あれやこれや 201〜206
201 赤ちゃん 2
娘の家に来ている。ひとりの時に陣痛がきたらかわいそうだから、早く言ってやれ! と夫に言われて。
私なんて母はいないし、全部ひとりでやったよ。夫は忙しいから当てにはできなかった。
夜中陣痛が来て、そっと起きてシャワー浴びて支度して、起こすまでぐーぐー寝ていたくせに。
退院の日もタクシーで帰ってきた。
退院した翌朝、味噌汁作れ、と言われたし。
次女の時なんて、赤ちゃんが黄疸で退院1日遅れたから、私はその間に買い物したり片付けしたり。
今も育休なんて一部の話。年末だから忙しい。生まれる前からすったもんだ。
早々と私は休暇を取ってるのに逆子は治るし(良かったけど)子宮口は開かないし、計画出産だから安心していたのに、旦那さんのいない日中に陣痛が来たらタクシー呼んで行かなければならない。
妊婦は助成金が出るみたいだけど、娘は全然調べていない。タクシーで行くことになるとは思っていなかったようだ。
生まれてからが大変かもしれないのに。
案外、拍子抜けするくらい大丈夫だったりして……?
202 赤ちゃん 3
娘の家に来ている。海まで歩いて14分。
土曜の昼前、陣痛も来なさそうなので、4歳の孫(男の子)と海まで散歩に行った。
携帯のナビと孫の道案内で。
九十九里の海。晩秋なのに人がけっこういた。サーフィンをしている。波は数箇所にあるだけでほとんど穏やか。
孫は貝を拾い棒を拾い空想豊か。家を出て1時間たった頃帰路に着いた。
まさか迷うとは思わず、来た道を帰ったつもりが、どうしようもない方向音痴。
それに、孫がこっちこっち、この道見たことある、と言うので出鱈目に歩き、わからなくて近いはずだがまたまた携帯のナビで。
なんだ、すぐ近くじゃない……
ところが案内されたのは違う家の前。近辺にも娘の家はない。空き地を行けば行き止まり。
グルグル周り、余計わからなくなりみっともないけど娘にラインしたが既読にならず。電話しても出やしない。
まさか陣痛が来て倒れているか?
と不安になり旦那さんに電話。こちらは仕事上すぐ出てくれた。
そこの地名はわかりづらいんですよね、近くに何がありますか?
聞かれたけど、ポツリポツリ家と空き地だけ。
さっき自販機でジュースを買った。
う〜ん、どこだんべ?
いいよ、もう少し探してみる。
なにやってんだ? このばーさん。
と思われたかな?
そこに、娘から電話。
ビデオ通話だから、周り写して。
そんなこと、やったことないし。
前の前。
え? 画面ピンク色だよ。
前よ、目の前。
ずうっと前方にグレーの上下のでかい女が。
「あれ、オレのママだ」
なぜか娘の家の番地だと、徒歩8分のさっきの家に連れて行くアプリがあるらしい。
息子や友人がきた時もそうだった、と。
徒歩8分も離れているのに番地が1番しか違わないのだ。
調べたらYahooのアプリは正確だった。
これで、荷物や郵便物ちゃんと来るのかしら? タクシーは大丈夫?
それより、このばーさん、大丈夫か?
203 赤ちゃん 4
娘の家に来て1週間目。
おとといの朝、破水して入院したがそれきり陣痛が強くならない。
ふたり目の出産は早いというが。
お嫁さんの時もそうだった。
お嫁さんの希望では予定日より早く産まれて、夏休み明けの新学期には赤ちゃんを連れて帰れたら……私の思惑では、コロナのために新学期は遅れるかも……
希望通りにも思惑通りにもいかなかった。生まれたのは出産予定日を4日も過ぎた8月の終わり。
新学期、私は孫の世話に行った。小1の子は手がかからなかったが。
さて、いつ生まれるの?
まだなの?
こればかりは、神のみぞ知る。
今日はフーセンを入れるかも、と。お気楽娘からの電話。
こちらはもう1週間以上仕事を休んでいる。逆子で帝王切開の予定だったから早々と休暇を取った。
有給休暇はたくさんあるけど、長く離れると不安だ。
2年前、年金をもらうようになり仕事を減らしたが、夫の退職後の国民健康保険の金額に危機感を感じている。支払いは私の給料より多い。
退職して2年、蓄えは減って行く。健康保険、住民税、交際費は容赦なく出て行く。冷蔵庫も野菜室が凍るし。テレビも温水器もそろそろ……
だから、来年から仕事を増やそうと思っていたのだ。忙しい夜の配膳の時間も働こうか、と。時間と体力はあり余っているし。
雇ってくれるかしら?
こんなばーさんはもう雇えません、とか?
でも、生まれてくる子になにかあれば、上の子の世話をするのは私しかいない。
娘が心臓の手術の時は父に来てもらっていた。酒好きな父は家にいるだけで何もできないけど。
いるだけでいいから、と。
あの頃はスーパーも遅くまではやっていなかった。夫が毎日コンビニで弁当やパンを買ってきた。食費もかなりかかった。金のない時代……
しかし、赤ちゃん、頑張るなあ。
204 赤ちゃん 5
娘の出産で海辺の町に来ている。町だけど田舎だ。田んぼと空き地とポツリポツリと家。
免許のない私は保育所まで歩きだ。大人の足で徒歩20分強。4歳の孫は30分かかる。
退院まで休ませて実家に連れて来ようかと思ったが、お遊戯会が近いので往復歩かせて通っている。
昨日の帰り道。
歌を歌いながらのんびり歩いていたら突然。
「⚪︎⚪︎⚪︎がしたくなった!」
「えー?」
「早く行こう」
速足で歩く。いつもはモタモタ歩く孫が、
「おばあちゃん、オレ、先行く」
と、走り出した。
車は少ないが危ない。必死で追いかけたが、追いつかない。
「先に行っても鍵開けなきゃ入れないよ」
孫は一目散。こんな真剣な孫は見たことがない。
角を曲がって3軒目だが空き地も含む。
かなりの距離を孫はダッシュ。ばーちゃんは追いつけない。
おまけに鍵穴は錆びているのかすんなり開かないのだ。
開けると孫は一気に駆け込み、間一髪。
ばーちゃんはくたくただった。
◇
父が子どもの頃、祖母と畑仕事をしていたときの話。
祖母が急に走り出したそうだ。
一目散に。
父は上から2番目の子どもだった。7人兄妹だ。
父も追いつけないくらいの猛ダッシュ。
家に着くと何人目かの妹が生まれたそうだ。
205 赤ちゃん 6
破水して入院した翌日、朝から1時間ごとに陣痛を誘発する薬を飲んだ。
夜中10分間隔になったが、それ以上進まず。
3日目は羊水が少なく、食塩水を入れる管を入れられた(?)
「赤ちゃんが元気なくなってきたら帝王切開だって……」
などと心配させて、夕方、上の子のお迎えで保育園近くまで行ったところで、
「戦闘終了」
のメールが来た。
「詳しい事まだ聞けてないけど、とりあえず赤ちゃんの体調は問題ないみたいだよ!」
保育園で孫に話すと、
「やったあ、オレの兄弟!」
とジャンプして喜んだ。
詳しいことはわからない。
産声が上がると、小児科の先生がすぐに入ってきて診てくれたそうだ。
呼吸は問題ない。
いちばん気になるのは胆のうのことなのに。
血管と心臓は手術で良くなるらしいが、胆のう閉鎖とかは大変らしい。
翌日、
「いま小児科の先生と話して、胆のうはしっかりあって問題ないって。心臓と血管の方はまた別の科が診てくれるって」
そしてまた1日が過ぎた。今日の報告はなし。先生忙しいのか?
赤ちゃんの症状がたいしたことないからなのか?
心臓の穴は心雑音でわかるはず……
明日は上の子のお遊戯会。ずっと鼻水と少し咳をしていて心配だった。薬もなくなった。
保育園では、咳をしている園児が多い。先生も咳をしていた。
お遊戯会が終わるまで熱を出しませんよう……
そのあとは、いよいよ赤ちゃんとご対面。
子どもは面会できないので私だけ。
大学病院の駐車場から、産科病棟までがややこしい。相変わらず方向音痴だから気をつけねば。
206 赤ちゃん 7
連続で読んでいただきありがとうございます。
眠れぬ夜に書き始め投稿してしまいましたが、無事退院して来ました。
当面は問題ないだろうとのこと。
心雑音と血管輪はあるので、生後1カ月で詳しい検査をするのだそう。胆のうはちゃんとありました。とりあえずひと安心。
心臓の穴は自然にふさがるか、いずれ手術でも今は開胸しないでできるみたいだし。
血管輪は2、3歳くらいで飲みこみが悪いとなったら……
どうするの? 手術になるのだろうか?
循環器の先生からの話は退院の当日娘にだけ。
娘はわかったのかしら?
この日も仕事のパパは楽天的。
さて、家に帰れば、離れている間あんなに心配し、涙が出るほど会いたかった上の子には、夕方には怒っていた。
4歳児の孫は弟ができて嬉しいやら、いつも通りにバタバタ動けば怒られるやら……
もう、ボクの時代は終わってしまったの?
ばーちゃんとふたりでいるときは聞きわけがいいし、よく歩くけど、皆でいる時は憎らしくなる。
よくわからないけどZ世代より後の世代に生まれ、YouTube、ゲームは当たり前。
そんなにおもしろいのか?
一生やってろ!
と、ばーちゃんは思ってしまう。
当初帝王切開だと言われ、早々に休暇をとってしまったので、来週後半には仕事に復帰したい。
元の生活に戻りたい。
木造の一軒家は寒い。寒い。
離れると我が家の良さがわかります。
あれやこれや 201〜206