273 三題噺『しークレットアジサイ男』
『しー』『アジサイ』『ハサミ』の三題噺になります
「あー!!!!! 仕事クビになったーー!!!」
俺は叫んでいます。
「あー!!!!! 競馬負けたーー!!! 30万!!!」
俺は心の底から叫んでいます。
世界で一番叫んでいます。
なので、町の名物おじさんになります。
ちょうど梅雨だったので、俺は道端に咲いていた紫陽花を摘んで、レインコートにガムテープで貼っつけて、ハサミを持って街に出た。
『テキトーラブで腰砕け~🎵』
今流行りの曲をスマホで流しながら、俺は街を冷静に、平然と闊歩する。俺はこの状態で冷静になれる自分に逆に驚いた。
『甘い声で中身スカスカで~🎵』
「何あの人、こわ」
「見ない方が……」
傘越しに女子高生と瞳が会う。俺はレインコートなので傘はないが、女子高生は傘を傾けて視線を遮った!
「ちょっと」
振り返るとそこに居たのは警察官だった。
□
「で、リストラされて、ヤケになってギャンブルしてタコ負けして、で、なんで名物おじさんになりますってなるんですか」
「はい、すみません」
「ハサミはね、長さによっては銃刀法違反になるから、気をつけてくださいよ?」
「はい、すみません。でも、しばらくはこの格好でいます」
「なんでまた」
警察官の方は優しい。真摯にこんな俺に付き合ってくれる。
……続く。
273 三題噺『しークレットアジサイ男』