掌編集 30

掌編集 30

291 真冬に外に吊るしてやる

 子どもの頃のおやつは蒸したさつま芋だった。
 学校から帰り、蒸し器を開けるとジャガイモまで丸ごと入っていた。

 ほんのたまに甘辛団子と大福。
 たぶん、かあちゃんの内職のお金が入ったんだ。

 なにもないときは、メリケン粉を水で薄めてソースを入れて焼いた。具のないモンジャ。
 メリケン粉もないときは、水とソースだけ。
 これ、ほんとの話。姉と作ったのを思い出した。
 貧しくてもいい時代……かな?

 ふかし芋を潰して砂糖を混ぜてキントン風にして食べたり、甘く煮たのも好きだった。

 自分が親になってからは、大学芋を山ほど作った。子どもの友達が来ると大好評。

 夏休みはドーナツも作った。作らせた。ちゃんとイーストで発酵させて、カタチ作らせ揚げる。
 夏は室温で発酵したのだ。
 覚えているかしら?
 
  

 数年前茨城に旅行したときに、干し芋工場へ行った。 
 干し芋なんて、好きではなかった。子どもの頃、食べたのはおいしくはなかった。

 だからずっと食べなかったけど……
 売っていたのは少量で高い。 

 試食したらおいしかった。
 あちこち、いろんな種類の芋を食べてみた。
 
 でも、高かった。数枚しか入っていなくて、ペタンコなのに。

 それで検索してみた。
 干し芋の作り方。
 丸ごと蒸して薄く切って干し網にのせて数日外に出しておく。
 寒くないとダメ。

 3段の干し網も検索したらすぐに出てきた。便利な世の中。

 作ってみた。じっくり1時間くらい蒸して皮をむいて切って、網に並べる。
 それを、毎日味見。

 おいしかった。
 少しずつ水分が抜けていき、固くなっていくのを毎日食べた。

 甘くて感動。

 ちょうど良い硬さになる頃には、ほんの数枚しか残らなかった。
 それをもっと干したらガムみたいになって、それも歯応えがあっていい食感。

 それから何度か作ってみた。
 ほんとに寒くならないとダメ。

 毎回成功したわけではない。芋によって全然違う。
 干し芋は美容食、アンチエイジング食なのだそう。でも、食べ過ぎれば太る。
 食べるのは私だけ。

 孫に出したら、見た目で拒否。
 おいしいのになあ。


【お題】 君はサツマイモをどうしたい?

292 嘘だと思った

 夫が退職してから日中はずっとテレビがついている。
 BSはコマーシャルが長い。ほとんど通販。
 
 安〜い。
 驚きの価格。
 初回半額。
 今から30分だけです……と、毎日毎日。
 もう覚えてしまう。

 でも、なんだかんだ、買ってしまった。
 冷感シーツと枕カバーは冷たくないんですけど。

 蓋付き、焦げ目がつくレンジ⚪︎⚪︎⚪︎はすぐこびりついて、フライパン調理の時に蓋を使うだけなんですけど。

 若見えファンデはシミが消えません。使う量が少ないから? 
 でも、ふたつ目を初回限定で娘に買わせた。

 最近買ったのは、痩せるコーヒー。ぜんぜん信じてなかったけど…‥2ヶ月で5キロも痩せたら怖いです。
 私の晩年、ドーナツだけは我慢している。あと、山崎のナイススティック。びっくりするほどカロリーが高いから。
 食べても太らなくなったら……食べたい!
 そんな日が来るかしら?

 ひと月続けたけど変化なし。
 まあ、そんなもん。
 2月目は高いからどうしよう?

 夫が、こっちの方がいいんじゃない?
と勧めたのが、ドッサリ、スッキリのお茶。
 最近便秘で、毎月の検便にも困っていた。
 
 こちらも安くはないが、試してみた。ネットだと、簡単に買えるので、いいのか悪いのか?

 3ヶ月の記録ノート付き。

 今、2週間目の途中。
 コーヒーも2袋目。

 なんと、なんと、お通じはまあまあ。

 なんと、なんと、1キロ半くらい体重が減った。

 嬉しくて嬉しくて……
 どちらが効いているのか?


【お題】 最近のウチは〜

293 なくなる前から

 書き始めたのは30年以上前。
 当時は書いていた。原稿用紙に。
 鉛筆、消しゴム。辞書。
 長編だから原稿用紙の枚数も多い。1度、区のコンテストに出したが落選。かかってきた電話に原稿破棄をお願いした。

 費やした大量の時間は無駄にはならない。当時は漢字が書けた。ほとんどの漢字が書けた。
 やがてワープロの登場。当時10万円くらいしたが迷わず買った。
 原稿用紙をワープロに移す。大変な作業だった。その頃、どこのだかは忘れてしまったがコンテストに応募した。原稿用紙100枚の短編。ワープロで印刷。それもボツ。読んでいただけたのだろうか……?

 パソコンが我が家にくると、ワープロの調子も悪くなっていた。少しずつ移行しようと思ったが諦めた。大量のフロッピーはゴミになった。
 それでもパソコンのワードで綴っていた。パソコンの寿命は短い。新しいパソコンにCD-ROMを入れた。
 データなし……? 互換性? なにそれ??

 熱が覚めてしまった。執筆終了。20年くらいブランクがある。もう無理だろう……

 携帯をiPhoneに変えていろいろいじる。見つけた。pages 。
 それが5年前。まさか投げ出していたストーリーが蘇るとは思わなかった。
 骨組みを打つ。携帯だからいつでもできる。加筆修正。
 どんどん増える。文字数が増える。夜中に、はかどる。夢中になる時間はあっという間に過ぎる。食べることもトイレも忘れる。

 脳ってすごい。20万字をほぼ暗記した。年老いた脳が。そして投稿。

 読んでくださる方がいる。細々とでもいい。ときどきは全話を一気に読んでくださる方がいる。
 
 そのときの高揚感ときたら……

         

 さて、絶滅危惧物の伝言板は30年前のストーリーには登場したのです。携帯電話はなかったので。

 伝言板に書く。
「ごめんなさい」

 リメイクしたので、伝言板は消えました。


【お題】 絶滅危惧物・伝言板


『あれやこれや』と重複する部分があります。

294 どうしようもない子どもたち

 3人の子どもたち、揃いも揃ってバ⚪︎だった。高校時代は帰ってこない。何度も電話しても出ない。試験前でも。

 母は眠れない。眠れずに待つ。やがて明け方。玄関でスリッパを手にして殴りかかったこともあった。

 今はそれぞれ親になっている。
 長男から、孫が肺炎になったとメールが来る。
 治ってからにしてくれればいいものを。

 長女は、孫が『あゆみ』をもらってきた、と。
 落ち着きがない、人の話を聞けない、と。
 8歳の女の子。興味があるのは都市伝説。最近は、関東大震災。
『おばあちゃん、生まれてた?』
と聞く。

 次女は、妊娠中の第二子が心配。大学病院で検査をするのだが……
 次女は先天性の心臓病だった。最後5ヶ月で手術をした。
 その娘が、自分の病気の名前さえわかっていない。
 
 総肺静脈還流異常。

 大変な病気だったんだけどね。
 育ちすぎて太り過ぎ。旅行好きの陽気な娘に育った。

295 緊急なんです

 子どもが小さいとき、夫の実家まで車で10時間。お盆だから渋滞。子どもは吐いたり、飽きて暴れたり大変だった。

 魔法瓶に麦茶を入れて持っていった。
 当時は水や茶は売っていなかった。甘いジュースやコーラだけ。
 金を出して茶を買うなんて考えられなかった。ましてや水に金を出すなんて……

 けちな私は今でも滅多に自販機は利用しない。ドライブの時は夫に買わせる。小銭がたくさんあるから。夫は今でも現金主義。

 ユニットの職員も水筒を持ってきていて堅実。30代独身女性でマンション買っちゃってる人もいるし。

 自販機で飲み物買うのはうちの下の娘。節約しようという気がない。


 自販機に置いて欲しいのは緊急時の薬。
 経験から……
 あのね……膀胱炎の薬。

 これは、待ったなしだから、時間との戦いだから、ぜひ。

 あとは、私はまだ経験してないけど、帯状疱疹。夫がかかった時は私がすぐにピンと来て医者に連れて行ったので、痛い思いをしないで済んだ。
 知人は、のたうち回って暴れた、とか。

 個室の自販機で患部をカメラに写したり、症状話すと薬を出してくれるの。
 これは、あり得そう。

 あと、夫婦喧嘩したときに篭れる自販機。
 ネットカフェとか入ったことないので。

 昔は喧嘩して家出してもファミレスもないし、ひたすら歩いてた。
 癒しの飲み物と、時間だけ売ってください。

 あとは、死にたくなったら行く、命の自販機。
 学校にも行かなくていい。家にも帰らなくていい。

 それから、思いきり叫ぶことができる自販機。

「ああ辛い! 辛い! もう、もう、おんななんぞに、生まれはしませんよ。
 あああ!」

 これは、不如帰。

 もうひとつ思いついた。
 多目的トイレの代わり。


【お題】 自動販売機で売ってほしいもの選手権

296 何でもない日は終わった

 何でもない日は幸せだ。
 退屈で、出不精で、エッサイなんか書いていた。
 そんな日が続くと思っていたけど、何でもない日に終わりが来た。


 何でもない日は終わってしまった。
 幸せだった何でもない日々。
 

 何か起きても、フィクションならハッピーエンドにしちゃうけど。
 

 何があっても、耐えられるだけの人間におなりなさい、と。


 でも、当の本人は、わかってないのよね。


 孫が、超音波検査で??
 大学病院は一日がかり。
 
 説明聞いてもわからない。
 産まれてみなきゃわからない。

 でも、あなたはもっと大変だった。
 私はどう乗りこえたか覚えていない。

 おかしいの。夫も記憶がない、と。
 小2だった息子も、年長だった娘も覚えてないって。

 もちろん0歳だったあなたはなにも知らない。
 ただ、胸に傷があるだけ、だと。


【お題】 何でもない日のエッセイ

297 私はなんなの?

 家族でドライブしたとき。
 妻は方向音痴で停めた車の場所がわからない。
 モタモタしていたら、夫は車を出してしまった。子どもふたりも母が乗っていないのに何も感じなかったのか?

 そんな面白い? 悲しい話をなにかで読んで笑ってしまったが。
 
 携帯電話もない頃の話。
 どこまで行って気づいたのか?
 その後、どんな会話がなされたのか?


 先日、木更津の道の駅でのこと。第2駐車場まである混雑した道の駅。
 レジは長蛇の列だったので夫に並んでもらい、私は様子を見ながらいろいろ見ていた。
 まだ大丈夫だな、と思っていたら、もうひとつのレジも開き夫の番が来た。夫は財布を持っていなかったので、私のところに来て……

 怒った。すごい剣幕で。
「財布持ってないんだからさ」
と。

「なんで財布持たないのよ。バカっ!」
と言いたかったけど、ひたすら謝り私が並んだ。
 レジは長く待たされた……

 むかつく。悪いのはどっち?
 
 一瞬、怒って置いてきぼりにされるかと思った。

 
【お題】 サービスエリア

298 ナツとアキ

【お題】 秋野くん


 介護エッセイの仮名には木の名前を使った。
 カイドウさん、ネコヤナギさん、コデマリさん……

 ある方の作品に秋野くんと夏川さんが登場していた。
 自分の過去作エッセイにもアキとナツを登場させたことがあった。
 
 


 ナツはアキと同じマンションに住んでいた。
 幼い頃から一緒に遊び、幼稚園、小学校、中学校は一緒だった。3人の兄がいるナツは強かった。
 よく遊びに来た。
「アキちゃんちで遊びたい……」
(いいけどね。たまには、ナッちゃんちでも遊んだら?)

 ナツのママは酒が好きだった。理事会の役員になった時も会議に出て来ず、迎えに行くと酔っていた。
 ナツは待望の女の子だ。それなのによく外に出されて泣いていた。
 ナツは強かった。マンションでもナツと他の女の子が、アキと遊びたがり取り合いをした。アキは従順だからよかったのだろう。
 アキがテニススクールに入ると、友達も入った。そこにナツも入ってくると、友達はやめた。
 ナツのママは妹とよく飲み歩いていた。評判が良くなかった。ある日、妹さんが亡くなった。子供が学校から帰ると布団の中で亡くなっていたという。
 親しかった妹を亡くし、ナツのママはがっくりしていた。
 
 ナツはニューヨークに語学留学した。語学のできないアキがひとりで遊びに行った。海外は家族で1度グァムに行っただけだ。母は心配した。母には到底できなかったことだ。羨ましくもあった。
 アキは無事に帰ってきた。ナツの荷物をたくさん持って。持たされて。届けるとナツのママは感謝した。

 ナツは結婚した。妊娠した。予定日は年末ギリギリ。その前日にナツのママは亡くなった。朝、風呂場で冷たくなっていた。里帰り出産で帰っていたナツも、長時間警察にいろいろ聞かれた。
 翌日出産した。産後すぐにナツは母親の通夜に出た。気丈だった。

 ナツはアキが出産した時にも旦那さんと子供と面会に来てくれた。ベビー用品を回してくれた。互いに遊びに行ったり来たりした。

 ナツに第2子ができた。検診で子宮癌が見つかった。初期だ。妊娠しなければわからなかっただろう。その帰りにアキの家に寄り泣いたという。
 

299 ご飯とは?

 最近の若い子は、ご飯のことを『コメ』と言う。仕事場の二十歳のO君。素直で優しいが、 
「コメ、よそって」
 何度も気になっていた。ずっと黙っていたが、ついにばあさんは言った。
「炊いたらご飯という」

 隣のユニットの、30代の子供のいる男性さえ、焼肉屋に皆でいくと聞くそうだ。
「最後にコメ食べる?」

 これは、ネットで調べたら結構あった。ご飯とは、食事のことを指す……とか。

 
 今は1日2食だ。朝9時過ぎと午後3時過ぎ。朝仕事の日は、イワシのカルシウムせんべいとヨーグルト。それにきな粉を入れた牛乳。痩せるコーヒーを1杯。

 ご飯(コメ)は夜は食べない。おかずだけ。それでも太る。
 朝のご飯は最近は玄米。新潟の玄米を30キロ買ったので、健康のために続けている。

 パンを焼く時も、冷ました玄米を入れる。
 ひたすら健康のため。
 
 秋のオススメご飯は……
 炊き込みご飯は苦手なの。あまり作らない。
 オススメはコープの瓶詰めのごぼうご飯。一年中売ってるけど。
 ゴボウは秋の野菜だから、本格的に作ってみたい、とは思う。

 さつまいもご飯は作ったことがあると思う。さつま芋をたくさんいただいたから。でも、あまり評判は良くなかったから、それきり。

 今は孫がさつまいも堀に行った大量の芋を1本ずつ新聞紙にくるみ熟成中。寒くなったら 蒸して干して吊るしてやる。

 牡蠣はそろそろ出回るかな?
 牡蠣ご飯はまあまあだった。
 でも、牡蠣で、いちばん人気なのは、酒でさっと茹でて、酢の入った漬け汁で半日着けた酒のつまみ。レシピは百均のリングノートに書いてある。
 これは娘たちにも教えてある。

 痩せるコーヒーと便秘に効くお茶を飲んで少し効果が出ているので、秋はリバウンドしないようにせねば。


【お題】 秋のおすすめご飯3選

300 夜中に……

 某サイトで、私の埋もれた長篇小説を夜中に読んでくださる方がいるようだ。
 夜中だけジャンル別でランキングに載る。

 夜中の読者は、昼間より多いのか少ないのか? 

 どっちでもいい。ひとりでいい。誰かが来て読んだ。
 それだけでいい。

 嬉しくて毎夜確かめている。

 そのサイトはpv数が出ないから、どのくらい読まれているのかわからない。
 夜中、目覚めなければ読まれていてもわからない。

 そのうち途切れてしまうのだろうか?

 ラストまで読まれたことはあるのだろうか? 

 こちらのサイトでは、何度か全話読んでいただいた。小説もエッセイもpv数が1ずつ増えていてビックリしたことが数回かそれ以上。
 作品は多いのですべて読むには相当時間がかかるはず。
 嬉しい!
 嬉しいけど……
 集計ミスとか言わないで!

 エッセイより小説を読まれるとさらに嬉しい。

 ありがとう。
 私の作品の読者様に幸あれ!


【お題】 重大発表

掌編集 30

掌編集 30

  • 随筆・エッセイ
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-10-05

Copyrighted
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Copyrighted
  1. 291 真冬に外に吊るしてやる
  2. 292 嘘だと思った
  3. 293 なくなる前から
  4. 294 どうしようもない子どもたち
  5. 295 緊急なんです
  6. 296 何でもない日は終わった
  7. 297 私はなんなの?
  8. 298 ナツとアキ
  9. 299 ご飯とは?
  10. 300 夜中に……