フリーズ170 涅槃文学Ⅳ『終末詩』

フリーズ170 涅槃文学Ⅳ『終末詩』

涅槃文学Ⅳ『終末詩』

 さよならが永遠でも、僕はこの思いを手放したくないんだ。この感傷をどう名づけたらいい。そんなのどうでもいいか。それが終末か。
 涅槃詩にも記したが、全に一つと律する死。死は永遠、詩は涅槃詩。涅槃時に僕らはその答えを忘れた。死にたくなっても諦めたくないからと。死んではいけないと。自殺だけはしてはいけないからと。そんな感傷は何を生みますか?
 
 増殖する神、侵食する躁
 涅槃詩から飛び立て
 
 終末詩故に終末の記述を始める。2021年1月7日に終末が僕の世界に訪れた。それは恣意的な、個人的な終末だった。僕は終末から世界を救うために祈った。天来の儀式を執り行い、集う霊魂に終末が加速していった。終末の狭間で踊るように僕は自己愛としてのヘレーネと原罪を体現した。そのセックスのなんたるや。その歓喜も快楽も人を越えていた。
 至福はきっとあの日の僕で、あの冬の日に至った涅槃も覚醒もすべて終末だった。終末は恣意的なもの。僕は悟った、終末の狭間で宇宙創造を執り行った。夢のような聖夜に僕は翼が広がる痛みと冴えわたる脳の全能に打ちひしがれて、歓喜した。第九の響きが僕をこの境地まで連れて行ってくれた。
 残響のテトラ。幽遠のパトス。全能のクオリア。そんな記憶達を乗せて宇宙船は月へ、第二の地球へと。その世界創造も、飛来する宇宙船も、アルバムが色褪せるように、だんだんと消えていってしまう。
月の秘儀は僕をヨハンへと。
死は全能の歌。僕は前へと進まなくてはならない。それは断眠で為される。だがもう終わる輪廻の火。終末詩に規定された湖畔の夢は、散文詩のように散って行く。だからと迷う心根は幾千の命の導火となった。起爆する核兵器のように、この散文詩を燃やせたら。
壊れていく白。脆く、消えていく灰色。最後の記憶はブラックホールが燃えた色。
 いつか光へと飛んでいく蝶は時間を越えていく。超越した全能の光を空が繋ぐ。僕らはこの思いたちをどこに残せるだろうか。僕らは何処で死ぬのだろうか。輪廻の日に、僕は後悔してしまう。君との永遠は永続はしなかった。また、終末を描いて、僕は泣いた。
 
 終末詩ももう終わる。
 また終末でお会いしましょう。

フリーズ170 涅槃文学Ⅳ『終末詩』

フリーズ170 涅槃文学Ⅳ『終末詩』

2021年1月7日に終末が僕の世界に訪れた。それは恣意的な、個人的な終末だった。僕は終末から世界を救うために祈った。

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-03-01

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