セカンドラブ
セカンドラブ
「セカンドラブ」
出逢い
芥川拓哉36歳はパチンコ屋の店員をやっている。仕事帰りに毎日セブンイレブンに立ち寄り雑誌を読みふけるのが時間潰し。目的はもうひとつあった。遅番の時は23時過ぎに立ち寄る。この時にレジをやってる彼女が目的だ。年齢は二十歳位。目がクリッとしてて可愛い感じの彼女。挨拶も元気がいい。熊本市の郊外にある。パチンコ屋から五分の場所にセブンイレブンはある。立ち寄るようになって3ヶ月。もう、感情を抑えるのが限界にきた。レジへ行くと。
芥川「拓哉宜しく」
レジに立ってる彼女はいきなりの言葉にびっくりしたが、顔は知っているし、パチンコ屋の店員だ。
「私。真美。21歳。血液型はB型で天秤座」
芥川「俺、O型の射手座。36歳独身。明日、休みなんだ、映画行かない」
勢いに乗ってしまった真美も。ハイと返事した。
芥川は、少し気分が舞い上がっていた。待ち合わせ場所も時間も教えずに店を出て車に乗った。愛車は、トヨタランドクルーザープラド。新車で買った。しめて300万ちょっと。次の瞬間。大きな音が店内に響き渡った。
コンクリートを転がすような音だ。芥川の乗った車は店の横の柱にぶつかっていた。
真美「大丈夫」
真美はドアを開けると。
真美「ハイ、ハンカチ」
これが。2人の出逢いであった。
令和元年8月。待ち合わせ場所 マクドナルド
真美「松本真美。熊本にある看護福祉大学三年」
拓哉「ゴジラパチンコ店 店員やって3年目。大江に住んでる」
2人は熊本市の新市街アーケードのマクドナルド
拓哉「昼マックでフィレオフィッシュ」
真美「今日は舞い上がってない」
拓哉「太宰府行こうか。ドライブ」
真美「いつも行ってるの」
拓哉「むしゃくしゃした時とか」
真美「なんで。太宰府」
拓哉「なんとなく」
真美「ずっと、パチンコ屋で働くの」
拓哉「大型トラックの運転手やる」
真美の提案で行き先は、長崎の西海橋。真美は、高速よりも国道を選んだのには理由があった。長い時間を過ごせるから。国道3号線を久留米へそして拓哉は助手席に乗ってる真美の手を握った。
拓哉「トラック野郎のラーメン屋があるから、行こう。麺はおかわり自由だし。スイカもある。ラーメン一杯400円」
真美「さすが、トラック野郎」
拓哉「なんで、西海橋」
真美「彼と別れた日に行った所」
拓哉はいけないことを聞いてしまった気がして黙った。
国道34号線を走行してると左手に佐賀競馬場が視界に入った。なんとも妙な気分になる。ハンドルを左に切るのはやめた。
真美「帰りは高速で。あの時と一緒」
拓哉はあの時の言葉に敏感に反応した。その意味を聞いてみた。
真美「彼と宝くじ買いにきたの」
彼という言葉に少しガックリきた。思い切って聞いてみた。
拓哉「なんで別れたの」
真美は黙り込んだ。西海橋に着くと。真美は涙の跡で真っ赤になってる。拓哉は少しやばいかなと思ったが、声をかけた。
拓哉「どうしたの」
真美「西海橋の思い出。橋の上を歩いてたの。もしも、私がシンデレラで靴をなくしたら、見つけに行くと質問したの、そしたら、絶対行くって。だから、私」
拓哉は、真美は何をその彼にしたのか理解に苦しんだ。
真美「片方の靴を海に投げたの」
拓哉はちょっと、この女性は危ない性格かと不安になり、次の言葉を聞いた。
真美「あっと言って、何も、アクション起こさなくて。少しガッカリして、これで終わりと思った」拓哉は、無言で、次の言葉を失った。
8月もやがて終わる。拓哉は気になる事がある。あの性格だ。誕生日に何かねだるかもしれない。拓哉は西海橋へのドライブ以降。彼女への連絡を絶った。熊本市花畑町。毎日会館ビル。5階にある。人材派遣会社の面接に拓哉は来ている。ドアを入るとムッとした熱気だ。いくら8月も終わりと言うのに、エアコンが入ってない。面接を待っている若者の手にはタオル。皆んな汗だくだく。スーツを、着てる奴もいる。拓哉はアルバイトにスーツ。今はこんな時代なのか。面接に来たのは、藤崎宮秋の例大祭の神輿担ぎのアルバイト。1000年以上の歴史を誇る藤崎八旛宮例大祭。神幸行列には70団体程、2万人近くが奉納・奉賛する熊本県で最大級の祭りだ。70余の奉納団体が各々揃いの衣装に身を包み、太鼓やラッパなどと共に「ドーカイ、ドーカイ!」と独特な掛け声をかけて踊りながら飾りを付けた馬を引いて町を練り歩く。去年。友達に誘われて小遣い稼ぎにと神輿を担いで今年もやりたくなった。本音は、この日が彼女の誕生日である。しかし、拓哉は知り合って2週間。使い捨ての彼女としか思ってなかった。が、新車でトヨタランドクルーザーを現金で買い。財布の中が、寂しい。もしかしたら、彼女を逃すのももったいない話だ。まだ、ドライブしただけの関係だ。日給一万二千円に、弁当と飲み放題。割りのいい単発の日払い労働だ。アルバイトの前日。拓哉は真美に電話した。
拓哉「明日は朝の4時から藤崎宮例大祭で神輿を担ぐから、誕生日にこれないけども、翌日に、寿司屋に連れて行くよ」
拓哉はアルバイトで神輿を担ぐとは言わないでいた。
拓哉は下通り街にある。笑う門と言う寿司屋に来ている。待ち合わせの時間になるが真美はやって来ない。拓哉は苛立ちが激しくなる。真美の携帯に電話する。真美の留守電から聞こえてきたメッセージは。
「お寿司、用意してくれたのは有難うございます。拓哉さんとは縁がなかったですね。さようなら」
拓哉は誕生日という、女性にとっては1番だと言う事がわかっていなかった。駐車場に戻ると、愛車プラドのドアに蹴りを入れる。打ち所が悪くて足の爪が割れる位の痛みを感じたのであった。考えてみれば、西海橋での真美の元カレと別れた原因からして、真美の性格を理解してなかった自分に腹が立った。帰りにセブンイレブンに立ち寄るが、店員に聞くと突然辞めたらしい。真美は福岡市に来ている。プロ野球。ソフトバンクホークスの試合だ。真美の頭の中には拓哉の存在はひとかけらも存在しない。通りすがりの男だった。真美は、ドラマの中の主人公に憧れている。
拓哉は親友の克浩とジョイフルで待ち合わせをしている。克浩は彼女を連れてきた。初めて見る顔だ。いきなり、克浩はびっくりする言葉を放つ。
克浩「奥さん。半年前に市役所で籍を入れた」
克浩とは昨日は、カラオケ行ったし、この半年間何度も酒を飲みに付き合ったが。結婚したとは聞いていない。問いただすと、知ってると思ったと。当然。式も挙げていないし、写真を撮っただけらしい。新婚旅行もなし。別に、指輪交換もしていないらしい。そして、またもやびっくりした。大卒だ。克浩は中卒でアルバイトで夜勤をやっている。奥さんもパートらしい。妙なカップルに度肝を抜いた。知り合ったのは、結婚相談所らしい。名前は由美。33歳。二週間が経ち。克浩から電話が鳴る。
克浩「親父が他界した。お通夜に来てくれ」
克浩の妹は3年前に癌で他界していた。その娘の、美香18歳。妹は、18歳で結婚している。拓也は、妹は可愛くて密かに恋心を抱いていたが、呟くことはなかった。その娘は似ていて、名前は、美久。拓哉の身体がビビッときた。
拓哉「おおきゅうなったね。覚えている」
拓也が克浩の家に遊びに行った時はまだ。小さかった。拓哉は親友の妹に何故。交際を申し込まなかったのだろうか。ひとり苦笑いをしたのであった。通夜から始まりお葬式と克浩は身内でもないのに、一週間も付き合わされた。美久は派遣社員で工場に勤めてる。独身だ。しかしまだ18歳だ。
今年も終わろうとしている。中国ではコロナウイルスが、不気味な様子だ。3年になる真美は、大学を中退しようと考えていた。福祉系に進むよりも、まだ、自分の可能性を信じたい。皆んなには内緒でNHKののど自慢に応募した。拓哉は克浩と奥さんとカラオケに来ている。克浩は歌が上手い。若い頃はジャニーズのオーディションを、受けたが、東京での最終オーディションに旅費がなく辞退した。友達の結婚式では必ずワンステージを披露する。奥さんの由美は。Kinkiのファンで。どうやら。克浩のカラオケに惚れたらしい。レパートリーは全てKinkiだ。
2020年を迎えて、克浩のお袋さんが倒れた。克浩は介護で働けなる。しかし、奥さんは、実家にいるらしい。ふたりは結婚して一年。ずっと別居をしている。田舎は虫がいるので来ないそうである。介護は全部克浩に押し付けた。二ヶ月が過ぎる。
克浩は拓哉を呼び出した。相談があるらしい。
克浩「奥さんは働かない。俺も、働けない。それに奥さんの様子が変だ」
拓哉は奥さんの性格などを聞くと。友達もいないらしく、仕事もあまり働いた経験がなさそうだ。拓哉は問い詰めるとびっくりした。克浩は奥さんの事を何も知らないらしい。拓哉は今時の女性かなと納得した。克浩は養子だ。何で。養子かも不思議だ?それに。この、夫婦の生活費は。母親の年金。奥さんも両親の世話になってる。おかしな関係だ。拓哉は。女性は怖いなとつくづく思う。何のために、結婚したのか、結婚という。その社会的な地位が欲しかったのだろう。奥さんは。真美はかなりの歌唱力がある。声の質は、西野カナといきものがたりをミックスした。大原櫻子似の質だ。親戚の叔父さんが、カラオケホールを経営している。カラオケホールとは、カラオケBOXとはちょっと違う。大半は高齢者が利用しているが。昼前にオープンして夕方まで営業している。集まった人達が順番で。お茶を飲みながら歌う。結構、喉には自信がある人が多い。それに。新曲を、披露する人も多い。叔父さんにお願いして。ワンマンステージを30分間、皆んなに披露する。のど自慢の選曲は、トリセツだ。ホールは大半は演歌の世界。拓哉もNHKのど自慢を企んでいる。3度目の予選出場だ。一度目は、3代目のラブソング。甘い。声の質は、今市隆二並みだが演歌も裏声で出せる。なんたって。カラオケでは、ビブラートを混ぜた、声が出る。最近のポップスにはビブラートはあまり影響はないが、演歌には必要なテクニック。二度目ののど自慢は、山内惠介のスポットライトを歌った。3度目は。AKB48の失恋ありがとう。
再会
土曜日。朝7時。のど自慢予選の日。開始は、11時だ。250組が歌う。真美の苗字は荻野。曲目のあいうえお順だから。14時辺りに出番だ。受付に行くと、バッチを記念にもらう。それに。大画面のテレビには。歌ってる姿が映し出される。真美は前列席に座る。のど自慢は観客の時から。予選の選考に入っている。とにかく。司会者は明るく、ポジティプにお願いしますと。くどいくらいに説明する。少し緊張してきた。真美はチャンピオンを狙っている。自信はある。トリセツを、歌うのはあまりいない。全応募数。1000組の中の250組に選ばれた。勝負は生演奏で、1分半。真美は。座席を離れて、ロビーで始まるまで待つ事にする。心臓もドキドキしてきた。周りを見ると、看板とかもって応援する人達。がウロウロしている。
真美「嘘」
合格して、番組当日の日曜日に応援はするものだと思っていた。失敗した。考えもつかなかった。気を取り直して。真美は歌唱力で勝負するのだ。チャンピオンの先には、プロと言う言葉が脳裏に浮かんでくる。最初にステージで歌うのは、曲目があのつく人から。
真美はひとりでやって来た。壇上に10人が登り。とにかく、歌っている人に向けて声援を送る。
芥川「100番芥川拓哉」それは、ゴジラパチンコ屋の店員。スカートを履いて、AKB48失恋ありがとうを歌い出した。意外にもダンスは上手い。拓哉はステージに上がると。お客の顔はハッキリとは見えない。歌い終わると。真美は声をかけた。拓哉は振り向く。そこへひとりの女性が拓哉へ近寄る。
美久「お疲れ」
真美と美久が、かちあった。
拓哉「真美さん。こちら美久さん。美久さんも予選に出場する。美久さんは。亡くなったお母さんのために、美空ひばりの川の流れに。さっき歌った」
3人は一緒に前列席で応援する事にする。
美久は真美に。拓哉との関係を話した。幼なじみだ。応援にやってきたのだ。そして。真美と拓哉に付き合ってるのと質問した。拓哉は。うなづいた。真美は何にも言わなかった。出逢った時から、拓也のペースにハマっている自分に苦笑いをする。
ここまで読んでくれてありがとうございました。
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