主的に。
 『出さなくていいって言われて素直に出さなくていい程、日の本の面倒くさい『以心伝心』は甘くありません。』という社会性の実証されている妹と、『折角出さんで良いと申しておるのだ、出す必要など無い。』と豪語する『非』社会性の実証されている兄。
 どちらの言を採るかは明白である。
 朝廷からはこれからも、色々と宣旨やら勅許やら貰わなければならない。陰陽寮は下っ端組織とはいえ、明白な敵対姿勢は避けたい所だ。
 書かずの姿勢を貫き、琉球語の辞書を開いて勉強に専念する兄に代わり。
 そして、兄より先に既に『書かなくて良い』宣言されている妹に代わり。
 元親が書いている訳である。元就の『暴行事件』の始末書を。
 先程まで、鶴姫も一緒に文面を考えていたのだが・・・。

「青羽(あおば)、白羽(しらは)っ!」

「お~、制空権ゲット♪ でも元就に効くか?」

「碧(へき)、瑠璃っ!」

「お? 体格では劣るが、それだけ小回りの利く陸上霊獣で攪乱か?」

「漆羽(うるは)、真朱(しんしゅ)! 揚羽(あげは)、黒妙(くろたえ)!」

「おお、6羽の巨鳥が揃い踏み、壮観っ♪」

「ええい、そなたいい加減にせいよっ?!
 何処の世界に、たかが兄妹喧嘩で黒帝白玉を2頭、璃華白玄(りかはくげん)を2頭、緑翼鳥(りょくよくちょう)を6羽も召喚するテイマーが居るのだっ!」

「ついでに『空理采配』珠姫(たまひめ)ちゃんも追加です。」

「・・・その2つ名、浸透して無」

「追加です。」

『・・・・・・・・。』

 『テイマー』・・・『召喚士』という術系統がある。
 多様な異能を持つ獣たちを異界から召喚し、契約して、戦闘その他目的の為に使役する術系統だ。鶴姫はその『召喚士』に天稟を持つ、らしい。元就の受け売りだが。
 人ひとりの身に収まらぬ筈の、膨大な量の霊力を宿し。
 種々雑多な異能を、霊獣たちの個性と考え合わせて運用する軍才を持ち。
 『従わせる』のではなく、『慕わせる』人間性がある。
 一般的な術者で管狐数匹が標準。陰陽8家第3位の霊力を持つ元就でさえ、『黒帝白玉』2頭プラス管狐20頭と契約するのが上限だというのに、17にして鶴姫は200を超える霊獣と契約を結んでいる。
 今回はそのテイマー能力を駆使して、元就に喧嘩を挑んだ訳だ。

「兄様・・・ご存知ですよね、私の本気。
 私が本気出したら、・・・・・ね?」

「翡翠と瑪瑙がコテンパンにやられるからヤメロ、愚妹。
 で、賢妹よ。我にどうせいと?」

 鶴姫は『いかにも良家のお嬢様』然とした表情で、乱れ髪をかき上げながら兄に、透明で穢れのない笑みで微笑みかけた。
 妹の美しい笑顔に対し、元就は『騙されんぞ。』という半眼である。

「もうっ、ですから、長曾我部さんとご一緒に始末書書いて下さいってばっ。
 長曾我部さんの御名をお借りするのは仕方ないとはいえ、文面まで丸投げって・・・まるで長曾我部さんが問題起こしたみたいじゃないですかっ。
 あと、旧土御門邸の上空に雲をお願いします。この暑さで土木作業とか、死者が出かねません。」

「我が申すのもアレだが・・・今、雲はマズいのでは」

「はい?♪」

「いや、良い。うん、雲な、雲。」

 笑顔で圧迫する鶴姫に、元就は苦笑して頷いた。
 無造作に、手近に咲いていたヒルガオを右手で摘み取る。薄いピンク色の柔らかい花びら。両の指先で包み込むように風を起こすと、その真ん中に置かれた花弁はユラユラと、まるで水の中に浮かんでいるような流麗さで揺らめいた。
 ヒルガオを閉じ込めた空気玉。
 そこを起点に、竜巻のような大風が起こり、その大風は更に上空に舞い上がって、すぐに大量の雲を連れてくる。
 雨雲でも雷雲でもない、ただ、過ぎた量の日光を遮るだけの、穏やかな雲だ。

「コレで如何かな、我が姫。」

「流石です、兄様♪
 兄様が風を呼ぶ所、見るの大好き♪」

「はいはい。」

 苦笑して、風呼びに使ったヒルガオを妹の髪に挿す元就。
 右耳の上に挿しこまれた花を、早速小十郎に見せに行く鶴姫。
 平和そのものな兄妹の姿を、元親は文机に頬杖ついて眺めていた。元就が、無造作に彼の隣に腰を下ろす。

「何なんだろうなぁ、ギャップ萌えキラーなこのギャップ・・・。」

「何だ、元親。そなたも花が欲しいのか?」

「要らねぇよっ。
 ド派手な雷雲呼んでよ、屋敷は打ち壊すわ、土御門の当主の頭ぁ地ベタに踏みつけにして高笑いするわ、『火を掛けよ』って命令しといて自分で火ィ掛けるわの、『インテリヤクザの大親分』な姿と。
 妹のおねだりに『も~、しょうがないなぁ♪』的に応えて、フローラルで爽やかな風を起こすシスコン兄貴な姿と。
 結び付かねぇなぁと思って。」

「そのギャップに萌えるそなたの趣味もどうなのか・・・。
 そこまでいくとギャップというより二重人格だな。」

「お前の事だよ、詭計智将っ。」

「風は水を呼び、土は炎を含む。
 多重人格は、自然操作系能力者の特徴だな。」

「うぉーい、元就よ? その4重人格の内、もうちょっと優しい面を見せてもらえねぇモンですかね?」

「100歳くらいになって、好きな研究にだけ没頭していられるようになったら。
 そういう仕儀になれたら、考えてやらんでもない。」

「100歳ねぇ・・・。」

 ぬけぬけと澄まし顔でのたまった元就に、今度は元親が半眼になる番だった。
 以前、7人の世間話でそういう話が出たのだ。今は理想に向けて国を整えている真っ最中で戦に明け暮れているが、ソレが終わったその時は、と。
 どんな晩年が理想かについて、既に髪の白い義弘などは『ワシに振る話かっ!』などと目を三角にしていたものだが。100歳の時何をしていたいかについて、当人は『剣士として生涯現役』、元就は『日の本の山深くに結んだ庵で、医術の研究に没頭』、元親は『異国の海を大冒険』だった訳だ。
 その時元親が思った事を、元就も思った筈だ。
 自分の思い描く最終的な理想の中に、相手は居ないのだな、と。

「取り敢えず今は、戦う事しか考えられぬよ。戦って、生きる道を切り拓く事しかな。
 春時に吐かせて、陰陽寮幹部の真名が一度に全て手に入ったのはある意味、幸いであった。コレで陰陽寮が東の陰に与する芽は無くなったと思って良い。
 魂の支配コードである真名で、『そのように』命じたのだからな。
 東西の陰の仲裁役・・・バランサーとしての能力を失った陰陽寮など、動けなくしておくに限る。」

「・・・・・・・。」

 妹の動きを目で追う元就の、その声は乾いた様で淡々としている。
 子供の頃は仲の良い幼馴染みだったという春時を、アングラのならず者たちの目の前で拷問し、魂の支配コードを奪い取った元就。この男は、その声音で全てを受け入れてきたのだろう。親が死んだ時も、弟を殺した時も、哲学の違いでどうあっても元親と相容れない時も、家臣に裏切られた時も。
 変えられない全てを、そうして。
 いつか、元親の不在そのものも。
 元就は、表面上は淡々と受け入れるのだろうか。繊細で、本当は誰より情が深い、この男は。異国に行ったまま恐らくは帰って来ないであろう、元親の事も。

「なんだ?」

「・・・べ~つに?」

 元就の頭をガシガシと撫でる。元就が胡乱なカオで、邪険に払いのける。
 そんな些細な仕草が愛おしいというのに、今はこんなに近くに居られるというのに。
 それでも元親は、捨てられないのだ。異国の海への、憧れを。
 秀吉なら、元就の傍に居てくれるだろうか。『現役の相談役などしながら、国の行く末を見守りたい。』と。そう言った秀吉なら。

「琉球にはいつ行く?」

「そうさな、あちらも今は暑い盛りだそうだから、ソレが鎮まった秋口辺りか。
 船は今、作っている最中ぞ。三成めが大喜びで指揮を執っておるからな。少数精鋭は我にとっても望む所、随行員の人数など、少ない方が気楽で良い。」

「本気で2人だけで上陸するって?」

「嘘から出た実、というヤツか。
 口に致した当初は深く考えなんだが、我ながら良手であろ?」

「マジな話、危なくね?
 同盟軍中に異論はねぇし、同盟に入ってない連中は、そもそも琉球になんざ興味がねぇ。でも向こうには、日の本と付き合うのヤメロっつってトンガってる連中も根強いって聞くぜ?」

 政宗がそうであるように、元親もよく知っている。
 異国に憧れ、精通しているが故に・・・異国の地で敵に囲まれる、その危険も。
 元就は静かに微笑んでいた。

「そういう連中が居るのは知っておるし、言い分も判らんではない。
 この国は絶賛内戦中で、我らは未だ、日の本全てを代表する政府とは言い難い。しかも、琉球貿易をネタに他家の興味を惹き、平和的に同盟を拡大しようとしている部分は否めないからな。
 餌にされる方はたまったモノではなかろうよ。」

「でも行く?」

「行く。行かんと始まらんからな。
 この盟約もそうであったろう?」

「・・・・・・。」

「我が術力は、日の本の土に根差したもの。故に、異国の土の上では使えまいが。
 まぁ、そんなモンなくとも武力で何とでもなるであろうよ。何と言っても、こちらは絶賛内戦中の国の支配者層なのだからな。
 いざとなったら、泳いで帰って来れば良い。
 秀吉の事は十中十、三成が見つけ出すであろう。我はそれに便乗させてもらうとする。」

「ふ~ん・・・。」

 コイツならやれる。二国間遠泳くらい、素知らぬ顔でやってのける。
 いつものあの、鉄面皮で・・・。

「なぁ、元就。」

「なんだ、元親。」

「膝枕してって言ったら、怒る?」

 鳩尾に一発。
 叩き込まれる『真似』をされた。その秀麗な面には『マジ殴りするのも面倒くさい。』と大書きされている。

「2人旅が羨ましいと申すなら、案じる事はない。いずれまた、そなたと行く機会もあろう。今回は初回故、7家を代表して、推進役である毛利と豊臣の当主が顔合わせの為に現地へと赴く。それだけの事ぞ。
 具体的な決め事は最小限に留めるつもりだ。伊達家も巻き込みたいからな。
 南蛮貿易に一日の長のある政宗にも、色々と相談しながら条件を詰めたい。日の本の産業も保護しながら詰めなくては・・・同じ理由で、そなたに相談する事柄もあるかも知れぬ。
 別段、秀吉だけを頼りにしている訳ではないぞ?」

「秀吉がどうこうってより、俺は」

「兄様――――――っっ♪♪♪
 見て見て、『セミの抜け殻マシマロ』~~~♪」

「あの猿使い、またバカなモノを・・・。」

 ハイテンションに大喜びで元親の呟きを遮ったのは、珍しくも鶴姫である。
 生き物大好きな彼女のテンションが、上がる筈だ、本物としか思えないリアルさを追求した『昆虫型の』和菓子。の、数々。
 京都に滞在中の慶次から、届けられたばかりの品々である。
 『バカなモノを作りおって。』と呻きながら、それでも興味津々で妹に手を引かれて連れていかれる元就。
 『虫にテンション上がってる鶴も可愛いなぁ♪』などと惚気た事を考えていた小十郎は、隣り合わせた元親の、その浮かないカオに心配になった。

「西海の鬼?」

「・・・いや、なんか、判んなくなっちまって。
 何がアイツの為なのか。何が俺の為なのか。
 どうしたら・・・俺は、アイツとの関係に何を望んでいたんだっけ。どうしていたら、俺は満足した・・・そもそも俺は、満足する事なんて望んでたのか? ってな。」

「・・・7家合議に武力で反抗する者がなくなり、正式な政府として朝廷から勅許を得た上で、鶴と結婚して、政宗様の治める奥州で2人で暮らす。
 仕事で日の本中を飛び回ったり、琉球に行ったり、たまに中国は毛利家に里帰りする事はあっても、鶴が、俺と同じ家に必ず帰ってくる。
 そういう状態なら俺は満足ですが。」

「遠いようで実現しつつあり、そんでもって具体的でシンプルな望みだな。」

「長曾我部殿は違うのですか?
 毛利殿と一緒に居たい・・・矛を交える事無く、隣に居たい。それが大元のお望みだったのだと、思っておりましたが。」

「・・・違いはしねぇ。ただ・・・『それだけ』だったっつーか、漠然とし過ぎというか。
 気付いちまったんだよな。
 俺が最期を迎える時、元就は俺の傍に居ない。俺はソレを受け入れてるって。逆もまた然り。そんでもってアイツは・・・元就は俺を変えようとしないだろう。
 アイツは・・・毛利家臣団をガチで駒としか思ってねぇ、妹以外の人間を客観視し過ぎてるトコのある人間だ。だがそれでも郷土愛も愛国心も本物で、責任感も強い男だ。
 俺も同じように郷土愛は持っちゃいるが・・・異国の海へ出たいって思いが捨てられねぇ。四国を港にするんじゃなく、一海賊として南蛮の海に行きたい、海で生きて死にたいってな。
 その思いが、7家合議の許に日の本が安定して欲しいっていう願いのド真ん中にある。
 そうでないと、残してく連中に後を託せないから・・・。
 元就は『100歳の時、医術の研究に没頭していたい。』と言った。安定なった、この日の本で。
 俺は、海へ出たいと思う・・・出ちまって、多分それっきりだろう。
 元就は俺を待たないし、俺も待ってて欲しい訳じゃねぇ。」

 自然、溜め息が出る。
 ソレは、真剣に悩み苦しんでいる者のみが絞り出せる、深い深い溜め息だった。

「何だろうなぁ、この不完全燃焼感。
 ガキの頃から今でも変わらねぇってのに・・・変わらず大切で、泣かせたくねぇってのはマジなのに、だぜ? そう思ってるのに、俺の心はアイツの傍に居る事を選ばない。選ばないのも、俺の心の一部、本音なんだ。
 俺に何が出来る・・・俺は、アイツに何をしてやれる。
 四の五の言いつつ、結局、最後に見せるのは背中になる。死体すら、きっと見せてはやれねぇだろうに。陸に残して・・・置いて。
 なぁ、竜の右目よ。
 こんな俺が、誰かに元就の傍に居てやって欲しいと思うのは、現実逃避ってヤツだと思うか?」

「逃避ではなく・・・戦略的撤退かと。それに、自分に出来ない事を、ソレが出来る他人に託すのは、ごく普通の事です。失敗できない、したくない事なら、尚更。
 その役回りを、秀吉公にご期待に? 毛利殿を賭けて喧嘩しよう、そう持ち掛けたと、鶴からは聞きましたが。」

「・・・未練はある。誰が相手でも、元就のツレの座を、すんなり素直にポイ捨てする気には、なれねぇ。俺だって元就に惚れてんのはガチなんだ。誰だってイイ訳でもねぇ。
 ただ・・・いや、だからこそ、か。
 海も元就も欲しいとか、我が侭を貫き通して元就泣かすのも、何だかな・・・。
 秀吉の野郎は、『100歳の時は現役の相談役になっていて、国の行く末を見守りたい』って言ってた。聞いた時は正直、優等生な模範解答に聞こえたモンだが・・・。
 秀吉なら、元就の傍に居てくれる。アイツを孤独にしないでくれると思うか?」

「・・・お答えは、申し上げかねますが・・・。」

「だよな。悪ィ、愚痴った。」

「ですが・・・少しだけ、安堵致しました。
 『相手の為に何が出来るか』という視点を持てる限りは、そうそう酷い末路は辿らないと思います。」

「そうか・・・。」

「はい。その・・・あまり思い詰めるのも宜しくないかと。」

 それ以上小十郎には、何とも言えないのだが・・・仲間内でも、誰も口には出さない心配事のひとつだった。元就と元親、2人の関係は。
 危ういのだ。
 元就を知れば知る程、武将らしく相応に気丈だが、それ以上に繊細な部分が占めている男だと判る。気難しく、学者肌の天才肌で、本来ならそれこそ医術の研究にでも没頭しているような人間なのだ。
 元親は元親で、豪放磊落を絵に描いたような人間で・・・東域では政宗と、そして西域では、むしろ義弘との方が仲が良いようにすら見受けられる。
 危うかった。何かが。
 互いの中に互いが居ればこそ、壊れる関係というモノも存在するのだ。
 理想の成就には、問題も関係もなかろう。
 だが・・・もし、成就の暁には英雄とも呼べるあの7人の中で、不幸な最期を遂げる者が居るとすれば・・・それは元就か元親、どちらか・・・多分、元就の方であろうと。
 2人をよく知る副官クラスの中で、密かに囁かれていたバッドエンドである。

「片倉さん片倉さん♪
 はい、あ~ん、して?」

「?? うん、旨い。」

 2人のシリアスな会話など知らぬげな鶴姫は、駆け寄ってきざま小十郎に口を開かせると、砂糖を固めた物だろうか、固い物をポイッと口中に放り込んだ。
 婚約者の、簡潔で素直な感想に表情をほころばせる。

「良かった♪
 ソレ、私が創作して、慶次さん通じて和菓子職人さんに形にしてもらったお菓子なんです。イメージは片倉さんなんですよ? あ、虫の形じゃないですからね?」

「可愛いな、鶴。
 もう1つくれるか?」

「はい、あ~ん♪」

「・・・なぁ、元就よ。」

「我がやると思うのか?」

「―――――チクショウ、俺だってなぁ、俺だって本当はなぁっ!!!」

 元親が元就を見るのと同時に、元就は元親から目を逸らした。
 大阪は、今日『は』平和である。
 乾きかけた墨の黒い水面が、穏やかな風にさざ波を立てていた。



                                   ~終幕~

戦国BASARA 7家合議ver. ~問・秀吉と元就の共通点は何か?~

はい、あとがき。

前田さんが策謀しかけられたけど、大して気付かれもしないまま、
あっさりスルーされてしまった・・・。
まぁ、あの程度の即席陰謀で壊されるほど、既に浅い絆ではない、という事で。


タイトルに付けた『秀吉と元就の共通点は何か。』というお題。
答えは『ストーカーと性犯罪者と差別主義者に人権はない、という持論』です。


チカさんの名誉の為に補足しておくと、
元親さんは別に、元就さんと別れたい訳じゃありませんので。


異国の海への憧憬や情熱と、元就さんへの愛情。
その狭間で苦しんでいる、という。

むしろ元就さんの方に、『付いていってやれよ』と言いたくなるような状態なのですが。

『だからって何故、秀吉?』というのは、次作辺りで書こうかと。
別の話題になってしまうので。


個人的に素朴に思うのは・・・。
秀吉さんて、ホントに差別意識が低いよなぁ、という事です。
まぁ、松永さんを麾下に入れるのに比べたら、苦でもないのかも知れませんが。

直属の部下に、異色の髪2人。更に、当時は激しい差別に晒されていた種類の病気の人、1人。

半兵衛さんと三成さんの銀髪。
リアルだとしたら、アルビノとか、色素欠乏症とかの類だと理解しますが。
そして大谷さんは、当時は捻じ曲がった迷信から差別されていた、業病。


日本は良くも悪くも島国根性で保守的だから、そういう『違う』人間は排斥しがちです。
そうやって集団を守ってきた面もあるから、一概に悪とは言いませんが・・・、
排斥『される側』からすれば、たまったモノではありません。

そういうね、差別意識が段違いに低い秀吉さんが、天下を取っていたら、どうなっていたのかな・・・、
とか、豊臣寄りの漆黒猫は、一瞬でも思ってしまう訳です。

三成さんもこんな気分だったのかな。


ちなみに、前から文字にしたかったことを、ちょっと書いてしまうと。


漆黒猫は基本、BL書きで、BL書きの中には
『ファンタジーだから良いんだっ、リアルの同性愛なんか認めんっ。』なんぞという狭量な方が、
たまにいらっしゃいますが。

・・・前、身近に居た。


漆黒猫は、女性同士でも男性同士でも、リアルでの同性愛者を差別しません。
むしろ、そういう『格好イイ』生き方をしている人たちに友達にしてもらえる、レベルの高い人間でいたいと思う。


漆黒猫自身は異性愛者・・・なのだと思う。
30年以上生きてきて、他人を愛した事がないのですよ、一度も。

信用はした事あるし、信頼も、した事はあると思う。
結構、する度に裏切られてきた感はありますが。


ギリギリ友愛は知ってるかな、程度で、性を伴う恋愛はした事がありません。


だから、漠然と『異性愛者なんだろうな』と思うだけで、実証できている訳ではない、と。
だから、『なのだと思う。』という言い方が適切。


漆黒猫はそういう、ある意味、侘しい人間です。
まぁソレが悪い事だとも思わんのだが。

漆黒猫のキャパは、セキセイインコで満杯です。


でも、誰も愛した事がない漆黒猫のような猫より、
差別や偏見、濁って腐るほどの色眼鏡に晒されても、誰かを大切に思い、愛している。
ソレを貫いている。
そういう生き方をしている人の方が、何倍も、ずっとずっと、素晴らしい人間なのだと思う。


それが同性だったとしても、だから何だと言うのか。
誰かに迷惑かけるような事か?


『自分』をしっかり持って、己の趣味嗜好を正しく理解し、貫いている人は格好良いと思う。


ソレを『悪い事だ』と言って嘲笑するのは、
刷り込まれた常識を通してしか物事を見られなかったり、
相手を見下さないと自分の誇りが保てなかったり、
未知のモノを未知だというだけで恐れたり。

そういう・・・何て言うのが適切なのか、今イチ判りませんが。
『レベルの低い』人間の証明だと思うのですよ。


まぁ、だからと言って、なにか差別根絶の為に支援活動などをしている訳ではありませんし、
こういう事を、こういう小さな場ででも表明すると、
パソコン画面上で、反発したり罵声を浴びせたりしてくる輩が必ず居るであろう事も、想像に難くないのですが。

漆黒猫は・・・私はせめて、そういう無意味な反発や罵声を恐れずに、堂々と。
『リアル同性愛上等』と言える人間でありたいと思うのです。


それでは、また次作で。

戦国BASARA 7家合議ver. ~問・秀吉と元就の共通点は何か?~

中国の覇者・毛利元就。近畿の雄・豊臣秀吉。あまり、例えば前田利家さんのような柔らかい人望があるタイプには見えない2人ですが。その核となる信念、持論のひとつには、完全に重なる点がひとつ。ソレは一体・・・? そして、そんな2人を見て、長曾我部元親さんは、ひとつの結論を出します。自分と、自分にとって嘘偽りなく大切な、元就さんとの関係に・・・ひとつの結論を出し、覚悟を決めて一石を投じます。元就さんを愛する故に・・・ずっと、今のまま、居られたら良かったのだけれども。そういう訳にはいかないから・・・いかないなら。せめて、未来に芽が出るように、と。 せめてもの陽だまりは、相変わらず小十郎さんと鶴姫さんが、ほのぼのと仲良しな事ですか。

  • 小説
  • 中編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • 時代・歴史
  • 青年向け
更新日
登録日
2014-08-28

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