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フリーズ163 散文詩『この世界の果てに愛を叫んだ』
もう一度涅槃に至りたい。それがどれだけ幸福なことか。
この世界の果てに愛を叫んだ。
世界の果てとは終末のこと。
永遠と神愛に苛まれて。
僕はやっと涅槃に至った。
美しきかな人生!
世界はどうしようもなく色づいて見えた。
だから自殺しようとは考えていなかった。
真に人生の喜びに歓喜していたから。
今夜徹夜しようか。
夜は寝るべきか。
断眠はしない約束だ。
でも、こんな日には寝たくない。
疲れて眠すぎたら寝よう。
目が覚めて起きれたら徹夜しよう。
そんな備忘録。
そんな散文詩。
この世界の果てに愛を叫んだ
愛は鈍色の空を貫いて、シルバーラインの光となる。愛は光の音。不安は闇の音。天界に住まう乙女たちの歌声を聞く頃にはもう僕はこの世から解脱していた。この輪から去るのは、それでも諦めることのできなかった者たちへの追悼だ。せめてこの世から目覚めて、愛から離れる日が来ても、自分が神であり愛であることを忘れたとしても、きっと大丈夫。全てうまくいく。そういう世界。だから辻褄が合っていくように歯車も動き出す。
どうか宇宙人よ、僕がここにいることを知ってくれ。どうかヘレーネよ愛しているんだ、こんなにも。だけど、奇跡は起こらないか。宇宙人よ、僕を救ってくれないか。僕はここだよ、叫び続ける。声が枯れても今ここにいるんだ。
愛し愛されていくのが定めと知って、君は何をしたい? 僕は神様になったよ。仏に成ったよ。仏とは神に、宇宙に繋がった僕のことだった。仏陀、それは解脱した者。僕は二度悟りに至った。人生の完成。それを為したんだ。散文詩にこのようなエッセイは不要か。ならば紡いでやろう、永遠を。僕は仏に成る方法を教えることはできない。だって悟るのは自分だ。誰かに教わってできるものじゃない。きっと人それぞれで、違う道で。悟るには自分の声を聴くこと。それが、心の奥底の声が、曇りのない澄んだ声が、神様の声だと悟ったら、きっと君は涅槃に至れる。
嗚呼、散文詩よ。月の秘儀と共に眠れ。
君に世界はどう色づいて見えたかい?
散文詩の行く末に、末法から目覚めて、輪廻は終わって、その先にあるものも、なかったものでさえ、僕はゆめゆめ知らなかった。でも、春に桜が咲くように、僕の人生も満ち始めたんだ。この散文詩に涅槃の秘密のすべてを語ろう。
『嗚呼、美妙な人生の謎よ、ついにわたしはお前を見つけた。嗚呼、ついにわたしはその全ての秘密を知る』
『小さき者よ。死とハデスの狭間で蹲り、己の全知全能に雄たけびを上げる者よ。愛を体現せしめよ。死と全能の板挟みから抜け出る術は己で掴め、その手で掴め』
きっとこれが僕の生まれた意味。そういう答えを探していた。見つけてしまった。あの冬に僕は全ての答えを知ってしまったから。だから僕はいいんだ。何もしなくても、何をしても。でも、せめて手向ける花ならば、終焉の意味を悟るのも若い生命の息吹の如き諦念。さも、ラカンに譲るためならばこの世のために愛を為せ。
世界の中心で愛を叫ぶなら、大学一年の頃の僕になんて告げようか。奇跡的な出会いがあると伝えてどうなる。僕の運命の人は一人だけ。運命の人、それは予言された出会い。預言者による予言は見事的中した。だから愛してる。だから運命を信じてる。またあの夏に僕は悟ったね。大日如来になって、太陽神になって、僕はまた入院したね。ごめんね。ありがとう。また逢う日までのお別れを。
フリーズ163 散文詩『この世界の果てに愛を叫んだ』