掌編集 31

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301 ちょっといろいろ

 退職して2年。
 のんびりするつもりが退屈地獄で、すぐに早朝のバイトを見つけてきた。
 真面目だから4時間の品出しの仕事にも一生懸命。男は少ないから力仕事を任される。女性が多く、女子大生もいる、とウキウキ。

 そのあとは、テレビを見てほぼ外出しない。
 たまにゴルフの練習。もっとたまに妻とウォーキング。
 以前は食料の買い出しに共に行ってたが、この人と一緒に行くと金がすぐなくなるのでやめた。
 私はひとりウォーキングの後、安いスーパーに行く。

 この人は稼いだ金をほぼ使う。現役時代もそうだった。常に金がない。
 この人は、妻以外の身内や友人にはよくしてやる。
 息子にもこっそり小遣いをやる。逆だろうに。

 先日、義妹が事故を起こし、もうひとりの義妹と見舞いに行った。ふたりに会うのは10年ぶり。息子の結婚式以来だ。
 ふたりとも離婚している。60歳を過ぎても働いている。早朝、深夜いろいろやってきた。強いな、と思う。

 帰る実家もないし、自活できないし……なんて、我慢し続けた私。
 覚悟がなかっただけ?

 あら、お題からそれてしまった。

 彼の日常、仕事の日は朝(?)3時半に起きる。なにも食べず(食べないほうが調子が良いらしい)4時半に出て行く。私は寝ている。
 9時半頃帰宅。働き始めた頃はビールをおいしそうに飲んでいたが、考えたのかやめた。
 そのあとは、のんびり。酒が飲める時間をひたすら待ち焦がれる。

 休肝日はたま〜に。現役時代は週2日は頑張っていたのに。
 長生きはしなくていいらしい。好きなものを好きなだけ食べて飲んで……
 
 そうだね。施設で長生きのお年寄りを見ているからね。そのほうがいいかも。
 
 夫婦が別れないのは救急車を呼ぶ時のため、なんて何で読んだか、聞いたか?

 あとは、遺族年金を残してくれたら……
 
 ああ、お題から逸脱。


【お題】 彼の日常

302 石に刻め

 かけた情けは石に刻み、
 受けた恩は水に流している私。

 いずれはすべてを忘れるのだろうか?



【お題】 忘れないでいてよ

303 秋雨前線とは?

 秋雨前線。
 よく耳にするけど、はっきりはわからなくて、調べてみたら難しくて……
 

 秋雨前線の雨はしとしとと長時間続くことが多いけど、時には突然降り出すこともある。
 だから、折りたたみ傘をバッグに入れておけば、というサイトだった。

 今日は娘の検査でまたまた大学病院に付き添うので地方の娘の家に来ている。
 昨日は娘の旦那さんの仕事帰りに、ダンプカーの助手席に乗り1時間半。初めての経験。

 前回の初診は1日ががりだった。胎児エコーの悪い結果に沈んで、帰りは雨。
 行きは高速、帰りは下道。娘が運転したことのない道路。街灯はまばらで狭くて怖かった。
 2度、曲がるべきところを間違え、家にたどり着くのだろうかと思った。

 今日は早く終わるといいな。
 生まれてみなきゃわからないから、と明るい娘夫婦。
 昨夜はお兄ちゃんになる4歳の子のために、ごはんとカレーでかわいいかぼちゃの形を作っていた。

 早朝に、パパはダンプカーで仕事に行く。


【お題】 秋雨前線

304 底なし沼の話

 沼る、とか意味わからな〜い。

 忙しい1日で調べて投稿する気力も失せた。

 沼、といえば、あれだね。

 恐ろしい沼女。

 先日、6歳の孫 (女の子)にYouTubeを魅せた。娘が幼かった頃、NHKでやっていた影絵の物語『パンを踏んだ娘』

 前編観ただけで怖がって、後半は観なかった。
 いい話なのに。



【お題】 まんまと沼ってしまった


『パンを踏んだ娘』は、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの創作童話である。1860年に出版された。
 ある村に、インゲルと言う美しい少女が住んでいた。インゲルは裕福な家庭へ奉公に出されたが、それは元から自分の美貌を鼻に掛けるところが有ったインゲルの高慢な性格に拍車をかけることとなった。
 ある日、インゲルは里帰りをすることになり奉公先の夫人からお土産にパンを持たせられる。その帰り道、インゲルは雨上がりに出来たぬかるみの前で立ち止まる。そして、自分の新しい靴を汚したくないと思いお土産のパンをぬかるみに放り投げ、パンの上に飛び乗った。ところが、その途端にパンはぬかるみの底へインゲルを乗せたまま沈み、二度と浮かび上がることは無かった。
 インゲルが慢心のために底無し沼へ沈んだ話は人々の間で語り草となり、その様子は地獄に落ちたインゲルの耳にも伝わって来た。そして、インゲルの母が愚かな娘を持ったことを嘆きながら死の床に就いても、インゲルはたかがパン一切れのためにどうして自分が地獄へ落ちなければならないのかと全く反省しなかった。
 そんなある日、いつものように地上で底無し沼へ沈んだインゲルの話をしていた子供たちの中で一人の少女がインゲルを憐れみ、神様にインゲルが天国へ行けるよう祈りを捧げる。その少女もやがて年を取り、死の床に就くが、幼い頃に聞いたインゲルの話を片時も忘れることは無く、インゲルの為に涙を流して天に召された。
 その祈りは聞き届けられ、インゲルは灰色の小鳥に生まれ変わる。そして、インゲルはどんな小さなパン屑であっても粗末にせず、他の鳥に分け与えた。そして、灰色の小鳥が他の鳥に分け与えたパン屑の量があの時に踏んだパンと同じ量になった時にインゲルの罪は許され、長い苦しみから解き放たれて天国へ召されたのであった。

305 食べたい

 4歳の孫が、人気のYouTuberのカップラーメンをやっと買えたと喜んで、器を洗って大事にしている。
 塩分表示を見てびっくり。
 食塩8グラム。
 おじいちゃんはもうそれだけで1日分オーバーだよ。

 若い頃からラーメンが好きだった。
 独身時代は仕事帰りに週に何度も。

 結婚してからはインスタントラーメン。
 仕事が忙しく帰るのは遅い。それから妻の手料理で酒を飲み、白米は食べない。

 それでやめればいいのだが、妻が風呂に入っている間にインスタントラーメンを作って食べた。卵だけ入れて。

 飲んで歯も磨かずに寝た。
 やがては高血圧、不整脈。歯周病。
 
 妻にはさんざん言われてきたのに。

 今ではラーメンは夢の夢夢。
 夢にまで見る。
 夜中に食べて、鍋を洗わず怒られている。


【お題】 夜食

306 ショックだけど

 4歳の男の子とお風呂に入ったら、
「おばあちゃんて、女の子だったんだ!」
と言われた。
「え? 男だと思っていたの?」
「うん」
「なんで? なんで?
 かわいい服着てるじゃない。お化粧してるじゃない」
 まあ、男でもいるだろうけど。
 言葉づかいか?

 ちょっとショック。
 すごくショック。

 
 この孫は……見えるらしい。
 曽祖母の四十九日に、
「おばあちゃん、手を振ってありがとうって言ったね」
と。

 パパも見えるらしい。
 以前住んでいた住宅の駐車場に、老婆が座っているのをよく見たそうだ。

 義妹も当たり前のように言った。
「襖を開けたら、かあさんが⚪︎⚪︎ (息子)を抱っこしていた」
 先日事故を起こした。
「かあさんにまだ来るな、と言われた」

 それは信じる。



【お題】 ドンマイ!

307 横恋慕した殿様

 たしか、梅図かずおの漫画だったと思うがはっきりしない。いろいろ検索してみたけれどわからない。
 
 半世紀くらい前、私が小学生の頃の『少女フレンド』だったか?

 猫のような顔のお殿様がいて、いつも周りに何匹もの猫がいた。
 殿様は恋人のいる美しい娘を好きになり、自分を選べ、と迫った。
 娘は愛する人がいるから、と拒んだ。

 娘の思い人は連れてこられ拷問された。娘が、言うことを聞けば助けてやる、と。
 それでも娘は、愛しているのはあの人だけだと殿様の愛を拒んだ。
 
 男は殿様と同じような猫のような顔にされてしまい、見分けがつかなくなってしまった。
 そして、男は反撃して殿様を殺し自分が殿になりすました。

 娘は信じない。殺された殿を自分の愛する男だと言い張り、殿に変わった男は思い余って娘の首を絞めて殺してしまった。

 いつしか、猫たちは偽物の殿様の周りにいるようになった……


 うろ覚えです。
 誰か知りませんか?


【お題】 殿は猫

308 遅刻しちゃう

 高校を卒業して半世紀近い。
 なのにいまだに夢を見る。
 
 寝坊した。
 遅刻だ。どうしよう?
 バスに乗って電車に乗って15分歩く。
 それでは絶対間に合わない。
 
 ⚪︎号線を自転車でまっすぐ行けば早いかも。
 よしっ、と窓を開けたら雪が降っていた。自転車も真っ白だ。

 下駄箱開けたら長靴がない。
 ねえちゃん、私のを履いて行ったな。
 バカヤロー、自分のことしか考えない奴……

 どうしよう、どうしよう。

 かあちゃん、タクシー、呼んで!

 かあちゃんは?

 ああ、もうなにもわからない。
 私は何組?
 教室はどこ?
 
 タクシー乗ってるのに、学校の行き方がわからない。

 そんな夢を時々みる。

 ああ、またあの夢か。 


【お題】 通学に自転車、雪が降る

309 悩みます

終活も

断捨離できず

先延ばし



旦那様

義歯は嫌だと

駄々をこね



お墓より

インプラントの

金を出せ!


終活で

投稿サイト

どうしたら?


【お題】 煩悩まみれの一句

310 1円玉のあの子

 小学5年か6年の頃、毎週『少女フレンド』を買っていた。小遣いは1日20円くらいだったと思う。『少女フレンド』は50円か60円。

 その週はお小遣いがなくて、貯金箱から1円玉を持って店に行った。
 商店街の角の店。 
『お題』のおかげで思い出してきた。本屋のおばさんの顔まで。
 毎週買ってるのに愛想笑いひとつもしないおばさんだったな。
 
 私は1円玉を60個出した。
 おばさんはなにか言った? 覚えてない。
 とにかく1円玉を数え始めた。
 私はどんな顔をしていたのだろう?
 当時は小銭はいくつまで、なんて決まりはなかった。
 
 おばさんが数え終わり私は『少女フレンド』を手にした。

 その後引っ越した。
 おばさんの記憶に私は残っただろうか?

 
 あの界隈を歩いてみたい。
 歩いて行ってみたい。
 調べたら、5、4キロ。1時間10分。

 半世紀以上経つ。商店街は変わっただろうな。
 貸本屋があった。
 肉屋の店先で買ったコロッケは5円か10円。三角の包み紙にひとつ。ソースをかけてもらって歩きながら食べた。
 ケーキ屋は前を通るだけ。たま〜にカステラの端切をかーちゃんが買ってくれた。経木で包んであって100円。

 小学校は統合されてしまった。
 ああ、小学6年、私はスーちゃんと同じクラスだった。



【お題】 本屋のあの子

掌編集 31

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  • 随筆・エッセイ
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-10-29

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  1. 301 ちょっといろいろ
  2. 302 石に刻め
  3. 303 秋雨前線とは?
  4. 304 底なし沼の話
  5. 305 食べたい
  6. 306 ショックだけど
  7. 307 横恋慕した殿様
  8. 308 遅刻しちゃう
  9. 309 悩みます
  10. 310 1円玉のあの子