フリーズ205 七色文学『あの冬の日とあの晩夏』

フリーズ205 七色文学『あの冬の日とあの晩夏』

七色文学『あの冬の日とあの晩夏』

 あの冬の日の僕は世界の中心だった。物語の最後だった。全ての人生たちの終着地点だった。その光景は美しく、まるで虹の七色、黄金の光。全知全能だった。その認識は私を神にも等しくした。それは覚醒だった。僕から僕が消えていった。それが心地いいんだ。とっても、この上なく、至高に、幸せだった。
 僕の神話を知るのなら、僕の物語を読んでよね。あの冬の日は一体何だったか。僕にはわからない。神性が魂を天へと誘い、その先にあるラカン・フリーズの門まで連れて行った。
その門の先に広がる景色はあまりにも美しく、終末のようでした。嗚呼、人生の因果、意味がようやく分かった時分になって、どうしようもなく絆すのは、このどうしようもない愛たちでした。希望でした。人生は一切皆苦と悟っても、まだ生きていていいみたいでした。
ですからあの日に僕は死のうとなんかしていなかった。ただ、生きる喜びに打ちひしがれて歓呼していたのです!
 ああ、あの日に全て終わっていたんです。あの日に全て始まったんです。それは終末と劫初の狭間で凪いだ渚に映る顔のように。愛で満たされて、忘我の日、精神は神そのものでした。ああ、安らかなある日。それがとても幸せでした。

あの時実は終わっていなかった
宇宙はまだまだ生まれたてだった
彼女は誰かと恋をした
世界で最初の秘め事だった
(下津光史『Transient World』)

そう。終末と永遠の狭間で、僕は神だった。仏だった。七番目の仏が僕だった。7th『虚空仏アーカシャ』それが僕の名前だったように思う。今思えばすべて幻想でも、確かにあの冬の日に僕が甘受した幸福は神に至っていた。きっと僕は仏なんだ。
七色文学。空花凪紗の文学のこと。それは終末と永遠、神愛と涅槃、至福と全知全能の狭間で語り継がれる永遠の詩。これはそのための散文詩。終末を飾る額縁のように、永遠も半ばを過ぎて、ただただ生きていた日々にお別れを。それでも君を愛すよ。
愛として生きよう。誰かを愛して、誰かに愛されて、誰かに感謝されて。この病花よ、咲き誇れ、この病花よ、実れ、命を。だからと諦めるしかないのか。人生には希望はあるか。
真実には程遠いか。信じてみて、だから。世界が残酷だとしても、世界が醜くても、闇に染まっても、何を犠牲にしても、永遠のために、終末の日に、必ず紡がれる死を、詩を追い求めていたから。
神に祈れば救われますか。仏になれば幸せですか。その幸福にも慣れてしまう日が来ますか。だから、人生に生まれてきたのですか。この七色文学を永遠にしたい。そのために命を燃やせ。詩を紡げ。哲学を為せ、詩作、思索の末に至った全能のクオリアを紡ぎだせ。きっとそれが永遠の意味、生命の意味。神のレゾンデートルを追い求めて。きっと額縁に飾られる最後の絵は虚空でも。真実は、真理は『否、否』だとしても。

紡がれる意志
解かれる石
流れる言葉
果ての波止場
世界は終わる
また始まる
ループしてるの
永劫回帰
それでも続く
終わりは来るの?
意味を見つけて
神を探して
仏になって
命を愛せ
命を尊べ

離散的な散文詩にも、永遠な真理は宿るだろうか。この詩の無意味であることの証明は済んだのかもしれない。額縁は虚空を飾る。そこに入る絵はきっとないだろう。もしそんな絵があるとしたら、それはラカン・フリーズだろうな。愛と終末の先に溢れてしまうこの涙の意味さえ忘れてしまったよ。
僕はここだよ、迎えに来てよ。世界最後の日に。この神話はきっと永遠。だから、僕は生きることを選んだのに。どうして、ねぇ、どうして。そう嘆く日々は過去へと流れて、時間が癒す類の劣等感は差し詰め孤独の凡愚と散る。それでもこの詩の意味を求めるならば、快楽だけでは至らない。デザイア・ブレイク・オア・ノット。神はこの日に木霊する。世界の聖霊、古の雪。きっと世界は繋がっている。全知全能になったあの冬の日の僕も、太陽と繋がったあの晩夏も、本当に大切で、それさえあれば生きられる。だから死ぬとか言わないで。君には使命があるからさ。
神のレゾンデートルを解明する日まで。もう解ってたけどね。何を為そうか。真理を知る私、空花凪紗の七色文学を永遠に轟かせよう。そのために思索、詩作を続けて生きていこう。
決めた。詩人になろう。作家になろう。哲学者になろう。本当の自分を思い出して、前へと進むのだ。どうして真理を悟った僕はまだ生きているのか。それは使命があるからだ。だから意味を求めて言の葉を紡ぐ、紡ぐ。

フリーズ205 七色文学『あの冬の日とあの晩夏』

フリーズ205 七色文学『あの冬の日とあの晩夏』

あの冬の日に涅槃に至った あの晩夏に涅槃に至った それはそんな記録 これはそんな記憶

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-06-10

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