薔薇が、百合へと変わるとき。

 三十一歳。
 まだ結婚するつもりもないし、出会いもないが、東京でエンジニアとして働く、脂の乗った、充実した頃合いの私の元に、地方に住む弟から久々にラインが来た。



おはよう。

姉さん、ちょっと聞きたいんだけれど。

本当に唐突だけれど、もしさ、身内の、男性の身体をした人(自分の兄弟でもいいし、父でもいいし、伯父さんとか、親戚として考えてもいい)の一人が、実は中身が女性だった(いわゆるトランス)ら、姉さんはどう思いますか?



 寝覚めのスマホに、少し重ための話題が入っていた、ような気がする。

 しかし、私は、何となく理解はあるほうだった(と思う)。そして、包み隠さず言うタイプなので、こうとだけ書いておいた。



おはよう、みの。

私には、どう言えばいいか分からない。それって、良いか悪いかを求めてるんでしょ?

性別なんて、今時関係ない。ただの見た目だ、とは私も思ってる。だって、現にこっちのエンジニアなんて、ほとんど男性だ。その中で、私も女性として働いている。でも、差別(は裏でされているかもしれないけれど)はされないし、今は、生きて、誇って、頑張れば、社会はまぁ認めてくれるほうだ。昔よりは、圧倒的にね。

あとね、世の中には、揺らぎっていうものがあるの。理系的に言えば、ビッグバンは知ってる? あれも揺らぎなの。

つまり、この世は揺らぎでできてるの。

だとしたら、いきなり昨日まで薔薇だった人が、少し揺らいで今日百合になったとしても、

それはそれでいいんじゃない?



 スマホを閉じて、朝食の準備に向かった。

薔薇が、百合へと変わるとき。

薔薇が、百合へと変わるとき。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-11-03

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