06 その先の向こうに… ②
06
始めは何が起きたのかも分からなかった。
最初に目に入ってきたのは、自分の部屋の天井の模様だった。
眠ってたんだ……と身体を起こそうとしたが、腕が痺れて力が入らない。
腕を強張らせていたのだろうか?
しかたなく身体を横にして膝を折り、更にうつ伏せになってからようやく起き上がった。
ベッドの上に正座をして、夢のことを考えた。
こんなにもリアルな夢を観たのは初めてだった。
今も微かだが、身体が震えているのが分かる。
カコは深呼吸をして、気持ちを落ち着かせるよう努めた。
何度目かののち、ようやく時計に目をやる余裕が出来た。
朝の7時を回っていた。
*
土曜日の朝。
カコはおばさんの家の前に立ち、こんなに早い時間に伺っても大丈夫なのだろうか?と迷っていた。
しかしどうしても、夢のことを確かめたくてしようが無かったのである。
では何故、カコはおばさんの家にまでやって来たのだろうか?
カコは昨日のことを思い返していた。
帰り際に玄関口で、おばさんが言った言葉が耳に残っていた。
あの時おばさんは
「今日はとっても楽しかったわ。来てくれてありがとう。今夜は楽しい夢が観れそうだわ。あなた達もきっといい夢が観れると思うわよ」と言って、わたし達を見送ってくれたのだった。
帰りの道すがら三人は……
おばさん、最後に変なこと言ってたよね?
今日の訪問が、今夜の楽しい夢と何の関係があるんだろうね?
そうだよね、変なの……
と話をしながら帰ったのだった。
しかし家に帰り着くころには、そんな事もすっかり忘れてしまっていた。
でも、あの夢を観てしまって、何故あんな夢を……と考えていると、おばさんのあの言葉が妙に引っかかり、その後は何かに突き動かされるようにここまでやって来てしまっていたのである。
もしかしたらおばさんの悪戯? おばさんなら、出来るかもしれないけど……。
でも、もしそうだとしたら、あまりにも非道くない?
自転車を漕ぎながらおばさんの家に向かう道すがら、カコはそんなことを考えていた。
それでもいざ家の前まで来ると、呼び鈴を押すのを躊躇ってしまい、家の前をウロウロしていたのである。
するとそこに自転車のブレーキの音が聞こえた。
「やっぱりここだと思った」
振り返ると、自転車から降り立つナオとユウコの姿があった。
どうして? と訊くよりも前に
「やっぱり観たんだ。あれ……」とユウコ。
……!
その言葉に、カコは言葉を飲み込んでいた。
「カコん家(ち)へ電話したんだよ」とナオ。
よっぽど急いで来たのだろう、二人は肩を大きく上下させていた。
*
わたしだけが観た夢ならば、休み明けの月曜日にそれとなく冗談っぽく言ってもいいかな?と、一度は考えたユウコだった。
しかし、何故(どうして)わたしがジンジの夢を観るの?ちょっとおかしくない?と疑問が湧いた。
同時に、木曜日のお弁当の時に、カコがわたしの夢を観たと話してくれたことが頭にあった。
更に昨日の帰り際の、あのおばさんの意味ありげな言葉……。
うまく言えないけど、ユウコはその三つが、何処かで繋がっているのかもしれないと考えたのである。
それで……、取り越し苦労ならばそれはそれでいいと思い、早い時間ではあったけれども電話をしてみたのである。
カコは不在だった。
カコの母親は、娘は何か急いでいたようすで、自転車に乗って慌てて出掛けてしまったと言うではないか。
*
同じ時刻、ナオもカコの家へ連絡を入れていた。
ユウコと同じ理由だ。
電話は話し中だった。
もしやと思いユウコにダイヤルすると、呼び出し音が一回も鳴り終わらないうちに本人が出た。
カコの家への電話が終わり、丁度受話器を置いたところだったのだ。
電話で話しているうちに、カコはおばさんの家に向かったに違いないと考えが一致し、待ち合わせして自転車を跳ばしてきたというわけである。
カコも観たに違いない。
しかもカコだけじゃなく、わたし達二人も同じ夢を観るなんて……、それって絶対おかしいし、絶対何かあるに違いない。
ただの夢じゃない。
二人は自転車でおばさんの家に向かいながら、そんな会話を交わしていたのである。
*
ナオとユウコも同じ夢を観たって言うの?
悪戯なら度が過ぎてる。
そんなの悪戯じゃない。
じゃあ、何なの?
「どうしたの、黙りこくっちゃって」
ユウコが心配そうにカコの腕に触れていた。
我に返ったカコは
「ううん、何でもない」と笑って誤魔化した。
「でも不思議だよね。三人とも同じ夢を観るなんて。やっぱりあの言葉に関係があるのかなぁ?」
「何かあるんだよね、きっと」とユウコ。
「ねぇカコ。おばさん……て何者?」とナオから素直(そっちょく)な疑問が出ていた。
そ、それは……とカコは口籠もった。
陰陽師だって言っても、二人に分かってもらえるだろうか? 信じてもらえるだろうか? と迷っているそこに……
玄関のドアが開く音がして、おばさんが姿を現していた。
「おはよう、いらっしゃい、そろそろ来るころじゃないかと思っていたのよ」
来るころ? 来るのが分かっていたの? と三人は首を傾げた。
「三人とも、その服とっても似合ってるわよ。制服の時とはまた違う雰囲気があって素敵……」とおばさんは三人に微笑んだ。
カコは、深緑にエンジ柄チェックのフランネルシャツに、洗いざらして少し色のあせたジーンズに白いスニーカーを履いていた。
ナオは、淡いピンクのオックスフォード地のボタンダウンに、カーキ色の綿パンに淡色の赤いスニーカー。
ユウコは、オレンジ色の薄手のパーカーに真新しいのジーンズにグレーのスニーカーだった。
三人の普段着は、いつもそんな感じで、動き易い服装であることが多い。
「三人とも、とっても素敵ですよ」
深刻な顔をしている三人に対して、あまりにもあっけらかんとしたおばさんの笑顔に、三人は拍子抜けしてしまった。
*
三人は、朝の挨拶と一緒にコーディネートのお礼を言った。
おばさんは、いえいえどういたしまして、と返す。
そのあまりにも呑気な言い方に、見当外れのことをしているんじゃないかしら?と思ってしまう三人だった。
とそこへ……
おばさんの後ろから、乙音がひょっこりと顔を出した。
「おはよう、ございます、お待ち、してた」
乙音は、ちょっと厚手で伸縮性のある綿素材のヨレヨレ襟なしシャツに、下も同じ素材の膝下までのパンツ姿であった。
パジャマだと言ってもおかしくない格好である。
しかも頭はボサボサのままだ。
「乙音ちゃんおはよー。わたし達が来ることが分かってたの?」とユウコが訊いていた。
すると乙音からは
「うん、分かってた、お母さん、来る、言ってた」と返ってきた。
三人は顔を見合わせた。
「来るのが分かってたんですか?」
ユウコは、さっき言っていたおばさんの台詞に対する疑問を口にした。
「分かってましたよ。夢のことで来たんでしょう」
三人はまた顔を見合わせた。
「じゃあ、わたし達があの夢を観たのは、おばさんの仕業だったてことですか?」とカコ。
問い詰めるような口調だった。
「ごめんなさい。でもその理由をきちんと説明してあげるから、ささ、上がってちょうだい」
「上がって、ください、です」
乙音は玄関ドアを大きく開けて、三人を手招きした。
夢の話、説明……という言葉に惹かれ、三人はおばさんの家に入ることにした。
玄関口で、おばさんはカコの傍へ寄り、二人に気付かれないように手を握った。
カコがおばさんの方を向いた。
でもおばさんは、カコの方に振り向かずに、前を向いたままだった。
07
三人はリビングルームに通され、それぞれ昨日と同じ椅子に腰掛けた。
二人掛けにはナオとユウコ。
ナオの右横に、カコは種類の違う椅子に座った。
三人が座ると、奥のキッチンから乙音が現れた。
ゆっくりとした足取りで、テーブルまで恐るおそる運んで来たのは珈琲だった。
「豆、挽いて、淹れた、苦くない、豆、使った、召しあがれ」
乙音はカップを三人の前に並べた。
昨日のティーカップに比べて、今朝のカップは厚手で口が狭くなっている。
厚口なのは、紅茶に比べて低い温度で淹れるために中の珈琲が冷えにくくするためである。
そしてその分の容量を増やすため、ティーカップよりも背が高くなっている。
ナオとユウコが昨日そんな話をしていたと思うが、乙音はさも自分の知識だと言わんばかりに、自慢げに講釈してお茶目に笑っている。
そんな乙音の無邪気さが、場の空気を和ませる。
「まず、そのまま、飲む、駄目なら、砂糖、ミルク、ある」
三人は、いただきます、とそれぞれのカップを手に取った。
芳醇な香りが鼻腔をくすぐる。
三人はうっとりとした表情で珈琲を口に運んだ。
「おいしい、砂糖とミルクなんか全然必要ないよね」
ユウコが、ほぼ断定的に二人に同意を求める。
「ほんとだね、家ではインスタントばっかりだから、やっぱり豆から煎れると違うんだね」とナオ。
「お店の珈琲みたいに美味しいよね」
そう言ってカコは、今一度香りを楽しんだ。
「ありがと」
乙音はボサボサ頭を振って喜んだ。
「どんどん、飲んで、どんどん」と乙音は珈琲を勧めた。
どんどん?……と思いながら、三人は珈琲の味を楽しんでいた。
やがて、頃合いを見計らったかのように
「落ち着いたかしら?」とおばさんが声を掛けた。
三人は、カップを両手で包みながらおばさんに注目した。
「それじゃあ、何からお話しすれば良いかしらねぇ」
おばさんは、三人それぞれを確かめ、自分もまた一口飲んで、テーブルの受け皿にカップを戻した。
「まずはカコさんが観た(ユウコさんの)夢のことから始めようかしら……」と言った。
え?……と三人は目を丸くした。
「わたしの夢からなんですか?」とカコ。
ええ、とおばさん。
「カコさんが夢の話をしていた時、お弁当はカコさんの教室で食べていたでしょう?」
そうでした、と三人。
「ごめんなさいね、そこで乙音が話を聞いてしまったらしいのよ」
乙音ちゃんがわたし達の話を聞いていた?
「乙音ちゃん、近くに居たの?」
ユウコはびっくりしていた。
「近くじゃない、けど、教室、居た、わたし、耳、いい」
それでも、ナオとユウコは首を捻っている。
反対にカコは、なるほど、と納得するものがあった。
乙音は、時々姿が見えなくなってしまうとクラスの間でも話題になったことがある。
何処に行ったのか、まったく見付からないことがあるのだ。
その後どこからともなく現れた乙音に、何処に行ってたの?と訊ねても、トイレに行っていたとか、他のクラスに行っていたとか、兄の音也と話しをしていたとか……、いつものあの口調で返事が返ってくるだけなのである。
*
あの時猫に戻ってたんだ……、とカコは確信した。
乙音と音也は、おばさんよりも遙かに年齢を重ねた〝猫又〟である。
おばさんが若いころ、ある村で悪さをする祟り神がいると言う噂があり、捕まえてみると二匹の猫又だったのだ。
その二匹がムーンとユベールであり、乙音と音也なのである。
カコとジンジがおばさんから聞いた話では、身体に蓄えている妖力エネルギーが少なくなってしまうと、本人にはどうすることも出来ずに、猫の姿に戻ってしまうとのことだった。
妖力で人の姿を維持しているのだ。
幸いにも二匹は、大人の掌ほどの大きさで、学校の中でも見付かることなく隠れるのは造作もないことだった。
それであの時……、近くで話を盗み聞きしてたのね。
カコは、二人に気付かれないように乙音を睨んだ。
おばさんの横に座っている乙音は、素知らぬ顔をしてあらぬ方向を見ていた。
あの時乙音は、ムーンの姿になって自分の机の中に潜り込んで、妖力を蓄えながら三人の話を聞いていたのだろう。
*
「その夢がちょっと気になったもんだから調べさせてもらったのよ」
「調べた……、んですか?」「どうやってですか?」
ナオとユウコが訊ねていた。
「そうだった、ごめんなさい。二人にはおばさんのお仕事を言ってなかったわね」
おばさんはカコを見て、それから正面の二人に顔を向けた。
「おばさんは占い師なの」
すると二人は、占い師……、へぇ~、と感心していた。
「でもおばさんの仕事は占いだけじゃないのよ。ほかにも色々やってるのよ。それを全部話しちゃうと半日じゃ終わらないかもしれないわよ。だから興味があるなら、次の機会ってことでね」とおばさんは、意味ありげな笑みを三人に見せていた。
「それでカコさんが観た夢に、仕事柄ちょっと興味が沸いちゃってね」
「じゃあ、夢占いをしたんですね?」とナオ。
おばさんは珈琲を口に運んだ。
「カコさんが観たユウコさんの夢。あの夢では、ユウコさんは真夜中に雨の中でバスを待っていたのに、やって来たバスに結局乗れなかったのよね?」
はい、と三人。
「それは何故なの? それにユウコさんがバスに乗ろうとしていた理由は何なの? と、その視点から占ってみたのだけれど……何度やっても何も観えてこなかったの」
三人は黙って、おばさんの話を聞いている。
「こう見えてもおばさんは、占い仲間では実力者で通ってるのよ。良く当たるって」
それでね……、とおばさんはもったいぶったように、テーブルに向かって身を乗り出していた。
ナオとユウコも、なになに何なの? と誘われるように身を乗り出していた。
「逆に考えてみたの。つまり、バスに一人で乗っていたカコさんは、何かを伝えようとしてユウコさんをバス停まで呼んだのではないか?って……。そう考えて視点を変えて占ってみたら、あるものが観えてきたわけ」
「あるもの、ですか?」と恐る恐る訊いてきたのはカコだった。
おばさんは沈黙した。
三人は、おばさんが口を開くまで待った。
そして……
「そのあるものが、あなた達に観せた夢なのよ」と語った。
膝の上に乗せていたカコの手が、小さく震えていた。
カコは、震える拳を握り締め、それから絞り出すように言った。
「それはジンジが事故に遭うかもしれない……てことなんですか?」
「おばさんの占いが、良く当たるってことなら……」と震えるユウコ。
「それは絶対なんですか?」
ナオの声も震えてた。
「確率は高いと思うの」とおばさん。
「何とか出来ないんですか?」とユウコ。
「それであなた達を読んだの」
「それでわたし達を呼んだ?」
三人はその意図を計りかねていた。
「これはあくまで未来の話。一度起きてしまった過去を変えることは出来ないけれど、未来はまだ現実に起こっていないことだから……。でしょ?」とおばさん。
おばさんは、三人から視線を外さない。
「それをこれから一緒に考えようと思ってるの」
08
「でも何故、昨日のうちにその話をしてくれなかったんですか?」
カコが訊ねていた。
「昨日、あたたたちを招待したのは、今日のための準備だったの」
おばさんは答えた。
「今日のための準備……ですか?」
ユウコが口を開いた。
「あなた達に理解してもらうには、言葉だけではどうしても伝えにくい部分があったの。だからテレビや映画のように映像で観せるのが一番だと思って夢を観せることにしたわけ。そのための準備だったの」
「映像で観せるなんて、そんなことが出来るんですか? しかもわたし達三人に……。どうやって観せたんですか?」
三人の疑問を、ナオが代表するようなかたちで口を開いた。
おばさんは、カコに目を向けながら
「占いの技法の中に、相手に自分の意思を伝える技があるのよ」と言った。
「まだ分からないですけど、その、わざ……を使っておばさんが占ったジンジの未来を夢としてわたし達に観せた。……ってことですか?」とユウコ。
「そうよ」
「占いって、そんなことも出来るんですか?」とナオ。
まだ半信半疑である。
「それじゃあ試してみるから……」
言いながらおばさんは立ち上がった。
「これからあなた達に、ある〝思念〟を送ります」
「しねん、ですか……?」とユウコ。
「思い念じると書いて思念って言うのよ。話すと長くなるから簡単に説明するけど、思念は言い換えればその人の強い思いってことよ。例えばとても好きな男の子がいるとするじゃない。その彼に会いたいとか、話がしたいって願っていたら街中で偶然に出会ったり、突然彼が話し掛けてきたってことない? それは思念が相手を動かしたってことなのよ」
「そう言えば、小学校のころ……」
そこまで言って、ユウコは手で慌てて口を塞いでいた。
「そうそれ、それも思念なのよ。その強い思いっていうのは相手に必ず伝わるものなんだから」
おばさんはテーブルの横に回ってユウコのところまで移動した。
「それじゃあまず、ユウコさんからやるわね……」
そう言うと、おばさんはユウコの額の前に右の掌をかざした。
「こわがらなくても大丈夫よ。目を瞑って」
ユウコは何が起きるのだろうと、硬い表情のまま目を瞑った。
すると……
「え、ええ、何……」
ユウコは驚いた声を上げ、両手を頬にやっていた。
「じゃあ次は、ナオさんね」
ナオはどんなことが起こるのだろうと、右手で前髪を掻き上げておでこを突き出した。
そしてナオも驚きの声を漏らしていた。
「最後は、カコさん」
カコも同じように前髪を手で掻き上げた。
おばさんの掌が近付いてきたのを額に感じた瞬間、いつものあの屈託の無い彼の笑った顔が頭の中に広がっていた。
それはカコがいつも思い描いている彼の笑顔だった。
ユウコにも、ナオにも、それぞれの〝想い人〟の笑顔が観えたに違いない。
しばらくの間、三人はそれぞれが観た映像に思い耽っていた。
おばさんは何も言わずに、三人を眺めている。
やがて、ようやく口を開いたのはナオだった。
「そうやってわたし達に夢を観せたってわけですね、でも……」
「夢は昨日の夜から今朝にかけて観たってことを言いたんでしょう」とおばさん。
三人が頷く。
「あなた達が昨日おばさんの家に来て、紅茶を口にしたとき、とっても美味しいって言ってくれたわよね」
そうでした、と三人。
「そのときにおばさんは、紅茶の美味しさに気を取られていたあなた達に思念を送ったの」
「なんですかそれ?」とユウコが首を傾げる。
「おばさんと、カコさん、ナオさん、ユウコさんとそれぞれ気持ちが通じ易くなるための道を作る思念よ。そのきっかけとなる道を、まずは造らなければならないから、あなた達を招待したの……」
おばさんは、一息入れるかのようにカップを手に取った。
三人も同じようにカップを手に取り、これまでのおばさんの話を整理するようにゆっくりと口に含んでいた。
「そして最後のきっかけ作りが、いい夢観てねの言葉なの」
「その言葉で、今夜は夢を観るんだ。という暗示をわたし達に掛けたんですね」とカコ。
「その通りよ。おばさんが帰り際にいい夢観てねって言ったのは、今日は夢を観るんだっていう思いをあなたたちの中に植え付ける言葉(思念)だったの。そしてあなた達が眠っている夜中に、おばさんが占ったジンジくんの映像を送ったのよ」
たった今、おばさんの思念で想い人を観ていなければ、とうてい信じられる話ではなかった。
「それじゃあ今日も、その思念で?わたし達に集まるように仕向けたんですか?」とユウコ。
「いいえ違うわ。今日、来る来ないはあなたたち次第。それぞれが、何故あんな夢を観てしまったのだろう?って考えた時、カコさんが観たユウコさんの夢、そしておばさんの言葉のヒントに気付いてくれたのなら……」
三人はそれぞれ、お互いの顔を見合わせた。
「そう、あなた達なら絶対来てくれると思っていたわ。そしておばさんの期待通りに集まってくれたってわけ」
おばさんは、三人のそれぞれの目を覗き込むように話している。
「そして、このまま何もしなければ、ジンジくんは、占いの通りになるかもしれないの……」
淡々と紡ぐおばさんの言葉に、三人は何も言えなかった。
しかし、おばさんの次の台詞は、以外にもあっけらかんとしていた。
「心配しないで、未来は変えられるんだから」
占いの通りになると言われて、震えるほどだったカコが〝変えられる〟という言葉に強く反応していた。
「一度知ってしまった未来を変えるのは相当に難しいけど、けっして不可能じゃないのよ」
その言葉に三人は大きく頷いていた。
③へ続く
06 その先の向こうに… ②
次回③の掲載は、2月20日(金)を予定しています。