予期せぬ出来事 17

 電車の中では、だいたい本を読んでいる。
 移動時間は、ボクの貴重な読書時間なのである。
 そしてその電車の中では、ボク自身の決め事がある。
 まず、なるべく(左右が)窮屈でない位置を確保する。
 それが出来たら棚の上に鞄を乗せ、吊革に捕まって文庫本を開く。
 かさばるので、電車では文庫本が基本だ。
 準備完了。
 ガタゴトと揺られながら電車は進む……

 ある金曜日のことだ。
 ボクは三人掛けの、一番右側の席の前で本を読んでいた。
 連結部分の傍だ。
 ボクのすぐ左隣が30代の男、その左が20代後半の女性だった。
 電車は大宮駅に到着し、ボクの前と左隣の男の前の席が空いた。
 男は自分の前の空いた席に座った。
 一番左に立っていた20代後半の女性は降りてしまった。
 じゃあ、ボクも座られていただきます……
 ボクは棚の上の鞄を取って座った。
 するとその後に、女性が乗ってきてボクの前に立ったのである。
 ボクもそうだが、やっぱり車両の端の部分は居心地がいいのだろう……
 その女性は、ボクよりも年上だった。
 ボクは立ち上がり、どうぞ、とその女性に席を譲った。
 その女性は「ありがとう」と頭を下げて座ってくれた。
 そしてボクは、鞄をまた棚の上に乗せようとしたとき、隣に座った男がボクを見上げているのに気が付いた。
 男は腰を上げようとしている。
 ボクは首を横に振って、心の中で叫んだ。
 オレに席を譲るんじゃねぇ!

 おしまい

予期せぬ出来事 17

予期せぬ出来事 17

オレに○○するんじゃねぇ

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-03-30

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