掌編集 32

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311 連れ合い

 小中学校の頃、片親の子はクラスでひとりかふたりだった。二十歳くらいのときにソ連の離婚率を聞き驚いた。3人にひとり。
 今や、日本でも35パーセント。上の階のご夫婦はふた組別れた。隣のご夫婦もふた組別れた。夫の兄弟は5人のうちふたりが別れている。離婚率は40パーセントだ。夫の親は亡くなったあとだった。生きているうちだったら、さぞや嘆いたことだろう。
 祖父母の代では、子供ができないと離婚したり、されたりした。別のところに嫁いだら何人も産んだ、とか。
 豪快な美容師さんの旦那さんは離婚歴2回。カラッと話す。
「養育費やっと払い終わったのよ。1番目も2番目も」
 我が娘の旦那も離婚歴がある。
 打ち明けられた時はショックだった。
「この人じゃなきゃダメなの?」
 口にはしなかったが。
 夫は拍子抜けするくらい気にしなかった。そんなのザラにいる……夫の会社にもザラにいる……子供5人いて離婚した男もいる。

 私には子供が3人、確率としてひとりは離婚するか? それも仕方ない、とこの頃は思うようになった。我慢に我慢に我慢を重ねれば、いずれは情がわく。
 別れたら、この人どうなるの? 可哀想で別れられない……そうなるまで我慢しろとは言えない。ただ、実家には戻って来ないで。まあ、夫のいる間は戻らないだろう。
 産後すぐに、実家から自分の家にタクシー呼んで帰ったくらいだから。多分、旦那がどんなにいやになっても、おとうさんよりはまし……そう思ってくれたら、夫の価値もあるというもの。

 今の職場に働き始め、普通に話していたら、
「旦那さんとうまくやる秘訣はなんですか?」
と聞かれた。
 離婚した職員さんが多かった。
 帰る実家があったら、子供を養える稼ぎがあれば、別れていたわよ……そういう話はよく聞いた。
 娘には言う。結婚したら片目をつぶれ!
「両目つぶってるよ」と言われるが。
 娘に帰る家はない。旦那が嫌でも父親よりはマシ……

 いろいろあった。今でもいやなのは夜中のテレビ。寝る部屋は別だが、狭いマンション。音が気になる。頭にきて消せばすぐに付ける。殺したくなる。フライパンでぶん殴りたくなる。
 これは、検索したら同じような方が大勢いた。
『もう、無理。別居したい』
 先日は夜中にネットで耳栓を頼んだ。でも付けたら耳が痒くなり使えない。 


【お題】 別れのトリガー


『あれやこれや』を改筆しました。

312 家族

 7歳のアキがおにいちゃんになった。
 数年前も喜んだ。アキは期待し兄になる覚悟もできていたのに、赤ちゃんはママのおなかの中で亡くなっていた。そのあとは子宮外妊娠。

 ママはアキが1歳になる前に保育園に入れ働きに出た。
 男の子はよく熱を出した。保育園から祖母のうちに電話がかかってきた。祖母もちょうど仕事をしていない時期。自転車で25分の保育園まで迎えに行った。
 何度も行った。連れて帰ると熱は下がる。家の前が公園で助かった。祖母には楽しい3年間だった。
 祖母が笑うとアキも真似して笑った。大袈裟に欠伸をするとやはり真似た。消防自動車が好きだから、近くの消防署まで歩いて見に行った。帰りにコンビニでお菓子を選んだ。長い時間かけてひとつだけ。
 アキは覚えていない。公園の前の家のことも保育園のことも。

 アキが小学1年の夏休みの終わり、祖母は海辺の町に来ていた。息子の家だ。
 息子は釣船の助手に転職していた。
 ママは2人目を出産するので東京の実家に帰っていた。アキが2学期が始まるので、祖母は世話と留守番を頼まれた。
 
 産まれたての赤ちゃんの写真が送られてきて安心していたが、そのあと息子とのラインに既読がつかなかった。
 心配した。
 コロナ禍で立ち会いも面会もできなかった。産んだあとには1500ccの大量出血したという。

 夜、ママから電話がきた。息子と話したあとアキに変わった。孫は、赤ちゃん赤い? とか聞いていた。

 ママは胎盤が剥がれず大量出血した。連絡のなかった5時間は大変だったのだろう。出産は今でも命懸けなのだ。

 アキのことが気がかりだろう。孫もふざけているが不安で寂しいと思う。ママにはゆっくり休んでほしい。こちらのことは心配しないで。体力だけはあるからね。早く快復して会えますように。

 もうすぐ妹のフユがやってくる。祖母は帰る。もう以前の家のように、簡単には会いにこられない。


【お題】 秋と冬の間に

313 初恋

燃える秋

人生の秋に

恋をした


【お題】 秋を詠む


(ちょっと好きな歌詞をくっつけました)

314 何歳でした?

 偉人の言葉、名言はたくさんあるけど……

 先日、そんな昔の偉い方よりもすごい方に会いました。
 
 またまた、へたっぴなゴルフの話なんですが……
 へたっぴなので、夫とふたりでしか行かないの。
 でも誘われて、しかたなく……
 夫の元会社の方たち7人でやったのです。
 私は78歳の御婦人と、なんとなんと87歳の男性。

 私は免許を持っていないのでカートを運転できない。
 それよりなにより、飛ばないのでカートに乗れない。
 クラブを数本持ち、歩く。歩く。以前は走っていたのだが、歩けるようになったのだ。
 
 ドライバーの後はカートにも乗れる。2回くらいはいちばん飛んだ。なんたって、ゴルフ歴数十年の方とはいえ、お年がお年なので、男性もシルバーティーからだ。

 その殿方は、お孫さんが8人、ひ孫ちゃんがふたりいらっしゃる。
 去年脳に水が溜まり手術なさった。体重が36キロまで落ち、46キロまで回復して、自分で運転していらした。(ちょっと心配だけど)
 優しくて、偉そうなことは言わず、腰が低くて、ずっとカートを運転して、私のボールも探してくれた。

 昼食のトマトパスタを3分の1は残していた。1度に食べられないのかな?

 でも、87だよ。87歳。
 おったまげー!

 私も75歳までゴルフができたら、なんて思ってたけど、考えを改めた。
 88歳まで頑張る。
 88歳といえば、施設で介護されてますよ。
  
 よし、頑張ろう。
 さあ、がんばろう!


【お題】 昔、偉い人が言ってた
 

掌編集 32

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  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-11-15

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  1. 311 連れ合い
  2. 312 家族
  3. 313 初恋
  4. 314 何歳でした?