ヒトとして生まれて:第16巻
はじめに
私が勤務していた企業(IHI)の航空宇宙事業本部のOB会組織で
翠風会(すいふうかい)という名の下で「Webによる交流」を重ねて
いる。今回、あらためて翠風会の 「翠」の文字を辞書で引いたところ
「翠」を「かわせみ」と読むことを知り、近郊の彩の森入間公園の下池
にも、時々かわせみが飛来して、多くのカメラマンを魅了している。
そこで私も時々「翠(かわせみ)ダイアリー」として旅日記などを軸
にして、翠風会(すいふうかい)の「Webによる交流」に、投稿して
みようかと考えて構想を練り、綴った文章を投稿してみた。
結果は「Webによる交流」で親睦を図る狙いから筆者の顔が浮かぶ
様に「実名での投稿をお願いします」と云われた、ペンネームでの投稿
を続けていた私は熟慮、私の記述には実在の人物が登場することが多い
ので、実名での投稿となると登場人物の個人情報が特定されてしまうと
いう危惧が考えられ、OB会組織への投稿は断念した。
しかしながら、かなりの文量にて脳内に文章化したイメージが蓄積さ
れてしまっており、自分で運営できるサイト(星空文庫)にて投稿する
ことに決めて、投稿を始めた次第である。
翠(かわせみ)ダイアリー 001
今年(2025年)の初夏は、九州四日間の旅として別府温泉方面に
出掛けてみた。旅先選びは家内の得意とするところなので、今回も膨大
な量のパンフレットが寄せられてくる阪急交通社の旅案内から、家内の
「選択眼」任せで旅に出た。
団塊の世代の夫婦旅が旬を迎えていることから、今回の旅人のサイズ
は43名で昨年比では膨張傾向である。早朝に出発の飛行機旅に懲りた
私たちは今回はお昼ごろの飛行機便で帰りも早目の帰り便の旅を選んだ。
今回の旅程で、一番に、気に入ったホテルは三日目の「杉乃井ホテル」
(別府温泉)で今までに泊まったホテルで五指に入ってくる宿と云える。
ホテルの宿泊棟は、3棟から構成されており、棟と棟を繋ぐエリアには
大きなゲームセンターが配置されていて温泉は屋上にレイアウトされて
いるため、ホテルが丘の上に位置しているという立地条件もあり昼には
温泉に入りながら別府温泉の湯けむりを眺めて、夜には別府市街の夜景
を一望できるという絶景で設計センスが垢抜けている。
「室内の設計も旅人の気持ちを良く把握している」という印象で・・・
「設計センスが優れているな」と、いう点では洗面所と風呂とトイレが
別になっているところまでは誰でも思いつくが洗面所が二人で同時利用
出来るデュアル仕様になっている点は、エクセレント評価だ。
総じて、若者向けゲームセンターに趣を置いている点や、洗面所内の
デュアル思考など新しい感覚でデザインされているところから、三世代
&四世代ファミリーで一緒に宿泊するには最適のホテルと云える印象で
鎌倉ファミリーとの一緒の旅が想像された。
今夏には我が家と鎌倉ファミリーとの北海道旅行が話題になったこと
もあり、昨夏は、下見も兼ねて仙台港から北海道に向けての船旅なども
体験したが、鎌倉の孫が今春の大学受験で鎌倉からなら自宅から通える
ところの慶応に合格、それまでは逗子開成高校で共に受験勉強に励んで
いた仲間と意気投合して、北海道のスキー旅行に出かけて、親と一緒に
出掛ける旅からは卒業、今夏も学生仲間で連れだって北海道旅行に出掛
ける様子なので、毎年の恒例行事であった「鎌倉ファミリとの二世帯旅」
は当面はお預けの様である。
したがって、当面は、鎌倉の孫と一緒に食事がしたければ、鎌倉まで
出かけて、海上に大花火が写る「鎌倉の花火大会」などを狙って鎌倉に
出掛けるなどの選択肢を考えて鎌倉に出掛けるのも一案だ。
鎌倉の祖母は102歳までの長寿を全うしており生前に鎌倉の70年
超の洋館を建て替えることを思い立って、息子に指示(鎌倉ファミリー
の親父さん)もともと建築好きで、大手建築会社の重役で一級建築士と
いうこともあり、洋館を壊して「メーターモジュール方式」の家に建て
替えた。メーターモジュール方式は我々の常識では「1800×900
サイズの畳サイズ」で家の間取りを設計するが 「2000×1000
サイズ」で間取りを設計して行くので、家の階段などもだいぶゆったり
した印象で広々としている。
孫の可愛さ百倍の親父さんにしてみれば、自分の息子(長男)の書斎
よりも、孫の部屋は三倍の広さで二階部分に設計してあるため、我々が
鎌倉を訪問した時には、孫の部屋に泊めてもらうことになる。
(1階には客間も用意されているが孫と一緒が良い)
これからは北海道旅行をはじめ学生仲間同士の土産話を鎌倉に泊めて
もらって聞かせてもらうのも楽しみだ。そうはいっても、先日は「孫の
大学合格のお祝い」として鎌倉ファミリが川越まで出かけて来てくれて
イタリアンとフレンチの融合レストランで合格祝いの食事を共に楽しま
せていただいた。
この様な祝いの席のセッティングは、鎌倉ファミリーの娘の特技とも
云える分野で、今回も、お任せの祝いの席であった。川越のビル内に、
その趣向の凝ったレストランは存在していた。
様式は「イタリアンとフレンチの折衷」といった斬新なレストランで
店の名前は「SENTIAMO」店の入り口にはオーナーシェフの似顔絵が描か
れており、その段階から顧客の興味を惹く趣向になっている。案内され
たのは、個室で5名以上の利用が原則の様である。周囲は暗く、正面の
照明でお互いの顔が際立つように工夫されている。献立に沿って料理が
運ばれ三人の女性スタッフによって料理の提供が進行されて行く。
〇 先ずは、弥生の献立と謳っているだけに、前菜は季節感たっぷりの
新鮮な野菜と、点のように浮かび上がったソース類
〇 風車豚とモルタデッラとキノコの盛り合わせは絶妙な味覚
〇 ここで「たい焼き」には、驚かされた。まさに、泳げたい焼き君の
出で立ちでソースの海の中をたい焼きが泳いでいる。これはシェフの
洒落で、たい焼きの皮を剥ぐと中に正真正銘の鯛を焼いた具材が内在
しており気の利いた駄洒落といったところだ
〇 ブラックアンガス牛は、レアで提供され美味であった。添えられた
パンも香ばしく、パリのレストランを想像させる印象であった
〇 春トリュフはアイスクリームとの相乗りで美味しかった
〇 焼き菓子は五種類、これも洒落が効いていて、お寿司の五品風の皿
に盛りつけてあった、これは、アールグレーの紅茶にピッタリ
最後に、シェフのご尊顔を拝したいという、我々の要望に応える様に
オーナーシェフが挨拶に見えたが、恵比寿様のようなご尊顔にて有難く、
入学祝いのキャンドルを囲んで鎌倉ファミリーと共に記念写真を撮って
いただき、目出度く祝宴を記念に収めて、小江戸川越の街中に繰り出し
大賑わいの市街地を散策した。
イタリアンにしてもフレンチにしても毎日の様に豪華な食卓が続くと
飽きて来るという稀有な体験に恵まれたことがあるが、その様な場面を
想像した時に、イタリアンとフレンチの折衷スタイルなどは、シェフの
遊び心としては良いかもしれない。
私が稀有な体験をしたのは豪華客船に管理工学(IE)の講師として
乗船した時のことであり、毎日の様に、これでもかという勢いで豪華な
フレンチ料理が続き、さすがに飽きたことがある。
(IEとは、インダストリアル・エンジニアリングの略称である)
その様な、連日のフレンチの食事が続く中で、ある日(突然)和食の
日本蕎麦が昼食に振舞われた時には「生産性の船」という、堅苦しさも
ある雰囲気の中で、豪華客船が揺れる程の拍手が湧いた。
生産性の船に講師として乗船する案件については日本IE協会の管理
部長が、当時、IHI航空宇宙事業本部の「TQC推進部」を訪問して、
航空宇宙事業本部の幹部会に諮られ講師としての「収入:108335円」は
当事業本部の雑収入として計上することで承認された。
当時は、生産事業部の統括部門からTQC推進部に異動したばかりの
タイミングで、それまでに携わった瑞穂工場における生産性向上運動の
一環で、航空機用のジェットエンジン製造における最終的な組立作業や
オーバーホール作業における動作分析において 「ビデオIE」という
独自の管理技法導入が評価されて、広く普及させて欲しいという要望が
関東地区のIE協会だけでなく、日本を代表するトヨタ生産方式が席巻
していた中部IE協会においても講演などが要請されていたこともあり
これを全国的に、普及させたいという、日本IE協会の狙いもあっての
「生産性の船への乗船依頼」であった。
(続 く)
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