晩夏にて

晩夏にて

 つい先月まで見頃を迎えていた向日葵が、今は重そうに(こうべ)を垂れている。家の外から見ると、通り過ぎて行く人達にお辞儀をしているようで、その姿は何だか健気である。

 先月、台風がやって来た頃は、向日葵がちょうど蕾を膨らませていた時だった。今回は大変な台風らしいとニュースで言っていたから大丈夫だろうかと、思い出しては閉め切った窓越しから暴風に吹かれる向日葵を見守っていた。向日葵は吹き荒ぶ風に逆らうことなく、吹かれるままに身を反らし、地に根を張って踏ん張っていた。

 翌朝になると、台風は何事もなく過ぎて行った。昨夜、吹き荒ぶ風に吹かれていた向日葵たちは1本も折れることはなく、太陽に向かって首をピンと伸ばしていた。それからわずか数日後、向日葵が1輪咲いた。毎年見ている鮮やかな黄色い花びらが、何だか目に眩しかった。

 向日葵は最後の1輪まで見事に花を咲かせた。風に逆らわず、風に吹かれていることが身を守る術だと、向日葵は分かっているようだった。花の盛りを過ぎ散る時を知ると、萎んで誰に垂れるともなく頭を垂れるのである。
 何かと些細なことに逆らいがちな人間とは違い、涼しい顔をして咲き、潔く枯れる向日葵を見て、こうありたいと思った晩夏である。

晩夏にて

2026年年9月1日 書き下ろし
2026年9月6日 「note」掲載

晩夏にて

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-09-07

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