
掌編集 43
421 生き残る
愛新覚羅胤禛は清王朝の第5代皇帝。
在位期間の元号が「雍正」だったので雍正帝と呼ばれる。
母親の身分が低く皇太子にはなれず、皇子たちの後継者争いでも中心的な存在にはならず。
でも最終的に父、康熙帝の信頼と有力な支持者を得て、後継者争いに勝ち抜いて皇帝になった。
(他が陰謀を巡らせ脱落していったのもある)
生年月日:1678年12月13日
没年月日:1735年10月8日
享年58
在位期間:1722年12月20日~1735年10月7日
子:
乾隆帝
他
日本では江戸時代。8代将軍 徳川吉宗と同じ時代。
康熙帝には成人した皇子が24人いた。その中で後継者争いを行ったのは9人。
( 九王奪嫡 )
なかでも、皇后が生んだ次男・胤礽を大変可愛がり皇太子にしていたが……
いろいろあって、いろいろあって、廃した。
康熙帝はその後、皇太子を決めなかったが、14男の胤禵を気にいっていた。
これに危機感を持ったのが4男胤禛だ。
康熙帝が病気になり、やがて死去。
重臣の隆科多が
「第4皇子胤禛が跡継ぎ」
と発表した。
康熙帝は臨終の間際に14皇子に皇位を継がせると残したのを、第4皇子の息のかかったものが改ざんしたという説もある。
が、能力・年齢から行けば、第4皇子というのが一番妥当……
皇帝になった雍正帝は皇子や重臣が派閥(朋党)を作って争うのを嫌い、徹底的に潰した。
その中で皇子たちが地位を失い幽閉され、重臣たちが処刑されていく。
雍正帝の容赦の無さは康煕帝もあの世で驚いただろう。
母親の身分が低い雍正帝には味方になる重臣はあまりいなかった。そこで、部下を次々に高い役職につけた。ロンコドを皇帝の補佐役にした。
しかし、自分を皇帝にしたロンコドや年羹堯をも粛清していく。
このあたりの執念深さ、冷酷さが雍正帝が人気のない理由かも。頭がいいだけに怒らせると怖い。
様々な場所に密偵を放ち、疑わしいものは処罰。大臣達の権限を縮小し、独裁的な政治を行い、清朝を批判するものは厳しく処分した。
422 生き残る 続き
しかし雍正帝はただの独裁者ではなく、皇帝としての仕事は勤勉に務めた。
大量に送られてくる上奏文は目を通し、自分で返事を書いた。
満洲語の上奏文には満洲語で返事を書き、漢文の上奏文には漢文で返事を書いた。
大量の仕事を自分で行うため、睡眠時間が1日4時間しかとれなかった。
また自ら倹約に務めた。特に重要でない書類には裏紙を使った。
康熙帝の時代には王室の財政は赤字だった。しかし雍正帝は戦争を仕掛けず、内政に力をいれ、赤字を解消して黒字にした。
後の乾隆帝の時代に清王朝は全盛期を迎えた。でも赤字を解消して朝廷の財政を潤し、後の繁栄の基礎を造ったのが雍正帝なのだ。
雍正13年(1735年)死亡。
死因はわからず。
過労死だったとも、ストレスから不摂生な生活をして死を早めたともいわれる。
不老不死を求めて道教に凝った結果。丹薬を服用しすぎて中毒死したともいわれている。
ドラマ『宮廷の諍い女』は主にヒロインと皇后と側室たちのドロドロ物語。
嫉妬、恨みから、雍正帝の子はことごとく流産させられた。麝香や紅花。それで、ほんとに流産するのだろうか? (あくまでドラマの話)
側室は池に落とされたり、陥れられたり、撲殺されたり。
白絹で自害。壁に激突して頭から血を流し自害。手首を切って自害。
ヒロインとの仲を疑われた医者は自分で去勢した。
ヒロインは耐える。逃げれば9族皆殺し。
ヒロインは笑顔の裏に恨み辛みを隠し、皇帝が弱っていくのを待つ。
代行人は別の側室。最後は毒を盛り死に至らせた。(あくまでも、ドラマです)
ヒロインは死ぬ間際に耳元で囁く。
陛下は兄弟さえ亡き者にした方ですよ。私めの残忍さなど足元にも及びません。
教えてあげましょう。あなたに触れられる度、吐き気がしました。
侍衛は下げております。用件なら私めに命じてください。
(Wikipediaを、参考にしました)
【お題】 この世界で生き抜いてやる
423 知らなかった
「耳の後ろにホクロあるんだね」
知らなかったわ。見えないもの。
別れたあの人は……
あ〜あ、お題のおかげで思い出しちゃった。
よしてくれ!
もう、懐かしくもない。
【お題】 ホクロ
424 検索エンジン
某サイトでは、作品のpv数が毎日わかる。
拙作のpv数は少ない。作品は多いが。
しかし、時々信じられないことが起きる。
つい先日のこと、ある作品の『ローズマリーの赤ちゃん』のpv数が800を超えていた。
投稿してずいぶん経つが、いつもはゼロか1か2。他の作品も。ゼロゼロゼロが普通。
なのに、なに? このpv数は?
桁が違う。違うどころではない。
ただ1日だけ。次の日はまたゼロに戻った。
なんか気味が悪い。
運営の、よくある質問欄の答えに、
何かがきっかけで個々のセリフページが検索エンジンに拾われ、特定エピソードのアクセス数が伸びることがあります。
と、ある。
誰かになにかを拾われた?
読んだの? 読んでくれたの?
読まないで、はい、さよなら?
【お題】 不思議なコンタクト
425 思い出
もうすぐ30歳になる。また見合いだ。いやになる。
夏の終わり、久しぶりにジムに行きプールで泳いだ。日曜の3時。子どもと年寄りが多い。そこに目を引く若い女がいた。目を引いたのは泳ぎだ。延々と泳いでいる。広い肩幅。クロールと背泳を交互に。俺は同じコースであとを追った。等間隔でずっと泳いだ。彼女は自分のペースを崩さず4時に上がり更衣室へ行った。
急いでシャワーを浴び着替えた。受付の近くで待つ。帽子とゴーグルで髪型も目もわからない。彼女はなかなか現れなかったが俺より早く帰るはずはない。
しばらくして彼女は来た。あの肩幅。ダメだ。若すぎる。まだ高校生かもしれない。化粧していない光っている肌。染めていない長い黒髪、目が印象的だ。その下の泣きボクロ。スタイルもいい。肩幅だけ広すぎるが。おしゃれとはいえない服。しかしそのほうが引き立つ。
彼女は歩き出す。誘うのは……できない。ただあとをつけた。彼女は近くのラーメン屋に入った。時間は5時前。
俺は少し考え店に入った。まだ客はいない。彼女もいない? 夫婦でやっている店らしかった。彼女はこの店の娘か?
ラーメンを注文する。しばらくして運んできたのは彼女だった。営業用の愛想笑い。働いているのか? この店で?
彼女はサッちゃん。入ってきた常連客がそう呼んだ。幸子か?
繁盛している店だった。幸子目当ての客が多い。近所の若い工員が気安くサッちゃん、と呼ぶ。彼女はきびきび動く。無駄がない。
ビールとチャーハンを追加。会計は暗算で素早い。俺は釣りをもらい彼女の手を見て驚いた。若い女の手ではない。大きくて苦労した手だった。
外に出て涙が出そうになった。小1時間いて得た情報。年は18歳。名前は幸子。秋田か青森の出身。中卒で東京に出てきて家に仕送りしている。水泳だけが楽しみ。今日も泳いできたのか? と聞かれていた。店は9時まで。
9時に店の前で待つ。幸子は俺を見て戸惑い、どんな表情をしようか考えた。笑うか無視するか?
無視して歩き出した。深呼吸して走り出す。まさか走って逃げるとは……それが速い。追いかけ肩をつかむと……不覚。彼女は腕を振り上げ、振り下ろし一瞬で逃げた。護身術か?
決めた。笑わせてやる。泣きボクロ!
【お題】 ホクロ
426 ひとすじ
死ぬまで君に一直線。
結婚したら妻ひとすじ。
結婚前はどうでもね。
でもね、でもね……
豪快な美容師さんの話。
旦那に言ったんだって。
「もう、よそでやって」
そしたら旦那さん。
「え? やらなくていいの?」
と、ホッとしたとか。
【お題】 君に一直線
427 見つかったら?
ひとり暮らしの息子が釣りに行くと、実家に来て料理してくれた。
まず包丁を研ぐところから始まる。包丁は持参する。長い刺身包丁と出刃庖丁。新聞紙にくるんであるだけ。
飲んで食べて自転車で帰る。
包丁を持って。
ある夜、職務質問されたそうだ。
銃刀法違反!
え〜っ、と思ったが無事帰してくれたそうだ。
母が持たせたおかずやケーキの残りや、果物。
いただきものの羊羹。なんでもかんでも持たせたから、悪い男には見えなかったのだろう……
【お題】 持ち物検査
428 残念
自慢のTシャツならたくさんある。
ブティックに勤めていたので、売り上げがないと自分で買った。
高かった。Tシャツ1枚で1日分の給料以上が飛んだ。社割でも。
7掛けって高くない? 今思うと、スタッフはいい客だったのね。
物がいいから長持ちする。大事に手洗いする。それを着れば姿勢も良くする。高いんだもの。
でもね、もう着られないの。
太っちゃったからじゃないの。太ったけどまた痩せたの。頑張って。
だから、その頃のパンツも穿ける。
でもTシャツはだめなの。
首から下はいいのよ。かっこいいのよ。フラフープとダンベル体操もしているから。
脇腹は窪んでるし、胸筋も付いた。タンクトップもカッコよく着れるはずだったんだけど。
年には勝てない。
首が残念。
細すぎて。褒められた長い首が、気持ち悪くて出せないの。
【お題】 自慢のTシャツ
429 ごくろうさま
朝十時
この一杯が
至福だぜ
わかるけど
夜はそのぶん
減らしてね
うるせえな
飲んでさっさと
死んでやる
言ったわね
ポックリ死ねよ
ボケるなよ
早朝バイトで頑張っている旦那様。
老年のバカ夫婦のこれからは、どうなるのでしょうか?
【お題】 ビールを飲む前に一句
430 趣味と仕事
息子は幼児の頃から魚が好きだった。描く絵はいつでも魚。母親にも、
「おさかな描いて」
中学に入るとブラックバス釣り。仲間ができた。父親が送り迎えをした。釣ってきたブラックバスは、タンスの上の大きな水槽に。餌は生きている金魚……見る間に飲み込まれていく。
いつか、バチが当たるからね。
働くようになると海釣りだ。家に釣り竿が届く。ン万円?
給料日はあさってだ。金がない。でも明日、釣りに行くから金貸して……
母親は長男には甘かった。息子は結婚しないつもりだ。釣りを選んだ時に決めた。他は質素だ。服も食事もどうでもいい。
釣りは、青森でも九州でも。年に何度も行けるわけではないが。釣具のことはわからないが、いじっていて楽しいのか? 学生の時も落ち着かない息子が、何時間も座ってルアーを作っていた。そのエネルギーを勉強に向けていたら……
ある時、船に乗るときに足をぶつけた。硬いものにぶつけたらしい。血が流れて……でも言えない。言ったら降ろされる。待ちに待ったのだ。この日を。
タオルで縛り平気な顔を。さすがに意識が遠のいていった……そこで、誰かが大物を釣り上げた。息子はこうしてはいられない……と覚醒した。
親はあとから聞かされた。
しかし、金のない釣りバカの息子にも彼女ができた。親はずっと知らされなかった。金がない息子はディズニーランドにも気の利いた店にも連れて行かない。プレゼントも……彼女がメガネを買ってくれた?
やがて子供ができた。母親は報告された。結婚するならいいが、相手の親御さんは? 早く挨拶に行かねば……
息子は言った。
「もう、釣り行けなくなる」
「ああ、釣り行けなくなる」
皆喜んでくれた。結婚して子供が産まれた。
ある時、九州の人気のある船の船長から誘いがあった。助手にならないか? と。いつも予約がいっぱいのテレビで紹介されたほどの船だ。息子はグラグラした。が、諦めた。さすがに九州は遠い。
それから何年? 次は決めたあとに聞かされた。
千葉のヒラマサ釣りの中乗りに誘われた。もう決めた。嫁さんも、嫁さんの親も賛成してくれている。
家はどうする? 1年は単身赴任。
その後は皆で行ってしまった。まあ、千葉は近い。
今ではお嫁さんは、東京で子育てなんか考えられない、と言う。
釣り船のブログがあるので様子はわかる。毎日のように更新する。時々は芸能人も乗るようだ。釣り番組には、息子の手とタモが。
【お題】 釣り日和
『あれやこれや』を改筆しました。
掌編集 43