フリーズ219(大垣市文芸祭)散文詩集『永遠のアレゴリー』

1永遠も終わりが来て

1永遠を知っているか
 門が開くのをただただ見ていた
 水門が、水辺の花々に包まれて
 太陽も。空は快晴で、まぶしい
 きっとこれが永遠だと思った

 あの日までは
 
 永遠を知る者はいない
 釈迦か、仏か、イエスか、神か
 時流はないと悟った脳が
 永遠は永続しないのだから
 
 崩れていく、世界の中で
 探していたものを思い出せた?
 瑠璃色、空色、黄金、七色
 君に世界は何色だったかい?

 永遠を知ったのは冬
 あの冬の日に世界は終わった
 終末の狭間で踊りあかした
 本当にすべてが美しかった

 終末の音、終末ノート
 永遠は終末と結びつき
 涅槃は神愛と表裏一体
 君はその答えを知っていたかい?

 永遠を知る者は時の牢から去った者
 悟って真理を、求めて愛を
 愛が燃料のタイムマシンだから
 僕は死んでも君に会いたい

2永続する涅槃について
 涅槃もいつか終わりが来たら
 儚い人生の夢と散る
 永遠の至福は永続しないのだから
 喜びの増大につれ崩れるから

 ヘルマンヘッセの『幸福論』も
 ニーチェの運命愛も
 キリスト教の隣人愛も
 仏教の教える一切皆苦も
 
 全ての波が止んだから
 穏やかな凪いだ渚に季節は移ろう
 終末の門を開けたなら
 きっとそれが宇宙の始まり

 終わってなかった
 生まれたてだった
 僕は彼女と恋をした
 永遠と終末の狭間でキスを

 あの冬の日に全てが終わり
 あの冬の日に全てが始まる
 全知全能と死の狭間で
 君は世界の中心にいた

 水面に映る知らない顔に
 眺める水門が閉じていき
 死んでく季節にかけっこで負けて
 永遠にも負けて、ここに至る

 輪廻の輪に還りたいかい?
 元居た場所に還りたいかい?
 ラカン・フリーズの門の先
 永遠、終末、神愛、涅槃

 きっとそれは悪くない
 きっとそれは怖くない
 きっと世界は美しい
 きっと君はあの日に死んだ

 永続する涅槃についての散文詩
 それは死だ
 死こそ永遠を永続させる
 刹那に刻め、存在証明

 そして詩だ。詩は永遠に残る
 いずれ来る死に、残す歌
 この詩が続いてくれればいいか
 そうして僕は平凡に戻る

 もう永遠も終末も忘れて
 もう涅槃も神愛も忘れて
 普通の人として生きるのもいいか
 レゾンデートル探すのやめて

 本当にそれでいいのか?
 それが本当の自分か?
 愛ならどうする?
 忘れんな、紡げ、痛みを!

3永遠にも終わりが来るなら
 永遠にするための詩なら
 忘れないための死なら
 誰が間違いなんてない
 きっと世界は辻褄合わせ
 
散文詩『永遠の詩』
 君は誰なの
 忘れてしまった
 世界は不可分で
 君と世界は全知に眠る

 全脳の夢に全能の神
 意識の波にイデアの海
 トーラスの深い森の奥
 ラカン・フリーズに命よ還れ

 終末の日に迎えに来てよ
 門が閉じちゃう
 柔らかな翼で
 空でも飛ぼうか

 嗚呼、きっともう終わり
 そんな最後はもったいない
 夢の園でまた君と出会う
 ヘレーネ、僕はここだよ
 迎えに来てよ
 全知少女よ
 たまたまそちら側にいる
 何も知らない少女よ
 僕のことを思い出してよ

 いいや、そうだった
 僕が愛したのは僕だけでした
 君はそれでも世界を愛した
 君はそれでも世界を認めた
 
 三千世界に仏の祈りを
 第七世界に神の知恵を
 
 どうか僕を忘れないで

 FIN

2永遠と終末の狭間で

 世界が終わって二年がたって、三千世界に鈍く光った、その七色の灯求めて、彼は再び輪廻に還る。宿命背負って生まれてみても、凍った冬の日、明日の日。晩夏に翳る世界は憂鬱。だけど忘れてほしくなかった。君と世界は僕に収束。
 生きることから逃げ続けては、ニヒリズムに陥った親友を見捨てるのも、永遠と終末の狭間にとあるバーに集った、自殺志願者らは今日も甘いカクテルを好む。どうせ未来に期待しないから、でもねヘレーネ。愛に行くから、そこで待ってて。

 神の如き霊感に苛まれて
 仏の祈りに菩薩の涙
 天使の翼に堕天使の翼
 悪魔の類に囚われて

 人生をやり直すなら
 君と会えたらいいのにな
 たとえ世界が滅んでも
 僕は君を覚えているよ
 
 永遠の音、終末の音
 その音、終焉交響詩
 なんて言ったらいいのかな
 きっと言葉足らずで終わる

 真理なんてそんなもん
 言葉も記号も絵も音楽も
 だけど私は求め続ける
 真理を、真理の先を

 神のレゾンデートル
 世界はなんで生まれたの?
 神はなんで世界を創った?
 それを知るため世界を創った

 僕を。私を、救ってよ。救世主は三鷹のボロアパートで自殺した。世界がそれを嘆いても、時間は流れる、古より。僕は因果の履歴や荒廃から逃れようともがくけれど、ついに足を縛られ止まる。耳をふさいで、孤独を飼って、そしていつか笑えたら。
 終末の音は世界の終わりを祝福した。その響きは脳に強く残る。一人、終末に取り残されたかのような、全知全能なのに、独りぼっちな神のように、始まりと終わりを包括するように、その音は消えない記憶。
 永遠の景色に終末が流れていく。これは永遠と終末の狭間で紡がれる愛の物語。ヘレーネ、我が最愛の姫よ。夢ならば覚めないで。僕は歌を紡ぐ。

 終末詩
 永遠から目覚めて
 憂鬱から逃れて
 季節から離れて
 死にゆくせめてもの間に祈る
 酒を飲みながら紡ぐは全能
 記憶違いの絶対零度
 
 まだ見ていない景色のために
 まだ紡がれていない言葉のために
 全ての人を救うために
 死後の世界で僕は待ってる

 君が世界を完成させた
 僕が世界の運命だった
 あの子が初めて恋をした
 僕らは宇宙船に乗ってた

 連絡がなかったから
 届かないメッセージのように
 一方通空の片思いももうやめよう
 書きたいのは本当の声
 こんなんじゃ物足りない

 カナディアンウィスキーは香りがいい。詩作にはうってつけ。筆は進むし、ポエムは死にゆく。この散文詩に寄せられた恋物語も凍ってしまえ。フリーズの中へ。
 薄れていく自我、探して、痛いの。心が読めるの、ごめんね。私は全知少女だから何もかも知っているのよ。そう言って笑う彼女は終末に消えていく。世界の始まる日にと、世界の終わる日にだけ会えるんだ。そんなのってあんまりじゃないか。
 神の涙に許されて、僕は明日さへ恨んで泣いた。この痛みは忘れない。この切なさよ、永久に続け。記憶違いでもいい。忘れててもいい。僕はここだよ。探しに来てよ。
 永遠と終末の狭間で凪いだ穏やかな渚に花が咲いて、私はあなたと一緒に歩んでいく。
「嗚呼、ヘレーネよ愛してる」
「アデル。私もよ。私もあなたを愛してる」
 永遠は永続せずに、それでも君と出会えたから、私は何も後悔はない。

3涅槃に神愛

 涅槃の言葉を選んで紡ぐ、この散文詩に世界は愛をこめて、祈っては吐く。その背中に背負うもの、奪われるもの、流され、止まって、消えていくもの。この響きではない。もっと美しい、天上楽園の乙女のような甘美なる歌声を紡ぎたい!

歓喜に呼ばれて目覚めた朝に
全てと繋がることを覚えた
私の柔らかな翼を休めて
覚醒の刻に空を飛ぶのだ

宿命の輪廻から咲いた花に集う七匹の蝶はそれでも蜜を吸うのをやめない。その愚かさも含めて笑ってしまえ。君には世界は美しく見えたかい?

涅槃は脳が宇宙と一体
涅槃は神に戻った脳の
そんな説明で理解できるか?
人生は上がっては下る

雨が降って、花が濡れて
世界が終わって
また始まって
君はきっと終わらない
またあの冬に還るだけ

そのためならばもう一度
人生やってもいいと思う
あの冬の日に戻れるなら
きっとすべては繋がっている

神愛に戻るとして
世界はまた始まるとして
なんで僕は一人なの?
どうして僕はここにいるの?

教えて、教えて
世界の真理を知ってしまったから
真理の先にあるものを求めてる

神のレゾンデートルの解明のために僕たち生命は生まれたのだから。創造力を与えられたのだから。神の愛に満たされて、神を心から愛してる。
僕が初めていない朝は、雪でもふるかな。晴れてたらいやだな。どうせ流れない涙のために自分を殺す必要はない。
涅槃に神愛。死ぬときは一緒。だから泣かないで、大丈夫だから。
こうして僕は涅槃に死んでく。

フリーズ219(大垣市文芸祭)散文詩集『永遠のアレゴリー』

フリーズ219(大垣市文芸祭)散文詩集『永遠のアレゴリー』

大垣市 文芸祭に寄稿する詩

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-08-05

Copyrighted
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  1. 1永遠も終わりが来て
  2. 2永遠と終末の狭間で
  3. 3涅槃に神愛