ミューシャと空のキャンバス ~魔法の筆と不思議の世界~
【ファンタジー世界で魔法とともに旅をする冒険譚を執筆中です!】
【執筆中。プロローグまで完成。第1章制作途中!】
【登場人物(公開順)】
ミューシャ "ライメルン ブリッツ" コールウェル
エイちゃん
【おまけ要素】
ぜひ、コーエーテクモゲームス・ガストさまの『アトリエ』シリーズのBGMを聞きながらお読みください!!
大陸の南方に小さな町がありました。
王都『ヘルドヴェル』を中心に統治された大陸『ローザ・ガンド』。
その南方に、いつまでも平和な町がありました。
名前を、『コボルドズ・テイスティング』。チーズ作りが盛んな、ごく普通の田舎町です。
そこに住む子供たちは、あまりに平和なこの町で、やることがほぼなく、いつも退屈に過ごしていました。
それは、今年で十七歳になる、ある一人の少女にも、全く例外ではありませんでした。
お絵かきが得意なごく普通の女の子、彼女はいつの日か、この町を早く出て、首都であるヘルドヴェルに冒険することが夢でした。
彼女の名前は、ミューシャ・コールウェル。少しだけ朝が弱い、しかし、どこにでもいそうなごくありふれた少女です。
……と、前口上はこれくらいにしておいて、今日はそんな彼女にとって一大イベントの日でありました。
果たして彼女は、今日も学校に遅れず、ちゃんと登校できるのでしょうか。
この地で古くから信仰されている、イリル神話の神々も、そんな彼女を、そわそわとした表情でうかがっているようです……。
1 起床っ!
「ミューシャ、 いつまで寝てるの! このままじゃ、去年みたいに学校に遅れるわよ!」
下からお母さんの叫ぶ声が聞こえる。
「……うーん……今いいところなんだから……ケーキ……チーズ……ケーキ……いや、チーズ……やっぱりチーズ!」
でも、本当にいいところなんだから! ショートケーキも捨てがたいが、地元のコボルドチーズだよね、やっぱり。
じりじりじりじりじり!! 『スヌーズ機能です、音量を前回のアラームよりも三倍に上げました、ミューシャさま、早急なご起床をおすすめします』
「ひゃっ!?」
そばで、雷のような金属音と、EI――Ethereal Intelligence(エーテリアル・インテリジェンス)――の魔法音がして、私はようやく跳ね起きた。
交感神経が爆速で反応したその体で、私は瞬時にその爆音の根源を断った。ガチャ! 『おはようございます、ミューシャさま、本日は四月一日、火曜日、晴れ、その後も一日を通して晴れでしょう、あなたの検索結果を元に、最適化された情報を提示します……コボルドズ・テイスティングにある、レストラン『Nice to meat you!』の、『コボルドチーズのっけハンバーグ』は、本日は、千八百トパル(税抜き)となります、この商品自体の割引情報はありません、ただし、新生活フェアとして、三月三十一日から四月三十日までは、高校生から二十四歳の方までは、無条件でどの商品も百トパル割引きとなります、ぜひ一人で、もしくはお友達の方と、お食事をお楽しみください、それでは本日も良い一日を!』
「何でよ、今いいところなのに! あたしが少し朝弱いからって、お母さんも、エイも、みんなあたしをいじめてぇ~!」
無意識的に目をこすった。超速で神経を逆撫でられたため、涙が洪水のように溢れ出てくる。
「ふぁ~……まだ眠いっての!」
あたしは、今までにもないくらい、とてつもなく大きな あくびを漏らした。
……でも、本当に何時なんだろう? 冷静になって、エイちゃん付き目覚まし時計を改めて見ると、もう七時四十五分だ。
「ちょっとまずくない!? これ本当に!?」
あたしは、飛ぶようにして自分の部屋を後にした。我ながら、かなりあわあわしていたと思う……。
「お母さん、じゃあ行ってくるね!」
歯磨き、着替え、教科書の準備、なんとか全てを終わらせたあたしは、今度は玄関で革靴と格闘していた。
そんな様子を見かねたのか、お母さんはむしろ心配するような口調になって、あたしの肩に手を置いた。
「ミューシャ、もう絶対に間に合わない。というかもう遅れてるわ。いっそのこと、ゆっくり行きなさい、変に焦って事故にでも巻き込まれたら、本末転倒だわ」
「あはは、それ確か去年も聞いた気がする……」
我ながら、苦笑いをするしかない。中学と合わせて、これで五年連続かもしれない。
「バーナデッド先生も、毎年のことだから許してくださるわ。これはあなたの努力不足ではない、もはやあなたのアイデンティティよ」
皮肉で言っていないところ、助かるのか、悲しみなのか、いずれにせよ、ただの遅刻にしては深すぎる感情だった。
「とりあえず、これ持っときなさい」
「何?」
お母さんは、胸ポケットから黒曜石のように光る薄いプレートを取り出した。
「……え、もしかして、|EIスマロ!?」
自分でも目が星のようにキラキラしているのがわかった。
「やっと買ってくれたのね! 友達なんてほとんど持ってたから、ようやく貧乏性から抜け出せるよ!」
スマロとは、スマートロック(Smart Rock)の略であり、遠くからでも会話ができたり、EI(あたしはエイちゃんと呼んでいる)の機能をどこからでも使えるようにできる、極めて便利な代物である! その実は、魔力を増幅させる珍しい石でできており、それなりの高値がつく。それゆえに持っていない人も一定数はいるが、今は、高齢者の方でも持っている人のほうが多数派、というのが現状だ。
ミューシャと空のキャンバス ~魔法の筆と不思議の世界~
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