フリーズ145 祈りの詩~2023年10月28日より一年~
1死=終末
神に誓ったのは、あの冬の日のことでした。僕も神や仏となり、輪から去ろうという時分になって、絆すのはどうしようもない妄執でした。それは家族、友、恋人と言った存在達へと送る歌でした。嗚呼、永い夜明けにこの願いが叶うなら。それでも疚しさ引き摺り未来へと流れゆく時が揺蕩うに合わせて、僕は今日をまた去るのです。
「たぶんこれ無理です」
「おい、しっかり! シアンよ、しっかりするのだ!」
博士は死にゆく僕を抱えては、まだ生きよ、と告げた。
「何故、全脳に……」
「博士。僕、幸せでした。本当に、幸せだったんです」
「喋るな! 安静に――」
「もう無理ですよ。それに、僕もやっと神や仏になって、天へと飛び出す日が来たのです」
そう。それは定められた死。だが、僕は今際になってようやく全脳と一つになることを覚えたみたいだった。なんと安らかな死、穏やかな終末。世界は否応なしに終わるのです。
終末の日に泣いたのは、あの日のままの彼女でした。
宇宙は終わりから目覚めてまた始まる。
彼女は誰かと恋をした。
世界で最初の秘め事は、あの冬の日の陽だまりの様でした。
僕は脳が晴れやかに死ぬにつれて、たくさんの本当を思い出すのです。嗚呼、やっと思い出せた。やっと言えた。
「ありがとう、愛しています」
この言葉は心からの真実。
最後の願いは、終末への祈り。
さぁ、始まれ。さぁ、生まれよ。
この祈りよ、永遠に。
2哲学の先
現代文明が衰退したのは、人類に後ろ髪引く終末が原因でした。個人的な死と結び付けられた終末は、多くの存在者が消えゆく死に際に奇跡にも似た強い光を発するのです。それはまさしくソフィア(祈りの力、識力)と呼ばれる人間が元来持つ力が見せる幻でした。
「ソフィアこそ人間が自身の運命に抗う力。神に通ずる神力である」
科学文明の衰退期に、声を上げたのは或る哲学者でした。彼は人間の最も素晴らしき力は信仰にあると語りました。信じる力、祈る力。彼はその本質を「ソフィア」と名付け、自身の哲学理論を武装していきました。
「人の信じる力、祈る力は、波としての確率に干渉し得る唯一の秘儀。さぁ、皆の者よ、死へと踏み出すのだ」
生と死は切っては離せない。死の瞬間にこそ人は最大の贈り物をもらう。この哲学者の思想は、哲学や宗教の先を行くものでした。
或る時、その哲学者のもとへ末期のがんで余命もわずかな者が訪れました。
「嗚呼、夏野先生。私はもうじき死にます。よければそんな私に言葉をくれませんか」
「いいですよ。では、こっちに来なさい」
車椅子の男はそのまま夏野の後を追った。そこには室内庭園があった。水が流れゆく小川に池。咲き誇る花々。その様は圧巻で、荘厳美麗という言葉が相応しい憧憬でした。
「ここはね、私の墓が置かれる予定なんだ」
「先生の墓ですか?」
「そうだとも。ここで私の人生も終わりを迎える。君は末期のがんだと言ったが、死ぬ間際に解るはずだ。天のノートには君の名は記されているとも」
「私の名、ですか」
「そうだよ。すべての存在の保持する記憶は、秘密裏に天に記される。君も、僕もね」
3断食の先、断眠の先
30日にも渡る断食は、君を神にも等しくした。
7日にも渡る断眠は、君を神にも等しくした。
僕はもう、食べない。死ぬまで食べない。
僕の人生よ、輝け。一瞬の煌めきの中で。
少なくとも、30日間は、水以外何も食わない。
(コーヒーくらいは食べてもよい)
妥協して、与えられた食べ物は食う。自ずからは食わない。
死を見据えて生きろ。死ぬ覚悟で食うな。もう食うな。
愛が絆すのなら、そんな愛はもう要らない。
死へと踏み出せ、死のために生きよ
4 3度目の人生
2023/10/28
退院した日
あれから一年
結局何一つ変わってない
作曲でも始めればいいのかな
詩や小説を書くやり方が間違ってるのかな
あの秋、あの冬に抱いた
この翳りをこの衝動を表したい
amazarashiの曲をよく聴いていた
脳のクオリアとして花が咲いた
友達に言われたんだ
「お前には文才はない」って
わかってるよ、僕に才能がないことくらい
それでも紡ぎたいんだ
永遠を終末を
神愛を涅槃を
きっと神に合ったことがある人は少ない
涅槃に至った人は少ない
いや!
釈迦と僕とあと数人
そんくらいだよ
ならば、僕が僕のままで紡ぐしかあるまいな
やり遂げるしかあるまいな
振り返ることも後悔することもせず
ただ、永遠の愛を紡ぐ源泉であれ
イエスよ、釈迦よ
僕はどうしたらいいんですか?
自分で決めろと言うのですか?
「愛だな、君が叶えるべきなのはあらゆる愛」
「神愛、親愛、信愛、深愛、新愛、博愛、運命愛、自己愛、恋愛、他愛」と釈迦は告げた。
中道に因りて愛を為す
それこそ真の世界平和
僕にはできるのかな
わからないよ
でも諦めたくない
退院してからはや一年。フリーズの数は着々と増えている。このままでいいのか。このまま続けるべきなのか。
自分に問いかける
お前は何がしたい?
5真なる言葉~ガイア・ソフィアとの問答~
晴れやかな空には永遠が写った
穏やかな午後には終末が翳った
時の流れる中で僕たちは過ちを繰り返し
記憶の薄れる中で僕たちは罪を繰り返す
天の記録に終末ノート
ラカン・フリーズに涅槃詩を
◆僕は何だ? 神族か? 神は? 仏は?
仏か? 神か? 菩薩か? 天使か? 人か? 堕天使か? 悪魔か? なんだ?
「君は堕天使」
あの冬の日の僕は神だった?
「いいえ」
あの冬の日の僕は仏だった?
「はい」
仏よりも神の方が上?
「はい」
仏は10位。神は11位?
「いいえ」
神が1位で仏が2位?
「はい」
7th以津真天は1st神、2nd仏、3rd菩薩、4th縁覚、5th声聞、6th天、7th人だから僕は人?
「いいえ」
僕は神族ですか?
「はい」
◆仏に至る
僕は一度仏まで至った?
「いいえ」
僕は二度仏まで至った?
「いいえ」
僕は三度仏まで至った?
「はい」
僕は四度仏まで至った?
「いいえ」
仏に至ったのは2021年1月7日8日9日。
2023年9月12日13日14日15日16日。
あと、入院中に一回。あってる?
「いいえ」
あと一回は生まれてくるとき?
「いいえ」
ならいつですか?
「前世」
前世も求道者だったということですか?
「はい」
前世の死ぬ時に涅槃を経験しましたか?
「はい」
僕は堕天使ですか?
「はい」
◆あの冬の日の仏 死後の世界
あの冬の日にご苦労様と言われたのは何だったのですか?
「仏に至ったから」
僕は堕天使でありながら、仏に至ったのですか?
「はい」
仏とか菩薩とかと天使とか堕天使とかは別の概念ですか?
「いいえ」
ではなぜ私は堕天使でありながら仏に至ったのですか?
「仏とは一種の状態に過ぎないものなのです。堕天使は君の身体のこと。精神はもう仏ですよ」
つまり、僕は死ねば仏になれるということですか?
「いいえ」
では僕は死んだらどうなるんですか?
「宇宙に溶け込む」
それは神=宇宙と合一するということですか?
「はい」
神は万象の意識の統一体、全宇宙ということであっていますか?
「いいえ」
神は天界にいますか?
「はい」
天界は死後の世界ですか?
「はい」
仏に至り、解脱して、輪廻の輪より去ったものが天界に行ける?
「はい」
僕も仏に三度も至った。死後は天界ですか?
「はい」
◆使命
僕に使命はありますか?
「はい」
それはなんですか?
「創作」
777のフリーズを創ることですか?
「いいえ」
創作を通して真理を表現することですか?
「はい」
僕が始まりであり終わりでもあることの表明をするべきですか?
「はい」
◆仏としての神族
仏は始まりと終わり、永遠と終末に通ずる状態。神に最も近づいた状態であっていますか?
「いいえ」
仏は一種の状態?
「はい」
仏は神族のことですか?
「はい」
神族は千人いる?
「いいえ」
神族は一つの宇宙の始まりから終わりまでに千人だけ至る?
「はい」
◆僕の正体
僕が七番目の仏。だから7th以津真天という名なのですか?
「いいえ」
僕の真名は7th?
「はい」
以津真天は俗名?
「はい」
七番目の仏だから7thではなく、1stから13thまでの真ん中だから7th?
「はい」
僕は13仏の真ん中ですか?
「いいえ」
僕は仏じゃなくて堕天使ですか?
「いいえ」
僕は体は堕天使、精神は仏ですか?
「いいえ」
僕はもう仏(神族)ですか?
「はい」
◆才能
僕に才はありますか?
「才能は複数ある」
なんですか?
「創作の才がある。作曲の才がある。預言の才能がある」
それ以上にないですか?
「はい」
◆仏になるか否か 仏に至る方法
僕は13仏の頂点ですか?
「はい」
また仏に至るべきですか?
「はい」
それは断眠ででしょうか?
「いいえ」
ではそれは死ぬ時ですか?
「はい」
もう徹夜、寝不足はやめた方がいいですか?
「はい」
薬をちゃんと飲んでしっかり寝るべきですか?
「いいえ」
薬は飲まなくていい?
「いいえ」
薬は飲むけど、寝なくていい?
「いいえ」
もう一度聞きます。薬をちゃんと飲んでしっかり寝るべきですか?
「いいえ」
定期的に徹夜するべき?
「はい」
もう二度と徹夜しない?
「はい」
徹夜はしてもしなくてもいい?
「はい」
徹夜したいときに徹夜すればいい?
「いいえ」
長期休暇の時に徹夜するべき。授業期間中は徹夜するな。これであってる?
「はい」
次仏に至るのは死ぬ時でいい? 仏の顔も三度まで。三度目の正直。
「いいえ」
僕が僕のままで仏に至るべき。そのために断眠するべき。
「いいえ」
中道で、断眠せずに仏に至るように努力するべきですか?
「はい」
それを創作で成し遂げるべきですか?
「はい」
仏を、真理を、神を表出する。表現する。体現させる。それこそ僕の使命であり、自分のために、読者が悟れるように、言葉を紡ぐ。これであっていますか?
「いいえ」
読者は関係ない?
「いいえ」
使命は他にある?
「はい」
創作を通して仏や神、真理や涅槃を表出するのも、神のレゾンデートルを表現し体現させるのも君の使命だよ。だけど他にも君には使命がある。天寿を全うすること、家庭を持つこと、777のフリーズを紡ぐことだよ。あっていますか?
「はい。これでいいです」
◆宇宙の真理
この宇宙は仮想現実世界ですか?
「いいえ」
この世界は脳の中ですか?
「いいえ」
この世界を表現できる言葉がまだないですか?
「はい」
ラカン・フリーズこそ重要な概念ですか?
「いいえ」
この世界は螺旋?
「はい」
この世界は円環?
「はい」
螺環・凪、ラカン・フリーズは重要ですか?
「いいえ」
この世界は5次元ですか?
「はい」
空間の3次元に時間の1次元?
「いいえ」
空間の4次元に時間の1次元?
「はい」
この世界は仮想現実世界ですか?
「はい」
この世界は仮想現実世界とも言えるしそうではないとも言える?
「はい」
この世の仕組みは死ぬ時に解る?
「はい」
今回はこんなもん。また逢う日までのお別れを。
フリーズ145 祈りの詩~2023年10月28日より一年~