また会う日を楽しみに Ⅰ
「また、この夢・・・」
幼い時から、何度もこの夢をみてきたけれど、今日ほど鮮明に覚えているのは初めてかもしれない。
いつから、この夢を見始めたんだっけ?
もう、そんなことすら忘れてしまった。
"彼"はすぐに消えてしまいそうなほどきれいで、すべてを見透かしたかのような目で私をみてくるのだ。
『ユキ』
あの声を思い出すだけで、胸が苦しくなるのに不思議と心が温かくなる。
ああ、会いたい。"彼"に、会いたい。
「・・・って何を言ってるんだ私は」
おかしいな、いつもはこの夢をみても、こんな気持ちにならないのに。
今日はいつも以上に
切なくなる。
「雪~おはよう。今日はおめでとう。お母さん、雪のために夜ご飯は腕によりをかけるからね!たのしみにしててね!!って・・・どうしたの?雪」
「え、お母さん?おはよう・・・どうしたって何が?」
「だって雪、貴方・・・泣いてるじゃない・・・」
頬に手を当てると、少し湿っていた。
「え・・・?あ、あれ・・・?な、なんで、だろ・・・」
私・・・どうして、こんなに泣いてるんだろう。
*
「雪!おはよう!ねえ!やばいよ!!とうとう春が来るよ!」
「真咲ちゃん~おはよう。どうしたの、そんなにあわてて」
真咲ちゃんはイケメン好きの私の友達だ。
いい子なんだけれども・・・どこか、残念な子な気がする。
「転校生が来るんだって!!しかもとんでもないイケメン!!」
「へえ~」
「なんでそんなに興味なさそうなのよ!!イケメンよ!イケメン!!!!」
「そうだね~あ、先生来たよ」
「雪・・・!んもう・・・あとでもっかい話に来るからね!」
「全員、席につけー!今日は転校生を紹介するぞ!」
ガラガラ、と扉の開く音がする。
「高橋刹那と言います。よろしくお願いします」
彼が教室に入った瞬間、空気が一変したような気がする。
クラスにざわめきが起こる。
「え~!ちょうかっこいいんだけど~~!!」
「髪の毛すごくきれいな茶色!ふさふさだよ!触りたい~~!!」
世界にはこんなにきれいな人がいるのか・・・。
女の人よりきれいなんじゃないの?高橋くん。
「じゃあ、高橋は・・・立花の隣に座って」
「え」
私の隣?
他に何席か開いている席があるのに・・・なんでだろう?
たまたま・・・かな。私の考えすぎだよね。
「HR終わり。次の授業までに授業の準備をしておくこと」
「よろしく、ユキ」
高橋くんが私に微笑みかけてくる。
あれ、この顔と声・・・どこかで・・・
どこだっけ・・・?
思い出せない・・・。
「・・・よろしくおねがいします・・・」
と、というかすごく見られてる・・・気がする。
「な、何か私の顔についていますか?」
「・・・ううん、何もついてないよ。ユキはきれいな顔をしているね」
「美しいを超越している貴方に言われても嬉しくないです」
「・・・どうしてユキはそんなに僕に冷たいの?」
「・・・冷たいわけじゃないですけど・・・」
周りの女子の視線が痛い。
すごく、それはもうすごく。
「刹那くん!あの・・・ちょっとこっち来て話さない?」
「そうだよ!私たちと仲良くなろ!」
そうそう。私なんかとじゃなくて、もっと別の子と仲良くなるべきだ。
すると。
彼はにっこりと彼女たちの方を向いて言った。
「ごめんね、僕は今ユキと話しているんだ。今は君たちのことを僕は必要としていないんだよ。わかってくれる?」
「・・・っ!!ご、ごめんなさい・・・!」
彼は、ひどく冷たい顔をしていた。
女子達はすぐに逃げてしまった。
正直言うと、高橋君が怖かった。あんな顔もするのか。
「ごめんね、話をさえぎっちゃって。冷たいわけじゃないけど、何?」
「・・・元からこんな性格なんですよ、私は」
「ふぅん・・・。ね、それより、今日の放課後あいてる?」
「え、な、なんで?・・・ですか?」
「いいから。とりあえず教室にいてね。よろしく」
「え、ちょ、ちょっと。勝手に決め・・・」
「おい高橋ー!こっち来いよ!学校案内してやるよ!」
「今いくよー!ごめん、クラスメイトに呼ばれてるからもう行くね」
「・・・どうぞ・・・」
そもそも私が呼びかけたわけじゃなかったから勝手にどこかに行ってくれてもよかったんだけどなぁ・・・。
「あと・・・」
そう言うと彼は私の耳元に顔を近づけてくる。
近い・・・!
「敬語禁止。あと名前で呼んでね。じゃないと僕、ユキに何するかわからないから」
・・・熱い。
頬が熱いのは気のせいではないのだろう。
恥ずかしい。
「顔、赤いね。かわいい」
「~~~~~っ!!!わかった!わかったから!!敬語も使わないし!刹那って呼ぶから!離れて!!」
「よくできました。じゃあ、放課後にね」
違う、ドキドキなんかしていない。
ただの・・・
錯覚だ。
また会う日を楽しみに Ⅰ
受験生なので亀更新でございます!!
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