予期せぬ出来事 28

 ある冬の日の出来事である。
 ボクは赤羽駅から、いつも通りの6時57分発の京浜東北線の上りに乗った。
 昨日はこっちだったから、今日はこの辺のにしようか?……みたいに、ボクはその日の気分で車両を換えている。
 王子駅はふたつ先なので、サッと降りれるように、ボクは扉の近くに陣取った。
 これはいつも通りである。
 その扉の角に、女子校生が立っていた。
 コート襟から見えているのはセーラー服で白いラインが3本入っていた。
 別に覗いたわけじゃないよ。
 ボクからは、女子高生の左の横顔が見えている。
 そして彼女は、耳に何か着けていた。
 ワイヤレスのイヤホンかと思ったんだが、そうでは無かった。
 何故か注意を惹かれて目を懲らすと、彼女が着けていたのは補聴器だったんだ。
 耳の穴全体を塞ぐ構造で、そこから耳の後ろの方に線が走っていてそこに本体がある、ごく普通の耳に掛けるタイプの補聴器だった。
 そんでもって最近の補聴器は、小さくて目立たないタイプの物もあるみたいだけど、彼女のは〝これぞ補聴器〟ってやつだった。
 そして彼女は、その補聴器を飾っていたんだ。
 穴を塞ぐ部分と本体に、キラキラとした細かなシールを貼って自分好みにデコレートしていたんだ。
 カッケー!
 耳が聴こえにくいってことは、彼女にとってはハンデでも何でも無いんだ……とボクは感じ入ってしまったのです。
 彼女は、プリントを出して読んでいた。
 チラ見だけど、学校行事のプリントだった。
 そんな彼女が、とっても素敵に見えました。
 王子駅で下りるときボクは、彼女とすれ違いざま、それって凄くいいよ、と心の中で言いました。
 会社に着くなり、早々に検索したら、市販でもカラフルなヤツが一杯出ていて、ちょっとビックリしたのでした。
 そしてボク自身、オレの頭って堅ぇなぁ……と思ったのでした。

 おしまい

予期せぬ出来事 28

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予期せぬ出来事 28

補聴器

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-08-28

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